ヴィンセント~イケメンヴァンパイア2人の物語

とうもろAI

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第十一章 クロードの狂気

クロードの接近

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 カイの先導で、ヴィンセントたちは薄暗い廊下を進んでいた。
 小さな子どもたちは怯え、泣き出しそうな声を押し殺している。
 サラがやさしく肩に手を置き、「静かにね」と囁いた。

廊下の先は、礼拝堂へと続く長い通路だった。
表の喧騒が嘘のように、そこだけが異様な静けさに包まれている。

カイが短く息を呑んだ。
「……風が止んだ」

サラが子どもたちを背にかばいながら、低く呟く。
「来るわね……何かが」

その瞬間、空気が重く沈み、遠くの石畳を踏む足音が響いた。
カイの言った“気配”が、ついに姿を現そうとしていた。

空気が歪み、重い足音がゆっくりと響いた。
やがて通路の奥、暗闇の中から四つの影が現れる。
黒衣の護衛が三人――その中心に立つ男の姿に、ヴィンセントの表情が凍る。

「……クロード」
エドワードが低く呟いた。

その姿を見た瞬間、空気がぴんと張りつめた。
彼が一歩進むたび、血の気を帯びたような重い気配が広がっていく。
わずかに笑みを浮かべながら、まるで“迎え入れるように”近づいてきた。

「ずいぶん騒がしいと思えば……君たちか」
低い声に、どこか愉悦が混じる。

ヴィンセントの呼吸が止まる。
「……クロード」
低く押し殺した声が、石造りの廊下に響いた。
かつて屋敷で父の信頼を受け、錬金術師として仕えていた男。

――だが同時に、自分の血を奪い、怪物へと堕ちた裏切り者。

「懐かしい声だな、ヴィンセント」
 クロードは笑みを浮かべた。その口元から覗く牙が、異様に長い。
「人間に戻った時のお前の顔を、私は今でも覚えている。無垢で、幼くて……そして“弱かった”。」
クロードの唇が歪む。

「お前は昔から逃げてばかりだった。薬に溺れ、死にたがって……そんな者が“人間”を語るな。」

ヴィンセントの瞳が細くなった。
わずかに震える息を吐き、静かに言葉を返す。
「ああ、確かに俺は逃げた。でも――己の弱さを知ったからこそ、人を理解できた。破滅を望んだ夜があったから、今の俺がある。お前には、もうそれすら残っていない。」


クロードの表情がわずかに引きつる。
彼の黄色い瞳に、怒りとも焦燥ともつかぬ色が走った。
「偉そうに……まるで聖人ぶっているな、ヴィンセント。だが結局、お前も人を救えはしない。見ろ、哀れな実験体たちを。」

「クロード……。お前のやっていることは、もう錬金術でも実験でもない。ただの殺戮だ」
「殺戮? 違うな、進化だ。お前の血がそれを証明したじゃないか」


 その瞬間、ヴィンセントの足元を風が裂いた。クロードが腕を振り上げる。
 背後から飛び出した手下のヴァンパイアが、サラへと襲いかかる。
 サラは素早く身を翻し、ナイフで相手の頸動脈を狙う。刃が閃光を散らし、肉の焦げる匂いが広がった。

「チッ……」
もう一人の手下がカイへと飛びかかる。
カイは咄嗟にナイフを構え、相手の腕を受け止める。金属のような力のぶつかり合い。
「硬ぇな……お前ら、本当に人間だったのか?」

 ヴィンセントとクロードが中央で激突した。衝撃が通路を震わせ、瓦礫が落ちる。
クロードの爪がヴィンセントの頬を裂き、ヴィンセントの拳がクロードの胸を叩く。互いに一歩も引かない。

「まだわからんのか、ヴィンセント。お前の中の“力”は、もはや人のために使えるものではない」
「……それでも、俺は人間を守る」

 クロードは嗤った。
「守る?なら見せてみろ、その守りというものを」

 その瞬間、クロードが後退し、近くにいた少年の襟首をつかみ上げた。子どもが悲鳴を上げ、宙に吊るされる。

「やめろ!」エドワードが叫び、踏み出すが、別のヴァンパイアに押し留められる。サラも、カイも相手を抑えるのに手一杯だ。

 クロードの爪が、少年の喉元をなぞった。
「結局お前は、また救えない。そうやって、何度も何度もな」

 ヴィンセントの胸の奥で、何かが軋む――。
“また、失うのか”

 その瞬間、空気が一変した。
重い沈黙が落ち、冷たい風が渦を巻く。
ヴィンセントの足元から黒い靄が立ち上がり、光を吸い込むように広がっていく。

「……ヴィンセント!!」
エドワードの叫びが響く。
だが、返事はなかった。
彼の瞳は何かに支配されたように虚ろで、ただクロードだけを見据えていた。
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