ヴィンセント~イケメンヴァンパイア2人の物語

とうもろAI

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第三章 エドワード

揺らぐ心

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ゲストルームのカーテンは隙間なく閉じられ、部屋の中は薄暗く静まり返っていた。重厚な家具の間を縫うように漂う空気はひんやりと冷たく、外の陽光の気配を一切感じさせない。ベッドの上にはエドワードが横たわり、その端正な顔立ちは疲労と痛みで硬直していた。
彼の深いブラウンの髪は、光を浴びないせいでどこか艶が失われているように見えたが、ヘーゼルナッツ色の瞳は静かに揺らめいていた。吐息すら微かで、彼の存在感はまるで薄れかけているようだった。


エドワードの腹部は、ヴィンセントが手当てした包帯でまだ覆われていた。2日前の激闘で深く刺された傷は、吸血鬼として覚醒した今でも完全には治りきっていない。人間だった頃の感覚がまだ残っているのか、それとも吸血鬼としての新たな感覚が馴染んでいないのか、傷の痛みが彼を現実に縛り付けていた。
その痛みだけではない。帰宅したとき、屋敷は不気味なほど静まり返っていた。暗闇の中、部屋を進むたびに目に入るのは無惨に虐殺された家族の痕跡。父も母も、そして妹のエミリーも、そこにはもういない。彼らの最後を思い描くだけで、胸が締め付けられるような痛みが襲ってきた。


「彼に会わせてくれ」「せめて顔だけでも」と廊下の向こうで聞こえる親族の声が、エドワードの心をさらに重くした。真実を隠し、重傷を負ったただの人間として見せることが、今の自分に許された唯一の道だと知っていたからだ。
ヴィンセントの声が扉越しに聞こえる。「エドワード、少しだけ親族に会えるか?無理はさせないが、彼らは君を心配している」

エドワードは力なく目を開け、天井の模様をぼんやりと見つめた。吸血鬼として覚醒した直後の身体は、傷の治癒が進む一方で、昼間の時間帯の光と空気に対して極端に敏感になっていた。人間の頃の感覚は次第に薄れつつあり、それが彼に恐怖と混乱を与えていた。
「……今は誰とも会いたくない」と、彼はかすれた声で応えた。
ヴィンセントは沈黙したが、すぐに静かな声で「わかった」と答え、扉の向こうで親族に向かい語りかけた。「彼は今、療養中だ。負傷の回復には時間が必要だ」


遠ざかる足音を聞きながら、エドワードは瞼を閉じた。体力が戻らないこの感覚は、吸血鬼としての新しい身体がまだ完全に機能していないことを示しているのだろうか。それとも、単に家族を失った哀しみが彼の全てを奪い去っているのか――その答えはまだ見つからなかった。






ヴィンセントは深夜、エドワードを診ていた近隣の医師を招き入れた。古風な屋敷の一室で、彼は医師の顔をじっと見つめながら口を開く。
「彼の状態をどう説明するか、少しだけ協力してほしい。」
医師は眉をひそめるが、次第にその目がヴィンセントの瞳に引き込まれていく。青い瞳の奥に秘められた、不思議な力が静かに心を侵食していく感覚。
「この男は2日前、家族の悲劇の直後に何者かに襲われ、致命的な腹部の負傷を受けた。あなたが治療し、何とか命を繋いだが、今も絶対安静が必要だ。そう説明するんだ。」
医師の瞳がぼんやりと緩み、ヴィンセントの言葉が深く心に刻まれるように頷く。
「わかりました……確かに、そうです。彼は非常に衰弱していて、動くのは危険です。」
ヴィンセントは静かに微笑み、肩の力を抜いた。「それでいい。警察に訊かれたら、そのように説明してくれ。」






翌朝、エドワードの家族を巡る事件捜査のため、警察がヴィンセントの屋敷を訪ねてきた。玄関先に立つ医師は落ち着いた様子で対応する。
「彼は深刻な腹部の負傷を負い、歩くどころか起き上がるのも危険な状態です。私が診断しましたが、ここ数日は絶対に安静が必要です。」
警察は医師の証言に一応の信頼を寄せ、少しの質問だけを投げかけて帰っていった。エドワードはベッドの中で薄く目を開け、ヴィンセントの機転に胸を撫で下ろした。
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