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第1部:スーツの中のワタシ
第一章 はじまりの面接
春川直人は、窓際のソファ席に座っていた。目の前にはテーブル。上品な花柄のクロスがかかっていて、ティーカップが一つ、湯気を立てている。けれど、直人の手は伸びなかった。背筋を伸ばして座ってはいるが、視線は落ち着かず、周囲の音がいちいち気に障った。
「面接って……やっぱり間違えてるんじゃないかな、」
思わず小声で呟いて、背後のドアを振り返る。
アルバイト情報サイトで見つけた、「受付スタッフ募集」という短期求人。写真には明るく清潔感のある店内、品のある制服姿の女性スタッフたち。特に条件に性別の記載はなかったが、写真に写っていたのは全員女性だった。けれど“未経験歓迎・丁寧な指導あり”の文字に惹かれた。履歴書を送るとすぐに返事が来て、「ぜひ一度お話を」と日時が指定された。
着いたのは、繁華街のはずれにある小さなビルの中。エントランスには「アンブローズ・ホールディングス受付ラウンジ」と小さなプレートが掲げられていた。
正直、どんな会社なのかもわからない。ただ、受付業務というからには、電話対応や来客案内など、真面目にやればこなせるだろうと踏んでいた。
──けれど、部屋に案内されて5分後、現れたのは信じられないほど美しい女性だった。
「お待たせしました、春川さんですね?」
彼女はそう言って、やわらかな微笑みを浮かべると、直人の向かいの椅子に腰を下ろした。すらりとした長身、腰まで届くストレートヘア、ネイルまで完璧に整った指先。全身から“プロ”の気配を感じた。
「綾瀬美月です。受付ラウンジのトレーナーをしています」
「……よろしくお願いします」
気圧されながらも、なんとか返す。彼女は履歴書に目を通し、ページを閉じたあと、ふと目を上げてきた。
「まず、確認したいことがあります。春川さんは、このお仕事が“女性として振る舞うこと”を前提にしているって……ご存知ですか?」
「……え?」
耳が熱くなるのを感じた。完全に、見落としていた。
「うちの受付は、お客様に対して“洗練された接遇”を提供するために、あえて女性スタッフのみで運営しているの。ですから、基本的には女性、あるいは女性として勤務できる方が対象なんです」
「えっと、じゃあ……やっぱり、僕、間違ってました……?」
声が震える。頭の中が真っ白になっていく。けれど──彼女は笑った。
「いえ、春川さんの写真を見て、“たぶんいける”って思ったの」
「えっ……?」
「女の子として、働ける。きっと、可愛くなると思うわ」
冗談ではなかった。その目はまっすぐで、真剣だった。
「最初は戸惑うかもしれない。でも、もし興味があるなら……今日、ちょっと試してみない?」
その提案が、人生の転機になることを、まだ直人は知らなかった。
「面接って……やっぱり間違えてるんじゃないかな、」
思わず小声で呟いて、背後のドアを振り返る。
アルバイト情報サイトで見つけた、「受付スタッフ募集」という短期求人。写真には明るく清潔感のある店内、品のある制服姿の女性スタッフたち。特に条件に性別の記載はなかったが、写真に写っていたのは全員女性だった。けれど“未経験歓迎・丁寧な指導あり”の文字に惹かれた。履歴書を送るとすぐに返事が来て、「ぜひ一度お話を」と日時が指定された。
着いたのは、繁華街のはずれにある小さなビルの中。エントランスには「アンブローズ・ホールディングス受付ラウンジ」と小さなプレートが掲げられていた。
正直、どんな会社なのかもわからない。ただ、受付業務というからには、電話対応や来客案内など、真面目にやればこなせるだろうと踏んでいた。
──けれど、部屋に案内されて5分後、現れたのは信じられないほど美しい女性だった。
「お待たせしました、春川さんですね?」
彼女はそう言って、やわらかな微笑みを浮かべると、直人の向かいの椅子に腰を下ろした。すらりとした長身、腰まで届くストレートヘア、ネイルまで完璧に整った指先。全身から“プロ”の気配を感じた。
「綾瀬美月です。受付ラウンジのトレーナーをしています」
「……よろしくお願いします」
気圧されながらも、なんとか返す。彼女は履歴書に目を通し、ページを閉じたあと、ふと目を上げてきた。
「まず、確認したいことがあります。春川さんは、このお仕事が“女性として振る舞うこと”を前提にしているって……ご存知ですか?」
「……え?」
耳が熱くなるのを感じた。完全に、見落としていた。
「うちの受付は、お客様に対して“洗練された接遇”を提供するために、あえて女性スタッフのみで運営しているの。ですから、基本的には女性、あるいは女性として勤務できる方が対象なんです」
「えっと、じゃあ……やっぱり、僕、間違ってました……?」
声が震える。頭の中が真っ白になっていく。けれど──彼女は笑った。
「いえ、春川さんの写真を見て、“たぶんいける”って思ったの」
「えっ……?」
「女の子として、働ける。きっと、可愛くなると思うわ」
冗談ではなかった。その目はまっすぐで、真剣だった。
「最初は戸惑うかもしれない。でも、もし興味があるなら……今日、ちょっと試してみない?」
その提案が、人生の転機になることを、まだ直人は知らなかった。
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