受付バイトは女装が必須?

なな

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第2部:ナイトプール・ミッドナイトドレスコード

第三章:夜の光の中で

午後七時、ナイトプールのエントランスはすでににぎやかだった。
ライトアップされた水面には紫や青のネオンが揺れ、遠くではDJブースから音楽が鳴り響く。

なおは、場内の端にある多目的トイレの扉を静かに閉めた。

(いよいよ……この中で、着替えるんだ)

ショッパーから水着を取り出し、呼吸を整える。

まずは、カーディガンを脱ぎ、ブラとショーツを脱ぐ。
インナーに注意深く着替えて、下腹部も回し込み、
ワンピース型の水着を身にまとう。

ピタリと身体に沿う感触。身体が反応しそうになる。
ウエストのカーブ、胸のパッドライン、太腿の露出。

(うん、大丈夫。脚は剃ってるし、下も収めてる。
 胸も、形だけなら……)

鏡に映る“自分”に、なおは見入った。

(これが、外に出る私の姿)

男の身体を持っている自分が、今は完全に“女の子”に見える。
それが恥ずかしくもあり、どこか高揚でもあった。

唇に軽く色を乗せ、髪を整えると、
なおはそっと扉に手をかけた。



「なおー!」

美月の声が聞こえる。
顔を上げると、真帆と並んで、ドリンク片手に手を振っていた。

「ごめん、待った?」

「全然! てか、めっちゃ可愛いんだけど!」

「うんうん、すっごく自然!もう全然、いけてる!」

言われ慣れていない言葉に、思わずうつむきそうになる。
でも、視線を上げた先に――他の利用客たちがいて、自分をちらりと見ていた。

男女問わず、それは一瞬のことだったけれど、
なおはそのすべてを、**“見られている”**と感じた。

(気づいてない? それとも気づいてて……見てる?)

でも、すぐ隣にいる真帆と美月が笑っていて、
それが何よりの“安全地帯”だった。

三人でプールサイドを歩き、なおは足先だけ水に浸す。

冷たさがじわっと足首まで伝わると、
一気に現実感が押し寄せてきた。

(今、私は水着姿で、ここに立ってる)

風が胸元をすべり、スカート部分がふわりと揺れる。
自分の身体の動きと水着の素材感が一体になって、
どこか心と身体が一致したような気がした。

「ねえ、なお、浮き輪乗る?」

「……うん」

水に入る。
脚を出して、バランスをとって、笑う。

まわりは女の子たちばかり。
でも、なおはその中に溶け込んでいた。

見られる。触れられる。
だけど、それでも「怖くない」と思えた。

ナイトプールの音楽と光の中で、
なおはそっと、唇の端を上げた。

(……きっと私は、“なお”でここにいていいんだ)


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