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第3部:フェティシュな装い
第十六話:綺麗になるって、誰のため? ― 真帆と行くエステ、隠せない秘密と、微笑む理解 ―
「ねえ、前に言ってたエステ、予約取れたよ」
真帆からのLINEは、思ったよりも軽やかだった。
(……どうしよう。今日、私、まだ“鍵”が……)
貞操具は、つけたまま。
河合に預けた鍵はまだ返ってこない。
服を脱いでも、自分では外せない――
そんな“秘密”を抱えたまま、なおはエステに行くことを決めた。
着替え室。
シンプルな白い個室に、バスローブとペーパーショーツが用意されている。
なおは鏡の前で、そっとブラウスのボタンを外す。
下には淡いラベンダーのランジェリー。
そして、身体の奥にしっかりと収まったままの“鍵のかかった存在”。
コルセットは脱いだ。
でも、それを締めていた痕が腰に薄く残っている。
(このままで、バレない……よね?)
そう願いながら、バスローブを羽織った。
施術ルーム。
今回は真帆と同室だった。
「うつ伏せから失礼しますね」
女性のエステティシャンが笑顔で声をかけてくれる。
オイルが肌を滑り、背中や腰をやさしく解きほぐしていく。
でも、なおはずっと落ち着かなかった。
(この下に……“あれ”がある。知らないふりして、誰かが触れてる)
仰向けになり、デコルテとお腹のマッサージが始まったとき――
小さな「カチッ」という音が空気に混じった。
指がほんの一瞬、下腹に触れたあと、止まる。
心臓が跳ねた。
(……今の、聞こえた? 気づいた?)
けれど、その人は何事もなかったように手を戻し、
静かにこう言った。
「大丈夫ですよ。無理に隠さなくて大丈夫ですから」
そのひとことが、
背中よりも心をほぐした。
施術後、真帆とスムージーを飲みながら。
「今日のなお、なんか……綺麗だったよ」
「え……?」
「肌もだけど、雰囲気? なんていうか、“誰かのために綺麗になろうとしてる”って感じが、出てた」
一瞬、胸の奥がビクリとした。
(“誰かのために”って……もしかして、気づいてる?)
「そう、かな……自分ではよくわかんないけど」
「……コルセット、使ってるんでしょ?」
なおは肩をびくりと揺らしたあと、黙って頷く。
「へえ、いいなあ。私もちょっと気になってたんだよね。
苦しそうだけど、締めると気持ちがシャキッとしそうで」
「……うん。シャキッともするし、落ち着くよ。
なんか、“女の子”になった感じがして」
真帆はふっと笑った。
「なおってさ、ほんとに可愛い。
綺麗になるのが、似合ってるよ」
帰り道、電車の窓に映った自分の顔。
頬が赤くて、唇が艶やかで。
目が、ほんの少し潤んでいた。
スマホには、河合からのメッセージ。
今日も、綺麗になったね。
バレなかった。でも、
バレてもよかったって……ちょっとだけ思っちゃった。
“誰かのために綺麗になる”って、そういうことだよ。
“秘密を抱えたまま、それでも肯定される”
それが、なおの“私であること”の始まりだった。
真帆からのLINEは、思ったよりも軽やかだった。
(……どうしよう。今日、私、まだ“鍵”が……)
貞操具は、つけたまま。
河合に預けた鍵はまだ返ってこない。
服を脱いでも、自分では外せない――
そんな“秘密”を抱えたまま、なおはエステに行くことを決めた。
着替え室。
シンプルな白い個室に、バスローブとペーパーショーツが用意されている。
なおは鏡の前で、そっとブラウスのボタンを外す。
下には淡いラベンダーのランジェリー。
そして、身体の奥にしっかりと収まったままの“鍵のかかった存在”。
コルセットは脱いだ。
でも、それを締めていた痕が腰に薄く残っている。
(このままで、バレない……よね?)
そう願いながら、バスローブを羽織った。
施術ルーム。
今回は真帆と同室だった。
「うつ伏せから失礼しますね」
女性のエステティシャンが笑顔で声をかけてくれる。
オイルが肌を滑り、背中や腰をやさしく解きほぐしていく。
でも、なおはずっと落ち着かなかった。
(この下に……“あれ”がある。知らないふりして、誰かが触れてる)
仰向けになり、デコルテとお腹のマッサージが始まったとき――
小さな「カチッ」という音が空気に混じった。
指がほんの一瞬、下腹に触れたあと、止まる。
心臓が跳ねた。
(……今の、聞こえた? 気づいた?)
けれど、その人は何事もなかったように手を戻し、
静かにこう言った。
「大丈夫ですよ。無理に隠さなくて大丈夫ですから」
そのひとことが、
背中よりも心をほぐした。
施術後、真帆とスムージーを飲みながら。
「今日のなお、なんか……綺麗だったよ」
「え……?」
「肌もだけど、雰囲気? なんていうか、“誰かのために綺麗になろうとしてる”って感じが、出てた」
一瞬、胸の奥がビクリとした。
(“誰かのために”って……もしかして、気づいてる?)
「そう、かな……自分ではよくわかんないけど」
「……コルセット、使ってるんでしょ?」
なおは肩をびくりと揺らしたあと、黙って頷く。
「へえ、いいなあ。私もちょっと気になってたんだよね。
苦しそうだけど、締めると気持ちがシャキッとしそうで」
「……うん。シャキッともするし、落ち着くよ。
なんか、“女の子”になった感じがして」
真帆はふっと笑った。
「なおってさ、ほんとに可愛い。
綺麗になるのが、似合ってるよ」
帰り道、電車の窓に映った自分の顔。
頬が赤くて、唇が艶やかで。
目が、ほんの少し潤んでいた。
スマホには、河合からのメッセージ。
今日も、綺麗になったね。
バレなかった。でも、
バレてもよかったって……ちょっとだけ思っちゃった。
“誰かのために綺麗になる”って、そういうことだよ。
“秘密を抱えたまま、それでも肯定される”
それが、なおの“私であること”の始まりだった。
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