受付バイトは女装が必須?

なな

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第4部:それぞれの想い

6.「好き、じゃないはずだったのに」 ― 美月の心に芽生えた、名前のない恋 ―

はじめて“なお”に会ったとき、
私は正直「守ってあげたくなるタイプの男の子だな」って思ってた。

中性的で、口数は少なくて、
でも話しかけると、ちゃんと笑ってくれる。

一緒にバイトするようになって、
それが「女の子としてのなお」になって――
私はどこかで、一歩引いて見てるつもりだった。

“なお”が女の子として扱われることも、
誰かに見初められることも、
「応援してるよ」って顔で見ていられると思ってた。

でも。

最近、どんどん綺麗になっていく“なお”を見てると、
時々、胸の奥がチクリとする。

それは羨ましさかもしれないし、
自分よりも素直で、繊細で、
誰かの愛をまっすぐに受け取れる“女の子”としてのなおへの、嫉妬かもしれない。

でも――もっと正直に言えば。

誰かに見つめられてるなおを見ると、
その誰かになりたい、って思ってしまうときがある。

ある日、休憩室で。
なおが髪を結い直している横顔を見ていたら、
なんでもないように手を貸してしまった。

「ちょっと、ここピン甘い」

「えっ……ありがとう、美月ちゃん」

なおが微笑んだ瞬間、
自分の中で何かがカチッと音を立てて、はまった気がした。

(あ、私――この子に、触れたかったんだ)

その場では冗談にしたけど、
手のひらに残った熱がずっと消えなかった。

真帆とカフェで話したあと、ひとりで歩いてた帰り道。
ふと思った。

「私、なおのこと、好きなのかもしれないな」

でもそれは、よくある“男の子として”とか、
“女の子として”っていう枠の中の話じゃなくて。

“なお”という人そのものを、
大切にしたいと思ってるっていう、
もっと曖昧で、それでいてずっと本気の想い。

いつか、なおが全部を話してくれる日が来たら。
私はきっと、こう言う。

「どんな姿でも、なおはなおでしょ?」

……そのとき、私のこの気持ちに、
名前がつくのかもしれない。
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