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第4部:それぞれの想い
9.名前のない気持ちが、残っている ― 夏の余韻のなか、美月が自分の心と向き合う夜 ―
帰り道、風が少しだけ涼しかった。
テーマパークの喧騒から離れた駅のホームで、
なおが「今日はほんとにありがとう」と言った。
その言葉は、たぶん“楽しかったね”と同じ意味で、
何も特別じゃないはずだったのに――
その声に、私はふいに言葉が返せなかった。
(“ありがとう”って、そんなに優しく言わないで)
心が、すこしだけ締めつけられた。
家に帰って、鏡の前に立ってみた。
日焼け止めを落とし、髪をとかし、服を脱いだとき、
どっと疲れが押し寄せる。
だけど、鏡の奥の自分の顔を見た瞬間、
目の奥に、なおが笑っている顔が焼きついていることに気づいて、
胸がざわざわと波打った。
(今日の私は、なおの“隣”にいた。
でも、“心”の隣には、きっとあの人がいたんだ)
髪を触る自分の指が、妙に冷たく感じた。
スマホを開くと、グループチャットには真帆からの写真が数枚。
3人で撮ったもの。観覧車の下、アイスを頬張るなお、スカートを押さえながら笑う姿――
私はその中の1枚を、つい長押しして保存してしまった。
そのあと、理由もないまま画面を閉じた。
なおの笑顔を見ると、嬉しくなるのに。
でも、同時に胸が痛いのは、なんでだろう。
ベッドの中。
暗い天井を見ながら、私は問いかけていた。
(ねえ、私、なおのことが好きなんじゃないかな)
はっきりとした“恋”じゃないかもしれない。
でも、“誰よりも見ていたい”と思うこの気持ちは、
もう“友達”だけじゃない気がしていた。
なおがあの人に見つめられているときの顔。
それは、私には向けられない笑顔。
でも、それでも――
「それでも、私はなおのことが好きだな」
名前がつかなくても、残ってしまったこの想いを、
誰にも渡さずに、私は持っていたいと思った。
光の余韻が消えたあと、残ったのは、静かであたたかい“気持ち”だった。
テーマパークの喧騒から離れた駅のホームで、
なおが「今日はほんとにありがとう」と言った。
その言葉は、たぶん“楽しかったね”と同じ意味で、
何も特別じゃないはずだったのに――
その声に、私はふいに言葉が返せなかった。
(“ありがとう”って、そんなに優しく言わないで)
心が、すこしだけ締めつけられた。
家に帰って、鏡の前に立ってみた。
日焼け止めを落とし、髪をとかし、服を脱いだとき、
どっと疲れが押し寄せる。
だけど、鏡の奥の自分の顔を見た瞬間、
目の奥に、なおが笑っている顔が焼きついていることに気づいて、
胸がざわざわと波打った。
(今日の私は、なおの“隣”にいた。
でも、“心”の隣には、きっとあの人がいたんだ)
髪を触る自分の指が、妙に冷たく感じた。
スマホを開くと、グループチャットには真帆からの写真が数枚。
3人で撮ったもの。観覧車の下、アイスを頬張るなお、スカートを押さえながら笑う姿――
私はその中の1枚を、つい長押しして保存してしまった。
そのあと、理由もないまま画面を閉じた。
なおの笑顔を見ると、嬉しくなるのに。
でも、同時に胸が痛いのは、なんでだろう。
ベッドの中。
暗い天井を見ながら、私は問いかけていた。
(ねえ、私、なおのことが好きなんじゃないかな)
はっきりとした“恋”じゃないかもしれない。
でも、“誰よりも見ていたい”と思うこの気持ちは、
もう“友達”だけじゃない気がしていた。
なおがあの人に見つめられているときの顔。
それは、私には向けられない笑顔。
でも、それでも――
「それでも、私はなおのことが好きだな」
名前がつかなくても、残ってしまったこの想いを、
誰にも渡さずに、私は持っていたいと思った。
光の余韻が消えたあと、残ったのは、静かであたたかい“気持ち”だった。
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