受付バイトは女装が必須?

なな

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第5部:よりフェティシュな装いへ

第9話:この秘密は、もう“ひとりのもの”じゃない ― バレてもいいと思える誰かがいること ―

バイト先での着替えのロッカー室。
なおは制服のブラウスに腕を通しながら、
鏡に映った自分の“輪郭”に、ほんの少しだけ戸惑っていた。

(今日もそのまま。コルセットも、ボディスーツも、貞操具も)

“なお”としての姿。
けれど、その中身はまるで――
“誰かのもの”になった女の子のようだった。

バイト先は午後のピークを迎えていた。
受付カウンターでは人の出入りも多く、
笑顔を絶やさずに立ち続けることだけで精一杯。

(ヒール、ちょっとだけ高すぎた……)
(コルセット、今日きつめに締めたから、呼吸が浅くなってる……)

貞操具が股間に軽く触れるたびに、
“自分の体のどこが鍵で閉じられているか”を、いやでも思い出す。

「なお、大丈夫?」

横から声をかけてくれたのは――真帆だった。

「う、うん……大丈夫、平気」

「……ほんとに? 最近さ、よくふらついてるよね。
今日もなんか、スカートがぴしっとしてるのに歩き方変だったし」

(……見られてた)

「あ、あの、えっと……」

視線が泳ぐ。
真帆は軽く微笑んで、耳打ちするように言った。

「……ねえ、なお。今、コルセットつけてるでしょ」

「……っ!?」

言葉が出ない。
まるで心の奥を見透かされたみたいだった。
コルセット以外はばれていないかと心配になる。

「安心して。言わないよ、誰にも。
私、最初からちょっと気づいてたから」

なおは、小さく肩をすくめた。

「ご、ごめん……」

「ううん。謝ることじゃないよ。
……むしろ、“ちゃんと可愛くしてきてる”んだなって思ってた」

その言葉に、息が詰まるほどに胸がいっぱいになる。

「今日ね、ほんとは途中で“どうしよう”って思った。
苦しくて、ふらっとして、もうダメかもって」

「じゃあ、次はちょっとだけ緩めにしてみようね。
大丈夫、ばれない範囲で十分可愛いから」

「……真帆さん」

「それにね、もしほんとに困ったら、
控室でこっそり着替える手伝いくらい、いつでもするよ」

    秘密を隠し通すのは、ひとりじゃしんどい。
    でも、誰かと分け合えるなら――
    “重さ”も、“恥ずかしさ”も、ぜんぶ少しだけ軽くなる。

バイトが終わる頃。
なおは真帆の背中を見つめながら、そっと思った。

(私、真帆さんとだったら……もう少し、いろんな“なお”を見せてもいいかもしれない)

それはまだ、恋ではない。
でも、“同じ秘密を抱えてくれる人”がそばにいるという安心感だった。
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