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第7部:新しい春に、もう一人の“僕”
第2話:きみの最初の鏡のなかで
― はじめてのスカートに、ひとしずくの熱 ―
(なお視点)
「ボタン、全部留められた?」
「……は、はい。たぶん……」
ブラウスの前立てを押さえた柊の指が、
まだほんのり震えていた。
なおはそっと近づいて、手を重ねる。
「大丈夫。ちょっとだけずれてるから……ほら、このボタン、ひとつ開けた方がバランスいいよ」
そう言って指先で襟元を直すと、柊はふいに肩をすくめた。
(……くすぐったい?)
でもその反応には、もっと別の温度があった。
身体のどこか――深く、やわらかい部分が、
“異なる輪郭”に触れられてざわめいたような。
スカートは膝上ぎりぎり。
脚にぴたりと密着するストッキングが、少しだけ柊の動きを不自然にしている。
なおはそっと椅子に座らせ、ウィッグを手に取った。
自然なブラウン、前髪にほんの少しカール。
「軽く前髪を流して……耳のライン、隠しすぎない方が中性的に見えるから」
柊は鏡を見ないまま、じっとしていた。
まるで見てしまったら戻れないと感じているように。
「ね、柊くん」
「……はい」
「目を開けて、ちゃんと見てごらん。
“いま、きみがどうなってるか”を」
鏡の中。
制服のスーツに身を包まれた“少女の姿”がいた。
少し揺れるウィッグの髪。
ストッキング越しに透ける、ほっそりとした脚。
そして――
そこに、確かに自分の顔がある。
「……これ、本当に……ぼく……?」
「うん。すごく、よく似合ってる。
最初のときのわたしより、ずっと落ち着いて見えるよ」
柊の指が、そっとスカートの裾に触れる。
その仕草は、まるで“誰かの服”を触るような遠慮があった。
「……変な感じがします」
「うん。それでいいの。
でもね、不思議と、ちょっとだけ、気持ちよくもない?」
柊は、はっとして顔を赤くした。
頷きかけて、途中で止めた。
(わかるよ、その気持ち。
わたしも、最初にこのスカートを穿いたとき、
なにか“下腹の奥”がきゅってなった)
なおはそっと膝をついて、柊の脚のラインを整える。
ストッキング越しに触れる脚は、ほんのり熱を持っていた。
太ももの内側、わずかに反応しているように見える膨らみを、
なおは見ないふりをしながら、そっと言った。
「平気。そんなの、みんななる。
わたしだって……はじめてのとき、どうしていいかわからなかったから」
柊の手が、ブラウスの裾をぎゅっと握る。
声にならない気持ちが、そこに集まっていた。
鏡のなかにいるのは、自分だけど、知らない誰か。
スカートが肌に触れている。
装われるって、こんなにも、触れられていることなんだ。
なおは微笑んで言った。
「柊くん、
きみは、ちゃんと“可愛い”よ」
この日は仕事の簡単な説明で終わった。
(なお視点)
「ボタン、全部留められた?」
「……は、はい。たぶん……」
ブラウスの前立てを押さえた柊の指が、
まだほんのり震えていた。
なおはそっと近づいて、手を重ねる。
「大丈夫。ちょっとだけずれてるから……ほら、このボタン、ひとつ開けた方がバランスいいよ」
そう言って指先で襟元を直すと、柊はふいに肩をすくめた。
(……くすぐったい?)
でもその反応には、もっと別の温度があった。
身体のどこか――深く、やわらかい部分が、
“異なる輪郭”に触れられてざわめいたような。
スカートは膝上ぎりぎり。
脚にぴたりと密着するストッキングが、少しだけ柊の動きを不自然にしている。
なおはそっと椅子に座らせ、ウィッグを手に取った。
自然なブラウン、前髪にほんの少しカール。
「軽く前髪を流して……耳のライン、隠しすぎない方が中性的に見えるから」
柊は鏡を見ないまま、じっとしていた。
まるで見てしまったら戻れないと感じているように。
「ね、柊くん」
「……はい」
「目を開けて、ちゃんと見てごらん。
“いま、きみがどうなってるか”を」
鏡の中。
制服のスーツに身を包まれた“少女の姿”がいた。
少し揺れるウィッグの髪。
ストッキング越しに透ける、ほっそりとした脚。
そして――
そこに、確かに自分の顔がある。
「……これ、本当に……ぼく……?」
「うん。すごく、よく似合ってる。
最初のときのわたしより、ずっと落ち着いて見えるよ」
柊の指が、そっとスカートの裾に触れる。
その仕草は、まるで“誰かの服”を触るような遠慮があった。
「……変な感じがします」
「うん。それでいいの。
でもね、不思議と、ちょっとだけ、気持ちよくもない?」
柊は、はっとして顔を赤くした。
頷きかけて、途中で止めた。
(わかるよ、その気持ち。
わたしも、最初にこのスカートを穿いたとき、
なにか“下腹の奥”がきゅってなった)
なおはそっと膝をついて、柊の脚のラインを整える。
ストッキング越しに触れる脚は、ほんのり熱を持っていた。
太ももの内側、わずかに反応しているように見える膨らみを、
なおは見ないふりをしながら、そっと言った。
「平気。そんなの、みんななる。
わたしだって……はじめてのとき、どうしていいかわからなかったから」
柊の手が、ブラウスの裾をぎゅっと握る。
声にならない気持ちが、そこに集まっていた。
鏡のなかにいるのは、自分だけど、知らない誰か。
スカートが肌に触れている。
装われるって、こんなにも、触れられていることなんだ。
なおは微笑んで言った。
「柊くん、
きみは、ちゃんと“可愛い”よ」
この日は仕事の簡単な説明で終わった。
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