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第7部:新しい春に、もう一人の“僕”
第5話:下着って、服の奥にある“秘密のスイッチ” ― きみに、ちゃんと着せてあげるから ―
「ねえ、柊くん。今日は、ちゃんと“仕上げ”までしてみようか」
控え室に戻り、メイクが完成した柊の隣に座って、なおはそう言った。
柊はまだ、スカートの裾を指先でそわそわと触れている。
まるで自分の足が“誰かのもの”になったみたいで、落ち着かないようだった。
「仕上げ……ですか?」
「うん。下着。
ちゃんと“女性の制服として”着るなら、やっぱりそれも整えた方がいいからね」
柊はピクリと体を固くした。
そのとき、タイミングよく控え室のドアがノックされた。
「入るわよー。なお、準備できた?」
現れたのは美月。その後ろから、真帆もひょこりと顔を出す。
「お、新人くんいるじゃん。あらあら、ずいぶん可愛くなって」
「わ、わあ……! あの、こ、こんにちは……」
「緊張しなくて大丈夫よ~」と真帆がにこにこと柊に手を振った。
なおは美月にこっそり視線を送ると、美月は頷いた。
彼女たちはこの数年で、表に見せる顔と、裏の“秘密の顔”の使い分けにとても長けていた。
美月が棚から取り出したのは、シンプルなランジェリーのセット。
ただ――そのレースは少しだけ透け感があり、フェミニンな光沢を持っていた。
「最初は、これがいいかなと思って。あまり飾らないけど、ラインはすごく綺麗に出るの」
なおはそっと柊の前に差し出した。
「着てみる? 無理には言わないよ」
柊は少し戸惑いながら、それを手に取った。
「……軽い、ですね……」
「うん。でも、着るとね――ふしぎと、自分の形が“変わって見える”ようになるよ」
着替えは、なおがカーテンの向こうからアシストする形で行った。
柊がシャツを脱ぎ、肩にランジェリーを滑らせたとき、
ほんの一瞬――吸い込まれるような息の音が聞こえた。
「どうかな? 胸のカップ、きつくない?」
「……はい。なんか、ぴったり、してます……でも、ちょっと変な感じがして……」
(変、っていうのは、たぶん、心じゃなくて――身体の方)
なおはカーテンをそっと開き、
鏡の角度を変えて、柊の姿を映す。
スカートの下に、“その色”が透ける。
それが、自分の意志で選んだものだということ。
それが、自分の肌に今、密着していること。
柊は、自分の手でスカートの裾を押さえながら、
鏡の前で、はにかむように微笑んだ。
その笑顔が――
どこか、快感に少しだけ似ていた。
「なおさん……ぼく、これ……大丈夫なんでしょうか……」
「なにが“大丈夫”じゃないと思ったの?」
「……こんなに、気持ちよくなるなんて……思わなかったから」
後ろから覗き込んだ真帆が、にやっと笑って言った。
「それ、“なお”にも言ってごらん。
わたしたちなんて、いまだに“着せ合ってる”んだから」
美月も微笑む。
「秘密ってね。
一度抱えちゃうと、誰かと共有したくなるのよ」
制服の下に、鍵付きの装備を。
そこまでしないまでも――
今日は“最初のレース”だけで、充分だった。
それは、柊が“もう一歩進む”ための、
静かで甘い合図だった。
控え室に戻り、メイクが完成した柊の隣に座って、なおはそう言った。
柊はまだ、スカートの裾を指先でそわそわと触れている。
まるで自分の足が“誰かのもの”になったみたいで、落ち着かないようだった。
「仕上げ……ですか?」
「うん。下着。
ちゃんと“女性の制服として”着るなら、やっぱりそれも整えた方がいいからね」
柊はピクリと体を固くした。
そのとき、タイミングよく控え室のドアがノックされた。
「入るわよー。なお、準備できた?」
現れたのは美月。その後ろから、真帆もひょこりと顔を出す。
「お、新人くんいるじゃん。あらあら、ずいぶん可愛くなって」
「わ、わあ……! あの、こ、こんにちは……」
「緊張しなくて大丈夫よ~」と真帆がにこにこと柊に手を振った。
なおは美月にこっそり視線を送ると、美月は頷いた。
彼女たちはこの数年で、表に見せる顔と、裏の“秘密の顔”の使い分けにとても長けていた。
美月が棚から取り出したのは、シンプルなランジェリーのセット。
ただ――そのレースは少しだけ透け感があり、フェミニンな光沢を持っていた。
「最初は、これがいいかなと思って。あまり飾らないけど、ラインはすごく綺麗に出るの」
なおはそっと柊の前に差し出した。
「着てみる? 無理には言わないよ」
柊は少し戸惑いながら、それを手に取った。
「……軽い、ですね……」
「うん。でも、着るとね――ふしぎと、自分の形が“変わって見える”ようになるよ」
着替えは、なおがカーテンの向こうからアシストする形で行った。
柊がシャツを脱ぎ、肩にランジェリーを滑らせたとき、
ほんの一瞬――吸い込まれるような息の音が聞こえた。
「どうかな? 胸のカップ、きつくない?」
「……はい。なんか、ぴったり、してます……でも、ちょっと変な感じがして……」
(変、っていうのは、たぶん、心じゃなくて――身体の方)
なおはカーテンをそっと開き、
鏡の角度を変えて、柊の姿を映す。
スカートの下に、“その色”が透ける。
それが、自分の意志で選んだものだということ。
それが、自分の肌に今、密着していること。
柊は、自分の手でスカートの裾を押さえながら、
鏡の前で、はにかむように微笑んだ。
その笑顔が――
どこか、快感に少しだけ似ていた。
「なおさん……ぼく、これ……大丈夫なんでしょうか……」
「なにが“大丈夫”じゃないと思ったの?」
「……こんなに、気持ちよくなるなんて……思わなかったから」
後ろから覗き込んだ真帆が、にやっと笑って言った。
「それ、“なお”にも言ってごらん。
わたしたちなんて、いまだに“着せ合ってる”んだから」
美月も微笑む。
「秘密ってね。
一度抱えちゃうと、誰かと共有したくなるのよ」
制服の下に、鍵付きの装備を。
そこまでしないまでも――
今日は“最初のレース”だけで、充分だった。
それは、柊が“もう一歩進む”ための、
静かで甘い合図だった。
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