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第7部:新しい春に、もう一人の“僕”
第11話:整えられる身体 ― 静かに、輪郭が決められていく ―
柊は鏡の中に映る、自分の姿を見つめていた。
ウィッグはまだだけど、制服をまとっているだけで、昨日の“感覚”が蘇ってくる。
(昨日は……なんかもう、すごくて……)
ショーツの下にある装備が、まだ肌にぴったりと収まっている。
身体の“芯”が女の子になってしまったみたいな錯覚と、妙な落ち着き。
そんなとき、控え室に入ってきたのは、なおさんだった。
「おはよう、柊ちゃん。昨日、鍵……そのままで大丈夫だった?」
「……はい、なんとか。……」
恥ずかしさを押し殺して差し出すと、なおさんはふんわりと笑った。
「えらいえらい。慣れないまま一晩過ごすの、きっと不安だったよね」
(“えらい”って、そんな……)
顔が熱くなるのを感じながら、なおの隣に腰を下ろす。
その距離が近いだけで、緊張してしまうのはなぜだろう。
「ねえ、柊ちゃん。コルセット、興味ある?」
なおさんはそう言って、棚の奥からひとつのケースを取り出す。
中には、しっかりとした布地と金属のボーンが縫い込まれた――“コルセット”。
背面は編み上げ、サイドには留め具。ウエストからヒップにかけて、自然と曲線が導かれるような美しいフォルム。
「よかったら、着けてみる?」
それは、問いかけというより、やさしい誘導だった。
控え室のカーテン越し、下着と貞操具だけの姿になった柊は、
なおさんの手を借りて、コルセットを巻いていく。
「ちょっと息吸って、はい……ぎゅっ」
ぎゅう、と背中が締まる。
内側の骨が、柊の身体を縛り、矯正していく。
もう一段階、締め紐が引かれるたび、身体の中が別のかたちへ整っていく。
(……なんだろう、この感覚)
苦しいのに、どこか心地いい。
自由が奪われるのに、安心する。
それは、鍵のついた装備をつけているときと、どこか似ていた。
けれどもっと、「形」と「輪郭」がはっきりする。
「うん、似合ってる。背筋がきれいに見えるよ」
鏡越しに、なおさんが微笑む。
自分の姿を見る。
腰がくびれ、ラインが女性のそれに近づいている。
(わたし、こんな……細く見えるんだ)
肩の力を抜くと、胸元から腰にかけてのラインが際立ち、
それだけで“ちゃんと女の子”に見える気がした。
「ワンピース、上から着てみようか」
「……はい」
言われるがままに、なおさんが選んでくれた薄いピンクのワンピースに袖を通す。
ファスナーを上げると、
まるで最初からこの服のために作られた身体のように、ぴたりと収まった。
「わあ……」
思わず声が出た。
布がやさしくコルセットの曲線に沿って落ちていく。
肩から腰、腰から太ももへ――その全体が“整えられた私”で満たされていく。
「これ一人では脱げないでしょ」
その言葉にドキドキが加わる。
「今日一日、これで過ごしてみる?」
そう言ったなおさんの声が、心にすとんと落ちた。
◇ ◇ ◇
その日の午後。
柊は、そのワンピースのまま、コルセットの締めつけを感じながら受付に立っていた。
椅子に座るとき、呼吸するとき、立ち上がるとき、
一つ一つの動作が“コルセットの存在”を思い出させてくれる。
(でも、これ……いいかも)
自由がないぶん、乱れない。
自分の中の“女の子”が、内側から保たれている気がした。
まるで、見えない支柱が、自分という存在を成立させてくれているみたいに。
受付を終えた帰り道。
夜風がスカートを揺らすたび、身体の芯に“整えられた私”の実感がよみがえる。
貞操具の締めつけと、コルセットの支配。
それは、女装の先にあった「もう一つの快感」だった。
(……このまま、進んでも、いいのかな)
ふと、そんな思いがよぎる。
でも、答えはまだ出さない。
この身体で、もう少しだけ――
“わたし”の輪郭を、感じていたかった。
ウィッグはまだだけど、制服をまとっているだけで、昨日の“感覚”が蘇ってくる。
(昨日は……なんかもう、すごくて……)
ショーツの下にある装備が、まだ肌にぴったりと収まっている。
身体の“芯”が女の子になってしまったみたいな錯覚と、妙な落ち着き。
そんなとき、控え室に入ってきたのは、なおさんだった。
「おはよう、柊ちゃん。昨日、鍵……そのままで大丈夫だった?」
「……はい、なんとか。……」
恥ずかしさを押し殺して差し出すと、なおさんはふんわりと笑った。
「えらいえらい。慣れないまま一晩過ごすの、きっと不安だったよね」
(“えらい”って、そんな……)
顔が熱くなるのを感じながら、なおの隣に腰を下ろす。
その距離が近いだけで、緊張してしまうのはなぜだろう。
「ねえ、柊ちゃん。コルセット、興味ある?」
なおさんはそう言って、棚の奥からひとつのケースを取り出す。
中には、しっかりとした布地と金属のボーンが縫い込まれた――“コルセット”。
背面は編み上げ、サイドには留め具。ウエストからヒップにかけて、自然と曲線が導かれるような美しいフォルム。
「よかったら、着けてみる?」
それは、問いかけというより、やさしい誘導だった。
控え室のカーテン越し、下着と貞操具だけの姿になった柊は、
なおさんの手を借りて、コルセットを巻いていく。
「ちょっと息吸って、はい……ぎゅっ」
ぎゅう、と背中が締まる。
内側の骨が、柊の身体を縛り、矯正していく。
もう一段階、締め紐が引かれるたび、身体の中が別のかたちへ整っていく。
(……なんだろう、この感覚)
苦しいのに、どこか心地いい。
自由が奪われるのに、安心する。
それは、鍵のついた装備をつけているときと、どこか似ていた。
けれどもっと、「形」と「輪郭」がはっきりする。
「うん、似合ってる。背筋がきれいに見えるよ」
鏡越しに、なおさんが微笑む。
自分の姿を見る。
腰がくびれ、ラインが女性のそれに近づいている。
(わたし、こんな……細く見えるんだ)
肩の力を抜くと、胸元から腰にかけてのラインが際立ち、
それだけで“ちゃんと女の子”に見える気がした。
「ワンピース、上から着てみようか」
「……はい」
言われるがままに、なおさんが選んでくれた薄いピンクのワンピースに袖を通す。
ファスナーを上げると、
まるで最初からこの服のために作られた身体のように、ぴたりと収まった。
「わあ……」
思わず声が出た。
布がやさしくコルセットの曲線に沿って落ちていく。
肩から腰、腰から太ももへ――その全体が“整えられた私”で満たされていく。
「これ一人では脱げないでしょ」
その言葉にドキドキが加わる。
「今日一日、これで過ごしてみる?」
そう言ったなおさんの声が、心にすとんと落ちた。
◇ ◇ ◇
その日の午後。
柊は、そのワンピースのまま、コルセットの締めつけを感じながら受付に立っていた。
椅子に座るとき、呼吸するとき、立ち上がるとき、
一つ一つの動作が“コルセットの存在”を思い出させてくれる。
(でも、これ……いいかも)
自由がないぶん、乱れない。
自分の中の“女の子”が、内側から保たれている気がした。
まるで、見えない支柱が、自分という存在を成立させてくれているみたいに。
受付を終えた帰り道。
夜風がスカートを揺らすたび、身体の芯に“整えられた私”の実感がよみがえる。
貞操具の締めつけと、コルセットの支配。
それは、女装の先にあった「もう一つの快感」だった。
(……このまま、進んでも、いいのかな)
ふと、そんな思いがよぎる。
でも、答えはまだ出さない。
この身体で、もう少しだけ――
“わたし”の輪郭を、感じていたかった。
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