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第8部:ふたりの鍵
第二章:鍵の音、視線の行方
柊の歩く後ろ姿を、佑真は何気なく目で追っていた。
クラスでも口数が少なくて、いつも小さく縮こまっているようなやつ。
だけど、なぜか今日は──どこか違って見えた。
(あれ……なんか、姿勢、良くね?)
ただ歩いているだけなのに、妙に背筋が通っていて、脚の運びがどこか…柔らかい。
“女みたい”──という言葉が頭をよぎって、自分の中で何かがチクリと疼いた。
(あいつ、昨日よりも……きれいになってないか?)
じっと見るのは失礼だと思いつつも、つい目が追う。
スラックスの布地が太ももに吸いつくように揺れ、ウエストまわりが、すっきりと収まっている。
──まさか、補正下着……?
そんな馬鹿な。けれど、そう想像してしまった自分の思考に、佑真はぎくりとする。
「は? なに考えてんだ俺……」
軽く頭を振った時、柊がふとこちらを振り返った。
目が合う。
一瞬で逸らされたその視線の奥に、妙な熱がこもっていた。
怯えと、戸惑いと、期待──いや、それよりもっと、濡れているような、何か。
(あの目……なんだよ)
やりきれない感覚が残る。
まるで、「見つけて」と言われたような気がして、心がざわついた。
***
なおは河合の部屋で、下着姿のまま立っていた。
ベッドの端に腰かけた河合が、金属の鍵をひとつ持ち上げる。
「なお、今日の装備……確認するよ」
いつもの声色なのに、その一言で、心が跳ねる。
制服のスカートを持ち上げ、指示されるまま下着の中を見せる。
ストッキングの中に収まった冷たい存在。きっちりと収まった、鍵付きの貞操具。
見られるだけで、ゾクゾクする。
河合はゆっくりと指先でなぞる。
「ちゃんと、ついてるね。逃げ出したい気持ち、ない?」
「……ないです。むしろ、つけてないと……不安で」
「そっか。偉いね」
褒められた瞬間、視界がにじむ。
キィ、と鍵が回る音。
でも、それは開錠の音ではない。
今日も開けない。今日も管理される。
だけどそれがなおにとって、“恋人である証”だった。
「……河合さん、あの、ひとつ、聞いてもいいですか?」
「うん?」
「もし……他の人にも、鍵を渡すようなことがあったら、嫌ですか?」
「……“他の人”って?」
「たとえば、柊くん。彼も、鍵を……」
河合の指が止まる。
数秒の沈黙のあと、ゆっくりと笑みが浮かぶ。
「うん。……嫌だね」
その言い方が、ぞくりとするほど冷静で、なおの奥に火をつけた。
「じゃあ──僕が、持ってていいんですか? 彼の鍵」
「いいよ。でも、その代わり……」
河合がなおの顎をそっと持ち上げた。
「彼の責任も、お前が負うんだよ?」
ドクン、と心臓が鳴った。
支配と信頼、そして嫉妬と欲望の入り混じったその目に、
なおは逆らえなかった。
クラスでも口数が少なくて、いつも小さく縮こまっているようなやつ。
だけど、なぜか今日は──どこか違って見えた。
(あれ……なんか、姿勢、良くね?)
ただ歩いているだけなのに、妙に背筋が通っていて、脚の運びがどこか…柔らかい。
“女みたい”──という言葉が頭をよぎって、自分の中で何かがチクリと疼いた。
(あいつ、昨日よりも……きれいになってないか?)
じっと見るのは失礼だと思いつつも、つい目が追う。
スラックスの布地が太ももに吸いつくように揺れ、ウエストまわりが、すっきりと収まっている。
──まさか、補正下着……?
そんな馬鹿な。けれど、そう想像してしまった自分の思考に、佑真はぎくりとする。
「は? なに考えてんだ俺……」
軽く頭を振った時、柊がふとこちらを振り返った。
目が合う。
一瞬で逸らされたその視線の奥に、妙な熱がこもっていた。
怯えと、戸惑いと、期待──いや、それよりもっと、濡れているような、何か。
(あの目……なんだよ)
やりきれない感覚が残る。
まるで、「見つけて」と言われたような気がして、心がざわついた。
***
なおは河合の部屋で、下着姿のまま立っていた。
ベッドの端に腰かけた河合が、金属の鍵をひとつ持ち上げる。
「なお、今日の装備……確認するよ」
いつもの声色なのに、その一言で、心が跳ねる。
制服のスカートを持ち上げ、指示されるまま下着の中を見せる。
ストッキングの中に収まった冷たい存在。きっちりと収まった、鍵付きの貞操具。
見られるだけで、ゾクゾクする。
河合はゆっくりと指先でなぞる。
「ちゃんと、ついてるね。逃げ出したい気持ち、ない?」
「……ないです。むしろ、つけてないと……不安で」
「そっか。偉いね」
褒められた瞬間、視界がにじむ。
キィ、と鍵が回る音。
でも、それは開錠の音ではない。
今日も開けない。今日も管理される。
だけどそれがなおにとって、“恋人である証”だった。
「……河合さん、あの、ひとつ、聞いてもいいですか?」
「うん?」
「もし……他の人にも、鍵を渡すようなことがあったら、嫌ですか?」
「……“他の人”って?」
「たとえば、柊くん。彼も、鍵を……」
河合の指が止まる。
数秒の沈黙のあと、ゆっくりと笑みが浮かぶ。
「うん。……嫌だね」
その言い方が、ぞくりとするほど冷静で、なおの奥に火をつけた。
「じゃあ──僕が、持ってていいんですか? 彼の鍵」
「いいよ。でも、その代わり……」
河合がなおの顎をそっと持ち上げた。
「彼の責任も、お前が負うんだよ?」
ドクン、と心臓が鳴った。
支配と信頼、そして嫉妬と欲望の入り混じったその目に、
なおは逆らえなかった。
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