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第8部:ふたりの鍵
第四章:滲んだ秘密、白い布の中
「柊くん、控え室、ちょっとだけ来てくれる?」
なおの柔らかな声に呼ばれたのは、午前の業務が一段落したタイミングだった。
受付のバックヤード。カーテンで仕切られた一角。
その向こうで、なおはすでに鏡の前に座っていた。
「座って。……今日の歩き方、すごく綺麗だったよ」
「ありがとうございます……」
「でもね、少しだけ……歩幅が狭かったかな。足を閉じるのはいいことだけど、苦しかった?」
柊は喉が詰まる音を立てそうになった。
「……いえ、ただ……ちょっと、気になってて……」
「気になる?」
その問いに、柊は答えられなかった。
けれど、なおの目はもう気づいていた。
視線が、柊のスカートの奥──身体の内側を、やさしく見透かしているようだった。
「……ちょっと、確認させてもらってもいい?」
なおが立ち上がり、柊の正面にしゃがむ。
ゆっくりと制服のスカートを持ち上げ、ストッキングの中に手を差し入れる。
「……っ……あの……あんまり、見ないで……」
「大丈夫。ちゃんと知っておきたいだけ」
ストッキングの下──レースのショーツ、そのさらに奥。
そこに、確かにそれはあった。
白くて、薄くて、やさしい感触の──ナプキン。
小さくたたまれて、貞操具の下にそっと貼られていた。
「……柊くん……これ……」
柊は、もう下を向くことしかできなかった。
「……その……時々、我慢できなくて……下着が……」
声はどんどん小さくなる。
そして、言葉の代わりに、ぽろりと涙がこぼれた。
「汚しちゃったら……バレるし……気持ち悪いって、思われたくなくて……」
なおは、返事をしなかった。
ただ、そっとナプキンに触れた。
それは、柊の努力だった。恥ではなく、守ろうとした証だった。
「……柊くん。これ、すごく丁寧だよ。ちゃんと考えてて、偉いね」
「……え……?」
「私、すごく可愛いと思う。だって、そうやって、自分で“女の子のからだ”に近づいてるんだもん」
手のひらが、ストッキング越しに太ももを撫でる。
「ほら……ナプキン、あったかいね。ちゃんと、“使ってる”って感じがする」
「な、なおさん……」
「もし、交換が必要だったら言ってね。私、ポーチに替え、いつも入れてるから」
柊の喉がつまったまま、息だけが震えて漏れた。
こんな自分を、気持ち悪いって言わなかった。
むしろ、それを「可愛い」とさえ言ってくれた。
いま柊がつけているフラット型貞操具の鍵はなおが持っている。
けれど、柊の心の鍵は──たぶん、この瞬間、そっと開けられてしまっていた。
「……ありがとう、ございます」
その言葉は震えていたけれど、
滲んだナプキンと同じくらい、やさしい温度を持っていた。
なおの柔らかな声に呼ばれたのは、午前の業務が一段落したタイミングだった。
受付のバックヤード。カーテンで仕切られた一角。
その向こうで、なおはすでに鏡の前に座っていた。
「座って。……今日の歩き方、すごく綺麗だったよ」
「ありがとうございます……」
「でもね、少しだけ……歩幅が狭かったかな。足を閉じるのはいいことだけど、苦しかった?」
柊は喉が詰まる音を立てそうになった。
「……いえ、ただ……ちょっと、気になってて……」
「気になる?」
その問いに、柊は答えられなかった。
けれど、なおの目はもう気づいていた。
視線が、柊のスカートの奥──身体の内側を、やさしく見透かしているようだった。
「……ちょっと、確認させてもらってもいい?」
なおが立ち上がり、柊の正面にしゃがむ。
ゆっくりと制服のスカートを持ち上げ、ストッキングの中に手を差し入れる。
「……っ……あの……あんまり、見ないで……」
「大丈夫。ちゃんと知っておきたいだけ」
ストッキングの下──レースのショーツ、そのさらに奥。
そこに、確かにそれはあった。
白くて、薄くて、やさしい感触の──ナプキン。
小さくたたまれて、貞操具の下にそっと貼られていた。
「……柊くん……これ……」
柊は、もう下を向くことしかできなかった。
「……その……時々、我慢できなくて……下着が……」
声はどんどん小さくなる。
そして、言葉の代わりに、ぽろりと涙がこぼれた。
「汚しちゃったら……バレるし……気持ち悪いって、思われたくなくて……」
なおは、返事をしなかった。
ただ、そっとナプキンに触れた。
それは、柊の努力だった。恥ではなく、守ろうとした証だった。
「……柊くん。これ、すごく丁寧だよ。ちゃんと考えてて、偉いね」
「……え……?」
「私、すごく可愛いと思う。だって、そうやって、自分で“女の子のからだ”に近づいてるんだもん」
手のひらが、ストッキング越しに太ももを撫でる。
「ほら……ナプキン、あったかいね。ちゃんと、“使ってる”って感じがする」
「な、なおさん……」
「もし、交換が必要だったら言ってね。私、ポーチに替え、いつも入れてるから」
柊の喉がつまったまま、息だけが震えて漏れた。
こんな自分を、気持ち悪いって言わなかった。
むしろ、それを「可愛い」とさえ言ってくれた。
いま柊がつけているフラット型貞操具の鍵はなおが持っている。
けれど、柊の心の鍵は──たぶん、この瞬間、そっと開けられてしまっていた。
「……ありがとう、ございます」
その言葉は震えていたけれど、
滲んだナプキンと同じくらい、やさしい温度を持っていた。
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