受付バイトは女装が必須?

なな

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第8部:ふたりの鍵

第七章:はじめての“私”で会う日

カフェのドアをくぐると、ふわっと甘い香りが迎えてくれた。
ベリー系のタルトと、挽きたての豆の香り。
それだけで、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。

(……嘘みたい。佑真くんと、ふたりで……)

対面の席に座ると、丸テーブルの向こうで、佑真が気さくに笑っていた。

「アイスカフェラテと……ストロベリーパフェ、だっけ?」

「うん……ありがとう」

柊は、そっと膝を揃えて座る。
スカートの裾を気にしながら、脚の角度に意識を向けると、
太ももの内側に、コルセットの締めつけと──ヌーブラのふくらみが胸に沈む感覚が、あらためて意識に上がってきた。

(……私、いま、“女の子”としてここにいるんだ……)

「……なあ」

「ん?」

「さっきから思ってたんだけど、柊って……前より、すごい柔らかくなったよな」

「え……どこが?」

「全部、かな。雰囲気とか、動きとか、声も……」

「そ、そんな……」

否定しようとするのに、口が動かない。
だって、佑真の言葉は──まっすぐで、優しくて、
何より、“嬉しかった”。

「似合ってるって、マジで思うよ」

「……っ……ありがとう……」

涙が滲みそうになるのを、必死でこらえる。

それなのに、ヌーブラの下で感じていたふくらみが、服の内側でそっと揺れたとき──
自分が、女の子として見られて、喜んでる。
感じてる。誇らしいと思ってることに、気づいてしまった。

(ああ、これが……“私”なのかもしれない)

(この胸も、スカートも、全部──私になってる)

会話の合間、佑真がふとスプーンを落とし、拾おうとしたとき、
柊の胸元に視線が流れたのがわかった。

「……あっ……」

思わず手で隠す。

「ご、ごめん、そんなつもりじゃ……」

「……ううん。……いいの」

ぽつりと呟いたその言葉は、小さくて震えていたけれど、
その瞳の奥には、確かな快感が灯っていた。

「……見られても、いいかもって……思ってた、から……」

柊は知らなかった。
自分がどれだけ“見られたい”と思っていたのか。
どれだけ、“女の子”として扱われることに、憧れていたのか。

そして──

「また、会える?」

佑真のその言葉に、

「……うん。また、“私”で……」

自然に、そう答えていた。
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