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第8部:ふたりの鍵
第八章:誰に鍵を預けるか
「なおさん……あの、少し、話せますか……?」
その日のバイト終わり。
受付フロアの照明が落とされ、制服のまま控え室にふたりきりになった。
なおは振り返り、優しく微笑んだ。
「うん。……柊くん、顔が赤いね。なにかあった?」
「……いえ、その……ちょっとだけ、変なことかもしれなくて……」
柊は目を伏せたまま、バッグの中から小さな巾着を取り出す。
その中には──太ももベルトの鍵、そして貞操具のスペアキー。
「……今日、佑真くんと、私服で……会ってきました」
「そうなんだ」
「少しだけ……カフェで。女の子の格好で」
なおは目を細めた。
「“私服で”じゃなくて、“女の子として”でしょ?」と、優しく正された気がして、柊の肩がぴくりと震えた。
「……見られました。胸も……スカートも……でも、嫌じゃなかった。
むしろ……もっと、見てほしいって、思っちゃって……」
口に出した瞬間、羞恥が全身を駆け巡る。
けれど、なおは頷くだけだった。
「……うん。きっと、柊くんにとっては、それが“正直な自分”なんだと思うよ」
柊は、巾着の中から鍵を指先で取り出した。
「なおさんが預かってくれてるの、すごく安心します。……でも、
もし……もしも、佑真くんにも、これを渡したら、どうなるんだろうって……今日、ふと思ってしまって」
なおのまなざしが、わずかに鋭くなる。
「……“預けたい”って、思ったの?」
「はい……でも、それって変、ですよね……?
彼、まだ何も知らないのに、鍵だけ渡したいって……」
なおは一歩、柊に近づいた。
スカートの中に残るチェーンが、カチャ、と微かに鳴った。
「それはね、柊くんが“その人に委ねたい”って思ってるってこと。
鍵ってね、“信頼”と“支配”の象徴なの。預けたら、相手に管理されちゃう。……でも、だからこそ、渡したくなる」
「……はい」
柊は鍵を握ったまま、視線を下げた。
まだ誰のものでもないその鍵が、掌でじんわりと熱を帯びていく。
「でも、渡す前に──ちゃんと、見極めようね」
なおはそう言って、柊の手にそっと自分の手を重ねた。
「誰に預けるかで、身体だけじゃなくて、“心”の動きも変わるから」
柊は震える声で答えた。
「……私、もう、普通に戻れないかもしれません」
「うん。いいんだよ、戻らなくて。だって、柊くんはもう、“女の子として扱われるのが、好きな子”なんだから」
カチャリ。
なおが柊の太もものチェーンに触れ、新しい鍵を回した。
その音は、まるで“覚悟”の音のようだった。
その日のバイト終わり。
受付フロアの照明が落とされ、制服のまま控え室にふたりきりになった。
なおは振り返り、優しく微笑んだ。
「うん。……柊くん、顔が赤いね。なにかあった?」
「……いえ、その……ちょっとだけ、変なことかもしれなくて……」
柊は目を伏せたまま、バッグの中から小さな巾着を取り出す。
その中には──太ももベルトの鍵、そして貞操具のスペアキー。
「……今日、佑真くんと、私服で……会ってきました」
「そうなんだ」
「少しだけ……カフェで。女の子の格好で」
なおは目を細めた。
「“私服で”じゃなくて、“女の子として”でしょ?」と、優しく正された気がして、柊の肩がぴくりと震えた。
「……見られました。胸も……スカートも……でも、嫌じゃなかった。
むしろ……もっと、見てほしいって、思っちゃって……」
口に出した瞬間、羞恥が全身を駆け巡る。
けれど、なおは頷くだけだった。
「……うん。きっと、柊くんにとっては、それが“正直な自分”なんだと思うよ」
柊は、巾着の中から鍵を指先で取り出した。
「なおさんが預かってくれてるの、すごく安心します。……でも、
もし……もしも、佑真くんにも、これを渡したら、どうなるんだろうって……今日、ふと思ってしまって」
なおのまなざしが、わずかに鋭くなる。
「……“預けたい”って、思ったの?」
「はい……でも、それって変、ですよね……?
彼、まだ何も知らないのに、鍵だけ渡したいって……」
なおは一歩、柊に近づいた。
スカートの中に残るチェーンが、カチャ、と微かに鳴った。
「それはね、柊くんが“その人に委ねたい”って思ってるってこと。
鍵ってね、“信頼”と“支配”の象徴なの。預けたら、相手に管理されちゃう。……でも、だからこそ、渡したくなる」
「……はい」
柊は鍵を握ったまま、視線を下げた。
まだ誰のものでもないその鍵が、掌でじんわりと熱を帯びていく。
「でも、渡す前に──ちゃんと、見極めようね」
なおはそう言って、柊の手にそっと自分の手を重ねた。
「誰に預けるかで、身体だけじゃなくて、“心”の動きも変わるから」
柊は震える声で答えた。
「……私、もう、普通に戻れないかもしれません」
「うん。いいんだよ、戻らなくて。だって、柊くんはもう、“女の子として扱われるのが、好きな子”なんだから」
カチャリ。
なおが柊の太もものチェーンに触れ、新しい鍵を回した。
その音は、まるで“覚悟”の音のようだった。
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