受付バイトは女装が必須?

なな

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第17部:ほどかれる羞恥、締められる絆

第一章:ヒトイヌ、美月

「ねぇ、真帆……あれ、見て」

休日の午後。
ふたりがふらりと立ち寄ったフェティッシュ系アクセサリーショップの奥、
ひときわ目を引く展示スペースに、異質な一角があった。

黒革のリードと首輪、肘を曲げて固定する太めのバンド、
膝立ち姿勢を保持する脚用クッションストラップ、
そして──しっぽのようにカールした、グリップ付きプラグ。

「ヒトイヌ・シリーズ……だって」

真帆が読み上げると、美月は思わず喉を鳴らした。

「……着る人いるのかな、こんなの」

「いると思うよ。だって、ここ“試着可”って書いてあるもん」

「まさか、真帆……」

「ううん、違うよ。……ただ、似合いそうだなって思って」

「……わたしに?」

「うん」

美月の顔が、わずかに赤くなる。

「……ちょっとだけ、見てみるだけ。……触るだけだから」

「うん。“着てみたい”って言ってないしね?」

真帆の目は、微笑んだまま、優しく獲物を見定める狩人のようだった。

試着室は、店内の奥まった空間にあった。
スタッフが手際よく丁寧に説明しながら、パーツをひとつずつ装着していく。

最初に装着されたのは、幅広の首輪。
肌に吸い付くような合皮は、美月の首のラインにぴたりと沿った。

「っ……重い。……でも、すごく、収まる……」

背後でカチリと鳴ったバックルの音に、
背筋がわずかに伸びる。

次は肘の固定バンド。
肘を軽く曲げた状態で、胸の前に両腕が留められていく。

「……手が、届かない……。わたし、何もできない……」

その言葉に、スタッフは微笑みながら尻尾付きプラグを差し出した。

「こちらの装着はご自身では難しいので、
ご希望あれば、パートナーの方が……」

「──わたしが入れます」

真帆の声は落ち着いていた。
手袋をはめながら、すっと美月の後ろに回り込む。

「リラックスして。ゆっくり息を吐いて、腰を抜いて」

「っ……う、ん……」

ぬるりとしたジェルの感触が、肛門の縁に触れた。
美月の身体がびくりと跳ねる。

「や……あ、っ、あぁっ……」

「はい、入った。ちゃんと“イヌ”になれたね」

「っ……動いたら、揺れる……変な感じ……」

「ううん。ちゃんと、“可愛い動き”ってことだよ。
それ、いま真帆の“しっぽ”だから」

四つん這いになった美月に、リードが付けられた。

鏡に映った自分の姿を見て、
美月はしばらく動けなかった。

首輪、肘バンド、膝クッション、尻尾プラグ。
いつもの自分じゃないのに、
どこか安心して、嬉しいとさえ思ってしまっていた。

「……真帆……これ、恥ずかしいけど……」

「でも、嬉しいでしょ?」

「……うん。なにこれ……ずっとこうしてたい……」

「じゃあ決まりだね。
今日は一日──“わたしのイヌ”になってもらうから」

帰宅後の部屋。
美月は装備を付けたまま、ソファ横のラグに膝をついていた。

肘が固定されているせいで、
手が使えず、水を飲むのも真帆に“口元まで持ってきてもらう”。

「あーん」

「……んっ」

何もできない。
でも、それが心地いい。
頼らざるを得ない。
けれど、それが嬉しい。

(こんなふうに“甘えていい”って、思えたの、はじめてかも……)

「じゃあ、“イヌ”にしかできないこと──してあげるね」

真帆がそっと耳元に触れ、
プラグの根元を指先でなぞる。

「っ、やっ……だめ、そんな……っ、尾てい骨、奥……っ、ひく、ぅっ……!」

声は震え、身体はきゅんと締まった。

「ほら、“ごほうび”も気持ちよく受け取れる。……えらいね」

「っ……ん、んっ……わたし、わたし……」

「言って? 誰の子?」

「……真帆の、イヌ、です……」

「よくできました」

美月は、
“何もできない”ということを、
“安心”と“悦び”に変えられる関係を、
その夜、確かに知った。
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