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第1話 御柱様
第1章 謎の儀式
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「おねえちゃん、今日の相談なんだけど・・・」
可奈は、イヤホンをつけて、たけしに手渡されたボイスレコーダーの再生ボタンを押した。
そこは暗がりに浮かぶ、古びた公民館のような建物でした。その扉は重く、軋んだ音を立てて開きました。湿った空気と、線香の匂いが鼻を突く。部屋の奥には、二十人ほどの男女が円になって座っていました。皆、白い薄い布を頭からかぶり、顔を隠してました。
「ようこそ、いらっしゃいました」
そう声をかけてきたのは、白い着物を着た若い女でした。女の顔は人形のように美しく、しかし瞳の奥には奇妙な光が宿ってました。彼女は部屋の中央にある祭壇を指差した。そこには、赤子の腕ほどもある太さの、歪んだ木の根が置かれていました。
「これが『御柱』様です。御柱様は、私たちを『あちらの世界』へと導いてくださる。あちらの世界では、苦しみも悲しみもない。ただただ、安らかな『無』があるのです」
女はそう言って、恍惚とした表情を浮かべました。その言葉に、他の信者たちも静かに頷きました。私は友人に誘われてその集会に参加したのですが、どうにも居心地が悪かったです。友人は「このままだと、あなたは不幸になる。この教えだけが、お前を救える」と、必死に私を説得したのです。しかし、私の目には、この奇妙な儀式が、ただの狂気にしか映りませんでした。
儀式が始まると、信者たちは、御柱に向かって一心不乱に祈りを捧げ始めました。その祈りの声は、次第に大きくなり、やがて異様な音へと変わっていきました。それは、人の声とは思えない、獣が唸るような、あるいは、何か巨大なものが息をするような音でした。それから御柱が、ゆっくりと脈打ち始めました。不気味な赤紫の光を放ちながら、その表面に血管のような筋が浮き出てきました。
「ああ、御柱様が、お力を……!」
女が震える声で叫ぶと、私の隣に座ってた友人が、突然、痙攣を起こし始めたんです。彼は頭を押さえつけ、苦しそうに呻きました。頭からかぶってた布がずり落ち、その顔が露わになると、彼の目は、大きく見開かれ、真っ黒な瞳の奥には、恐怖と絶望が入り混じったような感情が渦巻いていました。
「助けて、……」
友人は、か細い声で私に助けを求めました。私は彼女の手を握ろうとしたましたが、その瞬間、彼女の体が風船のように膨らみ始めました。肉体が破裂するのではないかという恐怖に、私は身動きが取れませんでした。そして、信じられない光景が、私の目の前で繰り広げられました。友人の体が、液体のようになって、祭壇の御柱に吸い込まれていく。いや、御柱が、友人の体を貪り食っているのでした。
悲鳴をあげようとした私の口は、何者かに塞がれた。後ろから、若い女が私を抱きしめていました。その顔には、先ほどの恍惚とした表情はありませんでした。ただ、冷たい微笑を浮かべていました。
「心配なさらないで。あなたも、すぐに御柱様と一体になれるわ」
女の言葉を聞きながら、私は、この部屋に充満していた線香の匂いが、実は、人の血肉が焦げる匂いだったことに、ようやく気づいたのでした。
可奈は、イヤホンをつけて、たけしに手渡されたボイスレコーダーの再生ボタンを押した。
そこは暗がりに浮かぶ、古びた公民館のような建物でした。その扉は重く、軋んだ音を立てて開きました。湿った空気と、線香の匂いが鼻を突く。部屋の奥には、二十人ほどの男女が円になって座っていました。皆、白い薄い布を頭からかぶり、顔を隠してました。
「ようこそ、いらっしゃいました」
そう声をかけてきたのは、白い着物を着た若い女でした。女の顔は人形のように美しく、しかし瞳の奥には奇妙な光が宿ってました。彼女は部屋の中央にある祭壇を指差した。そこには、赤子の腕ほどもある太さの、歪んだ木の根が置かれていました。
「これが『御柱』様です。御柱様は、私たちを『あちらの世界』へと導いてくださる。あちらの世界では、苦しみも悲しみもない。ただただ、安らかな『無』があるのです」
女はそう言って、恍惚とした表情を浮かべました。その言葉に、他の信者たちも静かに頷きました。私は友人に誘われてその集会に参加したのですが、どうにも居心地が悪かったです。友人は「このままだと、あなたは不幸になる。この教えだけが、お前を救える」と、必死に私を説得したのです。しかし、私の目には、この奇妙な儀式が、ただの狂気にしか映りませんでした。
儀式が始まると、信者たちは、御柱に向かって一心不乱に祈りを捧げ始めました。その祈りの声は、次第に大きくなり、やがて異様な音へと変わっていきました。それは、人の声とは思えない、獣が唸るような、あるいは、何か巨大なものが息をするような音でした。それから御柱が、ゆっくりと脈打ち始めました。不気味な赤紫の光を放ちながら、その表面に血管のような筋が浮き出てきました。
「ああ、御柱様が、お力を……!」
女が震える声で叫ぶと、私の隣に座ってた友人が、突然、痙攣を起こし始めたんです。彼は頭を押さえつけ、苦しそうに呻きました。頭からかぶってた布がずり落ち、その顔が露わになると、彼の目は、大きく見開かれ、真っ黒な瞳の奥には、恐怖と絶望が入り混じったような感情が渦巻いていました。
「助けて、……」
友人は、か細い声で私に助けを求めました。私は彼女の手を握ろうとしたましたが、その瞬間、彼女の体が風船のように膨らみ始めました。肉体が破裂するのではないかという恐怖に、私は身動きが取れませんでした。そして、信じられない光景が、私の目の前で繰り広げられました。友人の体が、液体のようになって、祭壇の御柱に吸い込まれていく。いや、御柱が、友人の体を貪り食っているのでした。
悲鳴をあげようとした私の口は、何者かに塞がれた。後ろから、若い女が私を抱きしめていました。その顔には、先ほどの恍惚とした表情はありませんでした。ただ、冷たい微笑を浮かべていました。
「心配なさらないで。あなたも、すぐに御柱様と一体になれるわ」
女の言葉を聞きながら、私は、この部屋に充満していた線香の匂いが、実は、人の血肉が焦げる匂いだったことに、ようやく気づいたのでした。
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