ちいさな物語屋

うらたきよひこ

文字の大きさ
8 / 526

#007 火星ステーションの事件

しおりを挟む
あれは確か、火星への2回目の赴任だったと思う。えーっと、地球の暦に換算すると……まあ、とにかく、あの時のことを話そう。

火星ステーションに配属されてからというもの、日々の作業に追われていた。酸素濃度の管理、通信設備のメンテナンス、あとは食料の在庫確認とか、まあ地味な仕事ばかりだ。2回目ってこともあったしね。真新しいことなんて何もないよ。でも、あれにはさすがに驚いたよ。

その朝、私はいつものようにエアロックを点検していたんだが、突然、通信室からアラートが鳴り響いた。音が大きくて心臓が飛び出るかと思ったよ。聞いたことがない種類のアラートだった。急いで通信室に駆け込むと、仲間のマリがモニターを指さして叫んでいた。「ステーションの外で、動いてるものがある!」って。

火星には生物がいないはずだ。だから最初は、センサーの誤作動だろうと思った。でもモニターを見ると、うん、確かに何かが映っていた。小さな影が赤い砂を蹴り上げながら動いている。見間違いかと思って目をこすったけど、影は消えなかった。

「これ、なんだろう?」と誰かがつぶやいた。その瞬間、ステーション全体に不気味な静けさが広がった。あの沈黙は今でも忘れられないな。

その後、全員で慎重に検討した結果、影の正体を確認するため、私ともう一人の隊員が外に出ることになった。正直言うと、足が震えていた。特別臆病なわけじゃないよ。火星の赤い砂漠に出るだけで、広大すぎる風景に飲み込まれそうになるんだ。ましてやあの影だよ。わかるよね?

影があった地点にたどり着くと、そこには小型の探査機が転がっていた。旧式のもので、どうやら長い間砂に埋もれていたらしい。でも、なんで突然動き出したのかは謎だった。探査機をステーションに持ち込んで調べたけど、結局、原因は特定できなかった。見たこともないくらい古い型の探査機で、たぶん、たぶんだよ?まだ人間が火星に来る前に地球から打ち上げて火星の表面を調べていた探査機じゃないかな。そんな古いものが動くわけないんだけど……。まぁ、何かの拍子にシステムが復活したんだろうということで調査を切り上げた。調べてもしょうがないからね。

あの出来事は、今でもよく話題に上がる。火星では日々が単調に思えるけれど、たまにこんな不思議なことが起きる。それが、この赤い惑星で暮らす醍醐味なんだろうなって、私は思っているよ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

麗しき未亡人

石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。 そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。 他サイトにも掲載しております。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...