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愛し愛され、毒し毒され
しおりを挟む僕のお父さんは、僕が小さい頃に交通事故で亡くなった。
車に轢かれかけた僕を、庇ったせいで。
僕と二人きりになったお母さんは、僕を育てるために四六時中、ほぼ休むことなく毎日働いた。そのせいで身体的にも精神的にもどんどん疲弊していったけど、幼い僕には見てることしか出来なかった。狭くて寒い部屋の隅で、大人しく固くて薄い食パンを、晩御飯として食べることしか出来なかったんだ。
わがままは言っちゃいけない、すぐに怒られるから。気安く声を掛けてもいけない、殴られちゃうから。忙しそうなお母さんを手伝うのもだめ。疲れて眠ってるお母さんに近づくのもだめ。家で大人しく、静かにすること。それが、未熟な僕が唯一できる最大限の親孝行だったから。
だから僕は、いつも我慢してた。学校で同級生たちに虐められても。疲労が限界に達して、家で暴れ回ったお母さんに殴られても。僕は何度も耐えた、耐え続けた。唯一の救いが、僕の近くにいつも居てくれたから。
ーーーでも、どうして、こんなことになったんだろう。
「あぁ、はは……可愛いよ、一希くん。君のエロい声、もっと、俺に聞かせて……?」
あの人の声と一緒に、虫の羽音みたいな機械音が強くなる。その直後、僕のお腹の奥が、硬い何かでゴリゴリって抉られた。腰が勝手にビクビクッて跳ね上がって、お腹の上に熱い何かが飛び散る。指先すら動かない、動かせない。全身が、すごく、熱い。頭が、おかしく、なる。
どうして、どうして、こんなことにーーー
***
とある町のとある交差点にてーーー
「お巡りさん、おはようございまーす!」
「はーいおはよー、みんな元気がいいねぇ。気をつけて登校するんだよー」
若い小学生の集団が、あの人に向けて元気よく声をかける。あの人は、『交通指導』と書かれた旗を片手に、ニコニコと楽しそうな笑顔を浮かべていた。相変わらず、綺麗で格好いい笑顔だ。思わず見蕩れて、その場でしばらく立ち止まってしまう。
歩行者信号が青になって、小学生の集団が横断歩道を渡り始めた。あの人が旗を横向きに構えて、バイバイと手を振る小学生のみんなに手を振り返している。ハッと我に返った僕は、その信号を渡るために慌てて走り出した。でも、ここの信号は青になってる時間が、他のところよりも少しだけ短い。そのせいですぐにパッパッて点滅して、僕が横断歩道の手前に来た瞬間に赤に変わってしまった。体力が少ないせいですぐに息を切らしてしまった僕は、がっくりと項垂れながら必死に呼吸を整えた。そんな僕の隣で、あの人が優しく声をかけてくる。
「おはよ、一希くん。ごめんね、今日は一緒に学校行ってあげられなくて。」
「お、おはようございます、朽木さん……大丈夫、です。僕、もう、中学生ですから……」
軽くケホケホと咳き込んじゃったけど、僕は顔を上げてあの人のーーー朽木さんの方に視線を向けた。朽木さんは「そっかそっか。一希くんもう13だもんね」とか呟きながら、とても楽しそうにニコニコと笑っていた。やっぱり、すごく綺麗な笑顔だ。僕と同じ男の人なのに、油断したら見蕩れそうになってしまう。
朽木さんは僕の住んでる地域にある、小さな交番で働いているお巡りさんだ。だから、警察官の服もきっちりと着こなしているし、立ち振る舞いも優しい雰囲気があるのにすごく格好いい。
またボーッと見つめてしまいそうになったから、僕は鞄を押さえつつ慌てて朽木さんから目を逸らした。でも、やっぱり朽木さんの顔を見たくなって、少しだけ目線を上に向けて横顔を一瞥する。後ろでひとつに結ばれた、少し長い朽木さんの綺麗な赤い髪が、風に乗って微かに揺れていた。
町のみんなから愛されている、優しい性格の警察官。それが朽木さんという人だ。
僕と朽木さんが出会ったのは、お父さんのお葬式が開かれた時だった。朽木さんは僕のお父さんと仲良しだったみたいで、その日から僕に頻繁に声をかけるようになったんだ。
お母さんが仕事で働き詰めになった時には、たまに僕の家に来て『調子はどう?』とか心配してくれた。次第に汚くなった僕の家の片付けを、一緒に手伝ってくれたこともあった。僕がいじめのせいで不登校になった時には、僕の抱えてる悩みを聞いてくれたり、しばらくのあいだ登下校にも付き合ってくれた。中学生になった今でも、朽木さん側の仕事が忙しくない時に一緒に学校に行ったりしている。中学生なのに大人の、しかも警察官を同伴させてるなんて、少し複雑な感じではあるんだけど。
まぁ兎にも角にも、初めて会った時からずっと、朽木さんは僕に対して優しくしてくれた。過保護なんじゃないかって思えるぐらいに、朽木さんは僕のためにあの手この手で尽くしてくれたんだ。
どうしてここまで優しくしてくれるんですかって、少し前に僕から聞いたことがあった。でも、朽木さんはその度に必ず話題を逸らしたりするから、結局ちゃんと答えてはくれなかった。だから、朽木さんが僕に優しくしてくれた理由は、初対面から数年経った今でもまだ分からなかった。
でも、今はもうそれでも良いと思っている。朽木さんがとても面倒見が良くて、本当は誰彼構わず世話焼きになることを、この長い付き合いの中で僕は少しずつ知ったからだ。僕にあんなに優しくしてくれたのも、要はただのお節介のひとつだったってこと。僕だけがとにかく特別だからとか、決してそんな訳では無いんだと思う。多分だけど。
あぁそうだ。こんな格好いいお巡りさんを、僕みたいな弱者が独り占めしちゃいけない。お巡りさんはこの町みんなのお巡りさんなんだ、僕だけのものじゃないーーー
(……って、なにを必死に言い聞かせてるんだろう、僕。別に、僕に対して誰も、何も言ってないってのに。)
途中で再び我に返った僕は、ブンブンと頭を振って横断歩道の向こう側に目を向けた。歩行者信号はまだ赤色だ。とはいえ、もう少しで青に変わるだろう。朽木さんは交通指導員の代役で忙しそうだし、多分今日はここでお別れだ。放課後、会えるかな。いや、朽木さんにだって仕事はたくさんあるんだ。そう都合よく会える訳が無い。今までもそうだったんだ、あんまり期待しちゃ駄目だ。
車側の信号機が、青から黄色、そして赤へと切り替わる。少し間を置いてから歩行者信号が青になる。でもその瞬間、何故か僕の心臓がズキッて痛くなって、足もすくんでいきなり動かなくなってしまった。
あぁ、やっぱり、嫌だ。学校、行きたくない。どうせみんなに虐められる。殴られる、蹴られる、罵られる。先生からも、怒られる。嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だーーー
「……一希くん、大丈夫?」
不意に、朽木さんが心配そうな声で僕の名前を呼んできた。そして、僕の肩をポンッて優しく叩いてくれた。その確かな温もりのお陰で、憂鬱になりかけていた僕の脳みそが一気に冷静さを取り戻す。心臓の痛みも止んだ。足もちゃんと動かせそうだ。
「だ、だっ……大丈夫、です!ご、ごめんなさい!行ってきます!!」
朽木さんを不安にさせたくない一心で、僕はバッと彼の手を払い除けてペコッと頭を下げた。そして、朽木さんの呼び止める声も無視して、僕は駆け足でバタバタと横断歩道を渡った。そのままなりふり構わず、後ろを振り返ることもなく道を走り抜ける。
あぁ、最低だ。必死だったとはいえ、僕は最低なことをした。朽木さんは純粋に、僕のことを心配してくれただけなのに。
嫌われた、今ので絶対に嫌われた。
徐々に湧き上がる後悔と罪悪感に苛まれながらも、僕は無我夢中で学校に向けて走り続けた。周りの景色に目を向ける余裕はない。今はただ、朽木さんにしてしまったことから、目を背けたかった。
でも、一心不乱に走っていたせいで、僕は最後まで気づくことが出来なかった。
その場に残された朽木さんが、僕に触れた手に軽くキスをしながら、ニヤリと怪しげな笑みを浮かべていたことに。
***
時は巡って、放課後ーーー
「一希くーん、こんにちは!……いや、今はこんばんはの方が良いのかな?」
「え!?朽木、さん……?」
とぼとぼと緩慢な足取りで正門を抜けた瞬間、僕は聞こえるはずのないあの人の声に反応して素早く顔を上げた。その勢いに追いつけなかった眼鏡がちょっとだけずれそうになる。すると、僕の傍にスタスタと近づいてきた朽木さんは、その眼鏡を指でクイッて動かして元に戻してくれた。そのまま僕の頭を撫でてニコッと微笑む。途端に僕の心臓はドキッと跳ね上がって、なぜか顔も真っ赤に染まってしまった。間抜けなところを朽木さんに見られて、急に恥ずかしくなったからだ。オロオロと目を泳がせつつも、鞄をギュッと押さえながら朽木さんの顔をおずおずと見上げる。
まさか、正門前で朽木さんに会えるとは夢にも思わなかった。びっくりしすぎて、本当に心臓が飛び出ちゃうかと思った。会えたらいいなぁぐらいのことは考えていたけど、そんな都合よく会える訳が無いとも考えていたから尚更だ。
でも、どうして朽木さんがここに居るんだろう。パトロールとかかな?一緒に学校に来た日なら、普通に迎えに来てくれたとかそういう理由なんだろうけど。でも多分、今日は違うはずだ。朽木さんは今朝、交通指導員の代役をしていたし、仕事の傍らでこんなタイミング良く会いに来てくれるとは思えない。
「……その顔、どうしたの?誰かに殴られたの?」
僕が必死に朽木さんが来た理由を考えていると、朽木さんはおもむろに僕の頬に触れてそう尋ねてきた。その時僕はハッと目を見開いて、慌てて朽木さんからバッと顔を逸らした。見られてはいけないものを、あろうことか朽木さんに見せてしまったからだ。さっきは思わず驚いて顔を上げてしまったけど、迂闊だった。優しい朽木さんにだけは、これ、見せたくなかったのに。
僕の左頬には白い湿布と、それを押さえるためのテープとが丁寧に貼られていた。いや、そこだけじゃない。右の頬と額の一部には絆創膏が貼られてて、首に巻かれた包帯も学ランの隅からほんの少しだけ見えていた。
そう、また殴られたんだ。僕を毎日虐めている、いじめっ子集団に。
周りのクラスメイトたちは、巻き込まれたくないと考えたからか、いつも通り誰も止めてくれなかった。担任の先生も、関わるのが面倒だからと見て見ぬふりをしていた。本当は学ランやズボンの下にも、強く殴られたり蹴られたせいで出来た痣とかが残っている。でも、こんなの、誰にも見せられない。お母さんにはもちろん、朽木さんにだって見せたくなかった。見られたくもなかった。
朽木さんならきっと、途端に僕のことをすごく心配してくれて、誰に殴られたのとかあれこれ問い詰めてくるはずだ。でも、嫌だ。優しい朽木さんを困らせたくない。これ以上、僕なんかのせいで不安にさせたくない。
全部僕が、僕が悪いんだ。僕が不甲斐なくて、弱虫で、何も出来ない無能な子だから。僕のせいで、こうなったんだ。朽木さんには関係ない。僕、僕が、全部悪いんだーーー
「……泣かないで、一希くん。涙が怪我に染みて、余計に痛くなっちゃうよ。」
「……え……ぁ……」
おもむろに、朽木さんが僕の方に身をかがめて、僕の目元を優しく拭ってくれた。本当に優しい手つきで、いつの間にか泣いていた僕の涙を拭ってくれたんだ。やっぱり、朽木さんの手はとっても暖かい。羞恥とはまた別に、頬が自然とほのかに赤く熱くなる。心臓が破裂しちゃいそうなほど、ドキドキと高鳴り始める。あぁ駄目だ、また泣いちゃう。朽木さんがくれる優しさが嬉しすぎて、また泣いちゃう。
僕はとめどなく流れる涙を自分でも拭いつつ、震える声で朽木さんに『ごめんなさい』を繰り返した。朽木さんを心配させちゃったことと、今朝朽木さんの手を振り払ってしまったことを謝るために。
「う、く……ひぐ……ご、ごめん、なさい。ごめんなさい、ごめんなさい……」
「あはは……どうして俺に謝ってるのかな?君は何も悪いことをしていないのに。」
朽木さんはそう言って苦笑いを浮かべると、ここが正門前なのも気にせずに、急に僕の体をギュッと抱きしめた。周りを歩いていた生徒たちが、ギョッと驚いてどよめく声が聞こえる。
恥ずかしい、けど、嬉しい。
朽木さんの優しい温もりが、服の上から僕の体に伝わってくる。僕の手も無意識のうちに、朽木さんの背中に回ってギュッと体を抱き締め返した。膝を曲げて忍者座りみたいになっていた朽木さんが、すかさずより強く僕の体を抱きしめてくる。
なんだろう、いま、すごく幸せだ。朽木さんの体がとても暖かいから、安心し過ぎて力が抜けそうになっちゃう。怪我をしていることも、みんなから殴られた時のことも全部忘れそうになっちゃう。
すると、朽木さんは僕の頭をもう一度撫でながら、小さな声でおもむろにこう尋ねてきた。
「ねぇ、一希くん……君のお母さん、今日は家に帰ってくるの?」
「う、ぇ……?えっと、その……しばらく忙しいから、仕事場に泊まり込むって、言ってました。多分、また数日ぐらいは、帰ってこないと思います……」
ボロボロと泣いていたせいで少したどたどしくなりながらも、僕は何度も瞬きを繰り返しつつ素直にそう答えた。僕のお母さんは色んな仕事をかけ持ちしていて、仕事場に泊まり込むことも頻繁にあった。そういう時は大抵数日、でもひどい時には1ヶ月近くも家に帰ってこなくなるんだ。今となってはすっかり慣れてしまったことだから、寂しいとかって気持ちは別に湧かないのだけれど。
朽木さんはそこでようやく僕から体を離すと、手のひらでポンポンと僕の頭を軽く叩きながら続けてこう言った。
「なら、そうだな……君さえ良かったら、お母さんが帰ってくるまで、俺の家に泊まっていきなよ。俺のところはマンションだから、君のお家よりは少し狭いかもしれないけど……どうかな?」
「え……く、朽木さんの、お家に……ですか!?」
朽木さんから告げられたまさかの提案を前に、僕は思わずギョッと目を丸くしてその場で飛び跳ねた。朽木さんが僕の家に来たことは何度かあったけど、僕が逆に朽木さんの家に行ったことは一度も無かったからだ。親戚との付き合いは皆無だし、友達も居ないからそもそも他人の家に行くこと自体が未経験だった。しかも、よりによって誘ってきた相手は朽木さんだし、泊まっていきなよとも言われた。頭の中があっという間に驚きと嬉しさとで物凄くパニックになる。
アワアワと情けなく慌てふためく僕の前で、朽木さんは僕の目線に合わせて顔を傾けながらニコッと微笑んで言った。
「別に遠慮することはないよ。一通り掃除はしてるし、暖かいご飯もすぐに準備できる。あと、今日は早上がりだから、このまま君を俺の家に送ることも出来るよ……どうかな?」
「え、えっと、その……ぼ、僕なんかが、お邪魔して……いいんで、しょうか?僕、鈍臭いから、物とか壊しちゃったりしたらーーー」
どうしても謙遜して迷ってばかりな僕の唇を、朽木さんが人差し指を優しく押し付けて塞ぐ。男らしく硬くて、それでも女性みたいに細い指が、僕の唇をフニフニと撫でてくる。僕は途中から何も言えないまま、ドキドキと高鳴る心臓を必死に服の上から押さえ続けた。朽木さんの赤くて猫みたいに細い瞳が、戸惑う僕の顔を真っ直ぐジッと見つめていた。
なんだろう、今日の朽木さんのスキンシップが、いつもより少し激しい気がする。ここまで露骨に僕に触れたことなんて、今までもあまり無かったはずなのに。
「構わないよ。俺はお巡りさんだからさ、そもそも家に帰る機会そのものが、意外と少なくてね。せっかく買った家電とかが、放置されちゃうせいですぐに埃をかぶっちゃうんだ……だからむしろ、俺以外の誰かにも俺の部屋を使ってもらった方が、実は結構嬉しかったりするんだよね。」
「そ、そう、なんですか……?」
僕が恐る恐るそう呟いて首を傾げると、朽木さんは再びニコッて笑ってすぐにコクリと頷いた。朽木さんのお陰で涙はすっかり消えていたけど、僕の頬は相変わらず赤く染まって、そして驚くほど熱く火照っていた。
朽木さんの家に泊まる。それはつまり、朽木さんと二人きりになる時間もあるってことで。そしてもちろんだけど、お母さん以外の大人の人と、一つ屋根の下で二人きりになった経験もない。何もかもが未知の領域で、少し怖くもあった。
だけどそれ以上にーーー普段はなりを潜めている好奇心が、僕の中で風船のごとくむくむくと湧き上がっていた。
朽木さんと二人きり。どうなるんだろう、何が起きるんだろう。いや、ただ泊まるだけなんだから、別に何かが起きる訳では無い。それでも、やっぱり気になってしまう。朽木さんが普段どういう生活をしているのか。そして、純粋に見てみたい。みんなの大好きなお巡りさんじゃなくて、一人の男性として暮らしている朽木さんの素の姿を。
「……わ、分かりました。朽木さんさえ、良かったら……あの、着替えとか、持ってきた方が良いですよね……?」
「ううん、大丈夫。俺の使ってない服、貸してあげる。あらかたの物は家に揃ってるから、君は何もしなくていいんだよ。」
おずおずとそう尋ねた僕に対して、朽木さんは満足気に微笑みながら、もう一度僕の頭を優しく撫でてくれた。何もしなくていいと言われて、逆に少しだけ不安にはなったけど、僕は鞄を押さえながらホッと安堵の息を吐いた。さっきも言ったけど、他人の家に泊まること自体が初めてだから、何をすればいいのか分からなかったのだ。でも、この様子だと朽木さんに全部任せて良いみたい。今の時点でもうすごく緊張しちゃってるけど、朽木さんが相手ならきっと大丈夫だろう。
朽木さんの微笑みに釣られて、僕も久しぶりに小さく笑う。すっかり涙で濡れてしまった頬を、夕暮れ時特有の冷たい風が静かにくすぐっていた。そして西の空に見える夕焼けは、朽木さんの髪の色と同じぐらい真っ赤に染まっていたのだった。
***
それから数時間後ーーー
「一希くーん、お風呂沸いたよー」
「は、はいっ!!い、今行きます!!」
リビングにあたる部屋で待機していた僕に、浴室の扉越しに朽木さんが声をかけてくる。下界を見渡せるほど大きな窓が特徴的な部屋にいた僕は、その声に慌てて返事をしながらガバッと立ち上がった。すっかり緊張して正座になっていたから、足の裏が少しだけビリビリと痺れている。そのせいで動きはのろくなっちゃったけど、僕は朽木さんのいる浴室までどうにか駆け足で進んだ。
朽木さんの住んでいる場所は、高級住宅街として有名な町の一角、そして見るからに家賃の高そうな高層マンションの最上階にあった。
マンションは外から数えただけでも確実に10階以上はあったし、エントランスとかエレベーターの中とかも少し豪華な作りになっていた。まさに、お金持ちの人がたくさん住んでそうなマンションだった。こんな場所に、凡人でしかない僕が居るのが逆に違和感でしかないぐらいだ。
当然だけど、僕の体は朽木さんの部屋に着くまで、緊張してものすごくバッキバキに固まっていた。危うく何度も転びそうになったし、周りの豪華な雰囲気に飲まれてすっかり萎縮してしまった。それでも朽木さんは『大丈夫』って何回も言ってくれたし、僕の体を支えながらゆっくりと歩いてくれた。そのお陰で、めちゃくちゃに混乱して思考停止になるまでには、どうにか至らずに済んだ。
そして肝心の朽木さんの部屋だけど、そこもまぁマンションにしてはかなりの広さを誇っていた。玄関もリビングも、トイレも浴室も寝室も、何もかもが広くて綺麗だった。放置されたゴミとか洗濯物が、いたるところで山積みになっている僕の家よりもずっと広い。そして、埃のひとつも見当たらないぐらいにきちんと片付けられている。シンプルながらもキラキラなフローリングの床を、僕の汚い素足でペタペタと歩くのが申し訳なく思えてしまう。
でも、流石は警察官といったところか。よほどたくさんの給料を貰っていない限り、こんな敷居の高そうな場所には決して住めないはずだ。
そうこうするうちに朽木さんは僕をリビングに招き入れると、すぐに戻るからと言って寝室に消えていった。朽木さんの格好はそれまでずっとスーツ姿(交番でいつもの警官の服に着替えるんだって)だった。だけど、ものの数分で戻ってきた時には、黒のタンクトップにジャージズボンとシンプルな服装になっていた。豪華なマンション内で暮らすにしてはかなり質素な感じがしたけど、それでも普通に格好いい。髪も結ばずに下ろしていたから、いつもとは雰囲気もガラッと変わっていた。いまは警察官じゃなくて、近所に居る気の良さそうなお兄さんって感じがする。
対して僕は、緊張し過ぎたせいで心臓がずっとドキドキと鳴りっぱなしだった。そのため、僕はほぼ何も出来ないまま、正座の体勢で柔らかいカーペットの上に座り込んでいた。朽木さんは『くつろいでていいよ』って言ってくれたけど、そうしたくても油断したらすぐに背筋がピンッて伸びしてしまった。冷や汗もだらだらと滝のように止まらなかった。
そんな僕の不安を取り除こうと思ったのか、朽木さんは『お風呂入ろうか』と言って小さく微笑んだ。朽木さんの家に来て早々にお風呂ってのも、よくよく考えたらなかなかに緊張してしまうものだ。でも、たしかに一人で暖かいお湯に浸かれば、少しは落ち着いて冷静になれるかもしれない。改めてそう考えた僕は朽木さんに対して、了承の意を示すように必死にコクコクと頷いた。朽木さんは相変わらずニコニコと笑いながら僕の頭を撫でて、そのままそそくさと浴室に向かった。
そしてお風呂の水が溜まって沸くまでのあいだに、僕と朽木さんはリビングでのんびりと過ごすことにした。緊張であまりご飯が喉を通らないだろうと考えたのか、朽木さんは冷蔵庫に保存していたプリンを僕に分けてくれた。コンビニで売ってるような、よくある三個入りパックのものだ。あろうことか、朽木さんは三個あるうちの二個も僕に譲ってくれた。最初はやっぱり緊張して遠慮してたけど、朽木さんがどうしてもって言うから、結局僕は素直にそれを受け取った。プリンは普通に美味しかったし、二個とも完食することができた。そのお陰で、僕のガチガチに固まっていた心も少しだけ落ち着いた。
それからまたしばらくのあいだ、僕は朽木さんと他愛の無い世間話をした。そしてのちに、朽木さんがお風呂の確認のために浴室に向かってーーー今に至るというわけだ。
「あはは。もう、そんな緊張しなくてもいいのに……着替え、ここに一通り置いてるから。シャンプーとコンディショナーは風呂の中。あれだったら、シャンプーハットとかも出そうか?」
「だ、だだ、大丈夫です!本当に、ありがとう、ございます……!」
慌てて浴室に駆け込んだ僕を迎え入れつつ、朽木さんは苦笑混じりに、危うく転びかけた僕の頭を撫でてくれた。またしても情けないところを見られてしまい、羞恥心で顔がカァッと熱くなる。僕はペコペコと必死に頭を下げると、下にマットが置かれた少し狭い脱衣スペースに向かった。朽木さんの言う通り、近くにあるバスケットの中に何個か衣服が畳んで積まれている。朽木さんが用意してくれた服だ。僕よりずっと背の高い朽木さんの服だから、多分全部ブカブカかもしれない。でも、朽木さんの好意を無駄にする訳にもいかないので、僕はアワアワと慌てふためきつつどうにか着替え始めた。学ランのボタンを外して、ワイシャツのボタンもプチプチと外していく。
すると、浴室から出ていかないまま、僕の姿をジッと見つめていた朽木さんがいきなりこう言ってきた。
「ねぇ、一希くん……良かったらお風呂、俺も一緒に入っていいかな?」
「え……えっ!?く、くく、朽木さんと!?」
一瞬ポカンと口を開けた僕だけど、朽木さんの言葉の意味を理解した瞬間、全身が一気にブワッて熱く火照った。つい反射的に、脱ぎかけていたワイシャツをバッと羽織り直す。そして恐る恐る後ろを振り返ると、朽木さんは浴室の壁にもたれながら、相変わらずニコニコと満面の笑みを浮かべていた。腕を組んでいるから、タンクトップの隙間から程よく引き締まった胸板の筋肉がよく見える。貧弱な僕なんかよりもずっと肉質がいい。危うくそれに見蕩れかけた僕は、どう返事したらいいか分からなくなってオロオロと目を泳がせた。
お父さんやお母さん以外の大人の人とお風呂に入ったことなんて、もちろんだけど一度もない。それに僕の体には、いじめっ子たちによって付けられた怪我とか痣とかがたくさん残っているのだ。顔に刻まれた怪我と同じように、その箇所も朽木さんにはあまり見られたくなかった。せっかく家に泊めてくれた優しい彼を、これ以上余計に困らせたくなかったから。
朽木さんの目線に耐えかねて、僕は咄嗟にフイッと体ごと顔を逸らした。駄目だ、朽木さんが近くにいるから、脱ぎたくても脱げない。女の人みたいに、服を押えて体を隠すことしか出来ない。なんだろう、ここに来て急に恥ずかしくなってきた。朽木さんは純粋な善意の元で、僕とお風呂に入ろうって言ってきただけなのに。
その時、不意に朽木さんがクスクスと小さく笑った気がした。そして、僕の体はそれからすぐに、朽木さんに背後から抱きしめられた。いつの間にか距離を詰められていたらしい。僕の体はすかさずビクッと跳ね上がり、口からはなんとも素っ頓狂な馬鹿らしい悲鳴が出てしまう。
「ひゃ、ん!?く、朽木さ……!?」
「大丈夫。俺の前では、何も隠さなくていいんだよ……ほら、一希くんの全部、俺に見せて?」
「あ、あっ……えっと、あの……朽木さ……!」
突然の抱擁で僕が戸惑う最中にも、朽木さんは笑顔を保ったまま僕の服をゆっくりと脱がし始めた。僕は恥ずかしくなって思わず抵抗したけど、大人である朽木さんの腕力には流石に勝てなかった。それに、朽木さんに素肌を触られる度に、僕の体は勝手にビクビクと震えて動きを止めてしまった。そのせいで上の服はすぐに全部取り払われて、そうこうするうちにズボンのベルトもしゅるりと外された。チャックを下ろされて、パンツごとズボンを下ろされる。僕の恥ずかしいところも、怪我をしているところも、全部が朽木さんの前で明るみにされてしまう。
「……ぁ……あっ……朽木、さん……」
「あぁ、可哀想に……こんなにたくさん、怪我をしていたんだね。痛かったでしょ?無理させてごめんね、一希くん。」
「む、無理だなんて、そんな……ん、ぁ……!」
恥ずかしさに耐えかねた僕は、為す術なく脱衣スペースのすぐ近くにある洗面台にもたれかかった。朽木さんが僕の素肌を触るせいで、体がピクピクと震えて身動きが取れなかったからだ。首とか胸とか、腰とか脚とかを、全て余すことなす優しく撫でられる。たまに指先でくすぐるように脇をなぞられて、僕は堪らず子犬みたいに鼻にかかった声をあげた。その度に朽木さんはフフッて笑って、怪我や痣がある場所をペロッと舐めた。そのまま、それ以外の箇所も舌で舐めて、たまにチュッて音を立てて吸ってくる。
あ、え、嘘。待って、今、気づいた。
僕の体、朽木さんに、舐められてる……!?
「ひ、ぁ……!?く、朽木、さ……!あ、うっ……!!」
「……あぁ、ヤバい。もう、我慢出来ないや……風呂場、行こうか。」
遅れてようやく状況を理解した僕に対して、朽木さんは散々僕の体を舐めたのちにそう呟いた。気づくのが遅すぎたせいで、僕の顔以外の全身は朽木さんの唾液でベトベトになっていた。でも、いつもと違って、朽木さんの声にはあまり余裕が無かった。洗面台の前にある鏡をチラッと見てみる。飢えた猛犬みたいに怖い顔をしている朽木さんと、鏡越しにばっちり目が合った。僕の背筋が本能的にゾクッと震える。
駄目、だめだ。すごく、嫌な予感がする。
僕は咄嗟にその場から逃げようとしたけど、朽木さんはそれを遮るように僕の体を軽々と抱き上げた。途端に僕の体はふわっとした浮遊感に襲われて、落ちたくない一心で思わず朽木さんの首周りに抱きついた。朽木さんがまたフッて小さく笑う。僕の額に軽いキスをしながら、朽木さんは少し慌ただしい足取りでお風呂場の中に入り込んだ。
その後、朽木さんは片足で器用に真っ白な風呂椅子を手繰り寄せると、僕の体を横向きに抱えたままその上に座った。そのまま流れるように体の向きをくるっと変えられる。その結果、僕は意図せずして朽木さんの膝の上に座ることとなった。僕の貧弱な背中から、朽木さんの引き締まった肉体の感触がひしひしと伝わってくる。
それに、僕は裸なのに朽木さんは服を着たままだ。このままだとシャワーの水とかを浴びて、朽木さんの服が濡れてしまう。いそいそとシャワーノズルを取り出した朽木さんの手を押さえつつ、僕は必死に朽木さんの方を振り向きながら彼に言った。
「あの、朽木、さ……下ろして、ください!僕、一人でも、体洗えますから……!」
「いいのいいの。今日は俺に全部任せて……体、痛かったりしたらすぐに言ってね?お湯とかが染みるかもしれないから。」
僕の懸命なお願いも虚しく、朽木さんはシャワーノズルを片手に、赤いラインの入ったオシャレな作りの蛇口をグイッと捻った。その直後、丸いシャワーの先端から暖かいお湯が一発でブワッて溢れてきた。その勢いにびっくりして、思わず女の子みたいに「きゃ!?」って悲鳴をあげてしまう。
朽木さんは『ごめんね』と言うように僕の頭を撫でると、もう一度蛇口を捻ってシャワーから出る湯の量を調節した。最初の時とは打って変わって、小雨のように柔らかな湯が僕の体に優しく降り注ぐ。怪我をしたところにも容赦なく当たるけど、全然痛くない。むしろ不思議なほどに心地いいぐらいだ。僕があまり動けないのをいいことに、朽木さんの手が僕の裸体を愛おしそうに撫でてくる。
でも、やっぱりだめだ。これだと朽木さんの着てる服が濡れちゃう。それに、僕の見せたくない箇所も、いっぱい見られちゃう。
シャワーの湯を大人しく浴びながらも、僕は朽木さんをあまり濡らさないよう必死に身をよじった。実際は、僕の小さい体じゃほとんどどうにもならなかった。だけど、それでもできる限りのことはしようと、手を動かしたり足を動かしたりして朽木さんの服を湯から守ろうとした。
すると、朽木さんは湯が出っ放しのシャワーを傍らに置いて、不意に僕の膝にスッと手を置いた。そして、僕の足をさらに大きくパカッて開きながら僕にこう尋ねた。
「ねぇ……さっきから、俺のこと誘ってるの?何度もこの細い足を、大きく開いたり閉じたりしてさ。」
「え!?さ、誘ってる、って……?あの、やめて、くださ……!あんまり、僕の、見ないで……!」
足が開かれたことで僕の小さいソレが露わになり、僕はカァッと顔を赤く染めながらブンブンと頭を振った。足を閉じたくても、朽木さんが手で膝を押さえてるから閉じれないのだ。僕の粗末なモノは、朽木さんに見られながら軽く首をもたげつつピクピクと震えていた。
いや、嫌だ。体にある痣とか怪我もそうだけど、こっちをまじまじと見られる方が、ずっと恥ずかしい。
「ほら、見て?一希くんの陰茎、まだ少しも触ってもないのに、我慢汁まで出して小さく震えてる。あはは、本当に可愛いなぁ、一希くんは……」
「は、ひ……朽木、さーーー」
恥ずかしすぎて我慢できなくなった僕は、縋るように朽木さんの体に擦り寄りながら、そっちの方に顔を向けようとした。すると、朽木さんはすぐに僕の頬を後ろから掴んで、僕の唇を朽木さんのそれで塞いだ。半開きだった僕の口の中に、朽木さんの舌が蛇みたいに滑り込んでくる。舌と一緒に唾液が絡んで、くちゅくちゅって変な音が響く。同時に体も、絶え間なくビクビクと震えてしまう。
あぁ、嘘、うそでしょ?
僕、いま、朽木さんと、キスしてる……!
朽木さんの手が、キスの最中に僕のアソコへゆっくりと移動する。僕のソレの周りをマッサージするように、朽木さんが大きな両手でそこを優しく撫でる。でも、直接ソレに触れることはない。そのせいで際どい箇所ばかり触られた僕は、何度も体を痙攣させながら朽木さんの手に必死にしがみついた。
お願い、こんな恥ずかしい場所、そんなに触らないで。頭の中が、少しずつ、おかしくなっちゃうから。
「ん、んぅ、ふっ……んん、ぅう……!」
「ん……そろそろ、体洗おうか。お湯の熱にも、慣れた頃だろうし。」
数分ほどの長いキスの後で、朽木さんはそう呟きながらようやく僕から手を離した。結局最後まで触られなかった僕のソレが、今もモノ欲しげにピクピクと震えている。僕の体からもすっかり力が抜けてしまい、僕はなすすべもなく朽木さんの体に身を委ねることとなった。朽木さんの服のことを心配している余裕は微塵もなかった。今となっては自分のことだけで精一杯だったから。
僕が動けない間にも、朽木さんはお湯が出っ放しのシャワーノズルを一旦壁にかけつつ、専用のタオルにボディーソープを手際よく乗せた。ほんの数秒でモコモコと泡立つそれをボーッと見つめながら、僕は無意識のうちにごくりと唾を飲み込んだ。
いよいよ本格的に、朽木さんに触られるんだ。どこまでも小さくて未熟な、傷だらけでもあるこの体を。
朽木さんの泡まみれの手とタオルが、僕の体を背後から優しく包み込む。まずは胸元、腕を経由して指先、そして脇腹から下腹部へ。ゆっくり少しずつ、僕の怪我に影響が出ないように、適切な握力で余すことなく全身に泡を擦り付ける。不思議と、すごく心地いい感覚がした。タオルで優しく擦られてるだけなのに、また勝手に体から力が抜けてしまう。
「一希くん、痛いところとかない?無理に我慢とかしなくていいからね。」
「は、はい……大丈夫、です……」
僕は朽木さんの膝から誤ってずり落ちないように、必死に足を踏ん張りながらおずおずとそう答えた。少しでも油断したら本当に倒れてしまいそうなほど、朽木さんの体の洗い方は丁寧で優しかった。ボディーソープの柔らかな香りと、浴室ゆえの温度や湿度の高さも相まって、次第に頭の中全体がぼんやりとしてしまう。
いや、こんなところでのぼせちゃだめだ。せっかく体を洗ってくれた朽木さんの迷惑になっちゃう。
そう考えた僕はどうにか意識を保つために、途中で何度かブンブンと頭を振った。その衝撃で真っ白な泡の山から、シャボン玉のように透明な泡がプカプカと浮かび上がる。それがなんだか無性に綺麗に思えて、僕は我を忘れてその泡たちをボーッと見つめた。
すると、それまで無言で僕の背中を洗っていた朽木さんは、おもむろに両手をタオルごと僕のアソコに近づけた。そして、少し惚けていた僕のソレを、いきなりタオル越しにギュッて握ってきた。突然急所を刺激されたことで、驚いた僕の体は雷に打たれたみたいに、反射的にビクッと大きく跳ね上がった。
でも、朽木さんは全く構うことなく、僕のソレをタオルでゴシゴシと上下に擦り始めた。流石に少し痛かったけど、それ以上に変な感覚が僕の全身を電流みたいに駆け巡った。そのせいで、僕の口からは女の子みたいな悲鳴が全然止まらなくなった。ビクンビクンって体を震わせながら、縋るように必死に朽木さんの手首を掴む。
「ひゃああっ!!?あ、ひ、あぁっ!!く、朽木、さ……ふ、あ、あぁあっ!!」
「だめだよ一希くん、ボーッとしてちゃ……今は俺の方に集中して。もっと可愛い声、俺に聞かせてよ。」
朽木さんは小声で囁くようにそう呟くと、あろうことか僕のソレを擦るスピードをもっと速くした。泡とタオルとソレが擦れ合って、聞いたこともないようなぐちゅぐちゅって凄い音が鳴り響く。同時に僕の体の奥からは、マグマの噴火みたいに何かがドクドクとせり上がってきた。腰が勝手にガクガクと震えてしまう。背筋も海老みたいに大きく反れてしまう。
なんか、くる。来てはいけないものが、来てしまう。
「や、やだ、離して……!!だめ、だめだめ……だ、めっ!なんか、出ちゃうっ!!でちゃう、からぁあっ!!」
「いいよ、出して……ここ、お風呂場だから、全部洗い流してあげる。だから、ほら……!!」
体の奥からこみ上がる何かがすごく怖くなって、僕はたまらず朽木さんがいることも忘れて悲鳴をあげた。でも、朽木さんは決して僕のソレから手を離すことなく、むしろさらに速度を上げながらカハッと乾いた笑い声を上げた。おまけに体も後ろからギュッと抱きしめられたので、この迫り来る謎の感覚から逃げることは叶わなかった。
頭の中が泡みたいに真っ白になる。視界もチカチカと白く瞬く。背筋がゾクゾクと震えて、足もガタガタと滑稽な程に揺れている。
もう、無理、限界だ。
「あ、あっあっ……!も、ぉ、だめっ……っ~~~~~~!!!!」
朽木さんが片手の親指で僕のソレの先端を抉った瞬間、僕は自分でも驚くほどの大声で叫びながら背中を大きく反らした。腰もビクビクッと盛大に跳ね上がり、僕のソレからは白くてネバネバしたものがどぴゅって吹き出た。その白い液体の排出を促すように、朽木さんが手の速度を落とさないままソレをゴシゴシと擦り上げる。そのせいで僕のソレは、しばらくのあいだ継続的に白い液体をドクドクと吐き出し続けた。一部は泡の山の上にパタパタって飛び散って、残りは僕の下腹部と朽木さんの手にドロドロって付着していった。
しばらくして液体があまり出なくなった頃に、朽木さんはようやく僕のソレから手を離してくれた。たくさんの泡もあるとはいえ、僕のお腹周りと朽木さんの手は、例の白い液体ですっかりべたべたに汚れていた。でも、擦られて泡まみれになったソレは、朽木さんの手が離れたのにまだビクビクと震えていた。なんならまだ、ほんの少しだけぴゅるって白いのを吹き出してる。何もかもが真っ白なせいで視界が瞬き、なんだか変なにおいも相まってくらくらと目眩がした。ぐったりと脱力した自分の体を、背後にいる朽木さんの方に委ねながら必死に息を整える。
「は、ふっ♡ふ、ぅうっ……朽木、さ……」
「あー……すっご。ほら、見て?このドッロドロの精子、全部一希くんが出した奴だよ。いっぱい溜まってたんだねぇ、苦しかったでしょ?」
「……!!や、いやっ……みない、でぇ……!」
朽木さんはおもむろにそう呟くと、泡と白濁で汚れた自身の手を、僕のすぐ目の前に差し出した。そして白濁を指の上に移動させて、わざとくちゅくちゅと音を立てながら泡と共にかき混ぜた。朽木さんの手を汚してしまった罪悪感と、いやらしく糸を引く白濁の卑猥さとで全身がゾクゾクと震えてしまう。
恥ずかしさに耐えかねた僕は、たまらず顔を両手で覆って隠した。あんなに卑猥な光景を、これ以上目の当たりにしたくなかったからだ。すると、朽木さんはその汚れた手で白濁を広げるように、僕のお腹周りをやらしくぐるぐると撫で回した。そして、片手でシャワーノズルを取って体に残っていた泡を流し始めた。泡を落とすために蛇口で調節していたのか、湯の勢いはさっきよりも少しだけ強くなっていた。
白い泡の塊たちが、白濁と一緒にお湯で流されて排水口へと消えていく。朽木さんの手の動きは少しいやらしいけど、ようやく体が洗い終わると察した僕は自然と安堵の息を吐いた。でも今は、まともに動く気力すらない。のぼせかけてるのもあるだろうけど、それ以上に体に力が入らないのだ。朽木さんの手で撫でられた箇所から、体の力がじわじわと奪われていく。それに反比例する形で、僕のソレがまた、ゆっくりと首をもたげ始める。
だめ、感じちゃだめだ。朽木さんはただ、僕の体を、洗ってるだけなんだから。
「…………」
それまで無言だった朽木さんが、不意に僕の方に顔を埋めながらフゥーと長く息を吐いた。まるで何かをこらえるように、力が抜けた僕の手をギュッて握ってくる。シャワーノズルを持つ手も、いつの間にか力無くだらんと床の上に垂れていた。
一体、どうしたんだろう。やっぱり、僕のみっともない姿を見て、気持ち悪くなっちゃったのかな。あんなに大声で叫んじゃったんだ、もしかしたら不愉快だと思ったのかもしれない。
ちゃんと、謝らなくちゃ。そう考えた僕は、疲労感に満ちた体をどうにか捩りつつ、朽木さんの頭に手を添えながら謝罪の言葉を述べようとした。
「あ、あの……朽木、さーーーあ、ひぃ!?あ、あああぁあっ!!?」
その直後、急に下腹部から凄まじい衝撃を覚えて、僕はまた目を丸くしながら悲鳴をあげた。何が起きたのか分からなくて戸惑いつつも、慌てて目線を下に向ける。
そこではいつの間にか、朽木さんの片手が僕のソレを根元から掴み直していたのだ。今度はタオルを使わず、直に僕のソレを握りしめている。そしてもう片方の手は、固定された僕のソレにシャワーノズルの先端をグリッと押し付けていた。弱い箇所に、そこそこ強さのあるシャワーの湯が勢いよく直撃する。ソレの先端が、熱い湯と共にぐりぐりと擦られる。さっき感じたあの奇妙な感覚が、また、くる。
「あぁあっん、ああぁああっ!!や、らっ♡だめ、だめっ!も、むりっ……っ~~~~~~!!!!」
シャワーのお湯に犯されたソレは、数秒も経たずに再び真っ白な液体をどくどくって勢いよく吐き出した。先端をダイレクトに刺激されたからか、さっきよりも勢いがすごい。シャワーのノズルが外された後も、朽木さんは全く擦ったりしてないのに、白いのがどぴゅっどぴゅって吹き出ていた。腰が、また勝手に揺れちゃう。体も、びくびくが、止まんない。
「はっひっ♡だ、めぇ……と、まんなっ……!ふ、う、うぅ……!」
「……あ、は……ははは……!本当に可愛いよ、一希くん。もっと、もっと甘く乱れてよ。俺の手でさ……!」
朽木さんの熱の篭った恍惚とした声が、僕のすぐ耳元から聞こえてくる。そのまま耳たぶを噛まれて、舌で包み込むようにねっとりと舐められた。また体がぶるりと震えてしまう。胸の尖りも、朽木さんの指でカリカリッて弾かれる。たまに指で挟まれてギュッて抓られる。
だめ、気持ちいい。朽木さんに触られる場所全部が、気持ちよくてたまらない。
朽木さんはしばらくのあいだ僕の耳を夢中で舐めたのちに、蛇口を捻ってシャワーのお湯をやっと止めた。そして、まだ痙攣が止まない僕の体を担いで、すぐ隣にある浴槽の中に優しく沈めてくれた。
浴槽にはたっぷりの暖かなお湯が溜まっていたけど、二人で入ったからすぐに嵩が増して溢れてしまった。でも、僕にそれを気にする余裕はない。僕がお湯に浸かるや否や、その場に立っていた朽木さんが僕の口を塞いできたからだ。身長差があったのと、力が抜けて立てないせいで、抵抗も出来ずに頭を上からグッと押えられる。舌で舌を、されるがままに嬲られる。上顎をくすぐられるだけでも、すごく気持ちいい。
「んっ♡あ、ふっ♡んん、んんぅう……!くぎ、しゃ……んんっ!」
「……はぁ、はっ……一希くん……一希くん……!」
数分ほどの長いキスから僕を解放すると、朽木さんは僕を浴槽の中に座らせたまま、慌ただしい動きで自分のズボンを脱いだ。ずり下ろされたパンツの奥から、僕のよりずっと大きなソレが露わになる。ビキビキと血管を浮かせた赤黒いソレは、ちょうど僕の頬にペチッて当たって、おぞましいほどの大きさと硬さを僕に向けて主張した。僕の視界が、目眩を挟みながらまた白くチカチカと瞬く。心臓がバクバクと破裂しそうなほどに高鳴っている。頭の中がもうパニックになって、訳が分からないほど強い目眩にも襲われた。
するとその直後、朽木さんの手が、僕の頭を間髪入れずにぐっと押さえた。そして、自分のソレを僕の口の中に勢いよく挿入した。喉の奥がゴリッて抉られて、反射的に思わずえづきそうになってしまう。でも、朽木さんの硬いソレを口いっぱいに頬張ってるから、咳をすることも吐くことすらも出来ない。青臭い変なにおいが、驚きで目を見開いた僕の鼻腔を容赦なくくすぐった。僕の体を頭ごと壁に押しつけながら、朽木さんが歓喜に満ちた表情を浮かべて呟く。
「あぁ、あっ……!すっご……!一希くんの、口の中……すごく、いい……!」
「んっ!?ぐ、ぅ、うっ!んぶ、ふっ♡ふ、んん、んぅううっ!!」
朽木さんは僕の頭を両手でしっかり掴むと、そのまま僕の頭を前後に激しく揺さぶり始めた。それに釣られる形で、口の中に埋め込まれた朽木さんのソレが、前後に行ったり来たりを繰り返す。口の中全部が硬いソレに擦られて、同時に喉の奥もごちゅっごちゅって貫かれる。唾液が止まらないせいで、僕の口の端から溢れてお湯の中にボトボトと流れ落ちた。それでも朽木さんは決して手を止めなかった。僕が朽木さんの足に縋りついて、止めてと伝えるように上目遣いで訴えても。
痛い、痛い、苦しい。息、出来ない。待って、本当に、死んじゃう。
でも、すごく、気持ちいい。死にそうなぐらい、苦しいのに、すごく気持ちいい。
喉、もっと、貫かれたい。口の中を、もっと、めちゃくちゃにされたい。朽木さんのソレを、もっと、もっと感じていたいーーー
「……っ……一希くん、ごめ……出る……っ……!!!!」
「ん、ぐっ!!?う、うっ♡んぅ、んんっ……!!」
不意に、朽木さんが僕の頭を一際強くグッて押さえ込んだ。同時に、朽木さんのソレも口の奥深くまで叩き込まれて、どくんっと熱い何かを吐き出した。ドロドロとした青臭い液体が、僕の気管を通ってお腹の中に消えていく。飲みきれない分は口の端からごぽって吹き出て、涎と一緒にお湯の中に流れ落ちた。えづくことも、吐くことも出来ない。今はただひたすら、朽木さんが与えてくれる熱を飲むことしか出来なかった。喉をごくりと動かして、あまり零さないよう必死に熱い液体を飲み込む。
「ん、んっ♡ん……ぷはっ!は、ぁ……♡」
しばらくしたのちに、朽木さんはようやく僕の頭を動かして、赤黒いソレを口の中から引きずり出した。白濁のドロっとした生々しい線が、僕と朽木さんのソレとを、運命の赤い糸のようにツツ…と繋いだ。
硬いソレの感覚が忘れられないせいで、上手く口が閉じれない。ようやくちゃんと酸素にありつけたから、今の僕は惚けた顔で必死こいて呼吸することしか出来なかった。きっと今の僕の顔は、汗とか涎とかでぐちゃぐちゃに汚れているんだろう。お風呂場だとはいえ、並々と溜まったお湯の上でするような顔じゃない。早く、髪と一緒にちゃんと洗わないと。
でも、朽木さんは僕を解放する気なんてさらさら無いようだった。余韻に浸る暇もあまりないまま、僕は朽木さんによって強引にお湯の中から立たされた。そして僕の背中を壁に押しつけると、朽木さんは片手でコンディショナーのボトルを手繰り寄せて、器用に手のひらに液体を乗せた。大人特有の腕力を用いて、僕の足が強引に左右に大きく開かれる。いつの間にか僕の足元にしゃがんでいた朽木さんの顔の近くには、僕の小さいソレがだらしなくブラブラと垂れていた。
待って、待って。それは、本当にだめ。僕のは小さいし、汚いから。
「一希くん、もっと足開いて。大丈夫、絶対に痛くしないから……一希くんの全部、俺にちょうだい?」
「は、はっ……朽木、さーーーあっ!?ひ、あぁあっ!!?や、らっ♡くち、のなか、はいって……ふぁああ……!!」
僕は必死に逃れようと身をよじったけど、朽木さんは躊躇いなく僕の拙いソレをぱくっと咥えて飲み込んだ。同時に、コンディショナーで濡らした指を、僕のお尻の穴に近づけてグポグポと動かした。
僕のソレを、朽木さんの舌が丹念にぺろぺろと舐める。頭を動かして、ジュポジュポって強く吸ってくる。お尻の穴も弄られて、指が少しずつ、中に入ってくる。前からも後ろからも、体の外も中も、口と手それぞれで丁寧に愛撫される。
「あ、あ、んっあぁっ!!朽木さ……朽木さ、んっ♡は、ひゅ……ふ、ふっ……!」
「んー……いつでも、イって良いからね。一希くんの精液、俺が全部、飲み込んであげるから……」
朽木さんは途中で一旦口を離してからそう言うと、再び僕のソレを咥えて舌での愛撫に熱を込めた。お尻の穴を弄る指の本数も、次第に一本ずつ着実に増えていく。お風呂の湯が跳ねる音と、前と後ろを掻き回されるぐちゅぐちゅって音が、広めの浴室の中でくぐもって反響した。僕の足が、気持ちいいって感覚に負けて、次第にピンッとつま先立ちになる。また、また来ちゃう。あの感覚が、僕の全身を、襲いに来る。
「はっはっ♡だめ、だめ……!くぎ、さっ♡イっちゃ、うっ!い、く……~~~~~~!!!!」
お尻の奥で指をグッて曲げた瞬間、朽木さんは僕のソレを一際強くジュルッて吸い上げた。その衝撃に負けた僕のソレは、朽木さんの綺麗な口の中に再び熱をどくんって吐き出した。今日だけでもう三度目だ。しかも、今回は朽木さんの口の中に出してしまった。僕の出した熱なんて、絶対美味しくないはずなのに。
それでも朽木さんは、とてもうっとりとした表情を見せながら、僕の出した熱を難なくごくごくと飲み干していた。申し訳ないという気持ちがある反面、朽木さんから全然拒絶されてないという事実を知って、少し嬉しくもなってしまう。無意識のうちにガクガクと腰を揺らしながら、僕も安堵の表情を浮かべて朽木さんの顔を見つめた。そんな朽木さんも僕の顔を下から見上げつつ、僕のソレから口を離してひどく嬉しそうに呟く。
「ふ……は、はは……!ねぇ、分かる?一希くん……君の中にね、俺の指がもう、三本も入ってるんだよ?あぁ、なんならもう四本目もすぐに入っちゃうよ……ほら……!」
「ひ、あっ♡あ、ぁあっ!だ、め……そんな、ぐちゃぐちゃに、しちゃ……ふ、あっ♡あぁああ……!!」
朽木さんの宣言通り、僕のお尻の中に指が数本、奥深くまでズプズプと入り込んできた。コンディショナーで濡らしたお陰だろうか。くちゅくちゅって卑猥な音と共に、朽木さんの長い指が縦横無尽に僕の中で動き回る。気まぐれにお尻の肉もぐにぐにと揉まれて、僕の口からは女の子みたいに変な声が終始漏れ続けていた。
どうして、どうして、こんなことになっちゃったの。
僕はただ、朽木さんの家に、泊まりに来ただけなのに。朽木さんのご好意で、お風呂に入ろうとしてた、だけのはずなのに。
色々なことが起きすぎてパニックになった僕は、ついに我慢できなくなってボロボロと涙を零した。その直後、朽木さんはハッと目を見開いて、慌てて僕のお尻から指を引き抜いた。僕が泣いていることにいち早く気づいたからだろう。すかさずお湯の中から立ち上がって、色々と濡れた指で目元を拭いつつ僕の唇を優しく塞ぐ。距離が近い上に今はお互いに立ってるから、僕のソレと朽木さんのソレとがぺちぺちと軽くぶつかり合った。その微細な刺激ですら、今の僕の体は快感という形で残さず拾い上げた。
またしばらくのあいだキスをしたのちに、僕の体をぐるりと反転させながら朽木さんが呟く。
「ごめんね、一希くん。もう泣かないで……そうだよね、怖かったよね?いきなり困らせて、ごめんね?でも……俺、もう、我慢できないんだ……!」
「……っ……!!あ、ぁ、あぁっ……!!」
つぷっと、僕のお尻の穴に何かが突きつけられた。それが朽木さんのソレだって遅れて気づいた時、朽木さんはすぐに僕の腰を掴んでソレを深くまで押し込んだ。ぱちゅっと何かが弾ける音がした。同時に、お腹がぼこって膨れ上がって、硬いソレがぐっぐっと体の奥を定期的にノックした。朽木さんが腰を軽く揺らしているからだ。自分のソレが奥まで挿入されたことを確認しつつ、カタカタと震える僕の背中を撫でながら朽木さんが深く息を吐く。
「はぁー……あぁ、すごい。やっと、一希くんと、繋がれた……ひとつに、なれた……!」
「は、ひゅ……ひ、いっ!?く、くぎっ♡さっ♡ひぁあっああ、ぁああっ!!!」
朽木さんは僕のお腹周りをグッて強く掴むと、僕の腰と自分の腰とを同時に激しく揺さぶり始めた。僕のお尻に朽木さんの肉体が当たって、ぱんっぱんってすごい音を立ててる。同時に、朽木さんの硬いソレが高速で抜き差しされて僕の体内を激しく擦っていた。
先に指で解されていたお陰で、朽木さんのソレは僕の体の奥までスムーズに差し込まれていた。でもそのお陰で、一度も感じたことが無い圧迫感が何度もお腹を襲って、僕は思わず内股になりながら吐きそうになってしまった。でも、朽木さんはすぐに僕の体を背後から抱きしめて、すごいスピードで僕の体内に硬いソレを何度も叩きつけた。逃がさないと言わんばかりに、小さくて弱い僕の体が、朽木さんの手でガクガクと大きく揺さぶられた。
体の奥を貫かれる度に、全身がぶるぶると震えて全然動けなくなる。頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなる。危うく倒れかけた僕を背後からだき抱えつつ、朽木さんは無我夢中で腰を振りながら延々と呟き続けた。強過ぎる快感に負けて、意識がかすみ始めた僕の耳元で。
「俺、俺ね……本当はずっと前から、君とこういうことが、したかったんだ。」
「ふっ♡あ、あぁっ♡く、ぎ、さ……!ん、んんっ♡」
「初めて会った時から、俺は君を、こんな風に犯したくてたまらなかったんだよ……はは。最低な大人だろ?でもね、あの時の君は、まだ幼かった。それに、お父さんを失ったばかりで、深い悲しみに暮れていた君に……すぐに、手を出す訳にはいかなかったんだよ。」
「っは、ぁ、あっ……そ、んな……あっ♡あぁああっ!んぁああっ……!!」
「だから、俺は待ち続けたんだ。君が成長して、ある程度歳を重ねるまで……こうやって、お互いに、ひとつになれる時まで……ずっと、ずっと待ってたんだよ。誰よりも可哀想で可愛い、君のことを……!」
「あ、うっうぅ……!くぎ、さっ♡くぎさ……あ、あぁんっ!!」
浴槽に溜まったお湯がパシャパシャと跳ねて、律動によるぐちゅぐちゅという音と共鳴しながら卑猥なメロディーを奏でる。ちゃんとした言葉を紡ぐ余裕はもうない。朽木さんの言葉に、何かしらの返事をする力すらもない。朽木さんの硬い肉棒が、僕の体を余すことなく犯しているから。背後から抱きしめてくる朽木さんの手が、僕のソレを容赦なく擦っているから。
あぁ、だめだ。僕の全部が、朽木さんに支配されていく。
朽木さんに、僕のすべてが、毒されていく。
「あぁ、一希くん……!一希くん、好きだよ。大好き、愛してる……だから、俺の全部を、君の中で受け止めてよ……!」
「は、あ、あぁあっ!!くぎ、さ……!い、イくっ♡イっちゃ、うっ♡あっ……~~~~~~!!!!」
前と後ろとを同時に強く擦られた僕は、朽木さんが強く腰を打ち付けた瞬間にビクンッと体を大きく震わせた。そして訪れる、僕にとっては四度目、そして朽木さんにとっては二度目の射精。僕の方は勢いこそ少し減ってたけど、相変わらずドロドロとした白濁が周りに飛び散って、風呂場の壁と朽木さんの手を汚した。お湯の中にも飛散して、ボタボタと重たく落ちている音が聞こえてきた。
対して朽木さんの放った熱は、僕の体の中を満遍なく覆い尽くすように弾け飛んだ。所有物としての印をつけるみたいに、熱い液体がたっぷりとかつドクドクと体内に広がっていく。朽木さんが腰を揺すったことで、その熱は結果的に体内の限界近くまで余すことなく注がれた。もはや指とかで簡単に掻き出せないほどの深さだ。お尻の穴の隙間からも、奥深くにまで注いだからほんの少ししか溢れていなかった。それでも朽木さんがソレをゆっくり抜くと、収まりきらなかった白濁がごぽっと音を立てて溢れてしまった。
腰を叩きつけられたことで、赤く腫れてしまった僕のお尻を、朽木さんが愛おしそうに優しく撫でる。僕は僕で、お腹の中に注がれた液体の熱に浮かされて、何が起きたのかまだよく分かっていなかった。ただ、超えてはいけない一線を、朽木さんと一緒に超えてしまったことは何となく理解出来た。
のちに朽木さんが僕から離れたことで、支えを失った僕は膝から力無く崩れ落ちた。ぱしゃんって飛び散ったお湯の中に身を沈めながら、震える手をお尻の穴にこっそりと忍ばせる。指先から、あの白濁のどろっとした感触が生々しく伝わってきた。あの白い液体が、今度は僕のお腹の中に、たっぷりと吐き出されたんだ。そう考えるだけで背筋がゾクゾクと震えて、朽木さんが触ってすらいないのに、全身が勝手に新たな快感を覚えて痙攣してしまう。
「……一希くーん、起きてるー?気持ちよかった?でも、まだ意識は飛ばさないでね?」
「ん……?あ、あっ……!?ま、まって……まって、くださ……ぁあ、あぁあっ!!」
不意に朽木さんがクスクスと笑いながら、僕の体をお湯の中からザパッと引きずり出した。かと思えば、僕の両足を肩と腕で器用に抱えて、お尻の中に再び硬いソレをぶち込んできた。ぐちゅんって卑猥な音が聞こえて、油断していた僕はガクガクと体を震わせつつ、驚いて目を大きく見開いた。
僕の体はまた壁に押し付けられたけど、今度は両足が浮いた状態だし、なによりお互いの顔がよく見える体勢になっていた。そのせいで、怪しげな笑みを浮かべた朽木さんと否応なしに目が合ってしまう。朽木さんの血みたいな赤い瞳は、少しだけ下にいる僕を見つめながら、飢えた獣みたいにギラギラと光っていた。
あぁ、だめだ。これはもう、逃げられない。また次が始まる。また朽木さんに、朽木さんの熱を注がれる。僕の身も心も支配するために、際限なくたっぷりと。
「ずっと昔から、ずっと君のことだけを求めていたんだ……こんな、一回こっきりで終わるわけ、ないでしょ……?」
「あ、ひっ!?く、ぎさっ……!くぎさっ♡もっ♡ゆる、ひて……あ、あぁああっ!!」
僕が泣いて許しを乞おうとしても、朽木さんはそれを遮る勢いで腰を強く叩きつけた。朽木さんの硬いソレが体内を擦って、白濁と混ざりながらぐぽぐぽと異様な音を奏でている。両足が浮いてて不安定な体勢なのに、奥を貫かれるだけでも、すごく気持ちいい。それ以外に、何も、考えられなくなる。気持ちいいってことしか、分からなくなる。
その後も僕は、朽木さんの手によって、お風呂場で何度も何度も絶頂を迎えた。そして予想通り、僕のお腹の中には、朽木さんの熱が驚くほどたっぷりと注がれた。どれだけ僕のお尻の穴から溢れても、女性を孕ませるような勢いで、朽木さんは諦めることなく熱を注ぎ続けた。そもそも、僕は男なのに。女の子みたいに胸も膨らんでないし、肉付きも未熟だって言うのに。
そして気づかないうちに、僕は浴室の中で気を失ってしまった。次に目を覚ました時には寝室にいて、僕はベッドの上で仰向けに寝かされていた。でも、服は全然着ていなかったし、何故か手足は手錠とかでしっかりと固定されていた。
何が起きたのか分からなかった僕の前で、いつの間にか別の服に着替えていた朽木さんは、ニッコリと笑いながら淡々と僕に言った。その両手に、おぞましい形をした極太の機械と、ピンク色の丸くて小さな機械とをそれぞれ持ちながら。
「おはよう、一希くん。ようやく起きてくれたね……これから三日間、俺と一緒に、楽しく過ごそうね。」
***
「……あぁ、もしもし?一希くんのお母様ですか?〇〇町三丁目派出所の朽木です、いつもお世話になってます……はい、はい。いえいえ、こちらこそ……あぁいえ、ご心配なく!補導とかそんなんじゃなくてですね……はい。一希くんのお母様が、お仕事忙しいってことで、家を留守にしてると聞きましてね……はい……でも、家で一人ぼっちは寂しいだろうから、俺の家に泊まりに来ないかって言ってみたんです……はい、はい……いえいえ!そんなお構いなく。俺自身があんまり部屋を使ってないんで、なんからいつでも大歓迎ですよーーーーおっと……」
「……っ……!!……ぅ、う……」
「……あぁ、失礼しました。ちょっと、一希くんに声をかけられまして……あぁ大丈夫ですよ、お母様に電話してるよってすぐに伝えただけです……いえいえ。一希くんは本当に大人しくて良い子ですよ。流石はお母様自慢の、素敵な息子さんですね……えぇ、えぇ……なるほど、三日ほどで帰ってくるんですね……分かりました、あとで一希くんにも伝えておきますね……いえいえ、こちらこそありがとうございます……はい、はい……ではまた……」
電話を切ってスマートフォンを遠くに投げつつ、それまで浮かべていた笑顔を消して深く息を吐く。相手のご機嫌を伺いつつ、猫を被ってペコペコと頭を下げるのは本当にだるい。あぁ、無性に煙草が吸いたくなる。全部屋オールで禁煙に設定してんじゃねぇよ、くそが。
でもーーー自分の目の前で、色んな機械に虐められている一希くんを見たら、そんな気だるさも苛立ちもあっという間に吹き飛んでしまう。危うく失いかけていた、愉悦に満ちた笑顔が自然と戻ってくる。
「……もう、駄目だよ一希くん。電話中にイっちゃだめって、最初にあんなに言っておいたのに……お母様にえっちな声、聞かれると思ったのかな?」
「ふ、ぅ、うっ……♡ん、んんぅ……!」
「あはは。心配しなくても大丈夫だよ。君がイったタイミングで、電話を少し遠くに離しておいたからさ。君の声は聞かれてないよ、多分だけどね。」
俺が優しい声でそう呟いても、一希くんはまともに返事すら返してこない。正確には返せないんだ。口に大きめのギャグボールを突っ込んでるからね。服はもちろん着ていない、丸ごと全裸だ。両手は頭の上で手錠で拘束して、両足は鎖の長い足枷で、ベッドの脚と繋げて固定している。後孔には極太かつイボ付きのバイブが根元まで埋め込まれてるし、陰茎には小さなピンク色のローターをしっかりと巻き付けている。可愛い乳首はごく平凡な作りのクリップで挟んでいて、兎にも角にも全身に走り抜ける快感からは決して逃れられない状態となっていた。
改めて見ると、今の一希くんの格好は昆虫標本のあれみたいだった。でも何度も絶頂を迎えたせいで、一希くんの全身は汗やら精液やらでべとべとになっていた。そのせいで正直、昆虫標本のそれよりもずっと可哀想な姿になっている。拘束のせいでほとんど動けないというのに、それでも快感から逃れようと必死に身じろぐ様が本当に卑猥だ。涎まみれの口で何かを伝えようと喘ぐ一希くんを見つめながら、俺はこの上ない愉悦と歓喜でゾクゾクと背筋を震わせた。
あぁ、この日をどれだけ待ち望んでいたことか。俺はずっと、この景色が見たかったんだ。俺の手で穢されて堕ちていく、可哀想で可愛い一希くんの姿を。
ーーー少年愛者。
いつからか俺は、自分がそういう人間であることを自覚し始めた。
その時点で俺は高校生になったばかりだった。当時通っていたのは中高一貫校だったから、自分より歳下の中学生たちと共に正門をくぐることも多かった。近くには附属の小学校もあったから、通学路では小学生ともよくすれ違っていた。
でも、俺はある時ふと気づいたんだ。その小学生や中学生たちを横目に見ながら、ひそかに興奮している自分がいることに。
最初は流石に、何かの間違いだろうと思って無視していた。無意識のうちに、たまたまエロいことを考えて興奮してしまっただけだと思い込んでいた。でも、毎日毎日小学生や中学生たちの姿を見る度に、俺の体は勝手に興奮してゾクゾクと震え上がった。その度にトイレに慌てて駆け込んで、一人で虚しく抜かなきゃいけなかったから地味にきつかった。
自分より歳下の相手に、しかも一人で勝手に興奮するとか、とんだ変態野郎じゃねぇか。でも、なんでこうなったんだと自分に問いかけても、明確な答えは決して返ってこなかった。本当になんとなく、小学生や中学生が相手の時限定で興奮してしまうだけだったんだ。もしかしたら何かしらの病気かもしれねぇと、俺はのちに日々の学園生活の傍らで、ネットを使ってひそかに調べてみた。その時に俺は見つけたんだ、少年愛者って単語を。
ウィキペディアとかで、13歳以下が相手ならどうのこうのみたいな記事を読んだ気がするけど、さすがに細かいことはもう忘れた。
俺は、歳下の若い少年が好き。そう自覚するだけで十分だったから。
いや、単にそうすることしか出来なかっただけかもしれない。
俺は男なのに男が、おまけに相手が少年じゃないと興奮できないと来た。社会的に見たら圧倒的少数派に該当する立場だし、普通の人間から見たらただの異常でしかなかった。
だから俺は、自分の性癖を周りに知られたくない一心で、ごく普通の男子高校生を演じながら日々を生きていた。たまにどうしようもないほど興奮してしまった時には、誰にもバレないように一人で自慰行為をしてどうにか収めた。親にもあまりバレたくなかったから、当時の俺は一見普通そうに振る舞いながらも、裏ではもうとにかく必死になりながら生きていた。
こうして平凡ながらも少しだけ異様な毎日を送る中で、俺は次第にもうひとつのことにも気づき始めた。俺の好きな少年のタイプについてだ。
俺はどうやら昔から、明らかに幸が薄そうな雰囲気のある少年が好きらしい。いじめや虐待を受けて怪我をしているとか、露骨に貧乏そうな見た目をした子とか、端的に言えばその辺りだ。別に俺はサディスティックとかであるつもりはない。そのはずなんだけど、特にそういう子を見る度に、嗜虐心が刺激されて理性が危うく吹き飛びそうになるのだ。そういう時はいち早く目を逸らしてその場を離れないと、自慰行為でもなかなか鎮まらなくて大変なことになる。
とはいえ、こうも頻繁に興奮しては鎮めての毎日を繰り返していると、さすがに飽きだとか面倒くささとかを感じるようにもなってしまう。どうしたものかと考えに考えたある時、俺はまさかの警察官になることを決意した。
正義の味方の象徴みたいな警官になれば、俺が異常な奴だということを誰にも気付かれずに済む。猫を被って優しいお巡りさんの一人として振る舞えば、それだけでみんなが簡単に騙されてくれる。興奮した時には自慰行為をして誤魔化せば良いだけだから、警察官になることは俺にとって色々と都合が良かったんだ。
本当に、不純極まりない動機だった。でも、俺の親は息子が立派な夢を抱いたと知って喜んでいた。そのため、俺は容易に前言撤回するわけにもいかず、結果的に毎日警官になるための猛勉強を続けることとなった。正直勉強は苦手だったが、警官になるためのものだと考えたら、意外とそこまで苦にはならなかった。そのお陰か、俺は案外すんなりと警察学校に入るための試験に合格した。そしてしばらくの月日を経たのちに、ついに警察官の端くれとして働くこととなった。とはいえ、今いる派出所で働き始めてから実はまだ数年ほどしか経っていない。警察官の中でもまだまだ下っ端の立場だ。
でもまぁ、警察官になること自体が元の目的だったので、昇進とかは正直どうでも良かった。むしろ、交通指導員の代役として常に小学生たちと触れ合えるだけでも満足だった。流石に大人になれば理性というものも強くなるので、高校生の時とは違って自制がちゃんと効いていたのだ。だから、昔みたいに小学生とかを相手に異常なまでに興奮するってことは限りなく減っていた。要は、警察官になったことで、俺はようやく落ち着いた毎日を送れるようになったんだ。
でもーーーもしかしたら、逆にそのせいで、俺はすっかり油断していたのかもしれない。
今なら分かる。高校生時代の、猿みたいに興奮してばかりな俺はもういないと。あの時までは、そうやって高をくくって余裕ぶっこいていたんだと思う。
それは、友達の一人だった男が事故で死んで、そいつの葬式に向かった時のことだった。
俺はその葬式の場で、予想だにしていなかった運命の出会いを果たしたのだ。
亡くなった友の血を引く、小学校高学年ぐらいの若い男の子。見るからに幸が薄そうで、少しだけ怪我もしていた、子犬みたいに可愛い子。父の死に打ちひしがれてメソメソと泣くその姿は、過剰な表現かもしれないが、本当に天使のように美しかった。
あぁそうだ……あれは完全に一目惚れだった。
俺はあの葬式の日以来、気づけばその少年のことばかり考えるようになっていた。知り合いの子供だったし、ちょうど近所にも住んでいたので、世話焼きな警察官として彼に接近することは容易かった。彼の母親とも親交を深めて、彼と彼の親との距離を縮めつつ、裏では彼のことについてたくさん調査した。その調査の一環として、事ある毎に彼の写真をたくさん隠し撮りした。家にお邪魔した時には、給料を使って買っておいた盗聴器をこっそり設置した。その盗聴器のお陰で、地道に続けていた調査は最初よりもずっと簡単になった。盗聴器に残された音声を辿ることで、彼にまつわる色んなことを知ることが出来たからだ。
彼の名前は一希くん。一抹の希望、という意味を込めて名付けられたらしい。なんて素敵な名前なんだ、俺のありふれたつまらない名前なんかよりもずっと良い。好きな食べ物はいちごのクレープで、逆に嫌いな食べ物は辛いやつ全般。兎などの小動物が好きで、過去には学校で飼育委員を務めたこともあるらしい。どれもこれも女の子みたいな嗜好で普通に可愛い。長所は勉強熱心で真面目なところ。逆に短所はハッキリとした自己主張が苦手なのと、自虐的になりやすいところ。学校でどれだけいじめられて怪我をしても、人前で露骨に泣くことはあまりないらしい。おまけに直接いじめっ子たちを責めることもなく、いじめられている理由についても常に“自分が悪いから”と周りに主張しているようだった。なんて優しくて可哀想な子なんだ、俺が徹底して支えて守らなきゃいけないな。あと、普段眼鏡をかけているのは、元から遠視ゆえに遠くのものが見えにいから。お母さんが仕事で家にいない時には、コンビニで買った安い袋入りの食パンを、その日一日のご飯として食べていてーーー
一希くんのことを知れば知るほど、本当の彼がとてつもなく可哀想な子であるということがよく分かった。母親は多忙で父親はもう死んでるし、同級生やら教師ですら彼の味方ではない。つまり、彼の周りには心の底から頼れる存在というものがほとんど居ないのだ。この俺を除いた上での話ではあるが。
だからこそ、これはチャンスだと思えた。上手くことを進めれば、一希くんの純粋無垢な心を、この俺だけに夢中にさせることができると考えたのだ。
そのためにはまず、俺自身が、軽度の人間不信に陥っていた一希くんの心の拠り所になる必要があった。俺にはとことん甘えていいんだよってことを教え込むために、俺は彼に対して他の誰よりもとことん優しく接した。彼が不登校になった時には、素早くその情報を手に入れて、彼の悩みを聞いたり登下校を共に行ったりした。自分でも驚くほど手厚く介抱しながら、一希くんとの距離をとことん縮めたのだ。
その結果、一希くんは思っていたよりもすぐに俺に懐いてくれた。何か困ったことが起きたら、その度に俺に連絡してくれるようにもなった。最近は俺の仕事の邪魔になるからと控えていたらしいが、本当にどこまでも優しくて純粋な子だ。だからこそ周りのクソ野郎共から、日々の鬱憤の吐きどころとして狙われてしまうのだろう。
そう、一希くんには俺しかいないんだ。一希くんを守れるのは俺だけ。一希くんを心から愛することが出来るのも、この世で俺しかいないんだ。
表上ではいつも通りに振舞っていたものの、俺の暴走は留まることを知らなかった。一希くんの姿を見る度に、一希くんが俺に犯されて乱れる姿を勝手に想像してしまったのだ。妄想だけで済んだら良い方なのだが、悪い時には仮眠室に駆け込んで、隠し撮りした一希くんの写真を見ながら自慰行為に勤しまなければならなかった。高校生の時でも、ここまでひどい状態になったことは一度もなかった。興奮することは頻繁にあったものの、そのさらに先を想像して余計に興奮すること自体が初めてだったのだ。
気づけば俺の全てが、一希くんという存在に毒されていた。
一希くんを全力で犯したい、俺のものにしたい、俺という存在で支配したい。そんな考えばかりが頭の奥に蔓延って、ごくまれに仕事に支障をきたすこともあった。でも、俺は来るべき時が来るまで我慢した。初めて会った時の彼はまだ小学生だったから、体を重ねるにはまだ早すぎると思ったからだ。いやまぁ、中学生になった今でも実際は早すぎるんだとは思うが、そこら辺はどうか目を瞑ってもらいたい。未熟ながらも美しい少年の期間ってものは、案外あっという間に過ぎ去ってしまうものだから。
そして、ついに来たこの日。
俺はようやく、一希くんを自分の家に招くことに成功した。一希くんは謙遜しがちな子だから、あの日まではなかなか家に招くことが出来なかったのだ。でも、散々周りからいじめられて、身も心もすっかり疲弊していたんだろう。今日この日になって、一希くんはようやく俺の家に来ることを快諾してくれた。彼の母親が三日ほど家を留守にすることは、盗聴器を使って会話を盗み聞きしていたからすでに知っていた。だから俺は、単に“家に来なよ”ではなく“泊まっていきなよ”と彼に言ったのだ。
母親が帰ってくるまでのこの三日間、一希くんを朝昼晩ぶっ通しで愛するために。一希くんに大人の快楽というものを教えて、容易に俺の元から離れないようにするために。
「それにしても……このバイブ、最初は三分の一ぐらいしか入ってなかったのに、今じゃ根元までずっぽりと飲み込んでるね。イボイボがいっぱいあるから、中の色んなところが擦れて、気持ちいいでしょ?」
「ん、ぉ、おっ♡ぅぐ、うっうぅ……ふ、うぅ、んぅうう……!!!」
俺がニコニコと笑いながらバイブを掴んでちょっと動かすと、一希くんはすぐにビクッて体を震わせて頭を振りながら喘いだ。これだけで軽くイっちゃったみたい。陰茎から吐き出された精液が、一希くんのお腹の上にパタパタって飛び散っている。あぁそうそう、一希くんはいま目隠しをしてるから、俺がこれから何をするのかを判断することが出来ないんだよね。視界が塞がれてるから、体の感覚もかなり敏感になっているんだと思う。
あんなに無垢な目をしていた一希くんが、俺の手で少しずつ、俺好みの甘く熟れた極上の果実に変わっていってる。なんて美しい景色なんだ。出来ることなら、もっと早くこの景色を見たかった。もっと早く、一希くんを俺のものにしたかった。一希くんを犯して、めちゃくちゃにしたかった。
「あぁ、すごいねぇ。もう結構な回数イったはずなのに、まだ出せる精液残ってるんだね……でも、イボイボだらけのバイブも良いけど、そろそろ俺の奴も欲しいころでしょ?だからこれ、すぐに抜いてあげるね。」
「ふ、ぎゅ!?ん、んぐっ♡ん、ん、んんぅうううっ!!!」
俺はそう呟くと、一希くんが嫌がるように身をよじる中で、強引に件のバイブを一気に引き抜いた。散々中に吐き出された白濁とか汗とかが混ざって、抜くだけでもおぞましいほどの水音が響き渡った。同時に一希くんはくぐもった悲鳴をあげて、陰茎からは無色透明の体液が噴水のようにブシャアァッて吹き出た。男の潮吹きなんて初めて見た。思っていたより、結構卑猥だな。
あぁ、もっと見てみたい。そしてもっと、一希くんのことをぐちゃぐちゃに穢したい。頭の中がおかしくなって、指先すら動かせないぐらいに、満遍なく犯したい。
俺の中に湧き上がった、一希くんに対する欲望を止める者は誰もいなかった。いや、そもそもいるはずがない。この部屋にはいま、俺と一希くんの二人しか居ないんだから。
失神寸前の一希くんの後孔に、俺の陰茎を挿入しながら彼に優しく声をかける。
「ねぇ、一希くん。俺ね、今日この日のために、あんまり使ってこなかった有給を久々に取ったんだ。それも、丸々三日分……君のお母さんが、お家に帰ってくるまでのあいだ、ね。」
「は、ふっ……!ん、んっ♡んぐ、んぅう……!!」
「学校の人には、お母さんの時みたいに、後でまた俺が連絡しておくよ……一希くん、しばらく学校に行けそうにないって。三日間ぐらいお休みしますって……あぁ、やっぱり一希くんの声、もっとちゃんと聞きたいな。これも外すか。」
「……っ……!ぷはっ、はぁ……♡く、くぎ、しゃ……くぎしゃ……あ、あぁあっ♡」
途中で一希くんのエロい声が聞きたくなった俺は、一希くんの口にはめていたギャグボールをいそいそと外した。ギャグボールのせいで口が開きっぱなしだったからか、久しぶりに声を出した一希くんの言葉は完全に呂律が回っていなかった。湿布の貼られた顔が、羞恥と快感とですっかり真っ赤に染まってる。クリップで挟まれた乳首は、もはや痛々しく思えるほどに赤く腫れ上がっていた。少し硬度を失い始めた陰茎も、俺が中に挿入したことで再びビクビクと震えている。
全部、俺のせいだ。正義の味方である警察官の俺が、純朴な一希くんをとことん追い詰めたからこうなったんだ。
そんな凄まじい背徳感と、それに比例して湧き上がる興奮は、そう簡単には味わえないものだった。ありがとう、一希くん。本当にありがとう。君に会えて、本当に良かった。
「あはは。舌が回ってないよ、一希くん。本当に可愛いなぁ一希くんは……中も熱くうねってて、すごく気持ちいいよ。またいっぱい、君の中に出してあげるからね……?」
「ん、あ、ぁあっ!す、き……すき、れす♡くぎ、くぎしゃ、すき……あぁ、んっ!あぁああっ!!」
一希くんの熱い耳たぶをねっとりと舐めながら、俺は再び本能のままに腰を激しく揺らした。俺の肉の味を知った一希くんの中は、離したくないと言わんばかりに俺の肉棒にぎゅうっと絡みついた。一希くん本人も夢中で『好き』って言いながら、無意識のうちにガクガクと腰を揺らしていた。本当に可愛い子だなぁ。反射的に好きって言ってるだけかもしれないけど、それでも十分だ。俺も一希くんのことが好きなんだから。
好き、好きだよ一希くん、愛してる。これからもずっと、ずっと一緒にいようね。
そんな短絡的な愛の言葉を何度も囁きながら、俺は一希くんとの性行為にどんどん溺れていった。一希くんもしまいには理性を全てかなぐり捨てて、何度も何度も俺の熱を求めてきた。俺も一希くんのことを求めて、時間をも忘れて二人でとこまでも堕ちていった。
お互いに自分の全てを毒されて、そしてお互いの全てを毒しながら。
この毒は永遠に消えない。
この毒は俺たちにとって、唯一無二の『愛』の形なのだから。
ーーー終幕ーーー
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