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寝坊
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アラームで目が覚めた。頭がはっきりするまで少し時間がかかり、何とか起き上がって隣の部屋に止めに行く。
早朝から庭の草刈りをする、という名目で泊まったから、四時だった。
なるべく静かに階段を下りてトイレに行き、洗面所に入ると、風呂場の引き戸の向こうから朝の光が差し込んでいた。
どうしても音を立てる階段をつま先立ちでゆっくり上り、吉村さんの寝室を覗く。
「まだ寝てろ」
彼は薄いダウンケットの中に潜っていた。目が覚めたばかりという声だ。
「起こしました?」
「もうちょっと寝る」
「俺、スマホ取ってきますね」
隣の部屋も薄く明るんで、外から鳥の声が聞こえた。
充電コードを外してスマホを手に取り、何時にアラームをセットすべきか考える。
例えば一時間後に吉村さんと庭仕事ができるか。できないな。
俺はため息をついてベッドに座った。体の奥に残った熱で、腰がだるい。まあ筋肉痛になるか。考えた末に五時半にアラームをセットして、仰向けに寝転んだ。
昨日、二人とも一回いった後で、入れる?と聞くと、吉村さんは古い箪笥の一番下の引き出しからコンドームとかローションとか引っ張り出してきた。
「俺が入れていいの」
と聞いたら変な顔をしたので、入れられるのが当たり前なんだということはわかったが、あまりしない、と言ったのは多分本当で、反応がいちいち新鮮だった。
様子を見ながらしていたが、途中から我慢がきかなくなった。
吉村さんのベッドに行ったら、またセックスしたくなるか、煩い質問をしたくなるかで、眠れないだろう。
昨日も、どっちも我慢してとりあえず目を閉じたのだ。
そのまま隣の部屋で寝てしまい、五時半のアラームを止めた記憶はあるが、起きたら九時だった。
一階のリビングに行くと、仕事部屋のドアが開く音がして、吉村さんが入ってきた。
「起こしに行こうとしてた。あの部屋暑いだろ」
「おはようございます」
「おはよう。なんか飲む?」
彼は白いシャツを着て、チノパンを履いていた。
「自分でやります。吉村さん、仕事してるんですよね」
彼は頷いて、
「今日は、草刈りは諦めた」
と真面目な顔で言った。
「あの、寝過ごしました、すみません」
「バイト代は払うから」
「それはいらないですよ」
「でも、せっかくの週末にわざわざ泊まってもらって、予定が狂ったことになるだろ、俺のせいで」
やって金貰って帰るわけにはいかないので、と言いはしなかったが顔に出てしまい、吉村さんはまた何か言おうとした。
「あー、じゃあまた来ます」
と俺はとっさに遮った。
「来週とか。ご迷惑でなければ」
彼は、うーん、と唸ってうつむき、落ちかかる髪を片手でかきあげた。
「あの、迷惑だったらお邪魔しませんので、大丈夫です、安心してください」
「いや、そうじゃなくて」
彼は頭に手をやったまま、視線を落として考え込む。俺は一歩近づき、彼が顔を上げたので、手を伸ばして引き寄せた。
昨日どうして俺のところに来てくれたんですか、と質問したら、もう会えなくなるかもしれない。
吉村さんは、ゆっくり俺の背中に腕を回した。
「お前、身長いくつ?」
「180になりたかったんですけど。179です」
「ふうん。179で十分だろ」
「180って言いたいじゃないですか」
吉村さんはへえ、と笑いながら、俺の胸に頬を押し当てる。昨日の晩と同じように、彼の息が熱かった。
「俺、汗かいてますよ」
「そうだな」
明るい中で初めてキスした。伏せられた一重まぶたが小さく震えるのを、なるべく長く見ていたいと思いながら。
早朝から庭の草刈りをする、という名目で泊まったから、四時だった。
なるべく静かに階段を下りてトイレに行き、洗面所に入ると、風呂場の引き戸の向こうから朝の光が差し込んでいた。
どうしても音を立てる階段をつま先立ちでゆっくり上り、吉村さんの寝室を覗く。
「まだ寝てろ」
彼は薄いダウンケットの中に潜っていた。目が覚めたばかりという声だ。
「起こしました?」
「もうちょっと寝る」
「俺、スマホ取ってきますね」
隣の部屋も薄く明るんで、外から鳥の声が聞こえた。
充電コードを外してスマホを手に取り、何時にアラームをセットすべきか考える。
例えば一時間後に吉村さんと庭仕事ができるか。できないな。
俺はため息をついてベッドに座った。体の奥に残った熱で、腰がだるい。まあ筋肉痛になるか。考えた末に五時半にアラームをセットして、仰向けに寝転んだ。
昨日、二人とも一回いった後で、入れる?と聞くと、吉村さんは古い箪笥の一番下の引き出しからコンドームとかローションとか引っ張り出してきた。
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と聞いたら変な顔をしたので、入れられるのが当たり前なんだということはわかったが、あまりしない、と言ったのは多分本当で、反応がいちいち新鮮だった。
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吉村さんのベッドに行ったら、またセックスしたくなるか、煩い質問をしたくなるかで、眠れないだろう。
昨日も、どっちも我慢してとりあえず目を閉じたのだ。
そのまま隣の部屋で寝てしまい、五時半のアラームを止めた記憶はあるが、起きたら九時だった。
一階のリビングに行くと、仕事部屋のドアが開く音がして、吉村さんが入ってきた。
「起こしに行こうとしてた。あの部屋暑いだろ」
「おはようございます」
「おはよう。なんか飲む?」
彼は白いシャツを着て、チノパンを履いていた。
「自分でやります。吉村さん、仕事してるんですよね」
彼は頷いて、
「今日は、草刈りは諦めた」
と真面目な顔で言った。
「あの、寝過ごしました、すみません」
「バイト代は払うから」
「それはいらないですよ」
「でも、せっかくの週末にわざわざ泊まってもらって、予定が狂ったことになるだろ、俺のせいで」
やって金貰って帰るわけにはいかないので、と言いはしなかったが顔に出てしまい、吉村さんはまた何か言おうとした。
「あー、じゃあまた来ます」
と俺はとっさに遮った。
「来週とか。ご迷惑でなければ」
彼は、うーん、と唸ってうつむき、落ちかかる髪を片手でかきあげた。
「あの、迷惑だったらお邪魔しませんので、大丈夫です、安心してください」
「いや、そうじゃなくて」
彼は頭に手をやったまま、視線を落として考え込む。俺は一歩近づき、彼が顔を上げたので、手を伸ばして引き寄せた。
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「ふうん。179で十分だろ」
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「俺、汗かいてますよ」
「そうだな」
明るい中で初めてキスした。伏せられた一重まぶたが小さく震えるのを、なるべく長く見ていたいと思いながら。
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