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5ー②

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 赤い輝きが消えて数分後には桜木さん、いいえ、カーレス・アイさん。虚界での姿に変わって瞳を開ける。

 「あ、あれ? 私なんでここにいるの?」

 「気がついたアイさん」

 「あっ、フィナさんにラインさん……。もしかして、私……迷惑かけてしまいましたか?」

 「あぁ、少しなぁ」

 「ご……ごめんなさい!」

 「大丈夫よ。アイさん、転んで少しぼーっとしてしまったのよ。ケガは治してあるから早く、今の時間を楽しんで」

 「はい。ありがとうございます、フィナさん」

 アイさんは私とラインにお礼を言ってその場から去っていったの。本当はケガなんてしていないけど、なぜ、自分がここにいたのかを適当な理由で誤魔化さないと混乱されても困るので。
 そして完全に去っていったのを確認してから私はラインを問い詰めた。

 「もう、ラインは!」

 「な、なんだよ」

 「何だよじゃあないわ! 今にも不機嫌出すって分かる態度を取らないでよ」

 「別にいいじゃあねぇか」

 「良くないわよ、全く。アイさんに当たっても現実の記憶は眠っているのに……」

 「頭では分かっているけど……」

 「そこは、我慢しなさい。時の番人何だから。番人だって現実の話を第三者に話すのはタブーよ」

 「分かってる」

 この世界にいる人々は2つの記憶を持っている。
 現実と虚界の記憶が混乱しないように2つの欠片を持っているの。
 青い欠片が現実、赤い欠片が異世界みたいな世界、虚界の記憶となるの。その2つのを区別するのが番人。その環境の変化を知らせるのが明け星市まちにある大きな時計塔。まずは時計塔の鐘の音で知らせて、虚界へ。

 虚界に変わって町の人々の異変などが起こった時の対処するのが時の番人である、私とラインなの。

 「時間だな」

 ラインは自分のカギがチカッチカッと光だし時間が来たことを認識した。

 「朝なのね」

 「あぁ、もう朝にある」

 ラインの杖が光りだすとそれは、もう朝がくると知らせてくれる。つまり夜の時間は終わりを意味する。
 太陽の形をした鍵は朝の力、三日月の形をした鍵は夜の力とそれぞれを象徴しているの。だから太陽の形をした鍵を持っているラインは、いつ朝がやってくるかが分かる=敏感なの。
 私もそれなり分かるけどラインほど敏感ではないわ。

 鍵の力を借りるので、夜の深夜、つまり現実から虚界への扉を開けるのが私で、逆に虚界から現実に戻る扉を開けるのがラインの役目と鍵に合わせて役割を決めているの。

 「時の時間より今、現実の扉を開ける。我、ライン・フォルトの名のもとに」

 ラインの呪文で空に鍵穴が表れ、鍵穴にラインが持っている太陽の鍵を入れて回すとガチャと音がなり、扉がゆっくりと開くと強い光が虚界に降り注ぐと虚界から現実世界に変化していく。
 今日一日がスタートする。
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