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南の空にある雲

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 南の空にある雲は西から東へゆっくり流れている。子供の頃からこの町で暮らしてきた彼にとって見慣れた景色のはずだがどうにもよそよそしく感じる。そして空を仰ぐこと自体が実に久々であることに軽いショックを覚える。(俺はずっと何しているんだろう)低い堤防越しに水面は見えないが、水底近くで泳ぐ小魚たちの気配を感じる。声が聞こえ始める。
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