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11.ベノムグリズリー
しおりを挟むテテテーンッ
「むむっ」
レベルアップの音が鳴り、私はついにレベル60に到達したことに気がついた。それを察したミオちゃんが微笑む。
「おめでとう」
「ありがとう!」
ここ、ダンジョン【黄泉の国】へ閉じ込められてから一ヶ月経った。ミオちゃんに練習メニューを組んでもらいそれを淡々とこなしていく日々。
その一部に組まれている魂を倒してのレベルアップを続け、ついにレベル60。どんどんあがっていくステータスの数値にニヤケが止まらない。うへへ。
「さて、それじゃあ組手するよアカリ」
「はーいっ」
練習メニューはこうだ。
まず朝起きて走り込み、腕立て等の筋トレ。日々あがっていくレベルに感覚のズレを合わせるのと、体を温めるために目一杯動き回る。
そして刀の素振りを兼ねて魂を100体くらい狩り、次にミオちゃんとの組手。ここでは体術を習う。基礎が大事らしい。
ここで大体お昼になり昼食。その後は夕暮れまで刀での打ち合い。ちなみにミオちゃんは刀が無いので素手だ。
(...素手なんだけど、全然勝てないんだよねぇ。はは...)
「――っと、こんなもんだね、アカリ」
「はあ、はあ...あ、ありがとう」
組手が終わり私は草の上に寝転ぶ。
「いやあ、なんかさ」
「ん?」
「すっごい楽しい!」
「...そっか、ふふ」
何ていうのかな。充実感?商人のレベル上げしてたときもそりゃ楽しかったけど、こうして自分の体を使ってさ、全力で頑張るなんてしてこなかったから。だから、すごく楽しい。
「あ、アカリ。今日は午後から別の訓練にするね」
「おお、新メニュー!」
「うん。ほら、そろそろ食べ物も心許なくなってきたでしょ?」
「え、うん...え?」
実はこの一ヶ月間。ダンジョンの奥地には行ってはいなかった。その理由は、割と近場にも果物や茸などの食べられる物が生えていたからで、ずっとそれと自前の食料で飢えをしのいでいた。
「そろそろもう少し...奥の方行かないと食べ物無くなっちゃうかなって。探索しにいかない?」
「こ、怖い...」
「怖いけど、昨日だって探しても食べられそうな物が全然見つからなかったじゃない。このままじゃ飢えて死ぬよ」
「ひいいいっ!」
死ぬなんて簡単に言わないでっ!!でもそうなんだよね。ここら辺の果物やら茸は取り尽くして、ミオちゃんの言う通り昨日なんて欠片も見つけられなかった。
アイテムボックスのも良くてあと一日とかしか保たないし。
これは行かざるえない...選択肢は他に残されていなかった。
「で、でも...Bクラスのモンスターが出るんでしょう?」
「何度も言ってるじゃない。それはホントに奥の奥、大丈夫だよ」
「ほ、ほんとかなぁ。怖いなあ...」
ガクブルする私。すると優しい笑みを浮かべたミオちゃんがそっと頭に手を乗せてきた。
「アカリ。恐怖心があるのはダメじゃないわ。むしろ強くなれる素質だとすら思うの」
「ミオちゃん...」
「でもだからこそ戦いになれないと。というわけで、モンスターの霊体を倒すのがメニューにこれから加わります」
「ミオちゃんッ!」
私の事を想って言ってくれているのだと理解している。だからこそ嫌だとは言えず、私はミオちゃんの名前を強く呼ぶしかなかった。嫌だああああッ!!
そして二人、森の中へと進んでいく。ひとつひとつの物音に過敏に反応しびくびくする私をミオちゃんは笑っていた。
しかたないよ、怖いよ。だってモンスターだよ、噛みつかれたら痛いし刺されたら死ぬよ。
そして奴が現れた。
【ベノムグリズリー(霊体)】クラスB
「ぐるるるっ...がふっ」
「ミオちゃんッ!!」
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