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22.パリィ
しおりを挟む――キィィィン!!
「ッッ!!」
カウンター。【疾狼牙】を繰り出し、白き少女の攻撃を迎え撃とうとしたが、あまりの疾さに斬撃に《黒錆ノ刀》をあて逸らすことしかできなかった。
そして――
「!?」
(なっ、私の脚に!!)
すれ違いざま、白き少女は剣を持っていない方の手で私の脚を掴み、突進を無理やり止め体勢を立て直す。
彼女はそのまま新たに斬撃を放ってくる。
キィン!
――立て直し、はやッ!!
幾度も撃ち込まれる剣に防戦一方。だが、攻撃はしっかりと見えている。【審美眼】の能力のお陰だろう...このスピードについていけてる!!
ガキィン!
――魔力と体の動きで太刀筋を予測、その力の流れを見極めて私の《黒錆ノ刀》で叩き弾く!!
積み重なる攻撃と、それを弾く音。
数百にも及ぶ斬り結びだが、未だ攻撃に転じる事はできない。白き少女の攻撃が疾すぎる。
(...まるでハイレベルなシューティングゲーム、手が震えそうになる!!)
でも、私...ちゃんと受けれている。
もし一太刀でも浴びれば確実な死が待っているだろう。間違いなくオーバーキルレベルの火力。もしかしたら跡形もなく吹き飛ばされるかも...
――でも、私が廃人ゲーマーだからかな。
ギィン、キン――!!
――命をかけた戦いなのに、さっきまで恐怖で動けなかったのに...今、この瞬間は、心の芯が震えるくらいに
「...楽しい!!」
ミオは考える。剣を刀で弾く...いわゆる《パリィ》という高等技術。それを教えてもいないアカリが使いこなし、歴代最強と謳われたプレイヤーと互角に渡り合っている。
勿論、【審美眼】のユニークスキルがあってこその芸当ではあるが、彼女は《パリィ》のスキルを持っていない。つまり、スキルの補助と補正が無い中、己の動体視力のみを使った疑似パリィで、高速の斬撃を全て弾き飛ばしている。
「...ホントに、スゴい...」
相手はバトルジョブの最高峰、【剣聖】だというのに。
そして、やがてアカリには集中の果て、音さえ届かなくなった。
――ああ、懐かしい感覚だ...深く、沈む。そんな感覚...。
ずっと前にやり込んでた格ゲーやFPS...凄腕の人達と殺りあってた時みたい。
ひりつく心臓、ゆっくり流れ出す時、消える音。
これが、あの時と同じなら...私は勝てる。必ず、その時が...動きに綻びがくる。呼吸の乱れとも言える隙。
そこを狩る。
――が、しかし。限界が訪れているのはアカリも同じだった。
蓄積され続ける疲労が、目には見えないスタミナの数値を高速で削りつつあった。
更に、あとひとつの形態変化があること。そして、白き少女がまだスキルを使っていないことに、彼女は気がついていない。
ゆっくりと、戦いの終わりを死神が運ぶ。
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