賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第二章 ギルメン募集、部屋なら空いてます

マイ・ラスト・ワーズ

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「イングウェイさん、できたよー」
「おお、早いな。さっそく見せてくれ」
 俺を呼びにきたのは、青髪のエルフ鍛冶師、マリア。
 ついに俺のリクエストしていた剣の第一号、試作品ができたのだ。
 黒く鈍い光沢をもつ、長めの直剣。見た目はちょっとしゃれたロングソードだが、その内側はむしろ杖に近い。

 マリアの鍛冶の才能は、魔力武器や魔道具の作成にある。エルフの血筋がそうさせたのだろう。
 今回は作成中に俺が横について、指示通りに作ってもらった。いわば合作だ。鍛冶は専門外でも、魔道具の作成なら得意だったからな。
 できた剣は、魔術師殺しメイジキラーしとでもいうべきもの。

 普段マリアが(無意識のうちに)作っている武器は、魔力によって切れ味や硬度を増す。だが、この剣は逆で、魔力に対して強い抵抗をもち、魔力の流れ自体を乱すようにできている。
 魔法は繊細なバランスの上に成り立つ技術である。魔力を編んで魔法を発動させるよりも、魔力の流れを横から乱すほうが、ずっと簡単だ。そしてこの剣は、魔力の流れに干渉し、断ち切れるように作ってみた。

 マリアの魔力の流れがいびつなら、それを正すのではなく、いびつなこと自体を利用してやろうということだ。逆転の発想という奴だな。
 ただし、魔力がない者が使ったら、ただの長剣ロングソードなのはあいかわらずだが。


「ほらサクラ、試し切りを頼むぞ」
「うええー、私でうまくいくんでしょうか?」

「知るか、やってみろ」

 他に実験相手がいないから仕方ない。俺が自分で切ってもいいが、そうすると魔術師役がいなくなる。自分に攻撃するわけにもいかんしな。
 サクラが剣に魔力を込めていくと、黒い刀身が深みを増した。いいぞ、しっかり起動できているじゃないか。

「手加減してやるから、気楽にやれよ」

「はいぃぃ」
 いまいち自信がなさそうなサクラ。首を左右に振るたびに、束ねたピンク色の髪の毛もぷるぷる震える。あと胸も。

 俺は揺れには気にせず≪火球ファイアーボール≫を唱える。ほら、ゆっくりいくからな。合図とともに、ゆっくりと火球がサクラに向かって移動する。


「せーのっ、やあっ!」

 サクラが剣をぶんと振ると、火球はごうっと音を立て、二つに割れた後、霧消した。

「成功だな」
「うっしゃあっ! やったよ、とうとうボクのオリジナル武器が作れたよ!」

 飛び上がって喜ぶマリア。目にはうっすら涙すら浮かべている。
 頑張ったな、マリア。俺はその青い髪を、わしわしと撫でてやる。長い耳が手にあたり、マリアは「ひゃぅぅっ!」と妙な声を出す。

「あ、すまん、痛かったか?」
「え、えっと、そんなんじゃなくて、ええとー。イングウェイさん、エルフの耳を触るってどんな意味か知ってます?」
「いや。なんだそれ?」

「知らないならいいんです、えと、忘れてくださいっ!」

 マリアは赤い顔をして、走って行ってしまった。
 せっかくお祝いをしてやろうとおもったのに、変な奴だ。

「それにしても、本当にイングウェイさん、すごいですね」
 そう言って感心しているのは、レイチェルだ。

「そうだよねー、こんな魔法の武器にまで詳しいなんて――」
 サクラの言葉を、レイチェルは遮る。

「違うわよ、あの魔法よ。普通、攻撃魔法って、威力を上げる方が簡単なのよ。思いっきりやればいいだけだから。それをあんな低威力で、しかも速度までしっかりコントロールして。……あなた、本当に何者なんですか? 王宮に仕えている一級魔術師とかでも、あんなことできないと思いますよ」

「買いかぶり過ぎだ。……ただの魔術師だよ。ただ、人より少し経験が多いだけだ」

 皆には、いつか、俺の過去のことを話してもいいかもしれないな。
 俺は、ぼんやりとそう考えていた。
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