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第10章 ドキドキ☆ラブ・ライトニング!

Trapped on the Road

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 謎の一斗缶の放つレーザー光線。当たれば即死だ。必死で避けながら、校門を回り道路へと飛び出す。
 そこへ飛び出してくる、一台のトラック。

 哀れ。避ける暇もなく、俺はほぼノーブレーキのトラックへ激突する。


 がっしゃあああああん!!


 酷い衝撃だ。痛いと思う間もなく、俺の意識は途切れた。


 ◇◇◇


「――無様ね」
 女魔術師は深くため息をついた。
「前のダイヴの影響かしら。記憶の残滓が残ってしまっているのがよくないんでしょうけど」
 頭の中で理論を再構築しつつ、大切な部分を記録していく。
 同じ失敗を繰り返している時間はないのだ。
「やっぱり精神体だけ抜き出すのがまずいのかしら。記憶と身体のバランスがすぐ崩れてしまう。今回こそ解決できたと思ったのに」

 ふう、と息をつくと、女魔術師はワイングラスに残ったワインを飲み干した。貴重な酒だ、一滴も無駄にすることなんてできない。
 窓を開けると、冷たい夜風が吹き込んできて、心地よい。

 月明りに照らされ、女魔術師の首筋がきらりと引かった。
 首にあったのは、金属製の”穴”だ。
 かつては忌々しく思ったものだが、今の彼女にとっては、無くてはならない”穴”だった。

 彼女が転生したこの世界の人間どもは、科学とかいう悪魔の使う知識で、世界を引っ掻き回していた。
 奴らの強みは、集団でこそ発揮される。個人ならば彼女の魔術でもどうにでもできるのだが。
 奇しくもそれは、人間と魔族の関係に似ていた。そう、この世界では彼女らのほうが、異物なのだ。

 転生時の記憶をとりもどして、もう何年になるだろうか。
 ひとりぼっちで孤独に魔術の研究を続けていた彼女にとって、イングウェイはまさに希望だった。奇跡だった。
 他の転生者を見かけるようになってきた後も、彼だけは特別だった。実力も、魔術センスも飛びぬけていた。

「さて、もう一度やってみましょう」
 彼女はイングウェインに記憶封印措置を施していく。

「次に戻ってくるのはいつになるかしら。がんばってね、私の王子様」

 それは、イングウェイの意識が闇に落ちている間のみの、儚い関係だった――。
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