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第14章 サクラ、がんばる!
C'mon, Make my day
しおりを挟む「よーたに、よーかわ、おーこえろー。わたしーの刀は、ぜっこーちょー」
私は鼻歌を歌いながら、野道を歩いていた。
カルポス山脈沿いの近道で、私の計算が正しければ、目的地には私のほうが先に着くはずだ。
細い小さな道だけど、きれいな花も咲いている。お日様ぽかぽか、陽気な日曜日の午後。
いや、ほんとは今は朝だけど、気分的にはそんな感じなのです。
「あー、お腹すきましたねー。なにか食べましょーか」
ごそごそと鞄から取り出したのは、一本のバナナ。
栄養価が高いだけではなく、女が食べれば男が落とせると噂のラッキーアイテム。
でも私、甘ったるい味って少しだけ苦手なんですよねえ。
味も触感もあまり好きではないのだけど、恋する乙女は強いのである。
いえ、恋っていうと大げさだけど、そりゃもちろんイングウェイさんのことは好きだけど、でもほら、まだ付き合ってるとかじゃないし、でも向こうから告白してきたらもちろん受け入れるけど、私からいくのはほら、ね、やっぱりいきなりってなんかもう、段階ってあるじゃないですかー、
ぐおーん
遠くで何か吠えるような雄たけびが聞こえる。むむ? なんでしょ、こっちは食事中だというのに。
もごもご、っとバナナをくわえたままで、声がした方を探す。
すぐに見つかった。でかかったからだ。
その声の主は、深紅のドラゴンだった。
ぼとり。
音を立て、くわえていたバナナが落ちた。
うええぇぇっ?
思考回路はショート寸前ですが、固まっている場合ではなかった。このままでは最後の晩餐がバナナになってしまう。
「どどどらごんっ? うそ、なんでこんなとこにっ!」
なんでもクソもない。カルポス山脈といえば、ドラゴンの数少ない生息地として有名な場所なのだ。
もっとも、ただし、珍しいとも聞いている。捕まえるどころか、目撃されることすらまれなはずだ。
私は慌てつつも冷静に隠れる場所を探す。
……ない。ない。ここらへんはだだっ広いのっぱらで、木の一本も立っていない。
仕方なく背の高めの草に埋もれるように、身をかがめる。
ドラゴンはこちらに気付いてもいないようで、優雅に空を舞っているが、いつ何時キケンが危なくなるかわからない。
腰に差したモモフクがこんなに頼りなく感じるのは、久しぶりだった。
ドラゴンは山脈へとは戻らず、平野の方へと消えていった。うっしゃあ。私は静かに心の中で叫んだ。
あちらには大きい街道が通っている。
私はぱんぱんと柏手を打ち、祈った。おばあちゃんから教えてもらったおまじないだ。
「どうか、商人さんあたりが馬でも連れて歩いてますよーに」
そういえばイングウェイさんが通る道も向こうのはずだけど、あの人なら心配ないだろう。彼がドラゴンごときに負けるなんて考えられない。なんてったって、彼は強くてかっこいいのだ。
一人旅の寂しさを痛感した私は、旅路を急ぐのだった。
とりあえず今夜は、野宿は避けたい。近くに村でもあればいいのだけど、ここらへんは私の故郷に負けないくらいの、辺鄙な田舎。都合よく村があるだろうか。
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