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第14章 サクラ、がんばる!
Are You Pacified?
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険しい山道を、飛ぶように駆け上がる。
もっとも、険しいといってもそれは一般人にとっての話。マナで筋力を強化した身体なら、さほど難しいことではない。
村にいた老人から、かつてドラゴンの巣があったらしい場所を聞いている。チビ・ドラゴンの飛び去った方向から見ても、そこに間違いないだろう。
あとは、間に合うかどうかだが――。
崖の中腹に、巣はあった。
巣と言ってもツバメの巣のような可愛いものではない。岩肌に自生した数本の木を強引になぎ倒したような、乱暴なベッドだ。
岩陰から下を見る。巣には横になって休むチビ・ドラゴンと、その横でめそめそ泣いている女の子。
「それにしても、よく食べられてなかったなー」
少なくともドラゴンが寝ているうちは、即座にどうなることはないだろう。ほっと胸をなでおろす。
私はマナをなるべく抑え、音を立てないようにゆっくり崖を降りていく。
そっと囁くように、サリアちゃんに声をかける。
「サリアちゃん、助けに来たよ」
「えっ、お姉ちゃん! どうしてここに!」
「しーっ、だめだよ、大声出したら。えと、ゆっくりこっちに来て。そう、そのまま乗り越えて」
サリアちゃんは私の手を握りながら、太い枝の上をゆっくりとはいあがる。
もうちょっと、ゆっくり。 ――よし、もう大丈夫!
そのとき、横たわるチビ・ドラゴンの瞼がわずかに持ち上がった。細い隙間からでもばっちりわかる、金色の輝き。
私はサリアちゃんを抱きしめたまま、固まってしまった。
ぐるるぐるう
チビ・ドラゴンは喉を鳴らす。腹の底まで響いてくる。
大きく口を開け、あくびをする。ヨダレがだらりと顎を伝い、獣の臭いが流れてきた。
一刻の猶予もない。
私はサリアちゃんを抱くと、半分飛び降りるようにして崖を駆け下りる。
「きゃあぁぁぁっ!」
サリアちゃんの悲鳴が響くが、かまっていられない。
下まで行けば、森に隠れられる。知らない森の中だ、間違いなく迷ってしまうだろうが、今すぐ引き裂かれるよりはマシだろう。
金を引き裂くような音がした。それがドラゴンの鳴き声だと気付くのに、ほんの少しだけかかった。
振り向くと、大きな真紅の翼が見えた。
恐れていた、親ドラゴンのご帰還だ。
「くっ、食らえっ、≪電撃≫っっ!」
とっさに出たのは、イングウェイさんが愛用していた電撃呪文だった。彼に胸を揉まれた日から、こっそり隠れて練習していた呪文だった。
見様見真似だけど、実戦で使ったことなんてなかったけど。
それでも、絶体絶命の危機の時にとっさに出てきたのは、この呪文だった。
細い白光が竜を打つ。
竜は一瞬の硬直の後、力が抜けたように翼を広げ、そのまま私たちに覆いかぶさるように落下してきた。
「うそっ、せっかくがんばったのにーー!」
私たちはもつれるように崖下へと落下する。
気を失う最後の瞬間、木々の隙間から紫のケムリのようなものがちらりと見えた。
もっとも、険しいといってもそれは一般人にとっての話。マナで筋力を強化した身体なら、さほど難しいことではない。
村にいた老人から、かつてドラゴンの巣があったらしい場所を聞いている。チビ・ドラゴンの飛び去った方向から見ても、そこに間違いないだろう。
あとは、間に合うかどうかだが――。
崖の中腹に、巣はあった。
巣と言ってもツバメの巣のような可愛いものではない。岩肌に自生した数本の木を強引になぎ倒したような、乱暴なベッドだ。
岩陰から下を見る。巣には横になって休むチビ・ドラゴンと、その横でめそめそ泣いている女の子。
「それにしても、よく食べられてなかったなー」
少なくともドラゴンが寝ているうちは、即座にどうなることはないだろう。ほっと胸をなでおろす。
私はマナをなるべく抑え、音を立てないようにゆっくり崖を降りていく。
そっと囁くように、サリアちゃんに声をかける。
「サリアちゃん、助けに来たよ」
「えっ、お姉ちゃん! どうしてここに!」
「しーっ、だめだよ、大声出したら。えと、ゆっくりこっちに来て。そう、そのまま乗り越えて」
サリアちゃんは私の手を握りながら、太い枝の上をゆっくりとはいあがる。
もうちょっと、ゆっくり。 ――よし、もう大丈夫!
そのとき、横たわるチビ・ドラゴンの瞼がわずかに持ち上がった。細い隙間からでもばっちりわかる、金色の輝き。
私はサリアちゃんを抱きしめたまま、固まってしまった。
ぐるるぐるう
チビ・ドラゴンは喉を鳴らす。腹の底まで響いてくる。
大きく口を開け、あくびをする。ヨダレがだらりと顎を伝い、獣の臭いが流れてきた。
一刻の猶予もない。
私はサリアちゃんを抱くと、半分飛び降りるようにして崖を駆け下りる。
「きゃあぁぁぁっ!」
サリアちゃんの悲鳴が響くが、かまっていられない。
下まで行けば、森に隠れられる。知らない森の中だ、間違いなく迷ってしまうだろうが、今すぐ引き裂かれるよりはマシだろう。
金を引き裂くような音がした。それがドラゴンの鳴き声だと気付くのに、ほんの少しだけかかった。
振り向くと、大きな真紅の翼が見えた。
恐れていた、親ドラゴンのご帰還だ。
「くっ、食らえっ、≪電撃≫っっ!」
とっさに出たのは、イングウェイさんが愛用していた電撃呪文だった。彼に胸を揉まれた日から、こっそり隠れて練習していた呪文だった。
見様見真似だけど、実戦で使ったことなんてなかったけど。
それでも、絶体絶命の危機の時にとっさに出てきたのは、この呪文だった。
細い白光が竜を打つ。
竜は一瞬の硬直の後、力が抜けたように翼を広げ、そのまま私たちに覆いかぶさるように落下してきた。
「うそっ、せっかくがんばったのにーー!」
私たちはもつれるように崖下へと落下する。
気を失う最後の瞬間、木々の隙間から紫のケムリのようなものがちらりと見えた。
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