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1.春夏秋冬、それぞれの彩り

夏の陽射しに照らされて

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「わー、ひまわり。ずーっと並んでるよー」
 八月、夏休みに入り、六人で白浜まで向かっている。レンタカーを借りて、運転は道永徹人がしてくれている。
「りゅうくん、ちゃんと見てるー?」
「ああ、すっげーきれいだな」
 高速を降りて、山道が終わったところ、その先に、ひまわりが川沿いを、道しるべのように並んでいた。陽射しが出てきたばかりのまだ早朝。一気に目が覚めた。一面の濃い黄色が、波のように揺らぐ度、その中にダイブしたくなる。
「はい、そこ! 朝からイチャつくの禁止でーす」
「むさ苦しーでーす」
「何だよ、徹人と久津見が仲良く」
「くっちーと仲良いでーす」
「みっちーと仲良しでーす」
「よかったでーす。でさあ?」
「三人仲良いでーす」
 俺、徹人、久津見の朝のグダグダなやり取りに、甘いシロップのようないいアクセントをくれたのは、七海だ。
「七海さん、この三人のやり取りに乗らなくていいんですよ」
「何言ってんだよ、みゅう。七海さんもどっちかっていうと俺たち派じゃない?」
「はっ? どの口が言ってんだよ! 七海さんがお前と一緒のわけねーからな」
 この威勢のいい女子は名堀未羽なほりみう通称みゅうだ。気が強くて、しっかり者、アウトドアなんかするときは、テキパキ動いてくれて助かっている。
 もう少しで目的の白浜海岸に着きそうだ。夏の一回目のイベントに胸が高鳴る。

「来たなー」
「来たねー」
 駐車場に着くと、俺は速攻でTシャツを脱ぎ捨て、海が見えるように、車をバックに仁王立ちをした。
「はいはい、そこの筋肉! 後でいくらでも見せればいいから、荷物おろそーか?」
「えっ?」
 後ろを見れば、大した荷物はないけれど、テントなど運び出していた。
「よしっ、七海はあのシートとか持って、俺は保冷バッグ持つから」
「うん」
 ここに着く前にコンビニに寄り、ドリンクや軽食は買っておいた。六人分入った保冷バッグはなかなかの重さがある。けれど、何のことはない。ジムでベンチプレスを上げると思えば楽勝だ。ダンベルフライをするかのように、数回、上に持ち上げた。いい朝トレだ。
「琉一さん、さすがいい筋肉! ふぅー」
「いやん」
 久津見は耳元で柔らかい息を吹きかけた。足がよろめき転びそうになった。
「大丈夫?」
 久津見がしっかりと支えてくれて助かった。
「ああ、ありがと」
「いいおっぱいだね」
 支えるときに、久津見の手がたまたま大胸筋に触れていた。
「だろ? って何気に揉んでんじゃねーよ」
「うれしいくせにー」
「うるせー、待てー」
 軽々しく走っていった久津見を追いかけた。
「りゅうくん、楽しいそう」
「七海さんすいません、後でくっちーボコっとくんで」
「みゅうちゃん、そんな……背負い投げくらいでいいよ」
「了解です」


 昼までは各々で、仮眠をしたり、海に入ったり、日焼けをしたりとゆったりと過ごした。白浜は海の家がないため、売店で焼きそばなど買うのではなく、売り子のお兄さんやお姉さんがメニューを持って販売をしている。特に食べたいメニューがなかったため、徹人と俺が近くのコンビニまで買い出しに行った。
 遮る建物がなく、直射日光を浴びる砂浜、サンダルなしには歩けない。さっき、小さな子どもが泣きながら、あの灼熱の砂の上を歩いていた。しっかりしてそうなパパさんだったのに、子どものこと何も見えてないのかなと、ガッカリしてしまう。きっと足の裏を火傷してそう。
 水平線の先で青色と碧色が重なり、果てしなく続いている。そんな大きなあお色が暑さなんてクソくらえと、跳ね除けてくれているようだ。
 コンビニで言い付けられたものを買い、駐車場まで来た。
「りゅう、今さらだけど俺に感謝してくれていいよ?」
「えっ?」
「俺が花見しつこく誘ったから、七海ちゃんと出会えたんだからな」
「まあ、てんきゅ」
 確かに、あの日の前からひつこく誘われていた。本当は筋トレのペースが崩れるから、断ろうと思っていたくらいだ。けれど、彼女がほしいという思いが、徹人に誘われるうちに勝ってしまった。結果よかったわけだ。
 砂浜と駐車場を隔てるブロックの上に立った。
「でもさ、ほらあれ見てみろよ。小麦色の肌、ボンッとでかい胸、締まったくびれ、プルンと大きなお尻、ほしくないのか?」
 えっ? と徹人の指差した方を見た。
「ああ、確かにあの肌にあのでかい胸、締まって割れた腹筋、上に上がった尻、憧れるわー、どれだけの筋トレこなしたらあーなるんだろ? つーかさ、あれ競パン? 何かエロいよな、あーゆーのって、俺は穿けないけど、なあ?」
 まずまずとらいったところか、さすが海にはすげー奴がいる。徹人を見ると、口が開いて明後日の方を見ていた。目の前で手を振った。
「おい、どーしたよ!」
「うわ、ってどこ見てんの? あれじゃなくてこっち」
 よーく徹人の指の先を追っていくと、モデル体型以上のお姉さんがいた。こっちか、こっちだわな。俺は頭も身体も筋肉なのか!
「はー、まあ、今は七海ちゃん以外の女に、興味はないってことか。いいことじゃん」
「えっ? ああ、そーだな。七海以外見えねー!」
 テントから、やっと起きたらしい芳田波絵が顔を覗かせた。久津見とみゅうと同じ大学一年だ。芳田は違う大学だけれど、よくごはんに行ったりと、一緒に遊ぶことが多いらしい。
「あっ、道永さーん、眞浦さーん、腹ペコペコー」
「あいよー、今行くー。りゅう、まあ幸せにな」
「ああ」

 昼を食べた後、みんなで海に入った。焼けた砂から波で濡れた砂、ジューッと音を立てて溶けていくようだ。まずは足からゆっくりと入っていく、陸との温度差で余計に冷たく感じる。少しずつ慣らしながら腹から胸、肩を沈める。透かすクラゲにのように、全身が海とひとつになったような感覚だ。
 浮き輪に入った七海を後ろから足でくるむ。一度やってみたかった。このカップルしかできないエロい絡み。誰も見ていないか、左右を確認して、チュッとキスをする。
 最高に楽しい。
 日焼けがヒリヒリし始めた夕方、潮風を胸いっぱい吸い込み、海を後にした。旅館に着くや否や、露天風呂へと直行した。
 夕食は、海鮮中心のメニューで、肉派の俺は食べる前は、ため息をついていたけれど、焼き魚、お造り、脂が乗っていて香ばしくて、ジュシーで、磯の香りが余計に食欲を掻き立てた。
 食事の後、貸し出しの浴衣を着たまま、夜の海へと向かった。旅館から道路を挟んですぐ向かいだ。
 まだ、明るかった夕方には気づかなかったけれど、旅館の入り口横にグリーンカーテンが取り付けてあった。ライトアップされていて、夜顔がしとやかで、日中とは違う夏の風景が心を潤した。
 砂浜は昼間の灼熱が嘘かのように、冷たくて気持ちよかった。静かな波の音が、目を瞑ると穏やかなBGMようで、このまま眠ってしまいたかった。

「みんな離れて離れてー」
 徹人が噴出花火に火をつけた。
 暗い海辺が、一瞬にして、色とりどりの明かりで照らされた。夜空の星と重なり、一層輝きが増したようだ。次々に手持ち花火や打ち上げ花火に火をつけた。
 お酒も回り、いい気分だ。
 トイレから出て、下の階段に腰掛けた。少し先にみんながいる。なんだか青春ドラマを見ているようだった。
「琉一さーん、ひとりで何してるの?」
「いや、ちょっと休憩」
 久津見がヨロついた足取りで、こちらへと向かってきた。
「休憩とか言って、実は俺を待っててくれたとか?」
「はっ? 何言ってんだよ?」
「ちぇっ、冷たいなー。前ならもっとやさしい言葉かけてくれたのに」
 潤んだ瞳で、しばらく見つめられた。生唾を飲み込んだ。
「じゃ、トイレ行ってきまーす」
 何だったんだ? 心臓に電気が走ったように胸が高鳴った。あんな目で見てくるなんて、卑怯だ。キュンとしてしまうのは当然だと思う。あんな子犬みたいな表情で見つめられたら、落ちたって仕方ない。何気にムスコさんに手が触れた。えっ? どういうことなのか、戸惑ってしまう。元気に主張をしている。どうして? ……飲んでるとよくあることかと、自分の中に眠っている違和感に、蓋をするかのように、気づかない振りをした。
「あれっ? 琉一さん、待っててくれたの?」
「はっ? ちげーよ」
 ムスコさんが元気になっていたから、動けなかったなんて言えない。
「じゃ、行こっ」
 久津見はそう言うと、後ろから俺の肩を押し、子どもの頃にした電車ごっこのように、シュッシュポッポと小走りを始めた。
「シュッシュポッポ」
 酔っていなかったら、絶対こんなことしなかった。けれど、気分がよかったせいか、肘を九〇度に曲げてクルクル回しながら、同じように小走りをして、青春ドラマの中へと帰っていった。


「琉くん、楽しかったね」
「ああ」
 みんなが寝静まった帰りの車の中、小声で七海が話しかけてきた。
「また、来たいね」
「そーだな」
「ふぁ~あ、ごめん」
「いいよ。みんな寝てるんだから、七海も寝な」
「でも、琉くん運転してるし」
「俺は大丈夫だから、なっ?」 
「うん、ありがと」
 二泊三日の旅行が終わった。二日間とも海に行ったおかげで、しっかり黒くなった。筋肉の形もはっきり浮き出て、ウィンウィンだ。
 楽しかった。めちゃくちゃ楽しかった。けれど、心に隙間風が吹くように、どことなく寂しさが残っている。
 いつもそうだ。最高に楽しくて感情が大爆発しそうなのに、ふと考えると、涙が一粒流れてくる。それが、何なのか自分でもわからない。心が病んでいるわけないし、心に否めない傷があるわけでもない。
 考えても、考えるだけ、答えから遠ざかっている気がする。



「七海、危ないよ。こっち」
「ありがと」
 八月、最後の週、七海とふたりで花火大会に来ている。暑い上に増し増しの人混みの中、さらに熱さが充満している。ハンディーファンを片手にしていても、汗が、溶けたソフトクリームのように、ゆっくりと流れてくる。
「俺のそば、離れんなよ」
「うん」
 今年の夏は本当に充実していた。
 白浜に行った翌週には同じメンバーでバーベキュー、その三日後には休店日に職場のバーベキューをした。その後、千葉の海に行った日は、帰りにアウトレットに寄り、買い物も楽しめた。
 もちろん、遊んでばかりいるわけではない。予定のない日は全てバイトを入れていた。出費が多い分、稼いで燃料を入れなければ、船は沈んでしまう。
「なあ、ひと口ちょうだい」 
「いいよ。あーん」 
「あーん、あまっ!」
 一発目の花火が打ち上げられた。
 それまで、カップルやら友達やら、家族連れの騒音のような話し声が、一瞬にして消えた。
 打ち上がるたび、心臓まで力強く響いて、心を鷲掴みにされてしまいそうだ。静寂だった夜空には、色鮮やかに光を散りばめて、形はさまざま、見たことのない綺麗で大きな花を咲かせた。写メを撮るのを忘れて見てしまう。
「僕も見てみたいな、夜空に咲く花」
「えっ? 何?」
「えっ? ……何でもない」
 まただ。
 今の言葉、誰かから聞いたような気がする。いつ、どこで誰が言っていたかもわからない。——子どもの頃? 考えようとすると、パレットで混ざった絵の具のように、濁ってわからなくなる。
「ホントに綺麗だね」
「ああ。次はナイアガラかな?」
「ナイアガラ?」
「そう。ほら、あの橋、今通行止めされてるとこ、そこ一面滝みたいな花火が仕掛けられてんだよ」
「へー、そーなんだ」
 思った通り、手すりのところからナイアガラ花火が降り注いだ。そして、最後の一発が打ち上げられて、花火大会が終了した。
「終わっちゃったね」
「終わったな」
「なんかさ、花火って華やかで眩しくて、綺麗だけど、少し、切なくない?」
「切ない?」
「うん、見てるときはいいけど、急に静まり返ってさ、夏の終わりを告げられたみたいで」
 確かに、先程までのあの大ボリュームの音や光が、今は花火を惜しむかのように、夜空に煙が漂っているだけだ。
 本当にあったのだろうか、それとも、幻だったのか、ここを見ているだけではわからない。心のどこかに、置き忘れてしまった思い出のように、気づかずにただ、時間が流れている。
「七海、かわいいな」
 少し寂しげな横顔が、色っぽくもあり、可愛かった。
「えっ? 何? いきなり。……そんなことより、話聞いてた?」
 照れ隠しなのか、口を膨らませて子どもみたいだ。
「えっ? 聞いてた聞いてた。わかるよ、すっげーわかる」
「じゃあ、証明して」
 上目遣いで、艶美な雰囲気に打ち抜かれた。
 人波を前にしてゆっくりと後ろを歩いていた。足を止めて、握った手を引き寄せ、腰に手を回してキスをした。
「どう? これで証明できた?」
 少し、照れる気持ちがあったけれど、何気ない態度で、毅然と振る舞った。
「……うん、できた」
 会話をしていなかった。気まずいわけではなかった。ただ、それだけでよかった。
 目を見つめ合ったり、手をぎゅっと握ったり、寄り添ったり、お互いの温度から離れたくなかった。
 
 家に着くと、シャワーを浴びた。先にシャワーを終えた七海が、濡れた髪で下着姿のまま、ちょこんとベッドに座っていた。その姿を見て生唾を飲み込んだ。溢れそうな気持ちを抑えつつも、大股で歩き、フローリングの床が音を立てた。腰にバスタオルを巻いたまま、ベッドに腰掛け、来実の肩を掴み、キスをした。ベッドにゆっくりと寝かせ、もう一度キスをした。
「好きだ」
「うん、あたしも」
 初めて七海とナマでやった。ふたりとも結婚したいとか、子どもがほしいとか、そういうわけではなかった。けれど、もっと七海を感じたかったし、俺をちゃんと感じてほしかった。やることはいつもと変わらないのに、初めてのときのように、緊張していた。雰囲気というか、心臓から押し出される血液を、身体中で目一杯感じていた。めちゃくちゃ熱くて、敏感に触れ合う肌に、興奮が冷めやらなかった。



「あー、染みるー」
「ゔあー、気持ちー」
「みっちーも琉一さんもおっさん。ふぅー」
 徹人と久津見と近場の日帰り温泉に来ている。暇な夜はこれに限る。暑さが残る中、熱い温泉に浸かるのも気持ちがいい。
「でっ? 七海ちゃんとどうだった?」
「やったとか、どーせ嘘なんじゃないの?」
「いや、まー、よかったよ」
「何がまーだよ。どんな感じだったの?」
 いい匂いに釣られる犬のように、鼻をひくひくさせて寄ってくる。
「みっちー、そんなプライバシーだよー」
 そう言いつつ、久津見も鼻をひくつかせる。
「いや、そりゃ、処女じゃないけどさ、綺麗で、柔らかくて……って、言えねーよ!」
「何でだよー。どんだけぶりだったか知ってんだよ、こっちだって。でっ? 俺の筋肉もすごいけど、こっちもガッチガッチだろ?」
「琉一くん、すっごく硬いのね。二頭筋よりもおっきい」
 どうやらふたりで妄想劇を始めたらしい。
「こんな細い七海のに入れていいのか?」
「うん、琉一くん、奥までー」
 一切、こんなやり取りはなかったけれど、あの夜のことを思い出して、ムスコさんが反応してしまった。
「よかったな、りゅうって、お前何立たせてんだよ」
「琉一さん、こんなとこで」
「いや、そーゆーつもりはなかったけど、お前らのせいでこの前のこと思い出したら……」
「じゃ、俺たちはスチームサウナでも行くか?」
「そーだね」
「じゃ、俺も」
「いやいやいや、待て。りゅうのそのでかいやつで動き回られたら、さすがにダメだろ?」
「琉一さん、ここオナ禁だからね」
「じゃー、どーすんだよ? お前らが変なことしだすから、こーなったんだろ?」
「自己責任でーす」
「自己処理でーす」
 ふたりはそういうと、タオルを首に巻き、何も見なかったかのように、スチームサウナへと向かった。
 どうしたらいいのか、悩んでいたら、思いついた。ここは男湯だ。おっさんの裸を見ていれば治まるだろう……いや、やっているのを想像したら一気に萎えそうだ。
 よしっとおっさんの裸を焼き付け、目を瞑り、妄想した。あのおっさんと俺との……気持ち悪い! 絶対ない! 思惑通り一気に萎えた。ふーっと、安心して立ち上がった。んっ? 何かが頭に浮かんできたような気がした。石段に腰掛け、身体を覚ましながら、目を瞑り考えた。
『大好きだ』
『僕も』
 自分が男の子に抱きついている、そんな映像が浮かんだ。誰? 思い出そうとしても、澄んだ水が、雨の日の水溜まりのように、濁って何も見えなくなっていくようだ。
「おい、こんなとこで堂々とやるんじゃないよ」
 肩が後ろに引っ張られた。
「えっ?」
「えっ? じゃないよ。いくらデカくても、見せてつけていいわけじゃないからな」
「琉一さんの品位が……」
 久津見は頭を抱えた。
「なんだよ? 俺、何もしてねーだろ?」
「よくゆーよ。デカいのがデカくなったのを晒してさ」
「えっ?」
 意味がわからず、ムスコさんを確認すると、タオルがはだけ、自分の意思とは関係なく、突き上がっていた。
「なんで?」
「りゅう、足りてないなら、七海ちゃんと満足するまでやりなよ」
「俺はひとりでしてもいいと思うけど、ここでは、ねっ?」
「じゃあ、俺らは炭酸泉行ってくるわ」
「じゃ、俺も」
「りゅうは治るまで、ここにいないさい!」
「琉一さん、隠しきれない」
 俺は一体どうしたんだろうと思った。萎えたから、ここに座って考え事をしていただけなのに……徹人の言う通り、足りてないのかもしれない。
 七海の身体を想像した……ダメだ。おっさんの裸、おっさんの裸、精神を無にして、温泉に浸かるおっさんたちを見ていた。
 途中、ため息が出てきたけれど、順調なことに安堵した。

 ただ、エッチがしたいだけじゃない。好きだから、その思いが身体に出てくるだけだ。最中は、肌の触れ合う瞬間に、頭も身体も支配されて、好きだとか、恋だとか、考えられなくなっているけれど、そういうものだと、思っていた。
 ……自分自身に言い聞かせていただけなのかもしれない。
 
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