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第2章 荒れ狂う極寒の都市『スノーガーデン』編
第62話 脅しとオレに面白い物を見せてくれの話
しおりを挟むビャクヤは城から、湧き出る化け物に向けての攻撃は、一撃で殲滅し、自分達よりも5倍以上はある、大きな穴を開ける。
その攻撃は、魔力を一切使っていない、ただの"拳圧"だということ。
魔力を喰らって強くなる、黒い化け物たちにとっては、天敵でしかなかった。
グリーンパール王国の最強の騎士、百獣王のビャクヤ。
そして、最強の騎士をサポートするのが、ナナイという、少女。
もう、全部アイツらだけで、良いんじゃないかと、苦笑いをしてしまう。
「よくやった、二人とも」
「ッハ!勿体なきお言葉です!」
「ふふーん!あのくらいの敵なら、ビャクヤと二人でちょちょいのちょいよ!」
再び、ナナイが対応の仕方を間違えると、ビャクヤがげんこつで叩き、喧嘩が始まった。
ニルヴァフは困った顔をして、喧嘩を止めようとする。
黒杉は少し、気まずいところで、クレナが武器状態を解除して、間に割り込んで話を進める。
「ちょっと!案内するなら、早くし・・・むぐっ!?むうう!」
「こらっ、クレナ・・・相手は王子だぞ」
クレナに言うと、「だって、話が進まないじゃない」って、訴えるような目で見てくる。それでも、相手は王子だ、身を弁えなければならない。
ニルヴァフ王子は、武器から人型には変わる、クレナを見て、少し驚くが、「申し訳ないね」と言って、手を叩き、喧嘩を止めた。
お互い、不満そうな表情をしながら、その場は収まる。
「さて、ヨウイチくんだっけか、では、安全な所まで案内をしよう、ビャクヤ、ナナイ頼むよ」
「承知致しました」
「はーい」
相変わらずのナナイの返事で、ビャクヤは眉間にしわを寄せる。
ニルヴァフは「大丈夫だ」と手を横から止めるように突き出し、案内を始める。
黒杉たちは、保護された人達が集まっている。スノーガーデンの南門の方へと向かう。
「そういや、その子は・・・」
ニルヴァフ王子は、興味深そうにクレナを見る。
反応を見るに、武器から人型になるは、珍しかったのだろう。
「クレナのことか?こいつは俺の武器だ」
「そうよ!ヨウイチにちょっと乱暴に扱われているけど・・・大事なパートナーよ!」
おいおい、クレナの奴・・・また、誤解を受ける事、言いやがって!
ほら、ニルヴァフ王子がこっち見て、睨んでいるよ?
しょうがない、誤解を解かねば・・・。
「いや、何か誤解を受けてないですか?」
「ヨウイチは・・・私のパートナー・・・」
アイリスは自分のものだと、言わんばかりに、左腕に引っ付いて、クレナを見つめる。
クレナも、負けじと右腕に、組み付く。
正直、歩きにくい・・・。
「ハッハッハ、ヨウイチくんは、色んな人に好かれているんだね。でも、女遊びはほどほどにな」
「別に、遊んでいるわけじゃない、というか、お前ら・・・そろそろ、離れてくれ・・・歩きにくい」
そういうと、二人は不満そうに顔で、離れる。
いや、本当に勘弁願いたい・・・というか、見られている身にもなってくれ。
そう考えていると、ニルヴァフが再び話しかけてくる。
「ところで、その武器は何処で?生きてる武器なんて、初めてみるんだが・・・ふむ」
「私は、ヨウイチの物だから、何言われたって、何処も行かないわよ?」
「だから、言い方・・・」
ニルヴァフは豪快に笑いながら、「いやいや、そんなのことは分かってるよ」と言って、少し考える。
「いや、何でもない、面白い物をみせてもらったよ」
そんな、意味深の事をいって、ニルヴァフは再び、先頭に立ち、歩き出す。
離れていく、城を眺めてる。
クレシアさん達は、大丈夫だろうか?まあ・・・あの人達は、大丈夫かもしれないが、御剣とカマさんが心配になる。
そもそも、何故、あの場所に御剣がいたのかが、未だ謎だった。
スカラ女王は、いったい御剣を呼んで、何を企んでいるんだろうか?妙な胸騒ぎが、続く。
───【スノーガーデン・南門】
しばらく歩いていると、壮気あふれた声と戦闘音が聞こえる。
目を凝らして見ると、誰かが戦っている。
それは、ビャクヤとナナイのような戦いをする騎士たちが、化け物たちを撃退していた。
明らかに、化け物たちの方が圧倒的に数を勝っているはずなのに、それをものともせず、一撃で粉砕していく。
そこで、一番前線して、戦っている騎士が、ニルヴァフ王子に気づく。
「皆の者!王子と隊長が戻られたぞ!さあ、もっと良いところを見せるんだ!!!!」
ウオオオオオオオオオオオオ!
その言葉で、更に騎士達の、士気が高まる。
まるで、群で動く獣のような統率は、次々と化け物たちを、異常な殲滅速度で倒し、いつの間にか・・・一匹の残らずいなくなっていた。
早すぎる、あまりのも早すぎた。
ただ、唖然としながら、遠くからみていた。
「(おいおい・・・こんなに強い人たちが、いるのに・・・何故、俺達は呼ばれたんだ・・・)」
黒杉は、ふと疑問を感じた。
フヴェズルングやこの騎士たちといい、インフレするばかりの世界で、本当に俺たちは必要なんだろうかと、もし、討伐するだけなら、この騎士たちだけでも、いいんじゃないかと思ってしまう。
それに、グリーンパール帝国に、最強の騎士がいるのなら、フィルネル王国だって、いない筈はない、いくら、王様がフィルネル王国を救った英雄と言われても、一人で出来る事なんて、限られているのだから、必ず何処かに精鋭は潜んでいる。
そもそも、フィルネル王国中心で、国が動いているなら、各国から協力してもいい筈だ。
それが出来ない、理由とかあるだろうか?
じゃあ、何故、わざわざ、レベル1から俺たちを育てているのか?
転移者は、ここの世界の住人よりも、成長が早く強くなれるのは、常識なのは知ってる。
だが、それだけではないような気がした。
王様は、何故、"あのレベル"で魔獣討伐をさせようとしたのか、いくら討伐した時の被害が酷いからって、たった、1ヶ月で戦力になると思うだろうか?
少なくとも、3ヶ月は必要と思う、村人と比べるとおこがましいかもしれないけど、俺がそうだったからだ。
もしかして、俺たちが知らない、転移者の情報がまだあるのか?
そんな、妙な胸のざわめきを感じていると、アイリスが話しかけてくる。
「ヨウイチ・・・皆、先に行ってる」
「あ、ああ」
「・・・考え事?」
やはり、アイリスは鋭い。
見つめる眼は、見透かされているような気がした。
「・・・少しな、大丈夫だ。アイリス行こうか」
「うん」
アイリスに袖を引っ張られ、そのまま、追いかけるように、一緒にニルヴァフの元へと向かった。
その遠くで、ナナイが、ビャクヤの肩に乗り、手を振りながら、俺たちを呼ぶ。
「早く来なさいよ!!置いて行くわよ!」
ナナイの返事に、俺は軽く手を振って、応える。
何故、この世界に自分たちが呼びされたのかを、ゆっくり考えながら、歩く。
南門の少し離れたところで、キャンプ場が見える。
そこには、大人や子供、老人たちが集まっていた。
その中に、家族を失って、泣いてる者がいれば、祈りを捧げている者もいた。
俺たちは、ただ眺めている事しか出来なかった。
少し歩いた所で、一際大きな、テントが見える。
ニルヴァフが俺たちを誘導するように、「さあ、入っておいで」と言う。
中に入ると、大きい四角いテーブルに、真ん中には地図。
見たところ、スノーガーデン近辺の物だと分かる。
「ハハハ、ここまで、ご苦労!大変だったろう、そこら辺の椅子に座りなよ」
「は、はあ・・・」
ニルヴァフに言われるがままに、俺たちは椅子に座ると、彼も確認したところで座る。
お互いに、一息ついて、ニルヴァフが話はじめる。
「さて、分かっていると思うが・・・私の妻となる、スカラが迷惑をかけて、申し訳なかった」
「い、いえ・・・」
最初の一言が謝罪だった。
悔いていることが、わかりやすく顔に出ている。
スカラ女王と何かあったのだろうか?
「その言い方だと、何か知っているのか?」
「・・・・・・ああ、全てではないが、知ってることは知っている。だが・・・」
「だが・・・?」
しばらく、沈黙する。
ニルヴァフは目を閉じ、そのまま話はじめる。
「君たちを、信用してるわけではない、だから、全てを話すことは出来ないな」
たしかに、一理あるし、正しい判断だ。
見ず知らずの人に、何もメリットも無しで、自分たちの知っている情報をホイホイとあげるわけがない。
ましては、敵か味方が分からない奴に、うかつに、情報を渡して、隊が壊滅することだってありえる。
いざ、敵対しても、"最強の騎士”がいる。
いつでもお前たちを倒せること、最初に力の差を見せつけることで、抑制させる。
黒杉は、少しだけ後ろを見る。
出口の前には、ビャクヤとナナイが立っている。
その一言で、クレナが立ち上がって、言い返そうとすると、アイリスが落ち着かせるように、横に手を出す。
「大丈夫・・・ヨウイチに任せよ?」
「・・・わかったわよ」
そう言って、クレナは頬を膨らませて座る。
突発な、行動を起こす、クレナに対して、冷や汗を掻いたが、アイリスのおかげで何とかなった。
あとで、説教だな・・・。
「・・・じゃあ、どうしたらいい?こっちは訳があって、身元を教えるわけにはいかないんでな」
「ふむ・・・なら、オレに面白い物を、見せてくれないか?」
「お、面白い物・・・?」
それは、意外なことだった。
もっと、明確なことを指摘されるかと、思えば、なんだ、そのフワッとした物は・・・。
しかし、面白い物か・・・。
「何でもいいぞ、武器でもなんでも、戦闘でも、私を楽しませてくれ」
そう言って、ニルヴァフはニッと口角をあげて、笑う。
ここで、黒杉は気づく、先ほどクレナを興味深そうに見ていたこと。
ただの好奇心で、聞いていたことに・・・。
「おもしろいものか・・・」
「ああ、何かないか?」
黒杉は、頭を捻りながら考えると、自分の持ち物に一つだけ、良い物をがあったことを思い出す。
『収納』を使って、緑の液体が入った、瓶を取り出し、テーブルの前に一本置く。
「なら、これはどうだ?」
「ん?ただのポーションじゃないか・・・」
「・・・鑑定してみたら、どうだ?」
「ふむ・・・ナナイ、コイツを鑑定してくれ」
ニルヴァフをそう言うと、暇だったのだろうか、あくびをしながら、テーブルの上に置いてある、ポーションを鑑定を始める。
すると、その瞬間、ナナイの目が、細くなっていた目が、大きく丸く開き、硬直する。
「え、ええええ・・・・ッ!?」
「どうしたんだい?ナナイ、そんなに珍しい物なのかい?」
「珍しいも、何も・・・これって、【完全万能回復薬(ラストエクリサー)】じゃないですか・・・!!?」
それを、聞いた、ニルヴァフは勢いおい良く立ち上がる。
「な、なんだと!?本当もラストエクリサーなのか!?」
これは、黒杉が修業してた時に、地道にコツコツと作った薬で、努力の結晶である。
霊月草、霊水、ドラゴンの鱗など、手に入りにくいうえに、素材自体が繊細な為、3ヶ月間
運が良かったのか、2本も作れてしまった。
『収納』の効果でも、コピーは出来ず、言わずとも伝説級の薬である。
「ハハ・・・ハハハ!まさか、生きている内に、伝説級の回復薬にお目に掛かれるとはな!恐れ入った!」
豪快に笑うニルヴァフは満足げに、拍手をする。
さて、肝心の問題は・・・。
「んで、結果はどうなんだ?」
「ああ、勿論、合格だ。しかし、君は一体何者なんだ?益々、興味が沸いてきたよ。ハハハ」
何者か・・・フィルネル王国とつながりあれば、転移者とは言えないし、フヴェズルングのことも言えない。
なら、現状、言える事は一つだ。
「ただの村人だよ」
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