初級技能者の執行者~クラスメイトの皆はチート職業だが、俺は初期スキルのみで世界を救う!~

出無川 でむこ

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改稿シリーズ・第一章

第35話 報告の話

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ここは第四会議室
この場にハグレや疾嘉などの、第十三課の人達が全員集まっていた。

今回はアクレアに代わって、実際に現場に向った、セヌーアが主体で話をすることになった。
そう、その話の内容が、ここのリーダーの月ノ城さんの事だった。

重い空気が流れたまま、立花が立ち上がり、アクレアとシルクの様態を話す。

「重症でありますが、命には別条はありません。普通の人なら8ヶ月は掛かる怪我ですが、あの二人なら1ヶ月で治るでしょう。むしろ、あの怪我で生きてたのが凄いですね。まあ、"あの人"の力があれば、すぐ直るでしょう」
「そうか、ありがとう。立花さん・・・じゃあ、本題に入ろうか」

立花は二人の現状報告をして、お辞儀をして座った。
その姿勢はとても礼儀正しく、自分が元の世界にいた頃を思い出す。
ハグレに教えて貰ったのだろうか?
いや、転生者のハグレはそんな感じな雰囲気じゃなかった。
元の世界みたいな似ている場所でもあるのだろうか?

他にも、あの人とは?明らかに、命に関わるほどの重症だったのに。
1ヶ月で、治療するほどの、凄腕の治癒師がいるのであろうか?
それこそ、アイリスの古代魔法でも無い限りは、難しい。
なんせ、月ノ城の武器は、回復無効化する能力があるのだから。


「この場に皆が集まってくれた事は感謝する。集まったのは他でもない、今回の任務で起きた事だ。そして、何故ここまで重症になって帰ってきたのか」

その場が緊張が走る。
セヌーアは頭を指で掻く、そして難しい顔をする。
そのまま、ため息をして、話す。

「知っての通りに、アクレアとシルルはウサさんにやられた。それも自分の仲間を知ってて、尚、本気で殺しに来た。」

俺たちは、未だに信じられなかった。
あの面倒見の良い、ウサさんが基地の人達をを殺しに来たと言う真実を聞かされる。
何故、襲い掛かってきたのか。

「そして、誰かに操られている。そいつさえ、分かればいいのだが・・・それが出来なかった」
「ウサさんがですが?あの人が操られるなんて。それに何故、操られていると分かるんですか?」

サンクが、焦った表情で、早口になりながら、質問をする。
セヌーアは、「まあ、待てと」言って、食いついてくるサンクを止める。
そう言われて、再び椅子に座り、回答を待つ。

「それは、ウサさん本人が言ってたんだ。だが、人物までは聞くことは出来なかった。本人曰く、呪いみたいの物らしい、人物の名前を言えば、ツキノギ ウサは死ぬと、言う呪いをな」
「バカな!そんな呪いなんて聞いたことないぞ!」
「だが事実だ、現に私が直接目の前で聞いたんだ、間違いはない。」

今度は、興奮して立ち上がり、お互いに口調が強くなる。
周りは空気が、重い。
それは無理もないだろう、一番やられなさそうな人がやられたのだから。
隣にいた、立花がハグレを宥め、なんとか落ちつく。
しばらくして、セヌーアは話を戻す。

「そして、呪いの影響なのか、ウサさんの身体の半分が黒く浸食されていた。もはや、見た目は半分化け物になってたよ。むしろ、あの状態で意識があったのが奇跡なぐらいだよ」
「そんな・・・」

セヌーアは目を閉じて、あの頃を思い出すように。
周りの人達はただただ絶句する事しかできなかった。

「すまないな、ウサさんを連れて帰る事は出来なかった。あのウサさんは、異様なまでに強かった。何度か本気で戦ってきたけど、あの強さ桁違いだ。私でも、捌くので精一杯だったよ。」

そういえば、俺は月ノ城さんは能力を知らなかった。
ふと疑問に思い聞いてみた。

「そういえば、俺、月ノ城さんの能力知らないんですけど、どんな能力なんですか?」
「あぁ、ウサさん説明してなかったのか・・・。」

セヌーは俺を見て説明を始める。

「ウサさんの能力は特殊なんだ」
「特殊とは?」
「皆のステータスにはHP、SP、MPがあることは知ってるよな?」
「まぁ、そうですね・・・。基本的なステータスですよね。魔力と魔素を使って戦うんですよね。」

セヌーアは頷いた、そこは基本情報だし誰もが分かる事だろう。

「ウサさんのステータスにはそれに加えて、第4のステータスの【心象】という物があるんだ。」
「はい?」

殺意?俺は思わず、変な顔になってしまった。
セヌーアは「まぁ待て」と言わんばかりの顔をして話を始める。

「ウサさんは、その【心象】が強いほど、ステータスが飛躍的に向上するんだ。それが元になるのが、魔力でも、魔素でもなく、彼の原動力【殺意】だ。その代わり、デメリットが血を求めて、人殺しをするんだが・・・」
「ひ、人殺しですか・・・」

すると、疾嘉が付け加えるように話す。

「ウサさんは悟りの極致というスキルがあるので本来は殺人衝動の効果は打ち消しになってるなの。だから、基本的に暴走することもないです・・・なの」
「あぁ、そうだね。だが、呪いのせいなのか、悟りの極致が機能しなくなっているんだ。それどころか、【殺意衝動】の性能がさらに上がっているんだ、これがまた厄介でな」
「何があったんですか?」

セヌーアは頭を抱え込み語る。

「魔力と魔素が、殺意によって"殺されてる"」
「えぇー・・・・?」


殺されてる?消耗でも、無くなるわけでもなく、殺されているという表現。
俺はどういう意味か分からず、混乱する。

「困惑してるね、まぁ無理もないか。本来なら、魔力と魔素がなくなるって、言えばピンと来るんだろうけど、あれは殺されているよ。魔力と魔素が使えなくなるのはまだいいのだが、周りの魔素を吸おうとすれば、その死んだ魔素の影響で能力が使えなくなるどころか弱体化してしまう。魔力を使えば、その魔力は死に技の威力も弱体化していまう。なんせ、人間の死体を食ってるもんと同じだよ」

え?詰んでないですか?
仕えなくなるどころか、弱体化するとか厄介でしかなかった。

「だが、弱点はあった。それは魔力の身体能力強化だ、内側の魔力なら殺意によって殺されずに済むんだ。その辺は、魔力の身体強化がメインのシルクとアクレアさんが有利だったんだけど・・・」

セヌーアは少しどもるが再び話し始める。

「ウサさんは、フヴェズルングのリーダーで全員を纏めていた。私達の事を"知り過ぎた"んだ。彼の観察眼を甘く見過ぎていた。正気を失っても、あの見つめる眼は、変わらずだったよ。その結果、私たちの攻撃を全て防がれてしまった。そして負けた」
「はいー、あの人は、たまに何を考えているか、分からないから、尚更たちが悪い・・・なの。それに変に記憶力がいいですからね。基地のいる人達が、2000人いるとして、全員の名前を言えますから・・・なの。だから、一度見た技は、即座に記憶して、脳内でシュミレートして、観察するんです。まったく・・・あの変態は、本当にたちが悪い・・・なの」

セヌーアさんは、困った表情をして、疾嘉は、ブツブツと文句を言う。「まあ、直ぐに新しい技を開発すれば良い」と言って、さらっととんでもない事を言う。
そう、月ノ城さんはフヴェズルングを全てを知っている。
その異常までの、記憶力は、メンバーのスキル、能力を全てを把握している。
しかも、一度見た技は、ほぼほぼ、効かないときた。
うん、実にチート過ぎる能力だ。

だけど、彼は知り過ぎている"だけ"だ。全部を知っているわけでもない。
なら俺がやるべきことは。

「なら、俺が行きます。」

メンバー全員が一斉に俺の方を向いた。
そして、セヌーアが言う

「無茶なこと言うな、お前ひとりでは・・・」
「一人ではありません」

そう言うと、アイリスが立ち上がる。ファフニーとクレナは、座ったまま、こちらを見つめる。
そう一人ではない、俺にはアイリス、クレナ、ファフニーがいる。
俺たちは、修業して強くなったんだ、それに。

「それに、僕たちは入ったばかりですし、ウサさんは、それと同時に出て行ったんです。なら僕たちの情報は、まだ少ない筈です」
「しかし・・・」

すると、思わない所で助け船が来た。
それは疾嘉さんだった。

「大丈夫なの、今のクソスギさんは前と比べて、強くなってるの。」
「おい待て、聞き捨てならない事を言われたような気がするぞ。」

前言撤回だ、やっぱり性悪腹黒女だ。
俺は心の中で怒るが、反論しないでおこう、後が怖いからな。

「この私が保証するなの」

セヌーアはしばらく、考え込んだ。
10分経っただろうか、口を開けて言う。

「分かった、疾嘉さんが言うなら、信じてみよう」
「ありがとうございます!」

すると、予想外の出来事が起きた。
そう、サンクだった。
サンクは立ち上がって話す。

「なら、俺も行かせてください!入ってきたばかりなので情報が少ないはずです!直接戦うことができませんが、援護はできます!行かせてください!お願いします!」
「ふむ」

サンクの表情は必死だった。
今までの穏やかの表情と違って、何かあったのだろうか?
すると、セヌーアは必死に頼むサンクに、負けたのか観念した。

「わかったわかった、クロスギも良いか?」
「大丈夫です、サンクさんよろしくお願いします」
「クロスギさん!よろしくお願いします!!」

そう言って、俺達は月ノ城さんを連れて帰る班ができたのだった。
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