『過労死からの異世界転生、固有能力はまさかの「鑑定改変」!?~無能呼ばわりで追放されたけど、僕こそが真の救世主でした~』

Yuki

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第1章:転生と希望の始まり

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 真っ暗な視界が、ゆっくりと光を取り戻していく。目を開くと、そこは見慣れない天井だった。会社の蛍光灯ではなく、木と石でできた、ごつごつとした質感を帯びた天井。
「……僕、死んだんだっけ?」
 朧げな意識の中で、最後の記憶が蘇る。残業、残業、また残業。ろくに寝る間も惜しんで働き続け、気がつけば机の上で意識が途切れていた。あれは徹夜明けの朝、ようやく終わったプロジェクトの報告書を提出した直後だったか。
 結局、僕は誰にも見向きもされずに、会社という名のブラックホールに吸い込まれるように消えていったのだ。誰も僕の異変に気づかなかった。いや、気づいていたとしても、見て見ぬふりをしたのかもしれない。そんな孤独感が、心の奥底に染み付いていた。
 その時、頭の中に直接響くような声が聞こえた。性別も年齢も判別できない、けれどどこか安心感を覚えるような声だ。
「さようなら、佐久間蓮司。君の生は、あまりにも報われなかった」
 僕は驚いて身を起こした。あたりを見回すが、誰もいない。声は、僕の思考に直接語りかけてくるようだった。
「だからこそ、新たな生を授けよう。君には特別な力、『鑑定改変』を与える」
 鑑定、改変? なんのことだろうか。混乱する僕の脳裏に、いくつもの情報が流れ込んでくる。それはまるで、インストールされるソフトウェアのように、僕の知識と融合していく感覚だった。
「その使い方は、君自身で学びなさい。だが、一つだけ忠告しておこう。この力は、君の心のあり方次第で、良くも悪くも化けるだろう」
 神と名乗る声は、それだけを告げて消えた。残されたのは、僕の胸の中に芽生えた、今まで感じたことのない、漠然とした希望だった。
 僕はベッドから降りた。どうやらここは、どこかの宿屋の部屋のようだ。窓の外からは、賑やかな街の喧騒が聞こえてくる。石畳の道を行き交う人々、見たこともない動物が引く馬車、そして、僕が着ている服も、日本のものとは全く違う。
「異世界……転生、か」
 テレビや漫画でしか見たことのないシチュエーションが、今、僕の身に起きている。
 部屋を出て、宿屋の主人に声をかけられ、僕は自分が「アルテシア」という世界に転生したこと、そして神の計らいか、旅立つためのいくらかの金銭が支給されていることを知った。
 王都の大通りは、活気に満ち溢れていた。そんな僕の目の前を、ひときわ目を引く一団が通り過ぎる。鎧を身につけた屈強な戦士、杖を持った美しい魔導士、そして、光を纏う聖女。彼らの中心には、抜きん出たカリスマを放つ青年がいた。
 その青年が、僕に目を留めた。
「そこの君、もしや冒険者を探しているのか?」
 僕は言葉を失った。その青年こそ、この世界の英雄、「勇者カイル・グランディス」だった。彼の周りには常に人が集まり、その一挙手一投足に熱い視線が注がれている。そんな彼が、何の取り柄もない僕に話しかけてきたのだ。
「僕ですか?」
「そうだ。君から不思議な力を感じる。どうだ、僕たちのパーティーに入らないか?」
 カイルは、僕の「鑑定改変」の力を感じ取っていたのだろうか。僕は胸の高鳴りを抑えきれなかった。転生して、いきなり勇者パーティーにスカウトされるなんて。これまでの僕の人生とは真逆だ。誰も認めてくれなかった僕が、ついに必要とされる場所を見つけたような気がした。
 しかし、喜びもつかの間だった。僕は早速、「鑑定改変」の能力を使ってみようと試みる。ステータス画面のようなものが目の前に浮かび上がり、カイルや他のパーティーメンバーの能力値が表示される。
 カイル・グランディス。職業:勇者。レベル:90。攻撃力:S++。防御力:A+。
 まるでゲームの世界だ。次に、僕自身のステータスを見てみた。
 佐久間蓮司。職業:なし。レベル:1。攻撃力:E。防御力:E。
 そして、「固有能力:鑑定改変」と表示されている欄には、「???」の文字。何度試しても、鑑定と改変の方法がわからない。僕は途方に暮れた。
 「僕、この能力がまだよく使いこなせなくて……」
 僕が正直にそう告げると、カイルの隣に立つ魔導士のミリアが、鼻で笑った。
「ふん、なんだっての? そんな能力、本当に使えるの? 役立たずなら邪魔なだけよ」
 ミリアは冷たい目を僕に向けてきた。隣に立つ聖女のリリアは、何も言わず、ただ僕を見ているだけだった。
 勇者パーティーに加入できた喜びは、一瞬にして不安へと変わった。未知の能力への戸惑いと、すでに僕に向けられている蔑んだ視線。転生前の僕を誰も助けてくれなかった孤独感が、早くも僕の心を蝕み始めていた。
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