ほっかいどいんこ!

ぽんたしろお

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ほっかい豆いんこ(いんこ小噺集)

初めてのインコの名前がピーちゃんになるのは何故か?

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 初めて飼うインコに鳥の代表的な名前を無意識に付けてしまうパターンが多い。
ピコちゃん、ピーちゃん、ピースケ等々……


 心当たりがあって「うっ」とうめいている方がいるはずだ。私は超能力者ではない。これは心理学の問題だ(笑)!

 飼い主にとって初めてのインコである。インコを飼いたいとずーっと憧れていたにしろ、何かの拍子に連れて帰ってきたにしろ、今までの生活に存在しなかった「鳥」が 自分の横にやってきた時、人はどんな反応を示すのかを考えてみよう。
「鳥だぁ。インコだぁ。ほんとに鳥だよぉぉぉ!」
 視覚と聴覚と触覚――己に備わっている感覚を総動員して鳥を実感し、鳥にどっぷり浸かって……

 幸せ――と感慨にふけってる暇は、残念ながら全然ない。
 初めてインコは雛であるケースが多いので、雛に餌を与えるというミッションにすぐに取り掛からなければならないからだ。 
 勿論、ブリーダーさんにしろ、ペットショップにしろ、説明は聞いてきている。しかし、聞くのとやるのとは全然違う。初心者飼い主は何をどうしたらいいのか、よくわからない状態で、目の前の雛に、孤独感にまみれつつ対処する不安しかない。

 雛といっしょに購入した餌の準備を始めるも、加減がよくわからない。用意した状態が正解なのかどうかを判断する経験者はいないのだ。
 不安にまみれた初心者飼い主が、不安しかない餌を不安定な手つきで雛に差しだす。不安は雛にも伝わる。
それでなくても、雛も暗い箱から出てみれば、今までとは全く違う環境に驚き、自分の置かれた身に不安がいっぱいなのだ。
 初心者飼い主も不安だらけなら、雛も不安しかない。場の空気感はピキピキと音が鳴ってもおかしくない極度の緊張感に包まれる。

「餌だよ、ピーちゃん」
 と初心者飼い主に差しだされた餌に、身構えた雛は、
「あれ?これ、もしかして、もしかして、ほんとにもしかしたら餌?」
と考え、しばしの思考時間を経て、餌だと判断するや緊張を一挙に解除し、突然壊れたように餌に食らいつく。
「ピ、ピーちゃん…」
初心者飼い主は、最初に差しだす餌をほんのちょっとの量にして様子見しているはずなので、あっと言う間に餌がなくなる。凄まじい破壊力でスプーンまで食べそうな勢いの雛に、初心者飼い主は驚き、その破壊的な食欲に恐怖すら感じるのだ。
早く餌をよこせ!とわめく雛。
「わかった、待って、すぐにあげるから、ピーちゃん」
 慌てて今度は盛り盛りの餌を差しだすと、雛はガツガツと食らいつき、そして次の瞬間、餌を飲みこみきれずウッとなる。
「ピツ、ピーちゃんっっ⁉」
飼い主から緊張の汗がふきだす、どうしよう⁉
 と。雛が体制を立て直し、餌を自力でのみこんだ。羽をブルンと震わせ、体制を立直すと、再び餌に元気に食らいつき始めた。
「ピーちゃん、よかった~~」
からだじゅうの緊張が一挙にとける思いに包まれる初心者飼い主。
 雛と初心者飼い主の心がつながる感動の瞬間、である。

 お気づきになったと思うが この時点で、雛はすでに「ピーちゃん」になってしまっている。おそらく雛を店から連れ帰る道中、名前はどうしようかな~?と悠長に考えていたハズなのに、だ。
 要するに、目の前の雛に対処するので精一杯で名前を考える余裕など ぶっとんでしまうのだ。不安と緊張状態の中、雛に差し餌をし、ちゃんと食べてくれた喜びをかみしめるというジェットコースターな精神状態のなか、代表的な鳥の名前を思わず知らず連呼し続けてしまうのは、致し方ない話である。

 そして、このような精神状態で叫んだ名前を、冷静さを取り戻しふと気づいて変更しようと思った段階では、 時既に遅しである。今や すっかり心の通じあった雛は、己の名前を「ピーちゃん」と認識している。
 今更、ごめん、それは仮の名前だったといっても、雛にわかるはずがない。
 飼い主にしたって緊張状態で無意識に叫んだピーちゃんこそ、真の名前になっていて、他の名前に変更しようと思ったところで、どうしたってピーちゃんを、ピーちゃん以外の名前で呼ぶことなど腑に落ちない状態になっているのだ。
 従って、最初に飼うインコの名前は、ほぼほぼピーちゃんまたはそれに準じる名前になるのだ。説得力あるでしょ?

 ちなみに、うちにきた初めてのインコは雛ではなかったが、気が付いたら「ピコちゃん」と呼んでいて、ピコちゃんもピコちゃんと自覚していたので、名前を変更することはもはや出来ない状態だったw。
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