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三話 出逢い回想
五
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ーー数日後のこと。
朝起きると、保温器の中の卵の殻が所々ひび割れているのを確認する。
『われてる! もうすぐ生まれるんだ』
数分間置きに殻は少しずつ保温器の底にボロボロと落ちていく。ひび割れの隙間からはうっすらと黄色い羽が見えている。段々と卵の揺れが大きくなり、中から『ピーピー』と小さくか細い鳴き声が聞こえてきている。
『……がんばれ、……がんばれ……!』
自ら殻を破り必死に生まれようとしている。
ココロは心の底から温かい気持ちが溢れてきて、それが声となり発せられた。
ピキッ……ピキピキピキッ……バリバリッ
『ーーピ、ピィ、ピィー』
『生まれた! ピヨさん生まれた!』
卵からごろりと身体をくねらせて出てきたのはしっとりと濡れた生まれたてのピヨだ。ココロの顔を見て一生懸命鳴いている。
『……とってもキレイな目』
通常のピヨの目の色は黒に近い茶なのだが、このピヨは青い目をしていた。
生まれたてのピヨの誕生に立ち会い、ココロの胸には嬉しさが込み上げる。
ともだちがほしいなんて思ってなかったのに、ピヨさんが生まれてくれて本当によかったって……うれしいってキモチでいっぱいになってる……!
『そうだ、ママ! パパ!』
思い出したように部屋を飛び出し両親を呼んでピヨが生まれたことを報告する。両親も一緒に喜びココロの頭を撫でてやった。
『これでココロは【主】だな』
『あるじ?』
『そう。主でもあり、親でもあり、ココロは七歳でビッグ成長を遂げたわね』
『これからココロがこの子のお世話をするんだ』
『おせわをする人が……あるじ? おや……パパとママもあるじ?』
『いいや、主はピヨにとっては一人だけだ。ピヨにとっての特別な存在だな』
『ココロにとっては特別なお友達。絶対無二の存在。それが主よ』
『?』
難しい内容だ。主で親で特別な友達。結局どれが本当なのかはわからない。ただ父親は言っていた。《好きだと思ってくれる友達が生まれてくる》と。それは絶対性のある関係を築くということ。
『ココロ。コレを』
母親からはA4サイズのファイルと日記を渡される。ファイルにはしおりがいくつも挟まっており、開くとルーズリーフが何枚も綴じられていた。ココロにも読めるように平仮名が多く、漢字にはふりがなが振ってある。
『コレはピヨのお世話ファイル。お世話の仕方が書いてあるわ。生まれたばかりのピヨにはまだ触れてはダメよ?』
ファイルの中をめくるとピヨの世話の手順がわかりやすく書かれている。母親が指で文字を辿った箇所には注意点として《触らない! 生まれたばかりのピヨにバイ菌が入るから絶対ダメ!》と書かれている。
『このファイルをしっかり読んでお世話してね。成長日記も忘れずに。そうすればあなたはピヨマスターよ』
『それは言い過ぎだな』
夫婦は仲睦まじく笑い合った。娘の頭をもう一度撫でてやりながら父親はこう言った。
『お世話、頼んだぞ』
『……うん!』
親から頼まれ事をされることで自信がむくむくと湧いてくる感覚が確かにある。改めてピヨに向くと、また違うものが湧いてくる。温かなもの、それは家族が与えるであろう無償の愛なのかもしれない。
『よろしくね。……クックさん』
『クック? それが名前?』
『早いな、もう名付けたのか』
『うん』
『どうしてクック? まるでニワトリみたいだわ』
ココロは生まれたばかりのピヨを見て強く思い、強く、願ったのだ。
『ヒヨコさんがニワトリさんにせいちょうするみたいに、りっぱで力づよくて、ちゃんと大人にせいちょうしてほしいから。クックッて鳴いてくれるようになるまで、わたしががんばってそだてたいの。それに……たまごから出てくるまえにね、クックって言ってた気がしたから』
『……ココロがそう言うなら、そうなんだろうな』
『ええ、そうなのね。あなたはクックと言うのね』
家族が見守る中、クックと命名された雛は元気よく鳴き声を上げている。
朝起きると、保温器の中の卵の殻が所々ひび割れているのを確認する。
『われてる! もうすぐ生まれるんだ』
数分間置きに殻は少しずつ保温器の底にボロボロと落ちていく。ひび割れの隙間からはうっすらと黄色い羽が見えている。段々と卵の揺れが大きくなり、中から『ピーピー』と小さくか細い鳴き声が聞こえてきている。
『……がんばれ、……がんばれ……!』
自ら殻を破り必死に生まれようとしている。
ココロは心の底から温かい気持ちが溢れてきて、それが声となり発せられた。
ピキッ……ピキピキピキッ……バリバリッ
『ーーピ、ピィ、ピィー』
『生まれた! ピヨさん生まれた!』
卵からごろりと身体をくねらせて出てきたのはしっとりと濡れた生まれたてのピヨだ。ココロの顔を見て一生懸命鳴いている。
『……とってもキレイな目』
通常のピヨの目の色は黒に近い茶なのだが、このピヨは青い目をしていた。
生まれたてのピヨの誕生に立ち会い、ココロの胸には嬉しさが込み上げる。
ともだちがほしいなんて思ってなかったのに、ピヨさんが生まれてくれて本当によかったって……うれしいってキモチでいっぱいになってる……!
『そうだ、ママ! パパ!』
思い出したように部屋を飛び出し両親を呼んでピヨが生まれたことを報告する。両親も一緒に喜びココロの頭を撫でてやった。
『これでココロは【主】だな』
『あるじ?』
『そう。主でもあり、親でもあり、ココロは七歳でビッグ成長を遂げたわね』
『これからココロがこの子のお世話をするんだ』
『おせわをする人が……あるじ? おや……パパとママもあるじ?』
『いいや、主はピヨにとっては一人だけだ。ピヨにとっての特別な存在だな』
『ココロにとっては特別なお友達。絶対無二の存在。それが主よ』
『?』
難しい内容だ。主で親で特別な友達。結局どれが本当なのかはわからない。ただ父親は言っていた。《好きだと思ってくれる友達が生まれてくる》と。それは絶対性のある関係を築くということ。
『ココロ。コレを』
母親からはA4サイズのファイルと日記を渡される。ファイルにはしおりがいくつも挟まっており、開くとルーズリーフが何枚も綴じられていた。ココロにも読めるように平仮名が多く、漢字にはふりがなが振ってある。
『コレはピヨのお世話ファイル。お世話の仕方が書いてあるわ。生まれたばかりのピヨにはまだ触れてはダメよ?』
ファイルの中をめくるとピヨの世話の手順がわかりやすく書かれている。母親が指で文字を辿った箇所には注意点として《触らない! 生まれたばかりのピヨにバイ菌が入るから絶対ダメ!》と書かれている。
『このファイルをしっかり読んでお世話してね。成長日記も忘れずに。そうすればあなたはピヨマスターよ』
『それは言い過ぎだな』
夫婦は仲睦まじく笑い合った。娘の頭をもう一度撫でてやりながら父親はこう言った。
『お世話、頼んだぞ』
『……うん!』
親から頼まれ事をされることで自信がむくむくと湧いてくる感覚が確かにある。改めてピヨに向くと、また違うものが湧いてくる。温かなもの、それは家族が与えるであろう無償の愛なのかもしれない。
『よろしくね。……クックさん』
『クック? それが名前?』
『早いな、もう名付けたのか』
『うん』
『どうしてクック? まるでニワトリみたいだわ』
ココロは生まれたばかりのピヨを見て強く思い、強く、願ったのだ。
『ヒヨコさんがニワトリさんにせいちょうするみたいに、りっぱで力づよくて、ちゃんと大人にせいちょうしてほしいから。クックッて鳴いてくれるようになるまで、わたしががんばってそだてたいの。それに……たまごから出てくるまえにね、クックって言ってた気がしたから』
『……ココロがそう言うなら、そうなんだろうな』
『ええ、そうなのね。あなたはクックと言うのね』
家族が見守る中、クックと命名された雛は元気よく鳴き声を上げている。
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