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九話 進化
一
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わかってた……ママもパパも帰って来ないって。でももしかしたら、お家でまってたら帰って来るかもしれないって思ったの。カミサマにおねがいすれば会わせてくれるかもって。でもダメだったみたいーー
「んん……こほっこほっ」
瞼が重くひりひり痛い。泣いたことで喉が嗄れて痛み、声はかすれてしまっている。しかし気持ちは大分落ち着いたようで冷静になれている。ゆっくりと開眼し体を起こした。
「オハヨウゴザイマス」
「え……ーーーーッ!? ぅうわああああっ!?」
「ワァアアアアアアアアッッ!!?」
目の前には知らない人がいた。そもそも人かも分からなかった。
体は上半身裸で筋肉質であり黄色がかった肌の色、下半身は白い毛並みに覆われて太い脚は鳥そのもの。そして顔は右向きのニワトリの頭巾を被っている。身長もかなり高く伯父や祖父よりも高い。
まったく理解が追いつかず叫んでしまったが、自分の叫び声よりよっぽど大きな声で叫んだ相手。わけがわからない。
逃げたいのに力が入らず立ち上がることが出来ない。ビクビクと震える手を床につき後退りながらも相手をよく観察する。
「ハアアアアァァ…………ビックリシマシタ……」
「……だ、だれ……?」
わなわなと恐怖で全身を震わせながらも声を絞り出して聞いてみる。
そのニワトリは首……頭巾を傾げてから両手を挙げて高らかに笑う。
「HAHAHA! 主は面白いコトを言いマスネ! ワタシ、クックデース!」
「…………!?」
『クック』と名前を出されて床中を見渡した。眠ってしまう前は確かに床を駆け回っていたはずのクックがいないことに気付く。
「クックさん……クックさんどこ!?」
「デスカラ、クックはワタシデス」
「クックさんはもっと小さいもん!」
「ソウデシタが、ワタシは進化シタノデスヨ」
「しんか……?」
そう言われると妙に冷静になってきた。進化がかなり遅れていた為、いつ進化してもおかしくはなかった。しかし目の前にいる得体の知れない相手をクックと信じるにはまだ情報が足りなすぎる。
「クック、さん……?」
「ハイ!」
「わたしの名前……しってる?」
「主の名前はココロデース! ワタシはクックデース!」
愉快なテンションについていけないでいる。目を泳がせてなんとかもっと情報がないかと見ていると、脚首に巻かれている紺色のベルトを見て指差す。
「それくびわ!」
「アッ、ハイ。首に巻イテイタラ苦シカッタノデ脚に巻イテミマシタ。常磐のオバアチャンが脚に巻イテミテモイイと言ッテイタノデ」
「ときわのおばあちゃんしってるの?」
「ハイ。常磐のオバアチャンにモラッタ首輪デス。主、言ッテクレマシタ。ワタシの目と一緒で似合ッテルト」
常磐の老婆を知っていることや首輪をもらったこと。首輪を脚に巻いてみてもいいと言われたことは自分と凛々華しか知らない。目の色と一緒で似合ってると言ったこと。それは自分と、言った相手であるクックしか知らないはずだ。
「……クックさんの目の色……何色かしってる?」
通常のピヨの目の色は黒か茶色だ。しかしクックは何故か青い目をしていた。
「知リマセン。デモ、主が教エテクレマシタ。トッテモキレイな目と。生マレタ時、ソウ教エテクレマシタネ」
『……とってもキレイな目』
そう言ったことを確かに覚えている。クックの特徴は正に目の色だ。自分と同じ、青い目。
「……その頭にかぶってるのとれる?」
「クエッ!? ココッコレは取レマセンッ! 恥ズカシイデス!」
慌てた様子で頭巾の両端を掴んで下に引っ張っている。
「はずかしい? でもとれるの?」
「取レマスが取レマセン!」
「あ……」
自分が小学一年生の時、似たようなことがあったことを思い出した。髪や目の色をクラスメートにバカにされてから帽子を目深に被っている時期があった。またバカにされるのではないかと恥ずかしい思いをしていた。
しかし幼なじみのある言葉で吹っ切れたのだ。
「……それがお前なんだから、かくすことないだろ」
「エ?」
「親からもらったものだから、はずかしいものじゃないだろ。……って、言われたことあって、わたしはそれで大丈夫だったけど……はずかしいって思ってるのにむりやりとるのはわるいことだから、いまはやめとく」
「主……」
「クックさん、なんだよね?」
「ハイ、クックデース!」
小雛の姿からはあまりにもかけ離れた、まるで人間のような姿。しかし明らかに作り物ではない鳥の脚。下腿の毛並みはよく見れば細かい羽毛である。頭巾は作り物のように見える。きっとその下に本当の顔があるのだろう。分からないことだらけの謎の生物だが、ピヨという存在自体まだ謎だらけだ。初めは恐怖を感じたが今はもう怖くはなかった。
「んん……こほっこほっ」
瞼が重くひりひり痛い。泣いたことで喉が嗄れて痛み、声はかすれてしまっている。しかし気持ちは大分落ち着いたようで冷静になれている。ゆっくりと開眼し体を起こした。
「オハヨウゴザイマス」
「え……ーーーーッ!? ぅうわああああっ!?」
「ワァアアアアアアアアッッ!!?」
目の前には知らない人がいた。そもそも人かも分からなかった。
体は上半身裸で筋肉質であり黄色がかった肌の色、下半身は白い毛並みに覆われて太い脚は鳥そのもの。そして顔は右向きのニワトリの頭巾を被っている。身長もかなり高く伯父や祖父よりも高い。
まったく理解が追いつかず叫んでしまったが、自分の叫び声よりよっぽど大きな声で叫んだ相手。わけがわからない。
逃げたいのに力が入らず立ち上がることが出来ない。ビクビクと震える手を床につき後退りながらも相手をよく観察する。
「ハアアアアァァ…………ビックリシマシタ……」
「……だ、だれ……?」
わなわなと恐怖で全身を震わせながらも声を絞り出して聞いてみる。
そのニワトリは首……頭巾を傾げてから両手を挙げて高らかに笑う。
「HAHAHA! 主は面白いコトを言いマスネ! ワタシ、クックデース!」
「…………!?」
『クック』と名前を出されて床中を見渡した。眠ってしまう前は確かに床を駆け回っていたはずのクックがいないことに気付く。
「クックさん……クックさんどこ!?」
「デスカラ、クックはワタシデス」
「クックさんはもっと小さいもん!」
「ソウデシタが、ワタシは進化シタノデスヨ」
「しんか……?」
そう言われると妙に冷静になってきた。進化がかなり遅れていた為、いつ進化してもおかしくはなかった。しかし目の前にいる得体の知れない相手をクックと信じるにはまだ情報が足りなすぎる。
「クック、さん……?」
「ハイ!」
「わたしの名前……しってる?」
「主の名前はココロデース! ワタシはクックデース!」
愉快なテンションについていけないでいる。目を泳がせてなんとかもっと情報がないかと見ていると、脚首に巻かれている紺色のベルトを見て指差す。
「それくびわ!」
「アッ、ハイ。首に巻イテイタラ苦シカッタノデ脚に巻イテミマシタ。常磐のオバアチャンが脚に巻イテミテモイイと言ッテイタノデ」
「ときわのおばあちゃんしってるの?」
「ハイ。常磐のオバアチャンにモラッタ首輪デス。主、言ッテクレマシタ。ワタシの目と一緒で似合ッテルト」
常磐の老婆を知っていることや首輪をもらったこと。首輪を脚に巻いてみてもいいと言われたことは自分と凛々華しか知らない。目の色と一緒で似合ってると言ったこと。それは自分と、言った相手であるクックしか知らないはずだ。
「……クックさんの目の色……何色かしってる?」
通常のピヨの目の色は黒か茶色だ。しかしクックは何故か青い目をしていた。
「知リマセン。デモ、主が教エテクレマシタ。トッテモキレイな目と。生マレタ時、ソウ教エテクレマシタネ」
『……とってもキレイな目』
そう言ったことを確かに覚えている。クックの特徴は正に目の色だ。自分と同じ、青い目。
「……その頭にかぶってるのとれる?」
「クエッ!? ココッコレは取レマセンッ! 恥ズカシイデス!」
慌てた様子で頭巾の両端を掴んで下に引っ張っている。
「はずかしい? でもとれるの?」
「取レマスが取レマセン!」
「あ……」
自分が小学一年生の時、似たようなことがあったことを思い出した。髪や目の色をクラスメートにバカにされてから帽子を目深に被っている時期があった。またバカにされるのではないかと恥ずかしい思いをしていた。
しかし幼なじみのある言葉で吹っ切れたのだ。
「……それがお前なんだから、かくすことないだろ」
「エ?」
「親からもらったものだから、はずかしいものじゃないだろ。……って、言われたことあって、わたしはそれで大丈夫だったけど……はずかしいって思ってるのにむりやりとるのはわるいことだから、いまはやめとく」
「主……」
「クックさん、なんだよね?」
「ハイ、クックデース!」
小雛の姿からはあまりにもかけ離れた、まるで人間のような姿。しかし明らかに作り物ではない鳥の脚。下腿の毛並みはよく見れば細かい羽毛である。頭巾は作り物のように見える。きっとその下に本当の顔があるのだろう。分からないことだらけの謎の生物だが、ピヨという存在自体まだ謎だらけだ。初めは恐怖を感じたが今はもう怖くはなかった。
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