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馴れ初め
一
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他国巡りの拠点としているペンションには四人住んでいるが、今日ペンションにいるのはアルスとローランだけで他の二人は非番で出掛けている。
「ローラン、少し街を見て回りたい。ついてきてくれるか」
「はい、お供します!」
ローラン・リン・リディネクトは、アルス・シース・ソゾットの元側近である。主従関係ではあるが友人のように仲が良い。
ローランの仕事は身辺警護だが、拠点としている日本は大した危険はほぼ無いのでただ友達と遊びに行く感覚に近い。しかし油断出来ないのがこの仕事である。
――でもやっぱり気は抜ける。アルス様とよく城を抜け出して城下に遊びに行ってた時みたいだ。懐かしいな……
アルスがまだ王ではなく王子だった頃、側近に成り立てだったローランに黙って抜け出したりとやんちゃだった。
ローランもそんなアルスに出し抜かれないように先回りをして対策していた。そんなやり取りを繰り返していく内に打ち解けて仲良くなったのだ。
「どうした? ボーッとして」
「あっ……いえ、ちょっと昔を思い出してて。アルス様、あの頃結構トガッてたけど今は丸くなったよな~って」
「あの頃とはいつの話だ?」
「俺が側近になったばっかりの頃っスよ」
「ああ、あの頃か。思い出すと恥ずかしいな。若気の至りというか、俺も無知で散々なことをしていたからな」
「今は立派な王様っスもんね。またこうやって一緒に街を歩けるなんて俺嬉しいっスよ」
「はは、そうか。外交が無い日はこうして一緒に街を散策してゆったりとした時間を過ごせる。贅沢な日々だな」
数年前のことで思い出話に花を咲かせながら街の散策をする。午前はただ街や店を見て回り、昼時になるとアルスから提案される。
「そうだ、最近良い喫茶店を見つけたんだ。ローランに紹介したい」
「えっ、行きたいっス!」
「よし。決まりだな」
「でも昼時だからちょっと混んでるかもしれないっスね」
「それがな、オープンしたばかりなのに大々的に宣伝していないらしく、客がまだそんなに入っていない喫茶店なんだ。しかしとてつもなく料理とコーヒーが美味い」
「なんスかそれ、穴場スポットってヤツっスか!? アルス様の見る目ハンパないスね!」
舌が肥えているだろうアルスを唸らせる程なら相当美味いのだろうと、ローランはまだ見ぬ喫茶店に期待が膨らんでいく。
アルスも自分のことのように誇らし気になりながら例の喫茶店へ案内する。
「異国人喫茶?」
喫茶店の看板には【異国人喫茶 Chirp】と書かれている。
「主に従業員が外国人で構成されているらしい。外国人の職業訓練を兼ねていたり、訳ありだったり、そういう理由で大々的には宣伝せず少人数の限られた客を相手にしているらしい」
「やたら詳しいスね」
「実はここはベガに教えてもらってな。雰囲気の良い店だと言われて来てみたらすっかり気に入ってしまってもう何度か来ている。店長ともよく話すぞ」
「へえ~シリスさんのお墨付きとか、なんかもうヤバイくらいスゴい店って感じがしてきました」
「じゃあ入るか」
「はい!」
ローランが扉を開けると扉に付いている鐘がカランカランと鳴る。開けて待っているとアルスが先に入り、ローランも後から入ると店内の独特なBGMを聴いて目を瞬かせた。『ホーホケキョ』とウグイスの鳴き声が聴こえてくる。
「いらっしゃいませ」
「店長。今日も来てしまった」
「アルス様、ご愛顧いただきありがとうございます」
店長と呼ばれた人物はカウンターの中で恭しく深くお辞儀をした。色素の薄い金髪にバンダナを巻いており、にっこりと満面の笑顔。
「今日はベガではなく別の者を連れてきた。ローラン」
「あ、はい! ローラン・リン・リディネクトです」
「僕はアバロ・ルシャード・仁と申します。ここの店長をしています。どうぞ、よろしくお願いします」
「あ、はい、よろしくお願いしますっ」
ーーうわあ……背たっか! 兄貴よりもデカイ! それに名前……ハーフかな? 落ち着いてて大人~って感じ
「お好きな席へどうぞ」
店内はこじんまりとしていて座席は十席。今は他に客がいない為、ローランは三席あるテーブル席の椅子を引いた。
「アルス様どうぞ」
「ああ」
アルスが着席し、ローランも向かい側に座った。そしてメニューに目を通す。
「ここはコーヒーが特に美味くてな。おまかせコーヒーなんてオリジナルがある」
「俺あんまりコーヒーは飲まないんスけど飲めますかね?」
ーー苦いのってあんまり得意じゃないんだよな……
「砂糖やミルクもあるから調整は出来るが、無理はしなくていいと思うぞ」
「えーと……いやっ、試しに飲んでみます。アルス様がうまいってオススメしてくれたしせっかくなんで」
「料理はどれにするか決まったか?」
「アルス様と同じので」
「それでいいのか?」
本当にいいのかと念押しするアルスだが、ローランが意見を変えることはなく、オムライスとおまかせコーヒーを二つずつ注文した。
「ここのBGM珍しいスね。鳥の鳴き声なんて。だから店名が【Chirp】なんスかね?」
Chirpとは鳥や虫のさえずりや甲高い鳴き声という意味。
「そうかもしれないな。目を瞑っていると、午後の陽だまりの中にいるような感じがする」
「午後の陽だまり……? どういう意味スか?」
「穏やかな空間だと言いたいんだが……まあ試しに目を瞑ってみろ」
アルスの言い回しにピンと来なくてとりあえず言われた通り目を瞑ってみる。よく耳を澄ませばウグイスのさえずりだけではなく、風の音や葉の擦れる音などの自然の音も混ざっている。そこに食器の音や注がれる水音、淹れたてコーヒーの芳しい香りが漂ってきて鼻腔をくすぐる。
――午後の陽だまりって正直よくわかんないけど、なんかスゴイゆったりした時間って感じがして落ち着くな
「お待たせしました。先にコーヒーをお持ちしました」
「あ、はいっ」
開眼するとやってきた店長と目が合う。目を瞑っていたのを見られたかと思うと恥ずかしくなりすぐに目線を下へ外した。
テーブルにコーヒーが入ったカップ、ミルクと砂糖が用意される。
店長がカウンターへ戻っていくと、コーヒーカップを持って早速匂いを嗅いでみる。
「おあ~……コーヒーだ」
「ははは、何を当たり前なことを言ってるんだ」
「だってあんまりコーヒー頼まないんスもん」
アルスに笑われてしまって、ローランは苦笑いを返した。
ーー匂いは良いんだけど味がな……。でももう子供じゃないしコーヒーくらい飲めるようになりたい。アルス様はブラックで飲めるし……ブラックで飲めたらカッコイイよな……! うーん……試しに飲んで、ダメだったらミルクと砂糖入れよう
アルスが先に飲んでいるのを見ながらローランもちびちびとブラックのままコーヒーを飲んでみた。
「……わ、意外とイケるかも!」
「店長の気遣いだろうな。見てみろ」
「え?」
アルスがカップの中を見せてくれる。コーヒーの色が全く違い、アルスのものは黒に近い色をしているが、ローランのものは紅茶のようなうっすら赤みがかった茶色だ。
「そうじゃないか? 店長」
カウンターにいる店長に視線を向けるとニコニコと笑いながら応答してくれる。
「勝手なことをしてすみません。ローラン君があまりコーヒーは飲まないと言っていたので、苦手なのかなと思って飲みやすいように少し工夫してしまいました」
「そうだったんスね。だからこんな飲みやすいのか。あ、これもしかしてブラックじゃない……とか?」
「ほんの少しだけブラウンシュガーを入れて甘みをプラスしてバランスを取り、あとお湯を多めにしてコーヒー独特の苦味や酸味を抑えてます」
「ほあ~……なんかスゴく奥深いっスね」
「慣れない内はカプチーノやカフェラテをオススメしてますよ」
「じゃあ今度からカフェラテかカプチーノ頼んでみようかな。ありがとうございます」
「いえ。こちらも勝手にやってしまったので、別にブラックのコーヒー淹れましょうか」
「いやっ、そんなっ悪いっス!」
新しく淹れ直そうとしている店長に向けてブンブンと手を横に振って断るローラン。
するとアルスが二人を見て控えめに声を出して笑う。
「ローラン、俺のを試しに飲んでみるか? 何も入れてないぞ」
「あ……えーと……じゃあ少しだけ」
アルスからカップを受け取り一口飲み下すと、その瞬間に目を瞑り渋面を作った。
「……んん苦っ! いや酸っぱ!? ええっ!? アルス様コレ普通に飲んでるんスか!?」
「アルス様のコーヒーは酸味強めの豆を使っているんですよ」
「前来た時にリクエストしておいたんだ。後味がスッキリする」
「へ、へえ……すごい……」
ーー俺にはまだブラックのコーヒー早いかも……
アルスにカップを返し、自分のカップに砂糖とミルクを足して飲んでみる。やはりまだブラックを飲む境地ではないと改めて感じる。砂糖とミルクを足した方はマシだと思えた。しかしまだコーヒーの美味しさは分からなかった。
数分後にはオムライスがテーブルに届く。見た目からしてトロッとしていそうな半熟卵にブラウンとホワイトのダブルソースのかかったオムライスは食欲がそそられる。真ん中にパセリが乗っていて色合いが綺麗で鮮やかだ。 湯気が立つ熱々のオムライスをスプーンでひと掬いし、口の前まで持ってきて息を吹きかけてから口の中へ運ぶ。
「んっ。ん~~~~うっ! ……んまいっ!」
「な、美味いだろう?」
「はい! 激うまっス!」
感動的な美味しさにスプーンが止まらず、ものの数分で食べ終わってしまった。
ただ美味しかったと店長に一声掛けようと思ったが、食べている間に他の客が数名入ったようで、忙しそうにしていて声を掛けそびれてしまう。精算時は他の若い店員で、店長の姿は見えるものの話すことは叶わなかった。
――店長さん、対応が丁寧で物腰柔らかい感じだし、話し方とか声も優しくて穏やかだし、なんかいいなあ……今度から通おう
すっかり店長のことが気に入ったローランは、これからの癒やしとして【Chirp】に通うことを決意する。
「ローラン、少し街を見て回りたい。ついてきてくれるか」
「はい、お供します!」
ローラン・リン・リディネクトは、アルス・シース・ソゾットの元側近である。主従関係ではあるが友人のように仲が良い。
ローランの仕事は身辺警護だが、拠点としている日本は大した危険はほぼ無いのでただ友達と遊びに行く感覚に近い。しかし油断出来ないのがこの仕事である。
――でもやっぱり気は抜ける。アルス様とよく城を抜け出して城下に遊びに行ってた時みたいだ。懐かしいな……
アルスがまだ王ではなく王子だった頃、側近に成り立てだったローランに黙って抜け出したりとやんちゃだった。
ローランもそんなアルスに出し抜かれないように先回りをして対策していた。そんなやり取りを繰り返していく内に打ち解けて仲良くなったのだ。
「どうした? ボーッとして」
「あっ……いえ、ちょっと昔を思い出してて。アルス様、あの頃結構トガッてたけど今は丸くなったよな~って」
「あの頃とはいつの話だ?」
「俺が側近になったばっかりの頃っスよ」
「ああ、あの頃か。思い出すと恥ずかしいな。若気の至りというか、俺も無知で散々なことをしていたからな」
「今は立派な王様っスもんね。またこうやって一緒に街を歩けるなんて俺嬉しいっスよ」
「はは、そうか。外交が無い日はこうして一緒に街を散策してゆったりとした時間を過ごせる。贅沢な日々だな」
数年前のことで思い出話に花を咲かせながら街の散策をする。午前はただ街や店を見て回り、昼時になるとアルスから提案される。
「そうだ、最近良い喫茶店を見つけたんだ。ローランに紹介したい」
「えっ、行きたいっス!」
「よし。決まりだな」
「でも昼時だからちょっと混んでるかもしれないっスね」
「それがな、オープンしたばかりなのに大々的に宣伝していないらしく、客がまだそんなに入っていない喫茶店なんだ。しかしとてつもなく料理とコーヒーが美味い」
「なんスかそれ、穴場スポットってヤツっスか!? アルス様の見る目ハンパないスね!」
舌が肥えているだろうアルスを唸らせる程なら相当美味いのだろうと、ローランはまだ見ぬ喫茶店に期待が膨らんでいく。
アルスも自分のことのように誇らし気になりながら例の喫茶店へ案内する。
「異国人喫茶?」
喫茶店の看板には【異国人喫茶 Chirp】と書かれている。
「主に従業員が外国人で構成されているらしい。外国人の職業訓練を兼ねていたり、訳ありだったり、そういう理由で大々的には宣伝せず少人数の限られた客を相手にしているらしい」
「やたら詳しいスね」
「実はここはベガに教えてもらってな。雰囲気の良い店だと言われて来てみたらすっかり気に入ってしまってもう何度か来ている。店長ともよく話すぞ」
「へえ~シリスさんのお墨付きとか、なんかもうヤバイくらいスゴい店って感じがしてきました」
「じゃあ入るか」
「はい!」
ローランが扉を開けると扉に付いている鐘がカランカランと鳴る。開けて待っているとアルスが先に入り、ローランも後から入ると店内の独特なBGMを聴いて目を瞬かせた。『ホーホケキョ』とウグイスの鳴き声が聴こえてくる。
「いらっしゃいませ」
「店長。今日も来てしまった」
「アルス様、ご愛顧いただきありがとうございます」
店長と呼ばれた人物はカウンターの中で恭しく深くお辞儀をした。色素の薄い金髪にバンダナを巻いており、にっこりと満面の笑顔。
「今日はベガではなく別の者を連れてきた。ローラン」
「あ、はい! ローラン・リン・リディネクトです」
「僕はアバロ・ルシャード・仁と申します。ここの店長をしています。どうぞ、よろしくお願いします」
「あ、はい、よろしくお願いしますっ」
ーーうわあ……背たっか! 兄貴よりもデカイ! それに名前……ハーフかな? 落ち着いてて大人~って感じ
「お好きな席へどうぞ」
店内はこじんまりとしていて座席は十席。今は他に客がいない為、ローランは三席あるテーブル席の椅子を引いた。
「アルス様どうぞ」
「ああ」
アルスが着席し、ローランも向かい側に座った。そしてメニューに目を通す。
「ここはコーヒーが特に美味くてな。おまかせコーヒーなんてオリジナルがある」
「俺あんまりコーヒーは飲まないんスけど飲めますかね?」
ーー苦いのってあんまり得意じゃないんだよな……
「砂糖やミルクもあるから調整は出来るが、無理はしなくていいと思うぞ」
「えーと……いやっ、試しに飲んでみます。アルス様がうまいってオススメしてくれたしせっかくなんで」
「料理はどれにするか決まったか?」
「アルス様と同じので」
「それでいいのか?」
本当にいいのかと念押しするアルスだが、ローランが意見を変えることはなく、オムライスとおまかせコーヒーを二つずつ注文した。
「ここのBGM珍しいスね。鳥の鳴き声なんて。だから店名が【Chirp】なんスかね?」
Chirpとは鳥や虫のさえずりや甲高い鳴き声という意味。
「そうかもしれないな。目を瞑っていると、午後の陽だまりの中にいるような感じがする」
「午後の陽だまり……? どういう意味スか?」
「穏やかな空間だと言いたいんだが……まあ試しに目を瞑ってみろ」
アルスの言い回しにピンと来なくてとりあえず言われた通り目を瞑ってみる。よく耳を澄ませばウグイスのさえずりだけではなく、風の音や葉の擦れる音などの自然の音も混ざっている。そこに食器の音や注がれる水音、淹れたてコーヒーの芳しい香りが漂ってきて鼻腔をくすぐる。
――午後の陽だまりって正直よくわかんないけど、なんかスゴイゆったりした時間って感じがして落ち着くな
「お待たせしました。先にコーヒーをお持ちしました」
「あ、はいっ」
開眼するとやってきた店長と目が合う。目を瞑っていたのを見られたかと思うと恥ずかしくなりすぐに目線を下へ外した。
テーブルにコーヒーが入ったカップ、ミルクと砂糖が用意される。
店長がカウンターへ戻っていくと、コーヒーカップを持って早速匂いを嗅いでみる。
「おあ~……コーヒーだ」
「ははは、何を当たり前なことを言ってるんだ」
「だってあんまりコーヒー頼まないんスもん」
アルスに笑われてしまって、ローランは苦笑いを返した。
ーー匂いは良いんだけど味がな……。でももう子供じゃないしコーヒーくらい飲めるようになりたい。アルス様はブラックで飲めるし……ブラックで飲めたらカッコイイよな……! うーん……試しに飲んで、ダメだったらミルクと砂糖入れよう
アルスが先に飲んでいるのを見ながらローランもちびちびとブラックのままコーヒーを飲んでみた。
「……わ、意外とイケるかも!」
「店長の気遣いだろうな。見てみろ」
「え?」
アルスがカップの中を見せてくれる。コーヒーの色が全く違い、アルスのものは黒に近い色をしているが、ローランのものは紅茶のようなうっすら赤みがかった茶色だ。
「そうじゃないか? 店長」
カウンターにいる店長に視線を向けるとニコニコと笑いながら応答してくれる。
「勝手なことをしてすみません。ローラン君があまりコーヒーは飲まないと言っていたので、苦手なのかなと思って飲みやすいように少し工夫してしまいました」
「そうだったんスね。だからこんな飲みやすいのか。あ、これもしかしてブラックじゃない……とか?」
「ほんの少しだけブラウンシュガーを入れて甘みをプラスしてバランスを取り、あとお湯を多めにしてコーヒー独特の苦味や酸味を抑えてます」
「ほあ~……なんかスゴく奥深いっスね」
「慣れない内はカプチーノやカフェラテをオススメしてますよ」
「じゃあ今度からカフェラテかカプチーノ頼んでみようかな。ありがとうございます」
「いえ。こちらも勝手にやってしまったので、別にブラックのコーヒー淹れましょうか」
「いやっ、そんなっ悪いっス!」
新しく淹れ直そうとしている店長に向けてブンブンと手を横に振って断るローラン。
するとアルスが二人を見て控えめに声を出して笑う。
「ローラン、俺のを試しに飲んでみるか? 何も入れてないぞ」
「あ……えーと……じゃあ少しだけ」
アルスからカップを受け取り一口飲み下すと、その瞬間に目を瞑り渋面を作った。
「……んん苦っ! いや酸っぱ!? ええっ!? アルス様コレ普通に飲んでるんスか!?」
「アルス様のコーヒーは酸味強めの豆を使っているんですよ」
「前来た時にリクエストしておいたんだ。後味がスッキリする」
「へ、へえ……すごい……」
ーー俺にはまだブラックのコーヒー早いかも……
アルスにカップを返し、自分のカップに砂糖とミルクを足して飲んでみる。やはりまだブラックを飲む境地ではないと改めて感じる。砂糖とミルクを足した方はマシだと思えた。しかしまだコーヒーの美味しさは分からなかった。
数分後にはオムライスがテーブルに届く。見た目からしてトロッとしていそうな半熟卵にブラウンとホワイトのダブルソースのかかったオムライスは食欲がそそられる。真ん中にパセリが乗っていて色合いが綺麗で鮮やかだ。 湯気が立つ熱々のオムライスをスプーンでひと掬いし、口の前まで持ってきて息を吹きかけてから口の中へ運ぶ。
「んっ。ん~~~~うっ! ……んまいっ!」
「な、美味いだろう?」
「はい! 激うまっス!」
感動的な美味しさにスプーンが止まらず、ものの数分で食べ終わってしまった。
ただ美味しかったと店長に一声掛けようと思ったが、食べている間に他の客が数名入ったようで、忙しそうにしていて声を掛けそびれてしまう。精算時は他の若い店員で、店長の姿は見えるものの話すことは叶わなかった。
――店長さん、対応が丁寧で物腰柔らかい感じだし、話し方とか声も優しくて穏やかだし、なんかいいなあ……今度から通おう
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