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一章〈love turnⅡ〉~意外な一面とゴムの味~
四 拓視点
「チョコごめんな。もうあんまり触らないように……出来たらするから」
またこのしょぼくれた顔しやがって……この顔ムカつくな。駄目でも許しちまいそうで……いや油断するな。さりげに保険かけるくらいのやつだぞ
「……気をつけろ」
「うんっ」
素直に頷く有馬に拍子抜けする。
……こんなキラキラ笑顔、もっと他の……マジでよ、どっかの女にでも見せてやりゃあいいのに。バカじゃねぇの……なんで俺なんかに構ってんだし。
俺達はあーだこーだと言い合いながら先を進んでいく。店や建物が多かった通りとは違い、あまり広くはないが比較的人も少なくて自然が多い道だ。途中の看板には『ハイキングコースはこちら』なんて書いてあった。せっかくだからとその道を通ってきた。ある程度舗装されてる道とはいえ、坂道が多くて男の体力でもじりじりと削られていく。
アレの後だからか余計に……
有馬は意外と平気そうに進んでいく。顔の割に体力があるようだ。
……顔は関係ねぇか
「あっ、ここだここだ」
「あ?」
「銭洗弁財天。ここでご利益貰おう。お金を洗うんだよ」
鶴岡八幡宮とはまた違った雰囲気の空間だ。ここも名所らしい。人が多い。子供がギャーギャーと騒ぐ声と、バシャバシャ打ち付ける水の音が聞こえてくる。
「金洗ってどうすんだ?」
「洗ったお金を使うと何倍にもなって返ってくるんだってさ」
「へぇ」
何倍にも、か。こいつ金に困ってんのか? いや、だったらこんな交通費全額払うとかしねぇか。わざわざこんな遠出もしねぇだろうし
「はい、銭洗水」
「え、ああ……」
「これは鎌倉五名水っていうんだって。他にも、日蓮が掘り当てた水とか、梶原景時が自分の剣を清めた水とかあるらしいよ」
……?? なんだって? ごめーすい? ……か、かじ……?
突然ちんぷんかんぷんなワードが飛び出してきてパチパチと目を瞬かせた。
「よ、よく知ってんな……」
「うん、パンフレットに書いてあるからな」
有馬の手にはちゃっかりパンフレットが。
「持ってんのかよっ!」
感心して損した!
「さて、俺はお札洗ってみよっかな」
「札とか持ち運び困んだろ。俺は500円でいい」
バシャバシャバシャ
洗い終えたら直ぐに立ち上がりその場をどく。観光名所だから人が次から次へと寄ってくるからだ。
「よし、次行こう」
「おい、結局買い物って何買うんだよ。御守り買って、よく分かんねぇけど風呂敷も買ったし、まだあんのかよ?」
「うん、買う物は行ってからのお楽しみ。最後はやっぱり大仏見ないとな」
お楽しみ、か……にしてもやっと最後か……やたら疲れたな……余分に疲れることしたし。あんまり普段体動かさねぇし、いい運動にはなってるかもしんねぇけど。コイツなんか疲れた様子ねぇし、ずっと笑ってっし、そんな鎌倉来たかったのか? あ……結局コイツの弱点分かってねぇや。つか、弱点ってそもそもなんだ? 嫌いな物? 俺からこいつに触るとか出来ねぇしな……
「……腹減った」
グキュルル……
腹を抑えても鳴るものは鳴る。なんとなく気恥ずかしくて顔を逸らした。
「ああ、もう昼か。楽しくてつい忘れてたよ」
楽しんでたのか……景色だけでよく楽しめるな。あんま大したこと話してねぇし、マジ何が楽しいんだ?
「何食べたい?」
「あー……なんでもいい」
「アレルギーはある?」
「別にない」
「じゃあ冷たい蕎麦でも食べよっか。すぐそこにあるからさ」
相手の意見聞いたり、気遣ったり……変態だが顔はいいし。なんか、俺が言うのもアレだが……勿体無くね?
俺が懸念を抱くのも可笑しい話だ。近くで見つけた蕎麦屋の扉を開けると、カウンターから店員が出てきて明るい声が響く。
「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」
「二人です。そっちの座敷でもいいですか?」
「どうぞー!」
「……何で座敷なんだ?」
「よく歩いたから、こっちの方が足伸ばせて楽だろう? それに俺、畳の匂い好きなんだ」
「ふぅん……」
畳か……純和風って感じするな……どうでもいいが
テーブルの脇に置かれているメニューを取り出して開いた。品名だけ書かれている簡素なものだ。意外とメニュー豊富で目移りする。
「チョコはどれにする? 俺はこの天ぷらのにするよ」
「えっ……と……じゃあ……同じの」
「OK。すみません」
店員を呼んで注文している。俺は黙ってその顔を見ていた。
……俺、コイツに完全に流されてる気がする。ただのクラスメートだろ? ただのじゃねぇか。強制的な恋人。で……体質のことバラされたら困るから、それでこんな所に付き合ってるだけで……好きでいるわけじゃねぇ。さっきもあんな人の往来で………な、舐めてくるとかふざけやがって。けど謝ってきたし、やたらしょぼくれた顔するし、多分俺のこと……す、す、好き、とか言ってくるし! あ゛あーーーッ!! 何なんだよコイツ!!
「チョコ? やっぱり……」
「ああ゛?」
「……いや。何でもない」
「……」
何でもなくない顔を逸らした。その顔をジッと睨んでみたが、こっちを向こうとしない。蕎麦を待ってる間の数分間の沈黙。いい話題も思いつかなくて、ただずっと、お互い出されたお茶を啜っては窓から見える外の景色を眺めたり、店の中をぐるっと見渡したりしていた。不思議なことに有馬が黙っているのは少しだけ不気味に思えた。
「お待ちどう様です!」
届いたのは天ぷら蕎麦膳だ。デカイ海老と旬の野菜がてんこ盛り。別に盛られた蕎麦も負けず劣らず存在感がある。
「美味そうだ! いただきます」
「いただきます……」
行儀よく手を合わせているのを見て、俺も次いで手を合わせてから料理に箸をつけた。
パリリッザクッサクッ
ズズッ
天ぷらを噛んだ小気味の良い音。蕎麦を啜る音。
うわ……うま……蕎麦とか久々だけど、メチャクチャうめぇわコレ。香りが良い……天ぷらもサクサクしててすぐ無くなりそうだな
「ふはーっ! やっぱり日本人は蕎麦だよな!」
さっきの沈黙が嘘のように、有馬は美味そうに食べては満足げな顔をしていた。
「あ……なんか、分かるかもしんねぇ……」
「おっ、チョコと意気投合? 嬉しいな」
「お、おぅ……」
うどんとかそうめんと比べたら、蕎麦はTHE・和食ってイメージあるし。………ん? 何で驚いたような顔してんだ?
「ち、チョコがデレただと!? ……初デレだ!」
「はぁ?」
なんだ初デレって
「これは祝いものだ! 店員さーん、さっき頼んだのと追加であんみつとところてん二つずつ下さい!」
「は、え!?」
ちょっ、多くね!?
またこのしょぼくれた顔しやがって……この顔ムカつくな。駄目でも許しちまいそうで……いや油断するな。さりげに保険かけるくらいのやつだぞ
「……気をつけろ」
「うんっ」
素直に頷く有馬に拍子抜けする。
……こんなキラキラ笑顔、もっと他の……マジでよ、どっかの女にでも見せてやりゃあいいのに。バカじゃねぇの……なんで俺なんかに構ってんだし。
俺達はあーだこーだと言い合いながら先を進んでいく。店や建物が多かった通りとは違い、あまり広くはないが比較的人も少なくて自然が多い道だ。途中の看板には『ハイキングコースはこちら』なんて書いてあった。せっかくだからとその道を通ってきた。ある程度舗装されてる道とはいえ、坂道が多くて男の体力でもじりじりと削られていく。
アレの後だからか余計に……
有馬は意外と平気そうに進んでいく。顔の割に体力があるようだ。
……顔は関係ねぇか
「あっ、ここだここだ」
「あ?」
「銭洗弁財天。ここでご利益貰おう。お金を洗うんだよ」
鶴岡八幡宮とはまた違った雰囲気の空間だ。ここも名所らしい。人が多い。子供がギャーギャーと騒ぐ声と、バシャバシャ打ち付ける水の音が聞こえてくる。
「金洗ってどうすんだ?」
「洗ったお金を使うと何倍にもなって返ってくるんだってさ」
「へぇ」
何倍にも、か。こいつ金に困ってんのか? いや、だったらこんな交通費全額払うとかしねぇか。わざわざこんな遠出もしねぇだろうし
「はい、銭洗水」
「え、ああ……」
「これは鎌倉五名水っていうんだって。他にも、日蓮が掘り当てた水とか、梶原景時が自分の剣を清めた水とかあるらしいよ」
……?? なんだって? ごめーすい? ……か、かじ……?
突然ちんぷんかんぷんなワードが飛び出してきてパチパチと目を瞬かせた。
「よ、よく知ってんな……」
「うん、パンフレットに書いてあるからな」
有馬の手にはちゃっかりパンフレットが。
「持ってんのかよっ!」
感心して損した!
「さて、俺はお札洗ってみよっかな」
「札とか持ち運び困んだろ。俺は500円でいい」
バシャバシャバシャ
洗い終えたら直ぐに立ち上がりその場をどく。観光名所だから人が次から次へと寄ってくるからだ。
「よし、次行こう」
「おい、結局買い物って何買うんだよ。御守り買って、よく分かんねぇけど風呂敷も買ったし、まだあんのかよ?」
「うん、買う物は行ってからのお楽しみ。最後はやっぱり大仏見ないとな」
お楽しみ、か……にしてもやっと最後か……やたら疲れたな……余分に疲れることしたし。あんまり普段体動かさねぇし、いい運動にはなってるかもしんねぇけど。コイツなんか疲れた様子ねぇし、ずっと笑ってっし、そんな鎌倉来たかったのか? あ……結局コイツの弱点分かってねぇや。つか、弱点ってそもそもなんだ? 嫌いな物? 俺からこいつに触るとか出来ねぇしな……
「……腹減った」
グキュルル……
腹を抑えても鳴るものは鳴る。なんとなく気恥ずかしくて顔を逸らした。
「ああ、もう昼か。楽しくてつい忘れてたよ」
楽しんでたのか……景色だけでよく楽しめるな。あんま大したこと話してねぇし、マジ何が楽しいんだ?
「何食べたい?」
「あー……なんでもいい」
「アレルギーはある?」
「別にない」
「じゃあ冷たい蕎麦でも食べよっか。すぐそこにあるからさ」
相手の意見聞いたり、気遣ったり……変態だが顔はいいし。なんか、俺が言うのもアレだが……勿体無くね?
俺が懸念を抱くのも可笑しい話だ。近くで見つけた蕎麦屋の扉を開けると、カウンターから店員が出てきて明るい声が響く。
「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」
「二人です。そっちの座敷でもいいですか?」
「どうぞー!」
「……何で座敷なんだ?」
「よく歩いたから、こっちの方が足伸ばせて楽だろう? それに俺、畳の匂い好きなんだ」
「ふぅん……」
畳か……純和風って感じするな……どうでもいいが
テーブルの脇に置かれているメニューを取り出して開いた。品名だけ書かれている簡素なものだ。意外とメニュー豊富で目移りする。
「チョコはどれにする? 俺はこの天ぷらのにするよ」
「えっ……と……じゃあ……同じの」
「OK。すみません」
店員を呼んで注文している。俺は黙ってその顔を見ていた。
……俺、コイツに完全に流されてる気がする。ただのクラスメートだろ? ただのじゃねぇか。強制的な恋人。で……体質のことバラされたら困るから、それでこんな所に付き合ってるだけで……好きでいるわけじゃねぇ。さっきもあんな人の往来で………な、舐めてくるとかふざけやがって。けど謝ってきたし、やたらしょぼくれた顔するし、多分俺のこと……す、す、好き、とか言ってくるし! あ゛あーーーッ!! 何なんだよコイツ!!
「チョコ? やっぱり……」
「ああ゛?」
「……いや。何でもない」
「……」
何でもなくない顔を逸らした。その顔をジッと睨んでみたが、こっちを向こうとしない。蕎麦を待ってる間の数分間の沈黙。いい話題も思いつかなくて、ただずっと、お互い出されたお茶を啜っては窓から見える外の景色を眺めたり、店の中をぐるっと見渡したりしていた。不思議なことに有馬が黙っているのは少しだけ不気味に思えた。
「お待ちどう様です!」
届いたのは天ぷら蕎麦膳だ。デカイ海老と旬の野菜がてんこ盛り。別に盛られた蕎麦も負けず劣らず存在感がある。
「美味そうだ! いただきます」
「いただきます……」
行儀よく手を合わせているのを見て、俺も次いで手を合わせてから料理に箸をつけた。
パリリッザクッサクッ
ズズッ
天ぷらを噛んだ小気味の良い音。蕎麦を啜る音。
うわ……うま……蕎麦とか久々だけど、メチャクチャうめぇわコレ。香りが良い……天ぷらもサクサクしててすぐ無くなりそうだな
「ふはーっ! やっぱり日本人は蕎麦だよな!」
さっきの沈黙が嘘のように、有馬は美味そうに食べては満足げな顔をしていた。
「あ……なんか、分かるかもしんねぇ……」
「おっ、チョコと意気投合? 嬉しいな」
「お、おぅ……」
うどんとかそうめんと比べたら、蕎麦はTHE・和食ってイメージあるし。………ん? 何で驚いたような顔してんだ?
「ち、チョコがデレただと!? ……初デレだ!」
「はぁ?」
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「これは祝いものだ! 店員さーん、さっき頼んだのと追加であんみつとところてん二つずつ下さい!」
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