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一章〈eccentric〉~声に出さなきゃ伝わらない事だってある~
三 拓視点
教室に戻ってみたら、生徒は大勢いるがアイツが見当たらない。
「チッ……」
肝心な時にいねぇんだなアイツは。いや待てよ。いたとしたら俺は何話す気だ? お前と楽しく何かをしたい? 仲良くなりたい? ……んなこと言ったら勘違いしそうだな。ダチになりたい。……恋人云々言ってたヤツにソレ言うのも酷だよな。なんて言えばいいかーー
「--アハハハハッ!」
なんだよウゼェなこの笑い声……
「なっ、お前さ、委員長のことどう思う?」
「藍庭? あー……なんかオモシレェよな、口調とか」
「そうそう! この前さ、なんとかしてくれたまえ、とか言ってたぜ?」
「アハハ! 言ういう! どこの人だよって感じ」
藍庭? 委員長ってアイツのこと……だよな? あの二人、よくアイツと一緒にいるヤツらだよな……?
「この前クラス日誌回ってきてさ、めんどいから委員長に任せちったよ」
「クラス日誌って委員長の仕事じゃねぇの?」
「本当は違うらしいぜ」
「毎日書いてるからそうだと思ってた。藍庭って自分からそういうのやるよな」
「好きなんじゃね? ああいう事務仕事。アイツが書いた方がそれっぽいの出来るし次も任せね?」
「いいねぇそれ!」
何言ってんだ。そんなの良くねぇだろ!
バンッ!!
「「!?」」
近くの机をぶっ叩くとクラスのヤツ等の視線が俺に一斉に向いてくる。
ヤベ……目立つの嫌なのに取り返しつかねぇ。けど言わねぇと気が済まねぇんだよ!
「さっきからテメェらウゼェんだよ!! 本人がいねぇのいいことにベラベラ喋りやがって。そういうことは本人に向かって言えってんだ!!」
「え、誰?」
「あー確か……明路だっけ? 例の」
ん? 予想してた反応とチゲェ……れ、例の?
もっとつっかかってくるかと思っていたが、二人は平然としている。そして何故か妙だ。周りも机を叩いた時はしんと静まり返ったが、もう気にせず元通りくっちゃべっている。二人の内の一人が思い出したように拳で手のひらを打った。
「ああ~っ、委員長が保健室連れてったヤツ!」
「なっ!」
な、な……んなこと……いちいち覚えてんなよ……!
「で? その倒れたお姫様が何の用?」
「誰がお姫様だ! テメェらアイツの悪口言ってただろ。よくつるんでるクセに、なんであんなこと言ってんだよっ胸くそ悪ぃ!」
本人がいない所で言ってるのも腹立つが、何よりアイツが悪く言われると、なんだか無性にイライラする……
「……アイツは確かに変人で変態だし、なんか無駄が多くてどっかズレてっけど」
「お前の方がヒドくね?」
「けど、天然つか、自然……みてぇな、なんかよく分かんねぇけどっ! やたら詳しいこと知ってっし、よくやたらキラキラして笑うし。お前ら一緒にいて楽しいんじゃねぇのかよっ!」
「「………」」
二人は神妙な顔をしている。かと思いきや表情が明らかに笑っている。人をバカにしているのか。
「な、なんとか言えよ!」
こっちは恥ずかしいのクッソ我慢してんのに、にやにやしやがっておちょくってんのかよ! 黙られてるのが一番恥ずかしいんだよ!
「え、と……俺が言う……べき?」
「!?」
びっくぅ!!!!
ガタガタガタッ!!
そんな効果音が付きそう程、俺は狼狽えて近くの机や椅子を押し退けた。
教室前の廊下にはちょっと居心地悪そうな顔をした有馬がいた。
「お……おお、おまっ……!」
「あーあ、やっぱり気づいてなかったんだ?」
「さっきから本人いたのに」
「!!??」
いたなら言えよッ! こんな怒鳴ってたし言わねぇか。んなことより……いつから……
「えっ……と……チョコ……?」
「ッ……来いっ!」
「うわっ!?」
肌には触れねぇように袖を思い切り引っ張って、誰もいなそうな屋上に向かった。屋上は鍵かかってないからたまに誰かいるが、今はいないみてぇだ丁度いい。
「テメェッ、いつからあそこにいたっ!?」
「え。えーと……んー……最初から……かな? チョコが教室入ったの見えて、その後少し遅れてきたから……」
「…………」
最初から……? じゃあ何だ?
「アイツらの悪口も聞いてたのかよ!」
「悪口? 何か言ってたっけ?」
「言ってただろが! 口調がとか、日誌任せるとか!」
「あーあれはよくあることだからな。気にしないでいいよ」
気にしない……? んでそんなあっけらかんとしてんだよ
「テメェが気にしなくても俺が気にすんだよ。ああいうコソコソして……いや、テメェがいたからコソコソとはチゲェけど。とにかく、ああいう悪口は許せねぇ」
「えっと……チョコ、あれは悪意があるわけじゃないよ」
「はぁ? 悪意以外に何があんだよ」
「なんて言うかな……じゃれ合いみたいな? 貶し合いもお互いが分かってるからこその愛情表現みたいな、それで友情が深まるっていうか……ははっ、言葉での説明は難しいな」
笑って……何言って……
「ワケ……わかんねぇっ……」
悪口が愛情表現? そらまったく理解できねぇし意味分かんねぇわ
「チョコ、人間関係って奥深いんだよ」
「知らねぇよ……クソ。俺アホみたいじゃねぇか。あんな怒鳴り散らして」
……あれ……そういやコイツ最初から聞いてた……って……
「ってことはおまっ! おおお俺の話も聞いて……っ!?」
「あ、うん。聞いてたよ」
やらかした! 言っといてあれだが本人に聞かれたくなかった……うわあ殴ってでもコイツの記憶消したい。寧ろ俺のを消したい。穴があったら潜って引きこもりてぇ……
「チョコ」
「…………んだよ」
「嬉しかった」
まともに顔を見れなくて下ばかり見ていたが、目だけ上げて顔を覗いてみた。そして後悔する。見なければ良かった。
「うっ……」
キラキラ笑顔……。それに気の所為か、いつもより数倍キラキラしてるっつか、なんか……おかしい、変だ、息苦しい……
「チョコの本音が聞けて。俺といて楽しいって……そう思っててくれたんだ?」
「…………」
何、緊張してんだよ……ヤベェ、震えそう……
唇を噛んで、左手で右手を抑えて、何かしていないと身体がどうにかなりそうだ。心臓の音がバクンバクンうるさくて、今にも爆発するんじゃないかと思うくらい。
「チョコ、言って。俺に聞かせて。チョコの言葉、何でもいいから」
「…………っ」
「チッ……」
肝心な時にいねぇんだなアイツは。いや待てよ。いたとしたら俺は何話す気だ? お前と楽しく何かをしたい? 仲良くなりたい? ……んなこと言ったら勘違いしそうだな。ダチになりたい。……恋人云々言ってたヤツにソレ言うのも酷だよな。なんて言えばいいかーー
「--アハハハハッ!」
なんだよウゼェなこの笑い声……
「なっ、お前さ、委員長のことどう思う?」
「藍庭? あー……なんかオモシレェよな、口調とか」
「そうそう! この前さ、なんとかしてくれたまえ、とか言ってたぜ?」
「アハハ! 言ういう! どこの人だよって感じ」
藍庭? 委員長ってアイツのこと……だよな? あの二人、よくアイツと一緒にいるヤツらだよな……?
「この前クラス日誌回ってきてさ、めんどいから委員長に任せちったよ」
「クラス日誌って委員長の仕事じゃねぇの?」
「本当は違うらしいぜ」
「毎日書いてるからそうだと思ってた。藍庭って自分からそういうのやるよな」
「好きなんじゃね? ああいう事務仕事。アイツが書いた方がそれっぽいの出来るし次も任せね?」
「いいねぇそれ!」
何言ってんだ。そんなの良くねぇだろ!
バンッ!!
「「!?」」
近くの机をぶっ叩くとクラスのヤツ等の視線が俺に一斉に向いてくる。
ヤベ……目立つの嫌なのに取り返しつかねぇ。けど言わねぇと気が済まねぇんだよ!
「さっきからテメェらウゼェんだよ!! 本人がいねぇのいいことにベラベラ喋りやがって。そういうことは本人に向かって言えってんだ!!」
「え、誰?」
「あー確か……明路だっけ? 例の」
ん? 予想してた反応とチゲェ……れ、例の?
もっとつっかかってくるかと思っていたが、二人は平然としている。そして何故か妙だ。周りも机を叩いた時はしんと静まり返ったが、もう気にせず元通りくっちゃべっている。二人の内の一人が思い出したように拳で手のひらを打った。
「ああ~っ、委員長が保健室連れてったヤツ!」
「なっ!」
な、な……んなこと……いちいち覚えてんなよ……!
「で? その倒れたお姫様が何の用?」
「誰がお姫様だ! テメェらアイツの悪口言ってただろ。よくつるんでるクセに、なんであんなこと言ってんだよっ胸くそ悪ぃ!」
本人がいない所で言ってるのも腹立つが、何よりアイツが悪く言われると、なんだか無性にイライラする……
「……アイツは確かに変人で変態だし、なんか無駄が多くてどっかズレてっけど」
「お前の方がヒドくね?」
「けど、天然つか、自然……みてぇな、なんかよく分かんねぇけどっ! やたら詳しいこと知ってっし、よくやたらキラキラして笑うし。お前ら一緒にいて楽しいんじゃねぇのかよっ!」
「「………」」
二人は神妙な顔をしている。かと思いきや表情が明らかに笑っている。人をバカにしているのか。
「な、なんとか言えよ!」
こっちは恥ずかしいのクッソ我慢してんのに、にやにやしやがっておちょくってんのかよ! 黙られてるのが一番恥ずかしいんだよ!
「え、と……俺が言う……べき?」
「!?」
びっくぅ!!!!
ガタガタガタッ!!
そんな効果音が付きそう程、俺は狼狽えて近くの机や椅子を押し退けた。
教室前の廊下にはちょっと居心地悪そうな顔をした有馬がいた。
「お……おお、おまっ……!」
「あーあ、やっぱり気づいてなかったんだ?」
「さっきから本人いたのに」
「!!??」
いたなら言えよッ! こんな怒鳴ってたし言わねぇか。んなことより……いつから……
「えっ……と……チョコ……?」
「ッ……来いっ!」
「うわっ!?」
肌には触れねぇように袖を思い切り引っ張って、誰もいなそうな屋上に向かった。屋上は鍵かかってないからたまに誰かいるが、今はいないみてぇだ丁度いい。
「テメェッ、いつからあそこにいたっ!?」
「え。えーと……んー……最初から……かな? チョコが教室入ったの見えて、その後少し遅れてきたから……」
「…………」
最初から……? じゃあ何だ?
「アイツらの悪口も聞いてたのかよ!」
「悪口? 何か言ってたっけ?」
「言ってただろが! 口調がとか、日誌任せるとか!」
「あーあれはよくあることだからな。気にしないでいいよ」
気にしない……? んでそんなあっけらかんとしてんだよ
「テメェが気にしなくても俺が気にすんだよ。ああいうコソコソして……いや、テメェがいたからコソコソとはチゲェけど。とにかく、ああいう悪口は許せねぇ」
「えっと……チョコ、あれは悪意があるわけじゃないよ」
「はぁ? 悪意以外に何があんだよ」
「なんて言うかな……じゃれ合いみたいな? 貶し合いもお互いが分かってるからこその愛情表現みたいな、それで友情が深まるっていうか……ははっ、言葉での説明は難しいな」
笑って……何言って……
「ワケ……わかんねぇっ……」
悪口が愛情表現? そらまったく理解できねぇし意味分かんねぇわ
「チョコ、人間関係って奥深いんだよ」
「知らねぇよ……クソ。俺アホみたいじゃねぇか。あんな怒鳴り散らして」
……あれ……そういやコイツ最初から聞いてた……って……
「ってことはおまっ! おおお俺の話も聞いて……っ!?」
「あ、うん。聞いてたよ」
やらかした! 言っといてあれだが本人に聞かれたくなかった……うわあ殴ってでもコイツの記憶消したい。寧ろ俺のを消したい。穴があったら潜って引きこもりてぇ……
「チョコ」
「…………んだよ」
「嬉しかった」
まともに顔を見れなくて下ばかり見ていたが、目だけ上げて顔を覗いてみた。そして後悔する。見なければ良かった。
「うっ……」
キラキラ笑顔……。それに気の所為か、いつもより数倍キラキラしてるっつか、なんか……おかしい、変だ、息苦しい……
「チョコの本音が聞けて。俺といて楽しいって……そう思っててくれたんだ?」
「…………」
何、緊張してんだよ……ヤベェ、震えそう……
唇を噛んで、左手で右手を抑えて、何かしていないと身体がどうにかなりそうだ。心臓の音がバクンバクンうるさくて、今にも爆発するんじゃないかと思うくらい。
「チョコ、言って。俺に聞かせて。チョコの言葉、何でもいいから」
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