24 / 73
一章〈sports〉~仲直りのお手伝い~
三 拓視点
「あ……チョコ」
「……何でテメェがここに」
校庭にいないと思っていたら本人がやってきた。心の準備が出来てなくて可笑しいくらい緊張して声が硬くなる。
「タオルを取りに戻ったんだ。今日の授業は乾布摩擦だからね」
「マジかよ」
無視しようと思っていたのに、したことがない意外な授業の内容に少し興味が湧く。
この学校大丈夫か? 授業で乾布摩擦教えるってどういうことだよ
「うん、冗談」
微笑みながら言う有馬に腹が立つ。
「テメェな……」
「つまんなかったから抜けてきたんだ」
「……仮にも委員長の言葉じゃねぇな」
「そこいらの真面目いいんちょと一緒にしないでくれたまえよ」
「ああそうかよ。とっととタオル持って戻れよ」
もう話すことなんてない。というより、何をどう話していいのか分からない。喧嘩している時はどう関わるのが正解なんだろうか。
長い沈黙の後、有馬が突拍子もなく話題を振ってきた。
「チョコ、桜がね、もう散ってしまったんだ」
「……そうかよ」
「今は葉桜だね。後1ヶ月もしたらさくらんぼの時期だ」
さくらんぼが桜の実なのは知ってるが、桜の木に実っているのは見たことがない。
「さくらんぼ狩りでも何でもいい。またチョコと出掛けたいな」
さくらんぼ狩りはちょっとだけ気になる。それだけではなくて、なんだかんだ有馬と楽しみたいと思っているのは本当だ。
「チョコ、こっちを向いて」
「……どうして」
「俺を見て欲しいから」
率直な言葉。真っ直ぐ過ぎて逃げ出したくなる。けれど今は窓際にいて有馬は廊下側にいる。席も廊下側にある。逃げられる状況ではない。考えあぐねいて出した答えは、ただその場から動かず有馬の顔を見るだけだった。
そして有馬は真っ直ぐ近づいてくる。
俺は一か八かで走り出して横切って行こうとしたが、有馬に腕を掴まれた。
「ああっ、やめろっ離せよ!」
「離さない!」
「んあっ……」
「……離れない。離したくない!」
腕を引かれて後ろから抱きついてきた。
力の限り有馬の脇腹に肘打ちしたり足を踏んだり暴れてみたのに、言葉の通り有馬は離れない。
密着していてあまり暴れることも出来ず大人しくすると、後ろから軽い溜息が漏れて、それも首にかかってくすぐったく感じる。離れようとしても力強く抱きしめられて離れられない。
「俺は冷静じゃなかった。今もそんなに冷静じゃない。チョコのことで頭がいっぱいだよ。だから離したくないし離れない」
「っ……、ふぅ、あん、まり……ひっつくな……」
「やだ。今離したらまた当分話してくれないだろう?」
「それは……」
「チョコともっと話したいから離さない」
「んっく……ややこしいっつの……わかった、からっ……一旦、この手、離せ……っ」
散々暴れて抵抗したせいか、有馬も離さないように必死だったのだろう。抱きしめるというよりもまとわりついている。しかも手の位置が絶妙に危うい箇所に置かれている。有馬の手は丁度俺の乳首の上にある。
「本当? 話聞いてくれるかい? どこか逃げていかない?」
「ひっ……はぁ……、に……げねぇって……」
耳に吐息がぶつかり、動くとシャツで擦れる肌。そして更に敏感な箇所がシャツ越しの有馬の指でもどかしく微弱な刺激を与えてくる。段々と力が入らなくなってきて抵抗を弱めると、有馬の抱きしめる力が強くなる。
「ありがとう、チョコ! ここだと隣のクラスに聞こえちゃうと困るから屋上に行こう」
力の入らなくなった俺はなす術もなく言われるがまま有馬と屋上へと向かった。
屋上にやってきて、誰かが来てもすぐ隠れられる物影で俺たちは話し合うことにした。有馬は俺を真っ直ぐに見てくるが、俺は真横を向いている。
「チョコとどうしても話がしたくて、こんな強引なやり方になってしまって悪かったね」
強引なやり方。それはきっと抱きついてきてわざと触ってきたことだろう。そうすれば俺は嫌でも感じて力が入らなくなるからだ。
「全くだ……お前はいつも強引なんだよ。鎌倉行くのだってそうだったし。……付き合うかどうかとか、その返事だって急ぐしよ」
「それほどチョコが魅力的だということだよ」
「……俺には自分の良さなんてわかんねぇ」
「案外そういうものさ。他人の方が自分よりも自分のことを分かってくれてる。だから他人と付き合いたいって思うんだよ」
「それはダチとしてか? それとも恋人……」
「どっちにも言えることかな。ただ友人よりも、恋人には自分のことをもっと知って欲しいとか、相手をもっと知りたい思う傾向が強いね」
「…………そうか」
友達と恋人の違い。もっと知りたい、もっと知って欲しい……か。
「確かに返事を急いでしまったことは謝るよ。早とちりもしてしまったみたいだし、ごめん」
そうやって素直に謝れるのはコイツのいいところだ。けど俺は、コイツみたく素直に言えないんだ
「…………別にいい。いや、良くはねぇケド……」
何を言えばいいのだろう。無視したり避けたりして散々考えたのに、何を言ったらコイツは納得するのか全然わからない。まだ何か互いに間違った認識をしている気がする。
「恋人になってくれるかどうか返事はもう少し待つことにするよ」
「……なあ、その……恋人にならないといけないもんなのか。お前と何かするのに」
「もちろん。俺はチョコとイチャイチャしたいからね」
「そのイチャイチャってのは抜きにして、どこか遊びに行くのはダチでも出来るだろ」
「それはそうだけど、デートしたらやっぱり《イイ雰囲気》になるじゃないか。キスしたりとかそういうのはやっぱり恋人じゃないといけない一線だと思うよ」
「それは……そうかもな」
男同士とか男女とか関係なく恋人の条件かもしれない。それは理解できるが。
「……正直、付き合うとかよくわかんねぇんだ。お前の言うイチャイチャってのをしたいかどうかって聞かれたらわかんねぇし。けど、お前と遊びに行ったりして楽しみたいとは思ってる」
「それは…………あれ?」
有馬は間抜けな声を出してぽかんと首を傾げている。
「触れられる練習は……俺と色々したいからじゃないって言ってたよな?」
「……触れられる練習をしたいのは、慣れれば俺一人で出来る事が増えるからだ。出来なくて悔しい思いしてきたし。お前とは……まあ、もっと慣れたら一緒になんかしてぇとは思ってるケドよ……」
言ってて凄く恥ずかしい。余計に顔を合わせ辛くなった。顔から火を吹きそうだ。
「……何でテメェがここに」
校庭にいないと思っていたら本人がやってきた。心の準備が出来てなくて可笑しいくらい緊張して声が硬くなる。
「タオルを取りに戻ったんだ。今日の授業は乾布摩擦だからね」
「マジかよ」
無視しようと思っていたのに、したことがない意外な授業の内容に少し興味が湧く。
この学校大丈夫か? 授業で乾布摩擦教えるってどういうことだよ
「うん、冗談」
微笑みながら言う有馬に腹が立つ。
「テメェな……」
「つまんなかったから抜けてきたんだ」
「……仮にも委員長の言葉じゃねぇな」
「そこいらの真面目いいんちょと一緒にしないでくれたまえよ」
「ああそうかよ。とっととタオル持って戻れよ」
もう話すことなんてない。というより、何をどう話していいのか分からない。喧嘩している時はどう関わるのが正解なんだろうか。
長い沈黙の後、有馬が突拍子もなく話題を振ってきた。
「チョコ、桜がね、もう散ってしまったんだ」
「……そうかよ」
「今は葉桜だね。後1ヶ月もしたらさくらんぼの時期だ」
さくらんぼが桜の実なのは知ってるが、桜の木に実っているのは見たことがない。
「さくらんぼ狩りでも何でもいい。またチョコと出掛けたいな」
さくらんぼ狩りはちょっとだけ気になる。それだけではなくて、なんだかんだ有馬と楽しみたいと思っているのは本当だ。
「チョコ、こっちを向いて」
「……どうして」
「俺を見て欲しいから」
率直な言葉。真っ直ぐ過ぎて逃げ出したくなる。けれど今は窓際にいて有馬は廊下側にいる。席も廊下側にある。逃げられる状況ではない。考えあぐねいて出した答えは、ただその場から動かず有馬の顔を見るだけだった。
そして有馬は真っ直ぐ近づいてくる。
俺は一か八かで走り出して横切って行こうとしたが、有馬に腕を掴まれた。
「ああっ、やめろっ離せよ!」
「離さない!」
「んあっ……」
「……離れない。離したくない!」
腕を引かれて後ろから抱きついてきた。
力の限り有馬の脇腹に肘打ちしたり足を踏んだり暴れてみたのに、言葉の通り有馬は離れない。
密着していてあまり暴れることも出来ず大人しくすると、後ろから軽い溜息が漏れて、それも首にかかってくすぐったく感じる。離れようとしても力強く抱きしめられて離れられない。
「俺は冷静じゃなかった。今もそんなに冷静じゃない。チョコのことで頭がいっぱいだよ。だから離したくないし離れない」
「っ……、ふぅ、あん、まり……ひっつくな……」
「やだ。今離したらまた当分話してくれないだろう?」
「それは……」
「チョコともっと話したいから離さない」
「んっく……ややこしいっつの……わかった、からっ……一旦、この手、離せ……っ」
散々暴れて抵抗したせいか、有馬も離さないように必死だったのだろう。抱きしめるというよりもまとわりついている。しかも手の位置が絶妙に危うい箇所に置かれている。有馬の手は丁度俺の乳首の上にある。
「本当? 話聞いてくれるかい? どこか逃げていかない?」
「ひっ……はぁ……、に……げねぇって……」
耳に吐息がぶつかり、動くとシャツで擦れる肌。そして更に敏感な箇所がシャツ越しの有馬の指でもどかしく微弱な刺激を与えてくる。段々と力が入らなくなってきて抵抗を弱めると、有馬の抱きしめる力が強くなる。
「ありがとう、チョコ! ここだと隣のクラスに聞こえちゃうと困るから屋上に行こう」
力の入らなくなった俺はなす術もなく言われるがまま有馬と屋上へと向かった。
屋上にやってきて、誰かが来てもすぐ隠れられる物影で俺たちは話し合うことにした。有馬は俺を真っ直ぐに見てくるが、俺は真横を向いている。
「チョコとどうしても話がしたくて、こんな強引なやり方になってしまって悪かったね」
強引なやり方。それはきっと抱きついてきてわざと触ってきたことだろう。そうすれば俺は嫌でも感じて力が入らなくなるからだ。
「全くだ……お前はいつも強引なんだよ。鎌倉行くのだってそうだったし。……付き合うかどうかとか、その返事だって急ぐしよ」
「それほどチョコが魅力的だということだよ」
「……俺には自分の良さなんてわかんねぇ」
「案外そういうものさ。他人の方が自分よりも自分のことを分かってくれてる。だから他人と付き合いたいって思うんだよ」
「それはダチとしてか? それとも恋人……」
「どっちにも言えることかな。ただ友人よりも、恋人には自分のことをもっと知って欲しいとか、相手をもっと知りたい思う傾向が強いね」
「…………そうか」
友達と恋人の違い。もっと知りたい、もっと知って欲しい……か。
「確かに返事を急いでしまったことは謝るよ。早とちりもしてしまったみたいだし、ごめん」
そうやって素直に謝れるのはコイツのいいところだ。けど俺は、コイツみたく素直に言えないんだ
「…………別にいい。いや、良くはねぇケド……」
何を言えばいいのだろう。無視したり避けたりして散々考えたのに、何を言ったらコイツは納得するのか全然わからない。まだ何か互いに間違った認識をしている気がする。
「恋人になってくれるかどうか返事はもう少し待つことにするよ」
「……なあ、その……恋人にならないといけないもんなのか。お前と何かするのに」
「もちろん。俺はチョコとイチャイチャしたいからね」
「そのイチャイチャってのは抜きにして、どこか遊びに行くのはダチでも出来るだろ」
「それはそうだけど、デートしたらやっぱり《イイ雰囲気》になるじゃないか。キスしたりとかそういうのはやっぱり恋人じゃないといけない一線だと思うよ」
「それは……そうかもな」
男同士とか男女とか関係なく恋人の条件かもしれない。それは理解できるが。
「……正直、付き合うとかよくわかんねぇんだ。お前の言うイチャイチャってのをしたいかどうかって聞かれたらわかんねぇし。けど、お前と遊びに行ったりして楽しみたいとは思ってる」
「それは…………あれ?」
有馬は間抜けな声を出してぽかんと首を傾げている。
「触れられる練習は……俺と色々したいからじゃないって言ってたよな?」
「……触れられる練習をしたいのは、慣れれば俺一人で出来る事が増えるからだ。出来なくて悔しい思いしてきたし。お前とは……まあ、もっと慣れたら一緒になんかしてぇとは思ってるケドよ……」
言ってて凄く恥ずかしい。余計に顔を合わせ辛くなった。顔から火を吹きそうだ。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話