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一章〈home visit〉~お宅訪問は興奮材料~
三
ー--ー帰り道。
俺達はクラス公認カップルということで、一緒に帰るようになった。クラスのヤツらが俺に気を利かせてくれてチョコを足止めしてるんだけどな。学級委員の仕事がある日は先に帰ってもらってる。でも結構な頻度で一緒に帰っているから、一緒にいられる時間が長くなったのは控えめに言ってとっても嬉しい。
「今日も学校楽しかったな~」
「……そうかよ」
「うん。変わらず楽しかった。チョコは?」
「……普通」
「うーん、普通か~曖昧だな~。どうしたら楽しくなる?」
「どうって………知らね。学校に楽しいとかあるのかよ。今まで楽しいとか思ったことねぇし」
チョコも大変だな……可愛い体質だとは思うけど、本人にとっては迷惑なんだろうし
「じゃあさ、こうやって一緒に帰るのは楽しい?」
「えっ。…………ん、まあ……別に。どうってこと……ねえけど」
「楽しくないってことかい!?」
「そうじゃねえ。……こんなことだって、普通っていうか、楽しいってのとなんか違うんじゃねぇの。当たり前のことっていうか……」
目を泳がせて一生懸命に言葉を考えて話すチョコがいじらしい。
こうやって何でもなく俺と帰るって、実は当たり前じゃない。チョコが俺を意識して待っててくれたり、俺もチョコを意識して声を掛けに行ったり、そういうやり取りがあるから楽しいって思うんだよ
「そっか……。クラスには馴染めた?」
「……少しだけなら。なんか知らねえけど、お前以外のヤツらが話しかけてくるようになったからな」
「そうなんだ」
良かった。チョコがクラスに馴染めたなら学級委員長として嬉しいよ。……恋人としても
「………お前のお蔭かもな」
「え?」
「なんだかんだで、お前のお蔭かもって……」
眉を少し下げて微かに照れ笑う横顔。そんな表情と言葉は、俺の理性を簡単に吹っ飛ばしていく。
「……チョコ!」
「あっ!?」
ぐっとチョコの両肩を掴んでコンクリートの壁に押しつけた。
どうしよう、嬉しい。このままチョコを独り占めしたい
ドクンドクンとうるさいくらい鼓動が高鳴っている。何するんだと怒ってるその口を塞いでやりたくて唇を寄せていく。そうしようとしたその時。
ポツン
「ん?」
「……雨だ」
鼻に一滴水滴がかかった。チョコの言う通り雨が降ってきたようだ。
神様は俺の願いを叶えてくれないみたいだ。もう少しでチョコとキス出来たのに。もう少しチョコといたかったのに。
「傘無いし風邪を引いたら大変だ。早く帰ろう」
「ああ」
雨にキスするタイミングを遮られて、仕方なく両肩を掴んだ手を離した。雨で早歩きをして数分で交差点。いつもの別れ道。
「じゃあ、またな」
名残惜しい、な……
そうは思ってても雨は待ってくれない。小雨が段々と強くなってくる。
軽く手を振ってからチョコに背を向け、駅に繋がる道へと歩きだそうとした。すると、シャツが後ろに引っ張られる感覚がした。
「えっ。チョコ?」
チョコが俺のシャツを引っ張っていた。
体の向きはそのまま顔だけ振り向くと、真っ赤な顔をしたチョコがいて。
「…………連れて行ってやるよ。家近ぇし……」
「……………チョコの家に?」
「他にどこがあんだよ」
「……ほっ、本当? 行く! ありがとう!」
前言撤回! 神様はそれ以上を叶えてくれたみたいだ! 本当にチョコのお家に行けるなんて! 雨万歳!
✿✿✿✿✿
チョコの家に着いた。閑静な住宅地に佇む二階建ての一軒家。玄関に入って靴を脱いだらしっかりと揃えておく。
他人の家ってあまり来ないから新鮮だな。俺の家とは全然違う
「お邪魔します」
「今日、夜まで誰もいねぇからのんびり寛げよ」
「……」
なんだって? それはつまり夜まで二人っきりってことで本当に捏造じゃなかったってことだよね? まさか……
「ねぇ、チョコ」
まさか、な……本当に寂しかったとかそんなことじゃないよな
「いいのか? いても」
「……いいから言ったんだ。雨で濡れたしシャワーでも浴びてろ」
その時のチョコは眉を寄せて照れていたように見えた。照れ隠しなのかバスタオルを投げつけられる。
「あ、ああ……」
俺は呆気に取られながらもバスルームに案内されて服を脱いでいる。給湯して浴室に入りシャワーを浴びると、雨で冷えた身体がじんわりと温まってきて気持ち良い。
この展開は何? 美味しすぎるシチュエーションだよ。シャワー浴びてこいって、つまりそういうアレだよね? そうだよね? 俺の認識間違ってないよな? チョコに限ってはただ濡れて風邪を心配しているだけなのかもしれない。でもちょっと期待しちゃうじゃないか、多感な男子高校生だもん! チョコの濡れたシャツが肌に張り付いて浮かび上がる乳首見ちゃった……なんだあのエッチな乳首は
シャワーを浴びながら悶々と考えていたけどあまり長く浴びるつもりはない。頭もざっと流し、冷えた体が温まるとすぐに出た。身体をバスタオルで拭いていると、脱衣室の扉が開かれる。
チョコが衣類を持って現れた。
「わわっ!?」
「なんだ早ぇな」
急な出現に慌てて、咄嗟に俺は身体を翻し、バスタオルで自分の全身を覆い隠していた。
「もっとゆっくりしてるかと思った」
「いや、あの、チョコも濡れてるから早く……」
「お前の服乾くまでこれ着とけ。じゃ」
俺が途中で絶句しているのなんか気にせず、持ってきた衣類をカゴに入れてさっさと出ていってしまった。
どうして絶句したか。それはチョコの姿を見たからだ。チョコは無防備にも上半身裸だった。
乳首乳首乳首チョコの生乳首! あれはガン見するしかないでしょ。ありがたく拝ませてもらったよ。しっかり脳内にインプットしたさ。桜色の小さな乳首がぽつんと控えめに主張していてなんて可愛らしくエロティックなんだ!
またも興奮してきたが、チョコが風邪を引くといけないのでもたもたしていられない。下着は濡れていなかった為、元々穿いていた下着を穿いた。頭はドライヤーを借りて水気だけを飛ばす。それから置いてある衣類は薄手のシャツとチノパンが置かれていた。
これを着ろってことだよな。所謂、彼シャツ……!
じーんと思わず感動して、着ないで抱きしめてみた。それから脱衣室からリビングへ行くと、パンイチの俺を見て文字通りチョコが呆れた声を出す。
「なにしてんだよ、早く着ろよ。俺も入ってくるからな」
そう言い残してチョコも脱衣室へ入っていった。
上半身裸でバスタオルを肩から掛けて、下はジャージを穿いていた。
制服じゃないチョコもいいな。鎌倉の時に私服は見たけど、今はラフな格好だし、本当にお家にお邪魔しているんだな……今日はとても新鮮な気分だ……なんて贅沢な時間なんだ
抱きしめている衣類を顔に近付けて思い切りニオイを嗅ぐ。
「はあ~洗剤と柔軟剤……あとチョコのニオイだ。間違いない」
スーハースーハーと嗅いでは家中の空気も交互に吸って、清々しいような、それでいてドキドキと胸が高鳴るような、おかしな気分になってくる。せっかくだからとシャツを着てみたら更に高揚感が増してきた。
彼シャツ! 夢の彼シャツ! はあぁ~~俺、チョコに包まれてるぅ……!
「夢のようだあああぁぁ……!」
自分の身体を抱きしめながらその場でくるりと回ってみた。あまりの嬉しさに声を大にして歓喜する。そしてもう一つの衣類、チノパンを見ると真顔になる。
イケナイな……イケナイのに、こんな禁欲的な場所で……こ、こんな所まで……!
チノパンを両手でしっかり持ち、数分躊躇うも決心すればシャツと同じようにがっつり顔を近づけ埋めた。ズボンの分かれ目、股の部分に。
「はぁ、ハァ、ここに、ここにチョコのチョコが普段収まっているなんて! はあぁあ~ロマンが詰まってる! いや、待てよ、本来収まってるのはここではなく先に布地に収まってるじゃないか。そう、それはパンツ! パンツを嗅ぐなんてそれはもう……想像するだけでヤバイね! また別の機会だな!」
どうにも興奮が治まらないのはこんなレア物を渡されたからだ。彼シャツを着て、ズボンを嗅いで、しかも相手は今シャワーを浴びている。
これってもうこの後そういう雰囲気になって、そういうことをするんですよね? ……なーんて、ね。ああでも、今チョコはシャワーを浴びているのか……俺が入った後に……そう考えたら同棲してるみたいでそれはそれで嬉しいような恥ずかしいような……俺ってば気が早いな、まったく
ガチャ
「お前さっきからうるせぇよ」
チョコが静かにリビングの扉を開けて入ってきた。
「やあ。チョコも早かったね」
「やあ、じゃねぇし。うるせぇから早めに出てきたん……って……なに……してんだお前」
シャツに下着姿。手にはチノパン、顔を近づけている。そして下着を押し上げている股間。
怪訝な顔が段々と険しくなっていくチョコ。
「ロマンを噛みしめていたんだよ」
「こ……んの、ド変態かよっ!」
「チョコ限定のな!」
「はあ……堂々と言うなし……」
「仕方ないことさ。恋人の服を着て恋人のニオイのする服を嗅ぎ、尚且つエッチな身体を見たらいてもたってもいられないよ」
「どこが仕方ないだよ、意味わかんねぇ。普通に服着て待ってろよ。とっととソレ穿いて隠しとけ。暫くすれば治まるだろ」
ぷいっと顔を背けてしまう。明らかに怒った顔をしているけれど、思ったよりも怒ってなさそうだ。シャワーを浴びたチョコは、今度はちゃんと上を着ている。白いTシャツにジャージとシンプルだ。
あんまりこの姿でいると本当に激怒しそうだから、俺は言われた通り借りたチノパンを穿くことにした。
「おおーっ!」
二階へ昇ると二部屋あり、片方の部屋に案内された。きっとここがチョコの自室なんだろう。ベッドと本棚、折り畳み式のテーブルが置いてある。
「ちゃんと整頓してるんだな」
「最低限のものがあればいいしな。座布団しかねぇけど、まあ座れよ」
「あ、はい。失礼します」
テーブルの前には座布団が二枚置かれていて、近くの座布団に座ることにした。座布団に座る馴染みがなく、どうしようかとそわそわしてしまう。スクールバッグを置きつつ、背筋をぴんと伸ばして正座した。
チョコはもう一つの座布団に腰を下ろして胡座をかく。
あっ、なるほど! その手があったか!
見て学び納得したが、今更変えるのもおかしな気がしてそのまま正座でいることにした。
「乾燥三十分しねぇで終わるだろうし、その間なんかしてるか。宿題とか」
「そうだな」
「おとなしくしてりゃ、ソレ治まんだろ」
「あははは……」
実はと言うと、部屋に入ってみた辺りからどこか緊張気味なのか息子の方は少し萎えてきていた。
俺らしくもない……リビングではあんな興奮していたのにな。そりゃあチョコの服嗅いだりシチュエーションに酔ってるのもあったかもしれないけれど
「今日終わらせたら、明日には予習とかも出来るだろ」
「今日で終わらせるつもりなのか? というか予習するのかい」
「まあ、家でやることってそれくらいだし」
真面目かっ! 予習なんて先生に言われた時くらいしかしたことないよ
「本も結構並んでるし、チョコはインドアなんだな~」
「……あんまり外出られねぇからな」
「……あ、ああ、そうだよな! 体育も出来ないくらいだしなっ」
しまったぁあああーーーーこれは地雷踏んだな!! 話題、話題を変えよう!!
「い、色んな本あるけど、漫画とかも読むんだなっ」
「暇だからな。あんまり注目されてねぇのとか、新連載されたのとか読んでみて、面白いのを発見するのは結構楽しいぞ」
「へえ。じゃあ今度チョコが面白いと思うのピックアップしてくれよ。俺も読んでみたい」
「ああ、考えとく」
よし、切り抜けたぞ。危ないあぶない。危うくまたチョコを怒らせてしまうところだった。チョコは繊細だ。他の野郎みたく図太くないからもっと言葉を選ばないと。チョコは数学か。俺も数学からやろうかな
バッグから筆記用具、教科書、ノートを広げると、折り畳みのテーブルの大きさでは、はみ出るくらい一杯になる。筆記用具は床に置くことにして、シャツの袖をまくり上げて宿題に集中することにした。
俺達はクラス公認カップルということで、一緒に帰るようになった。クラスのヤツらが俺に気を利かせてくれてチョコを足止めしてるんだけどな。学級委員の仕事がある日は先に帰ってもらってる。でも結構な頻度で一緒に帰っているから、一緒にいられる時間が長くなったのは控えめに言ってとっても嬉しい。
「今日も学校楽しかったな~」
「……そうかよ」
「うん。変わらず楽しかった。チョコは?」
「……普通」
「うーん、普通か~曖昧だな~。どうしたら楽しくなる?」
「どうって………知らね。学校に楽しいとかあるのかよ。今まで楽しいとか思ったことねぇし」
チョコも大変だな……可愛い体質だとは思うけど、本人にとっては迷惑なんだろうし
「じゃあさ、こうやって一緒に帰るのは楽しい?」
「えっ。…………ん、まあ……別に。どうってこと……ねえけど」
「楽しくないってことかい!?」
「そうじゃねえ。……こんなことだって、普通っていうか、楽しいってのとなんか違うんじゃねぇの。当たり前のことっていうか……」
目を泳がせて一生懸命に言葉を考えて話すチョコがいじらしい。
こうやって何でもなく俺と帰るって、実は当たり前じゃない。チョコが俺を意識して待っててくれたり、俺もチョコを意識して声を掛けに行ったり、そういうやり取りがあるから楽しいって思うんだよ
「そっか……。クラスには馴染めた?」
「……少しだけなら。なんか知らねえけど、お前以外のヤツらが話しかけてくるようになったからな」
「そうなんだ」
良かった。チョコがクラスに馴染めたなら学級委員長として嬉しいよ。……恋人としても
「………お前のお蔭かもな」
「え?」
「なんだかんだで、お前のお蔭かもって……」
眉を少し下げて微かに照れ笑う横顔。そんな表情と言葉は、俺の理性を簡単に吹っ飛ばしていく。
「……チョコ!」
「あっ!?」
ぐっとチョコの両肩を掴んでコンクリートの壁に押しつけた。
どうしよう、嬉しい。このままチョコを独り占めしたい
ドクンドクンとうるさいくらい鼓動が高鳴っている。何するんだと怒ってるその口を塞いでやりたくて唇を寄せていく。そうしようとしたその時。
ポツン
「ん?」
「……雨だ」
鼻に一滴水滴がかかった。チョコの言う通り雨が降ってきたようだ。
神様は俺の願いを叶えてくれないみたいだ。もう少しでチョコとキス出来たのに。もう少しチョコといたかったのに。
「傘無いし風邪を引いたら大変だ。早く帰ろう」
「ああ」
雨にキスするタイミングを遮られて、仕方なく両肩を掴んだ手を離した。雨で早歩きをして数分で交差点。いつもの別れ道。
「じゃあ、またな」
名残惜しい、な……
そうは思ってても雨は待ってくれない。小雨が段々と強くなってくる。
軽く手を振ってからチョコに背を向け、駅に繋がる道へと歩きだそうとした。すると、シャツが後ろに引っ張られる感覚がした。
「えっ。チョコ?」
チョコが俺のシャツを引っ張っていた。
体の向きはそのまま顔だけ振り向くと、真っ赤な顔をしたチョコがいて。
「…………連れて行ってやるよ。家近ぇし……」
「……………チョコの家に?」
「他にどこがあんだよ」
「……ほっ、本当? 行く! ありがとう!」
前言撤回! 神様はそれ以上を叶えてくれたみたいだ! 本当にチョコのお家に行けるなんて! 雨万歳!
✿✿✿✿✿
チョコの家に着いた。閑静な住宅地に佇む二階建ての一軒家。玄関に入って靴を脱いだらしっかりと揃えておく。
他人の家ってあまり来ないから新鮮だな。俺の家とは全然違う
「お邪魔します」
「今日、夜まで誰もいねぇからのんびり寛げよ」
「……」
なんだって? それはつまり夜まで二人っきりってことで本当に捏造じゃなかったってことだよね? まさか……
「ねぇ、チョコ」
まさか、な……本当に寂しかったとかそんなことじゃないよな
「いいのか? いても」
「……いいから言ったんだ。雨で濡れたしシャワーでも浴びてろ」
その時のチョコは眉を寄せて照れていたように見えた。照れ隠しなのかバスタオルを投げつけられる。
「あ、ああ……」
俺は呆気に取られながらもバスルームに案内されて服を脱いでいる。給湯して浴室に入りシャワーを浴びると、雨で冷えた身体がじんわりと温まってきて気持ち良い。
この展開は何? 美味しすぎるシチュエーションだよ。シャワー浴びてこいって、つまりそういうアレだよね? そうだよね? 俺の認識間違ってないよな? チョコに限ってはただ濡れて風邪を心配しているだけなのかもしれない。でもちょっと期待しちゃうじゃないか、多感な男子高校生だもん! チョコの濡れたシャツが肌に張り付いて浮かび上がる乳首見ちゃった……なんだあのエッチな乳首は
シャワーを浴びながら悶々と考えていたけどあまり長く浴びるつもりはない。頭もざっと流し、冷えた体が温まるとすぐに出た。身体をバスタオルで拭いていると、脱衣室の扉が開かれる。
チョコが衣類を持って現れた。
「わわっ!?」
「なんだ早ぇな」
急な出現に慌てて、咄嗟に俺は身体を翻し、バスタオルで自分の全身を覆い隠していた。
「もっとゆっくりしてるかと思った」
「いや、あの、チョコも濡れてるから早く……」
「お前の服乾くまでこれ着とけ。じゃ」
俺が途中で絶句しているのなんか気にせず、持ってきた衣類をカゴに入れてさっさと出ていってしまった。
どうして絶句したか。それはチョコの姿を見たからだ。チョコは無防備にも上半身裸だった。
乳首乳首乳首チョコの生乳首! あれはガン見するしかないでしょ。ありがたく拝ませてもらったよ。しっかり脳内にインプットしたさ。桜色の小さな乳首がぽつんと控えめに主張していてなんて可愛らしくエロティックなんだ!
またも興奮してきたが、チョコが風邪を引くといけないのでもたもたしていられない。下着は濡れていなかった為、元々穿いていた下着を穿いた。頭はドライヤーを借りて水気だけを飛ばす。それから置いてある衣類は薄手のシャツとチノパンが置かれていた。
これを着ろってことだよな。所謂、彼シャツ……!
じーんと思わず感動して、着ないで抱きしめてみた。それから脱衣室からリビングへ行くと、パンイチの俺を見て文字通りチョコが呆れた声を出す。
「なにしてんだよ、早く着ろよ。俺も入ってくるからな」
そう言い残してチョコも脱衣室へ入っていった。
上半身裸でバスタオルを肩から掛けて、下はジャージを穿いていた。
制服じゃないチョコもいいな。鎌倉の時に私服は見たけど、今はラフな格好だし、本当にお家にお邪魔しているんだな……今日はとても新鮮な気分だ……なんて贅沢な時間なんだ
抱きしめている衣類を顔に近付けて思い切りニオイを嗅ぐ。
「はあ~洗剤と柔軟剤……あとチョコのニオイだ。間違いない」
スーハースーハーと嗅いでは家中の空気も交互に吸って、清々しいような、それでいてドキドキと胸が高鳴るような、おかしな気分になってくる。せっかくだからとシャツを着てみたら更に高揚感が増してきた。
彼シャツ! 夢の彼シャツ! はあぁ~~俺、チョコに包まれてるぅ……!
「夢のようだあああぁぁ……!」
自分の身体を抱きしめながらその場でくるりと回ってみた。あまりの嬉しさに声を大にして歓喜する。そしてもう一つの衣類、チノパンを見ると真顔になる。
イケナイな……イケナイのに、こんな禁欲的な場所で……こ、こんな所まで……!
チノパンを両手でしっかり持ち、数分躊躇うも決心すればシャツと同じようにがっつり顔を近づけ埋めた。ズボンの分かれ目、股の部分に。
「はぁ、ハァ、ここに、ここにチョコのチョコが普段収まっているなんて! はあぁあ~ロマンが詰まってる! いや、待てよ、本来収まってるのはここではなく先に布地に収まってるじゃないか。そう、それはパンツ! パンツを嗅ぐなんてそれはもう……想像するだけでヤバイね! また別の機会だな!」
どうにも興奮が治まらないのはこんなレア物を渡されたからだ。彼シャツを着て、ズボンを嗅いで、しかも相手は今シャワーを浴びている。
これってもうこの後そういう雰囲気になって、そういうことをするんですよね? ……なーんて、ね。ああでも、今チョコはシャワーを浴びているのか……俺が入った後に……そう考えたら同棲してるみたいでそれはそれで嬉しいような恥ずかしいような……俺ってば気が早いな、まったく
ガチャ
「お前さっきからうるせぇよ」
チョコが静かにリビングの扉を開けて入ってきた。
「やあ。チョコも早かったね」
「やあ、じゃねぇし。うるせぇから早めに出てきたん……って……なに……してんだお前」
シャツに下着姿。手にはチノパン、顔を近づけている。そして下着を押し上げている股間。
怪訝な顔が段々と険しくなっていくチョコ。
「ロマンを噛みしめていたんだよ」
「こ……んの、ド変態かよっ!」
「チョコ限定のな!」
「はあ……堂々と言うなし……」
「仕方ないことさ。恋人の服を着て恋人のニオイのする服を嗅ぎ、尚且つエッチな身体を見たらいてもたってもいられないよ」
「どこが仕方ないだよ、意味わかんねぇ。普通に服着て待ってろよ。とっととソレ穿いて隠しとけ。暫くすれば治まるだろ」
ぷいっと顔を背けてしまう。明らかに怒った顔をしているけれど、思ったよりも怒ってなさそうだ。シャワーを浴びたチョコは、今度はちゃんと上を着ている。白いTシャツにジャージとシンプルだ。
あんまりこの姿でいると本当に激怒しそうだから、俺は言われた通り借りたチノパンを穿くことにした。
「おおーっ!」
二階へ昇ると二部屋あり、片方の部屋に案内された。きっとここがチョコの自室なんだろう。ベッドと本棚、折り畳み式のテーブルが置いてある。
「ちゃんと整頓してるんだな」
「最低限のものがあればいいしな。座布団しかねぇけど、まあ座れよ」
「あ、はい。失礼します」
テーブルの前には座布団が二枚置かれていて、近くの座布団に座ることにした。座布団に座る馴染みがなく、どうしようかとそわそわしてしまう。スクールバッグを置きつつ、背筋をぴんと伸ばして正座した。
チョコはもう一つの座布団に腰を下ろして胡座をかく。
あっ、なるほど! その手があったか!
見て学び納得したが、今更変えるのもおかしな気がしてそのまま正座でいることにした。
「乾燥三十分しねぇで終わるだろうし、その間なんかしてるか。宿題とか」
「そうだな」
「おとなしくしてりゃ、ソレ治まんだろ」
「あははは……」
実はと言うと、部屋に入ってみた辺りからどこか緊張気味なのか息子の方は少し萎えてきていた。
俺らしくもない……リビングではあんな興奮していたのにな。そりゃあチョコの服嗅いだりシチュエーションに酔ってるのもあったかもしれないけれど
「今日終わらせたら、明日には予習とかも出来るだろ」
「今日で終わらせるつもりなのか? というか予習するのかい」
「まあ、家でやることってそれくらいだし」
真面目かっ! 予習なんて先生に言われた時くらいしかしたことないよ
「本も結構並んでるし、チョコはインドアなんだな~」
「……あんまり外出られねぇからな」
「……あ、ああ、そうだよな! 体育も出来ないくらいだしなっ」
しまったぁあああーーーーこれは地雷踏んだな!! 話題、話題を変えよう!!
「い、色んな本あるけど、漫画とかも読むんだなっ」
「暇だからな。あんまり注目されてねぇのとか、新連載されたのとか読んでみて、面白いのを発見するのは結構楽しいぞ」
「へえ。じゃあ今度チョコが面白いと思うのピックアップしてくれよ。俺も読んでみたい」
「ああ、考えとく」
よし、切り抜けたぞ。危ないあぶない。危うくまたチョコを怒らせてしまうところだった。チョコは繊細だ。他の野郎みたく図太くないからもっと言葉を選ばないと。チョコは数学か。俺も数学からやろうかな
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