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二章〈take a cold〉~熱に浮かされる本能~
ニ
俺の心のダムが崩壊してしまいそうだ。チョコが三日も学校を休んでいる。俺の癒やしが、心のオアシスがいない。
「はあ~~~~チョコ不足だあ~~」
「うわっ。委員ちょが塩かけられたナメクジみたいになってる!」
「それは言い過ぎ」
よく話している二人がやってきた。でも今日はそんなノリについていけそうに無い。回復の拠り所が無さ過ぎる。
「あれか? 明路が来てないから元気ないの?」
「そうともさ~。中々熱が下がらないみたいでね。今日やっと落ち着いてきたらしくて。ああ……可哀想なチョコ……」
「熱下がってきたんならお見舞い行ってもいいんじゃね?」
「そうかな……でも来るなって言われてるし」
「差し入れだけでもして、会えたらラッキーくらいに思っとけばいいじゃん」
「そうそう。いつものお前らしく当たって砕けろよ」
「砕けるつもりはないよ! ……でもそうだな、差し入れしに行こうかな」
二人に心配されるなんて余程俺はナメクジみたいだったのか。その例えは梅雨だからなのか。
✿✿✿✿✿
学校が終わり最寄りの駅へ向かってコンビニに立ち寄る。
チョコって何が好きなんだろう? ココア飲んでたし、鎌倉で散々甘い物食べたし、きっと甘い物は好きだと思うんだ。風邪の時って何がいいんだろう? 熱に良さそうなものって……氷?
看病なんてしたことが無くてこういう時に困る。せめて食べ物の好みくらい把握しておくべきだった。
結局購入したものは、かき氷、のど飴、果物ゼリー、熱冷ましシート、自分用のココアパウダーだ。
「スマートじゃないよなぁ」
必要な物と好みの物を持っていって、物だけ渡してさっさと帰ればクールに決まりそうだなと考えているものの、そんなことは絶対に無い。会えたら少しでも長く一緒にいたいと思うに決まってる。
俺ってこんなに尽くすタイプだったんだな。もっと冷めてる方だったのに。チョコはこう……庇護欲をそそられるというか……守ってあげたくなるというか……これはなんて言うのかな。……母性? 俺ってば母性に目覚めてるのか?
「なんてことだ。チョコとお付き合いしてから新しい性癖に目覚めてしまいそうだ」
チョコの家に向かいながら独り言を喋っていて、道行く親子には微妙に避けられつつ遠巻きに視線を感じる。そんなのは慣れっこさ。別に気にすることじゃない。
✿✿✿✿✿
ピンポーン
「はい」
チョコの家に到着しインターホンを鳴らすと女性の声が聞こえてきた。
「すみません、拓のお見舞いに来た藍庭と申します」
「まあ、ちょっとお待ちくださいねっ」
バタバタと家から音が聞こえてくる。扉が開くと現れたのはチョコの母親と思われる女性。
「いらっしゃい。えっと、有馬くん?」
「は、はい。そうです」
「お見舞いありがとね。さっ、上がって」
「あ、でも、そんな長くいては悪いです。ちょっとチョコに……あ、た、拓に差し入れして挨拶出来ればいいなーと思ってただけですので」
「おい」
ひょっこり後ろからチョコの顔が現れる。顔が火照っていてまだ少し熱がありそうだ。
「来るなってメールしたよな?」
「差し入れして少しでも顔が見たかったんだよ」
「拓。せっかく来てもらったんだし良かったじゃない。もう咳は落ち着いてるんだし」
「……じゃあ上がってけ」
「……お邪魔します!」
招かれて顔が綻ぶのを止められない。玄関に上がって買ってきた物を渡す。
「食べられそうな物と、一応熱冷ますシートも買ってみた」
「まあこんなに沢山! ありがとね」
「悪いな。……ココアも入ってる」
「あっ、ココアは俺の!」
避けておくのを忘れていた。慌ててココアパウダーを取り自分の鞄に突っ込む。
「ココア好きだったのか?」
「……最近好きになったんだよ」
「じゃあせっかくだからココア淹れましょうか」
「そんなっ、お構いなく」
「来ちまったしそんくらい飲んでけよ」
「……それじゃあお言葉に甘えることにします」
「はーい。手を洗ってらっしゃい」
そう言われて洗面所へチョコと一緒に向かった。チョコはやはりご機嫌斜めなようだ。後ろから無言の圧力を感じる。
「……ごめんって。でも会いたくなっちゃったんだからしょうがないだろ?」
「親がいるからあんまり来てほしくなかったんだよ。親に会わせるのなんか照れくさいだろ」
「ああ、そういうことか。俺のこと知ってたみたいだけど」
「たまにお前のこと話すからな」
「それは……俺も照れるね」
知らないところで自分の話をされているなんて、嬉しいけど恥ずかしい。一体何を話しているのか気になるところだ。
手を洗い終わってリビングへ戻るとココアの香りが漂ってきた。
「さすが拓のマーマさん。手際が良いですね」
「まあっありがとう。有馬くんって外国人? それともハーフかクオーター?」
「ハーフです」
「そうなのか!?」
「うん。あれ? 大体皆初対面で聞いてくるから知ってるものだと思ってたよ」
「どことどこなの?」
「母が日本で、父がロシアです」
「だから色白なのね~。お顔も整ってるし。あ、ココアどうぞ」
「ありがとうございます」
「上行くぞ」
「拓、有馬くん来てくれたし丁度良いからお買い物してくるわ。お留守番お願い」
「わかった」
ココアの入ったマグカップを持ち、俺とチョコは二階へ昇っていった。
「……ハーフだったのか」
「隠しておきたかったわけじゃないよ」
「なんつーかな……時々ズレてるからそうかもとは思ってた」
「そういう判断なの!? 顔とかじゃなくて!?」
チョコも人のことを言えないくらい天然なところはあると思う。
「顔は整ってるよな、くらいしか認識してねぇし」
「それはつまり?」
聞いてみたいという欲が沸々と湧いてきた。わくわくしながらチョコの顔を見つめると、やや顔を引きつらせている。
「つまりってなんでもねぇよ。キラキラした顔面だなって思ってるだけだ」
「なんだいキラキラした顔面って。光でも当ててるみたいな眩しい顔ってこと? 素直にイケメンでカッコイイって言ってくれてもいいんだよ?」
「それを自分で言えるお前ってスゲーよな……」
「ははは、それ程でもないよ」
呆れているのか引いているのかそんな顔をしている。別にそれでもいいんだ。俺はチョコの顔が見れただけでも嬉しい。
差し入れを渡して顔を見て少し話したら帰ろうと思っていた。けれどそれは長くいられないだろうと想定していてのこと。いても良いと言われれば有り難くお邪魔することにする。
せっかく頂いたのでココアを一口飲む。甘い味と香りが口の中に広がり鼻からすっと抜けて行った。
「わあっ……美味しい! これって前チョコが淹れてくれたのと違うココアなのかな?」
あまりにも美味しくてあっという間に飲み干してしまった。
「同じやつだろうな。多分客に出すからって気合入れて、ミルクとか蜂蜜とか砂糖とか何か奮発して入れたんじゃねぇの」
チョコは心底どうでもよさそうに言いながら飲んでいる。親子とはこういうものなのか。
俺としては結構感動してるんだけどな
「そうだ、ノート持ってきたんだけど写すかい? 休んでる間に結構進んだからさ」
「マジか。ああ、悪い。写すの時間かかるだろうから土日借りててもいいか?」
「いいよ。はい」
鞄から教科ごとのノートを数冊取り出して渡す。
全て受け取り上にから順に開いて、記入してある最新のページをざっと見ている。
「借りといて言うのもアレだけど、お前字下手くそだな」
ストレートに言われれば傷つくけれど自覚はしている。
「読むのはいいけど書くのは得意ではないんだよ」
「ふーん。まあ読めるからいいか。じゃあ休み明けに返すわ」
「うん」
近くに座布団を敷かれたので座った。今度は正座ではなく胡座をかいて。
「はあ~~~~チョコ不足だあ~~」
「うわっ。委員ちょが塩かけられたナメクジみたいになってる!」
「それは言い過ぎ」
よく話している二人がやってきた。でも今日はそんなノリについていけそうに無い。回復の拠り所が無さ過ぎる。
「あれか? 明路が来てないから元気ないの?」
「そうともさ~。中々熱が下がらないみたいでね。今日やっと落ち着いてきたらしくて。ああ……可哀想なチョコ……」
「熱下がってきたんならお見舞い行ってもいいんじゃね?」
「そうかな……でも来るなって言われてるし」
「差し入れだけでもして、会えたらラッキーくらいに思っとけばいいじゃん」
「そうそう。いつものお前らしく当たって砕けろよ」
「砕けるつもりはないよ! ……でもそうだな、差し入れしに行こうかな」
二人に心配されるなんて余程俺はナメクジみたいだったのか。その例えは梅雨だからなのか。
✿✿✿✿✿
学校が終わり最寄りの駅へ向かってコンビニに立ち寄る。
チョコって何が好きなんだろう? ココア飲んでたし、鎌倉で散々甘い物食べたし、きっと甘い物は好きだと思うんだ。風邪の時って何がいいんだろう? 熱に良さそうなものって……氷?
看病なんてしたことが無くてこういう時に困る。せめて食べ物の好みくらい把握しておくべきだった。
結局購入したものは、かき氷、のど飴、果物ゼリー、熱冷ましシート、自分用のココアパウダーだ。
「スマートじゃないよなぁ」
必要な物と好みの物を持っていって、物だけ渡してさっさと帰ればクールに決まりそうだなと考えているものの、そんなことは絶対に無い。会えたら少しでも長く一緒にいたいと思うに決まってる。
俺ってこんなに尽くすタイプだったんだな。もっと冷めてる方だったのに。チョコはこう……庇護欲をそそられるというか……守ってあげたくなるというか……これはなんて言うのかな。……母性? 俺ってば母性に目覚めてるのか?
「なんてことだ。チョコとお付き合いしてから新しい性癖に目覚めてしまいそうだ」
チョコの家に向かいながら独り言を喋っていて、道行く親子には微妙に避けられつつ遠巻きに視線を感じる。そんなのは慣れっこさ。別に気にすることじゃない。
✿✿✿✿✿
ピンポーン
「はい」
チョコの家に到着しインターホンを鳴らすと女性の声が聞こえてきた。
「すみません、拓のお見舞いに来た藍庭と申します」
「まあ、ちょっとお待ちくださいねっ」
バタバタと家から音が聞こえてくる。扉が開くと現れたのはチョコの母親と思われる女性。
「いらっしゃい。えっと、有馬くん?」
「は、はい。そうです」
「お見舞いありがとね。さっ、上がって」
「あ、でも、そんな長くいては悪いです。ちょっとチョコに……あ、た、拓に差し入れして挨拶出来ればいいなーと思ってただけですので」
「おい」
ひょっこり後ろからチョコの顔が現れる。顔が火照っていてまだ少し熱がありそうだ。
「来るなってメールしたよな?」
「差し入れして少しでも顔が見たかったんだよ」
「拓。せっかく来てもらったんだし良かったじゃない。もう咳は落ち着いてるんだし」
「……じゃあ上がってけ」
「……お邪魔します!」
招かれて顔が綻ぶのを止められない。玄関に上がって買ってきた物を渡す。
「食べられそうな物と、一応熱冷ますシートも買ってみた」
「まあこんなに沢山! ありがとね」
「悪いな。……ココアも入ってる」
「あっ、ココアは俺の!」
避けておくのを忘れていた。慌ててココアパウダーを取り自分の鞄に突っ込む。
「ココア好きだったのか?」
「……最近好きになったんだよ」
「じゃあせっかくだからココア淹れましょうか」
「そんなっ、お構いなく」
「来ちまったしそんくらい飲んでけよ」
「……それじゃあお言葉に甘えることにします」
「はーい。手を洗ってらっしゃい」
そう言われて洗面所へチョコと一緒に向かった。チョコはやはりご機嫌斜めなようだ。後ろから無言の圧力を感じる。
「……ごめんって。でも会いたくなっちゃったんだからしょうがないだろ?」
「親がいるからあんまり来てほしくなかったんだよ。親に会わせるのなんか照れくさいだろ」
「ああ、そういうことか。俺のこと知ってたみたいだけど」
「たまにお前のこと話すからな」
「それは……俺も照れるね」
知らないところで自分の話をされているなんて、嬉しいけど恥ずかしい。一体何を話しているのか気になるところだ。
手を洗い終わってリビングへ戻るとココアの香りが漂ってきた。
「さすが拓のマーマさん。手際が良いですね」
「まあっありがとう。有馬くんって外国人? それともハーフかクオーター?」
「ハーフです」
「そうなのか!?」
「うん。あれ? 大体皆初対面で聞いてくるから知ってるものだと思ってたよ」
「どことどこなの?」
「母が日本で、父がロシアです」
「だから色白なのね~。お顔も整ってるし。あ、ココアどうぞ」
「ありがとうございます」
「上行くぞ」
「拓、有馬くん来てくれたし丁度良いからお買い物してくるわ。お留守番お願い」
「わかった」
ココアの入ったマグカップを持ち、俺とチョコは二階へ昇っていった。
「……ハーフだったのか」
「隠しておきたかったわけじゃないよ」
「なんつーかな……時々ズレてるからそうかもとは思ってた」
「そういう判断なの!? 顔とかじゃなくて!?」
チョコも人のことを言えないくらい天然なところはあると思う。
「顔は整ってるよな、くらいしか認識してねぇし」
「それはつまり?」
聞いてみたいという欲が沸々と湧いてきた。わくわくしながらチョコの顔を見つめると、やや顔を引きつらせている。
「つまりってなんでもねぇよ。キラキラした顔面だなって思ってるだけだ」
「なんだいキラキラした顔面って。光でも当ててるみたいな眩しい顔ってこと? 素直にイケメンでカッコイイって言ってくれてもいいんだよ?」
「それを自分で言えるお前ってスゲーよな……」
「ははは、それ程でもないよ」
呆れているのか引いているのかそんな顔をしている。別にそれでもいいんだ。俺はチョコの顔が見れただけでも嬉しい。
差し入れを渡して顔を見て少し話したら帰ろうと思っていた。けれどそれは長くいられないだろうと想定していてのこと。いても良いと言われれば有り難くお邪魔することにする。
せっかく頂いたのでココアを一口飲む。甘い味と香りが口の中に広がり鼻からすっと抜けて行った。
「わあっ……美味しい! これって前チョコが淹れてくれたのと違うココアなのかな?」
あまりにも美味しくてあっという間に飲み干してしまった。
「同じやつだろうな。多分客に出すからって気合入れて、ミルクとか蜂蜜とか砂糖とか何か奮発して入れたんじゃねぇの」
チョコは心底どうでもよさそうに言いながら飲んでいる。親子とはこういうものなのか。
俺としては結構感動してるんだけどな
「そうだ、ノート持ってきたんだけど写すかい? 休んでる間に結構進んだからさ」
「マジか。ああ、悪い。写すの時間かかるだろうから土日借りててもいいか?」
「いいよ。はい」
鞄から教科ごとのノートを数冊取り出して渡す。
全て受け取り上にから順に開いて、記入してある最新のページをざっと見ている。
「借りといて言うのもアレだけど、お前字下手くそだな」
ストレートに言われれば傷つくけれど自覚はしている。
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