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二章〈take a cold〉~熱に浮かされる本能~
三
「他に何か必要ないものはある? あれば買ってくるよ」
「お袋が色々買ってくるだろうし特には無ぇな」
「ああ……そっか」
コンビニでのことを思い出す。何を買えば喜んでくれるのか、何が好きなのか、何が必要なのか。まだ知らないことだらけでもっと知りたい。知っておきたいことが山程ある。
「チョコは……何が好き?」
「何がって食べ物とか?」
「何でもいいんだ。チョコのことを知りたくて、まずは好きな物でも聞いてみようかと思ってさ」
「好きな物……。あー……聞かれると思いつかねぇんだよな。大してこだわって好きな物も無ぇし。食べ物はそうだな、煎餅とか……団子とか」
「渋めなチョイスだね。和菓子が好きなのかい?」
「和菓子がっていうか、手掴みで食えるから楽なんだよ。ケーキとかプリンはフォークとスプーン必要だろ」
「あ~そういうこと」
味の好みというより手間がかかるかどうかか。結構面倒くさがりなのか? それはちょっと意外だな
「好きな料理は?」
「カレーとかシチューとか、あと鍋物とか。煮込んだ料理は好きだな。作るのも楽だし」
「料理するの?」
「たまにな。親が帰ってくるの遅いし、適当に作ってる時はある」
チョコが料理をするなんてそれも意外だ!
「なんて家庭的なんだ! チョコのエプロン姿を生で見られる日がいつか来るということだね?」
「エプロン持ってねぇし」
「じゃあプレゼントしたい! プレゼントさせて!」
「実用的な物だし貰える物は貰うけどよ」
「チョコに似合うものを選んでみせるよ」
贈り物をする側なのにこんなにもワクワク楽しい気分になれるのだから、こちらが贈り物をされるみたいだ。
「お前は何が好きなんだ?」
「俺は肉かな。ランプステーキとか、トロトロに煮込んだ豚の角煮とかいいよな。熱々のボルシチにゴロッと肉が入ってるのとか最高だよ」
「あーウマそう」
「だろ? そうだ! チョコが嫌じゃなければ今度家に遊びに来るかい? ご馳走するよ」
「えっ」
大きい目が目一杯開かれる。相当驚いてるリアクションだ。
「いいのか?」
「いいとも。だってチョコは俺の恋人だからね」
「恋人だから? ダチは呼ばねぇのか?」
「友人を家には呼んだことないな。俺の家って少し特殊で、特定の人しか呼ばないんだよ」
「へえ、そうなのか」
「だからね、それだけチョコは特別ってことだよ」
家に連れて行きたい。直感でそう思った。今まで付き合ってきた相手は家に呼んだことがない。呼びたいと思わなかった。でもチョコのことはもっと知りたいし、家のことも含めて知って欲しいと、そう思っている。
「それ言うならお前だって特別ってことだ。俺ん家に来るのお前が初めてだから」
顔を見合わせていて、途中から照れて逸らされてしまった。熱が上がったんじゃないかと思うくらい顔は真っ赤になっている。
俺も言われた言葉があまりにも嬉しくて、頭が理解するより先に口から言葉が漏れていた。
「じゃあ俺たち……初めて同士なんだね。家にお呼ばれするの」
「……そうことになるな」
特別の意味はきっとお互い違うかもしれない。しかし大幅に違うこともないだろう。度合いが違う、ただそれくらいの差だろう。恋人として相手を想う気持ちの大きさ。もうそんなに気持ちのズレはないハズだ。そう思うのに確かめてみたいと思うのは不安からなのか、ただの欲求なのか。
「チョコ」
「っ!」
テーブルに置かれている手に触れるとびくりと反射的に引っ込められ、その手を掴んだ。
「……触っていい?」
「もう触ってんじゃねぇか」
「これだけじゃ足りない。抱きしめたい」
「……最近風呂入ってなくて汗臭ぇから嫌だ」
「俺はそんなの気にしないよ」
「気にしろよ」
「じゃあ身体を拭いたら抱きしめてもいい?」
「拭いたらって…………まあ正直、汗が張り付いて気持ち悪いけどよ」
「なら早速準備しよう」
✿✿✿✿✿
タオルを二枚、湯を張った風呂桶、着替え。最低限必要な物がそろったところでチョコはTシャツを脱ぐ。タオルを湯で濡らして絞り、身体前面を拭いてからもう一枚のタオルで乾拭きをする。
「自分で自分の身体に触れるのは平気なんだね」
「そりゃあな。そんなんでいちいち感じてたらマジで何も出来ねぇよ」
確かにその通りだ。自分の身体に触れられないなんてことになったら着替えさえまともに出来ない。
チョコの練習に付き合っていて一つの仮定が浮かんでいた。体質は【身体に触れること】ではなく【触れられること】で異常に敏感になる。チョコから触れるのは平気で、触れられるのは駄目。程度やシチュエーションによっても差がある。
シャツ越しと素肌では全然反応の大きさが違う。声を掛けてから触るのと、急に触るのでも差があった。濡れた頭をタオルで拭いた時はあまり反応は無かった。
チョコの身体が慣れだしているからなのか、それとも声を掛けると身構えることが出来るからなのか。物を通しさえすれば触られても平気なのか、頭部は触られても平気なのか。謎はまだまだ多い。
チョコから触れるのだって結局素肌は触れているのに。
「背中拭いてもらっていいか」
「ああ、うん」
絞った温かいタオルを受け取る。
「じゃあ拭くよ」
一声掛ければ多少は反応が弱くなることは分かっている為、わざとではない時は声を掛けるようにしている。
「……っ」
チョコがやったように温かいタオルで拭いてからポンポンと叩くようにして乾拭きする。
やっぱりタオルとか物で触れるのはまだマシなのかな? 声が出ても控えめだ
考えてみると試してみたくなる。タオルでならどれくらいまで大丈夫なのか。しかしチョコはまだ熱があって体調が優れない。今試す時ではないだろう。でもやってみたいという気持ちは大いにあって葛藤する。
「終わったか?」
「えっ! あ、……ああ……おわっ……た」
「拭くだけでも全然違うな。わりとサッパリした」
「そ、それなら良かった!」
「おう。サンキュな」
お礼を言いながらシャツに着替えている。結局試すには至らなかった。
「お袋が色々買ってくるだろうし特には無ぇな」
「ああ……そっか」
コンビニでのことを思い出す。何を買えば喜んでくれるのか、何が好きなのか、何が必要なのか。まだ知らないことだらけでもっと知りたい。知っておきたいことが山程ある。
「チョコは……何が好き?」
「何がって食べ物とか?」
「何でもいいんだ。チョコのことを知りたくて、まずは好きな物でも聞いてみようかと思ってさ」
「好きな物……。あー……聞かれると思いつかねぇんだよな。大してこだわって好きな物も無ぇし。食べ物はそうだな、煎餅とか……団子とか」
「渋めなチョイスだね。和菓子が好きなのかい?」
「和菓子がっていうか、手掴みで食えるから楽なんだよ。ケーキとかプリンはフォークとスプーン必要だろ」
「あ~そういうこと」
味の好みというより手間がかかるかどうかか。結構面倒くさがりなのか? それはちょっと意外だな
「好きな料理は?」
「カレーとかシチューとか、あと鍋物とか。煮込んだ料理は好きだな。作るのも楽だし」
「料理するの?」
「たまにな。親が帰ってくるの遅いし、適当に作ってる時はある」
チョコが料理をするなんてそれも意外だ!
「なんて家庭的なんだ! チョコのエプロン姿を生で見られる日がいつか来るということだね?」
「エプロン持ってねぇし」
「じゃあプレゼントしたい! プレゼントさせて!」
「実用的な物だし貰える物は貰うけどよ」
「チョコに似合うものを選んでみせるよ」
贈り物をする側なのにこんなにもワクワク楽しい気分になれるのだから、こちらが贈り物をされるみたいだ。
「お前は何が好きなんだ?」
「俺は肉かな。ランプステーキとか、トロトロに煮込んだ豚の角煮とかいいよな。熱々のボルシチにゴロッと肉が入ってるのとか最高だよ」
「あーウマそう」
「だろ? そうだ! チョコが嫌じゃなければ今度家に遊びに来るかい? ご馳走するよ」
「えっ」
大きい目が目一杯開かれる。相当驚いてるリアクションだ。
「いいのか?」
「いいとも。だってチョコは俺の恋人だからね」
「恋人だから? ダチは呼ばねぇのか?」
「友人を家には呼んだことないな。俺の家って少し特殊で、特定の人しか呼ばないんだよ」
「へえ、そうなのか」
「だからね、それだけチョコは特別ってことだよ」
家に連れて行きたい。直感でそう思った。今まで付き合ってきた相手は家に呼んだことがない。呼びたいと思わなかった。でもチョコのことはもっと知りたいし、家のことも含めて知って欲しいと、そう思っている。
「それ言うならお前だって特別ってことだ。俺ん家に来るのお前が初めてだから」
顔を見合わせていて、途中から照れて逸らされてしまった。熱が上がったんじゃないかと思うくらい顔は真っ赤になっている。
俺も言われた言葉があまりにも嬉しくて、頭が理解するより先に口から言葉が漏れていた。
「じゃあ俺たち……初めて同士なんだね。家にお呼ばれするの」
「……そうことになるな」
特別の意味はきっとお互い違うかもしれない。しかし大幅に違うこともないだろう。度合いが違う、ただそれくらいの差だろう。恋人として相手を想う気持ちの大きさ。もうそんなに気持ちのズレはないハズだ。そう思うのに確かめてみたいと思うのは不安からなのか、ただの欲求なのか。
「チョコ」
「っ!」
テーブルに置かれている手に触れるとびくりと反射的に引っ込められ、その手を掴んだ。
「……触っていい?」
「もう触ってんじゃねぇか」
「これだけじゃ足りない。抱きしめたい」
「……最近風呂入ってなくて汗臭ぇから嫌だ」
「俺はそんなの気にしないよ」
「気にしろよ」
「じゃあ身体を拭いたら抱きしめてもいい?」
「拭いたらって…………まあ正直、汗が張り付いて気持ち悪いけどよ」
「なら早速準備しよう」
✿✿✿✿✿
タオルを二枚、湯を張った風呂桶、着替え。最低限必要な物がそろったところでチョコはTシャツを脱ぐ。タオルを湯で濡らして絞り、身体前面を拭いてからもう一枚のタオルで乾拭きをする。
「自分で自分の身体に触れるのは平気なんだね」
「そりゃあな。そんなんでいちいち感じてたらマジで何も出来ねぇよ」
確かにその通りだ。自分の身体に触れられないなんてことになったら着替えさえまともに出来ない。
チョコの練習に付き合っていて一つの仮定が浮かんでいた。体質は【身体に触れること】ではなく【触れられること】で異常に敏感になる。チョコから触れるのは平気で、触れられるのは駄目。程度やシチュエーションによっても差がある。
シャツ越しと素肌では全然反応の大きさが違う。声を掛けてから触るのと、急に触るのでも差があった。濡れた頭をタオルで拭いた時はあまり反応は無かった。
チョコの身体が慣れだしているからなのか、それとも声を掛けると身構えることが出来るからなのか。物を通しさえすれば触られても平気なのか、頭部は触られても平気なのか。謎はまだまだ多い。
チョコから触れるのだって結局素肌は触れているのに。
「背中拭いてもらっていいか」
「ああ、うん」
絞った温かいタオルを受け取る。
「じゃあ拭くよ」
一声掛ければ多少は反応が弱くなることは分かっている為、わざとではない時は声を掛けるようにしている。
「……っ」
チョコがやったように温かいタオルで拭いてからポンポンと叩くようにして乾拭きする。
やっぱりタオルとか物で触れるのはまだマシなのかな? 声が出ても控えめだ
考えてみると試してみたくなる。タオルでならどれくらいまで大丈夫なのか。しかしチョコはまだ熱があって体調が優れない。今試す時ではないだろう。でもやってみたいという気持ちは大いにあって葛藤する。
「終わったか?」
「えっ! あ、……ああ……おわっ……た」
「拭くだけでも全然違うな。わりとサッパリした」
「そ、それなら良かった!」
「おう。サンキュな」
お礼を言いながらシャツに着替えている。結局試すには至らなかった。
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