59 / 73
二章〈fireworks〉〜儚いひと夏の花〜
一 拓視点
微熱が出て保健室のベッドで休ませてもらっている。有馬に鞄を持ってきてもらい、昼食を食べて昼休みも保健室で過ごしていた。
「体調はどう? 少しは良くなったかな」
「ちっとダルいけど薬も飲んだし、午後の授業には出られそうだ」
「そっか、それなら良かった。でも無理はしないようにね」
「健気だね~」
カーテン越しに声が聞こえた。保健医の白鳥がにやにやしながらカーテンを開けて入ってくる。
「なんだよ白鳥」
「様子を見に来たんだよ。本当だ、顔の赤みも引いてる」
「んっ」
白鳥の手が額を覆ってくる。
「そんなあからさまに睨まないでくれよ」
額から白鳥の手が離れると有馬の顔が見えて、確かに分かりやすく白鳥を睨んでいた。そういえば勝手にライバル視していたんだった。
白鳥はきっとこの状況を楽しんでいるに違いない。
「そうだ、キミたちは花火大会行くの? 最近学生たちが話してるけど」
毎年海岸沿いで行われる花火大会がある。ここ最近クラスでもその話題で持ちきりだ。来週から夏休みで予定に入れる人は多いだろう。
「行くわけねぇだろ」
というか、行けるわけねぇだろ……こんな身体で
花火大会の会場までは電車を乗り継いで行かなければいけない。普段の電車なら一番端の車両の隅でなんとかなっているが、イベントの日の電車なんて満員になるに決まってる。つまり人と触れることは不可避だ。そんな危険に自ら突っ込もうなんて気には到底なれない。
「先生は行くんですか? 可愛い彼女を連れて」
「うーんどうだろうなぁ……仕事次第かな」
「えっ。彼女はいるんですか」
「いるよ」
サラッと言ってのける白鳥に、俺はなんとも思わなかったが、有馬は嬉しそうな顔をしていた。
「キミたちそろそろ戻った方がいいんじゃない? 授業に遅れるよ」
言われて時計を見れば、昼休みが終わりそうな時間だった。鞄を持って保健室から出ていく。
「白鳥先生にはちゃんとお相手がいたのか……これでライバルが減った!」
「まだそんなこと考えてたのかよ。ライバルなんかいねぇっての」
「甘いよ! チョコは魅力的なんだ、いつどこからライバルが現れるかなんて分からないんだよ!?」
「あーはいはい」
呆れて適当な相槌を打つ。有馬の大袈裟な発言は今に始まったことじゃない。
「ねえ、チョコ」
「あ?」
「さっきの花火大会のことなんだけどさ……実はアーシャが行きたいって言ってて、チョコも一緒にって話してたんだけど……どうかな?」
「どうって……俺は……」
行きたくないわけじゃない。どちらかといえば行ってみたい。けれどこの身体では無理なことだ。
「ああ、ごめん。一応聞いてみただけなんだ。さっき行かないって言ってたし、体質のこともあるもんな」
「悪ィ……」
「仕方ないさ。アーシャには用事があるってことにして断っておくよ」
苦笑いをして、教室に戻ったところで話が途切れ自分の席に着いた。
「体調はどう? 少しは良くなったかな」
「ちっとダルいけど薬も飲んだし、午後の授業には出られそうだ」
「そっか、それなら良かった。でも無理はしないようにね」
「健気だね~」
カーテン越しに声が聞こえた。保健医の白鳥がにやにやしながらカーテンを開けて入ってくる。
「なんだよ白鳥」
「様子を見に来たんだよ。本当だ、顔の赤みも引いてる」
「んっ」
白鳥の手が額を覆ってくる。
「そんなあからさまに睨まないでくれよ」
額から白鳥の手が離れると有馬の顔が見えて、確かに分かりやすく白鳥を睨んでいた。そういえば勝手にライバル視していたんだった。
白鳥はきっとこの状況を楽しんでいるに違いない。
「そうだ、キミたちは花火大会行くの? 最近学生たちが話してるけど」
毎年海岸沿いで行われる花火大会がある。ここ最近クラスでもその話題で持ちきりだ。来週から夏休みで予定に入れる人は多いだろう。
「行くわけねぇだろ」
というか、行けるわけねぇだろ……こんな身体で
花火大会の会場までは電車を乗り継いで行かなければいけない。普段の電車なら一番端の車両の隅でなんとかなっているが、イベントの日の電車なんて満員になるに決まってる。つまり人と触れることは不可避だ。そんな危険に自ら突っ込もうなんて気には到底なれない。
「先生は行くんですか? 可愛い彼女を連れて」
「うーんどうだろうなぁ……仕事次第かな」
「えっ。彼女はいるんですか」
「いるよ」
サラッと言ってのける白鳥に、俺はなんとも思わなかったが、有馬は嬉しそうな顔をしていた。
「キミたちそろそろ戻った方がいいんじゃない? 授業に遅れるよ」
言われて時計を見れば、昼休みが終わりそうな時間だった。鞄を持って保健室から出ていく。
「白鳥先生にはちゃんとお相手がいたのか……これでライバルが減った!」
「まだそんなこと考えてたのかよ。ライバルなんかいねぇっての」
「甘いよ! チョコは魅力的なんだ、いつどこからライバルが現れるかなんて分からないんだよ!?」
「あーはいはい」
呆れて適当な相槌を打つ。有馬の大袈裟な発言は今に始まったことじゃない。
「ねえ、チョコ」
「あ?」
「さっきの花火大会のことなんだけどさ……実はアーシャが行きたいって言ってて、チョコも一緒にって話してたんだけど……どうかな?」
「どうって……俺は……」
行きたくないわけじゃない。どちらかといえば行ってみたい。けれどこの身体では無理なことだ。
「ああ、ごめん。一応聞いてみただけなんだ。さっき行かないって言ってたし、体質のこともあるもんな」
「悪ィ……」
「仕方ないさ。アーシャには用事があるってことにして断っておくよ」
苦笑いをして、教室に戻ったところで話が途切れ自分の席に着いた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話