99%興味【打ち切り】

朝陽ヨル(月嶺)

文字の大きさ
64 / 73
二章〈one's going〉~互いの決意を胸に刻んで~

一 有馬視点

『ロシアに行く?』

 チョコとの通話で俺の夏休みの予定を伝えた。
 チョコが治療に専念するんだ、俺も頑張らないと

「そう。毎年夏休みにはロシアに行ってパーパと会うんだよ。パーパは母国のロシアを一つの拠点として事業を興しているんだ」
『じゃあ、日本にはあんまり来ないのか?』
「そうだね。元々別の場所で起業して活躍してたんだけど、ロシアでも新しいことを始めたらしくてね。マーマも社長だから忙しいみたいで、マーマの日程に合わせて滞在は二週間くらいかな。夏休み終わるくらいには戻ってくるハズだよ」
『二週間か……せっかく行くんだし楽しんでこいよ』
「うん……この時期は過ごしやすいからリラックス出来ると思う。それでさ、パーパに会ったらアーシャとの婚約を解消してもらうように話してみる。アーシャもそれでいいって言ってくれたから」
『そうなのか。上手く話せるといいな』
「チョコも治療頑張って。無茶だけはしないようにね。辛くて泣きたくなっても、俺はすぐに駆けつけられないから……」
『誰が泣くか。寧ろお前の方がビービー泣くんじゃねぇの?』
「ははは、そうかもね」

 結果がどうなるかはわからない。父親と婚約について話すのなんていつ以来だろう。もうずっと小さい頃に決まったことだ。決まった当時はアーシャのことを人として好きだから婚約者として受け入れていたし、今だってアーシャのことは好きだ。けれど恋愛対象として見てるわけじゃない。小さい頃からのなあなあとした関係は、アーシャにとっても良くない。アーシャもちゃんと好きな人と一緒になってもらいたい。俺も後ろめたさなんか無く、堂々とチョコと一緒にいたいから。

『……有馬』
「なんだい?」
『ロシア行く前に……ちょっとだけ会えないか?』

 チョコからのお誘い……!

「……あ……明日にでも会う?」
『大丈夫なのか? 連チャンで』
「行く準備は前日にでもすればいいし。……俺も、二人きりで会いたいから」

 アーシャとジョーと花火をしたのは楽しかった。でもチョコと二人きりで楽しみたいことだってある。

『じゃあ……明日な』
「うん、また明日」

 時間と待ち合わせ場所を決めて会う約束。れっきとしたデート。これで喜ばないことなんてない。
 通話が切れた後には衣装部屋に向かう。服や小物はお気に入りの選りすぐりが揃っている。

「明日はどれを着よう」

 明日が楽しみで仕方ない。明日直感で選んでもいいが、デートのことを考えてゆっくり選ぶのもそれだけでワクワクする。



✿✿✿✿✿



 次の日になり、準備しておいた服や小物を身に付けて髪もしっかりと整える。睡眠も十分でコンディションは完璧だ。
 待ち合わせはこの前に行ったデパートの最寄り駅。待ち合わせ時間より少し早く着いたけど、チョコは既に待っていた。

「やあ、おはよう」
「ん、はよ」
「早いね。もしかして待たせてた?」
「いや、ほんの数分前に着いた」
「そっか、それなら良かった」

 自分でも早く着いたと思っていたのに、チョコの方が早く着いていたなんて。よっぽど俺に会いたかったということかな?

「今日はどうしようか」
「またあのデパートに行ってもいいか? とりあえず昼飯食おうぜ」
「わかった」
 
 デパートの上の階はレストラン街になっていて、案内板を見て食べたい物をすり合わせながら店を選んだ。結果、パスタ屋になった。

「お待たせ致しました」

 運ばれてきたのは二人分のパスタとピザ。後にドルチェもついてくる。

「いただきます」
「いただきます……」

 チョコはカルボナーラ、俺は大盛りのたらこスパゲッティをチョイスした。ピザは具だくさんマルゲリータ。

「食えるのか、そんな……」
「余裕だよ」

 まずはたらこスパゲッティを巻いて口に運ぶ。たらこにバター、海苔の香りが鼻腔をくすぐる。

「う~んいいね! この香りとプチプチ感!」
「お前こういう小洒落た感じの料理似合うよな」
「んう……? ……そうかな? 料理に似合う似合わないってあるかい?」
「雰囲気っつーか……やっぱハーフだからかもな。日本食食ってるよりサマになってる感じする」
「それは……、ほへへふほはひ?」
「ふはっ、何言ってるかわかんねー」

 ただ一緒に食事をしてるだけなのにチョコが笑ってくれる。こうやって食卓を囲むだけで笑いが起こる。なんて幸せなことなんだろう。もっと遠い未来の話、一緒に食卓を囲んで笑って暮らせることが出来る、そんな未来を望んでいるのか、そんな夢を見ることがある。

「……チョコの料理、食べてみたいな」
「んあ? あー……エプロンもらったしな。まあいつかそういう機会があったら作ってやるよ」
「ホント!? 約束だよ!」
「あ、ああ……」

 ふと溢した呟きだったけど、ちょっと引き気味に約束してくれた。俺が考えてる夢はまだ遠すぎる。もっと近く、今出来ることからやって少しずつ近づいて行かないと。俺は目的の為ならしぶとい男なんだ。
 パスタ、ピザ、ドルチェとしっかり食べ終えた俺たちはデパート内をフラフラと歩いていく。沖縄物産展がやっていて中を覗いてみた。

「へえ、美味そう」
「はっ、コレは!」

 ビビッときたソレはシーサーの置物で、俺はすかさず持ち上げてみる。適度な重さ、くすみ具合、そしていい表情。

「コレは買いだな!」
「俺にはその良さはわかんねぇけど……まあ、気に入ったのがあって良かったな。俺もちょっと買ってくるわ」
「わかった。俺はもう少し見たら買ってくるよ」

 シーサーの色違いで迷う。それから他に焼き物があって目移りしながら数点買い物をして、思わぬところでコレクションが増えた。
 チョコと合流すると物産展売り場から出ていく。歩き出すチョコについて行って、なんとなく向かってる方向は出口なような気がした。

「どこか遊びに行く?」

 問いかけてみたけれど、チョコはもうどうするか決めているようだった。でもそれを言い出せないでいる、躊躇っている感じがする。そわそわとして落ち着きがない。

「チョコ?」
「…………今日、これから…………お前ん家って行けるか?」

 俺は直感した。チョコのそれは何かを決意している顔だった。だから否応なしに緊張が高まる。

「あ……、うん……行ける、よ」

 そう返事をして、それから俺の家へと向かった。期待を胸に秘めながら。

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話