天の邪鬼なワタシと天然なボク

朝陽ヨル(月嶺)

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「斎藤さん! これだけでも受け取ってください!」

 またいつものように避けようとしたら、折り畳んだ白いメモ用紙を差し出してきた。

「ちょっと、そんな大きな声出さなくても聞こえるし!」
「でもこうでもしないとまた避けられると思うので!」
「っ……!」

 廊下でのやり取りだ、他に数名いる中そんな大声で話されたら注目を浴びてしまう。

「わかったからっ! 受け取ればいいんでしょ?」

 そのメモ用紙を奪いとっとと去る。教室の席に戻って畳まれたメモを開くと『LI○EのIDです』と一言と、その下にIDが書かれていた。今まで電話番号やメールアドレスを聞かれたことはあるがそれとなく拒否していた。
 聞くのは無理だから自分のを……ってことね。私が登録して送らなければ意味無いのに。 

 バカみたいだと嘲笑ったが、律儀にもメモを鞄の中にしまっていた。連絡をするつもりなんて無い。そう思っていたのに、それを覆そうと思ったきっかけとなる会話を耳にした。それはメモをもらった一週間後のことだ。

「社会見学さ、別のクラスと合同でやるって話じゃん?」
「勝手に班分けられてたね」
「そうそう。で、集まったんだけど全然仲いい人いなくてー」
「わかるー。ウチもそうだった!」
「でしょー。しかもその班で一日行動するらしいからマジだるい」

 社会見学。知識や経験を積む為に行われる学校行事の一つだが、それを他クラスと合同にすることによってコミュニケーション能力も身に付けようという学校の魂胆らしい。
 
 すっごい迷惑……こんなんで仲良くなれるわけないじゃん 。
 共感しつつ盗み聞いていたが、とある話に斎藤は耳を疑った。

「連絡先交換しようってなったんだけどさ、ウチの班に山下がいて、未だに教えないんだよね。ID設定してないーとか、今日はスマホ忘れましたーとか言って」
「うわ、それウザイ。絶対教える気ないやつ」
「そう思うでしょ? こっちも教えたいわけじゃないのにさ。個人情報なので教えたくありませーんって言ってるみたいでなんか自意識過剰じゃない?」

 二人の悪口めいた会話はどうでも良かった。そんなことよりも、山下がそんな行動を取っていたなんて。
 
 そういうの誰にでも教えるような人だと思ってた。それに……あのメモ渡すのだって凄く勇気がいることだよね。
 
 斎藤の中で山下の印象が少しだけ変わった。そして鞄からメモを取り出して、LI○Eの友達登録をしていた。
 
 今更って思うかな……。

 友達登録をしたなら何か送ろうかと考えたが、これといって送りたい内容などなかった。そんな考えは杞憂で、山下からメッセージが届いた。

『友達登録ありがとうございます。これからもよろしくお願いします』

 そのメッセージを見たらそわそわと浮き足立っていた。メッセージを送るということは一歩を踏み出すということで、相手を認めるようで、只、よろしくお願いしますというスタンプを一つ送りLI○Eを閉じたのだった。
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