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「どうですか? 癒されました?」
「うん、癒された」
「あそこも入れるみたいです」
山下が指した先にはキャットルームと書かれたプレートが掛かっている部屋がある。壁には猫のイラストが描かれてあったり、中にいる猫の名前付き写真が貼ってある。
「わあ、いっぱいいる」
「おやつ買って入りましょう!」
山下が買いに言っている間、斎藤は待ちきれず先に入る。手を消毒して二重扉を開くと、そこには十匹以上の猫が迎えてくれた。
「あ~っ! 猫がいっぱいヤバい! めっちゃかわいい!」
顔が綻ぶのを止められない。部屋の真ん中まで行って集まっている猫たちに近づいていく。しかし、猫たちはすぐに散っていってしまう。そこにおやつを持って現れた山下に、猫たちは挙って集まっていった。
「おおっ、たくさんいる!」
「猫も現金だね」
踏みつけないようにヨタヨタしている山下と、おやつに目がない猫たちの様子に苦笑いしながらおやつを受け取った。
そうすれば猫は山下と斎藤へ散り散りになっては近寄ってくる。おやつを出すと勢いよく猫たちが取り合いをする様子がまた面白い。
「元気ですね」
「おやつ欲しさに必死すぎ」
爪を立てたり噛みついたり猫パンチを繰り出すなど、猫同士で大乱闘だ。負けてしまったり奪われて食べられなかった猫もいて、食べている猫の隙を見て負け犬ならぬ負け猫におやつを与えた。
持っていたおやつが無くなると、においで分かるのか猫たちは解散する。近寄っても逃げられてしまう為、斎藤は早々に諦めて設置してある猫の毛だらけソファに腰掛けた。
山下はというと、身体を屈めてじっと動かずに手を伸ばして猫ににおいを嗅がせている。それから置いてあった猫じゃらしを慣れた手つきで動かしてみると、数匹の猫がじゃれついていた。
慣れてる感じする。もしかして飼ってるのかな?
「ねえ、猫飼ってたりする?」
「飼ってますよ。家にたくさんいます」
「一匹じゃないんだ」
「はい。親が保護施設からもらってきたり、オレも小さい頃に野良とか連れてきたり。そういうのでいつの間にか増えてましたね」
「優しいんだね」
「そんなことないですよ」
「そうやって謙遜するし。デートも誘ってきてさ、意外と度胸あるよね」
上からものを言ってしまうのは悪い癖だなと自覚しながら。
「それって山下君の美点だと思う」
素直な誉め言葉に目を丸くした山下は、猫じゃらしの動きを一瞬止めてから高速で動かす。
「ははっ、はははは! あ、ありがとうございますっ! 凄く照れますね!」
そう言うのだ。相当照れているのだろう。
してやったりと自慢気な顔をして、斎藤はソファの上で足を組んだ。
笑い終えると、ピタリと猫じゃらしも止めた。
「あの……実は、LI○Eの返信凄く迷ったんです」
「うん、知ってる」
「ですよね。どう返信するのが正解かなって……。遊びに行くだけだから言い方違うかなとか、二人きりだしやっぱりデートって言うべきかとか、どうしてそんなこと聞くのかなって深読みしたり、返信するの……とてもドキドキしました」
言葉を一生懸命紡いでいる。そんな彼に多少の罪悪感を抱きつつ斎藤は口を開く。
「ごめんね、色々考えさせちゃって」
試したかった。本当のことはまだ伝えない。
「うん、癒された」
「あそこも入れるみたいです」
山下が指した先にはキャットルームと書かれたプレートが掛かっている部屋がある。壁には猫のイラストが描かれてあったり、中にいる猫の名前付き写真が貼ってある。
「わあ、いっぱいいる」
「おやつ買って入りましょう!」
山下が買いに言っている間、斎藤は待ちきれず先に入る。手を消毒して二重扉を開くと、そこには十匹以上の猫が迎えてくれた。
「あ~っ! 猫がいっぱいヤバい! めっちゃかわいい!」
顔が綻ぶのを止められない。部屋の真ん中まで行って集まっている猫たちに近づいていく。しかし、猫たちはすぐに散っていってしまう。そこにおやつを持って現れた山下に、猫たちは挙って集まっていった。
「おおっ、たくさんいる!」
「猫も現金だね」
踏みつけないようにヨタヨタしている山下と、おやつに目がない猫たちの様子に苦笑いしながらおやつを受け取った。
そうすれば猫は山下と斎藤へ散り散りになっては近寄ってくる。おやつを出すと勢いよく猫たちが取り合いをする様子がまた面白い。
「元気ですね」
「おやつ欲しさに必死すぎ」
爪を立てたり噛みついたり猫パンチを繰り出すなど、猫同士で大乱闘だ。負けてしまったり奪われて食べられなかった猫もいて、食べている猫の隙を見て負け犬ならぬ負け猫におやつを与えた。
持っていたおやつが無くなると、においで分かるのか猫たちは解散する。近寄っても逃げられてしまう為、斎藤は早々に諦めて設置してある猫の毛だらけソファに腰掛けた。
山下はというと、身体を屈めてじっと動かずに手を伸ばして猫ににおいを嗅がせている。それから置いてあった猫じゃらしを慣れた手つきで動かしてみると、数匹の猫がじゃれついていた。
慣れてる感じする。もしかして飼ってるのかな?
「ねえ、猫飼ってたりする?」
「飼ってますよ。家にたくさんいます」
「一匹じゃないんだ」
「はい。親が保護施設からもらってきたり、オレも小さい頃に野良とか連れてきたり。そういうのでいつの間にか増えてましたね」
「優しいんだね」
「そんなことないですよ」
「そうやって謙遜するし。デートも誘ってきてさ、意外と度胸あるよね」
上からものを言ってしまうのは悪い癖だなと自覚しながら。
「それって山下君の美点だと思う」
素直な誉め言葉に目を丸くした山下は、猫じゃらしの動きを一瞬止めてから高速で動かす。
「ははっ、はははは! あ、ありがとうございますっ! 凄く照れますね!」
そう言うのだ。相当照れているのだろう。
してやったりと自慢気な顔をして、斎藤はソファの上で足を組んだ。
笑い終えると、ピタリと猫じゃらしも止めた。
「あの……実は、LI○Eの返信凄く迷ったんです」
「うん、知ってる」
「ですよね。どう返信するのが正解かなって……。遊びに行くだけだから言い方違うかなとか、二人きりだしやっぱりデートって言うべきかとか、どうしてそんなこと聞くのかなって深読みしたり、返信するの……とてもドキドキしました」
言葉を一生懸命紡いでいる。そんな彼に多少の罪悪感を抱きつつ斎藤は口を開く。
「ごめんね、色々考えさせちゃって」
試したかった。本当のことはまだ伝えない。
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