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「待って」
斎藤にはまだ山下に用がある。人気の無いところへ移動したのだ。心からの試しがまだ済んでいない。
「……ねえ、言い残したことあるんじゃないの?」
山下は振り向いて、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
「えっ? ……ええっ? えっと……また学校で……会いましょう?」
「そうじゃなくて! ……ああもう焦れったいなッ! もう分かってるんだから! あんなかわいいとか、さらっと言っちゃって、手まで繋いでさ! 気持ちバレバレなんだからね!?」
正直見た目はカッコ良くない。不器用で変わってる人。
そんな人と関わってる自分が恥ずかしいと感じていた時があった。
しかし今は違う。見た目がどうとか、性格が変わっているとか、そんなことが気にならない程、素直で誠実に向けてくれる真摯な優しさが素敵だと思えた。この自分の気持ちを押し殺して、周りばかり気にしてたら何も出来ない。
そして山下もまた、本当の気持ちを押し殺しているんじゃないだろうか。気を遣って遠慮しているんじゃないか。それはきっと。
ーー私自身に……。
「私のことどう思ってるのか言って! 聞かせてよ!」
声を張り上げて思いの丈をぶつけた。
これはきっと山下から言うことに意味がある。斎藤から言うのでは意味がない。
体は硬直して視線はまともに合わせられない。こんな突然のフリに緊張しないわけがない。しかも内容が内容で、回避しても良いはずなのだ。こういうことには準備が必要だ。主に決断する心の準備が。しかし茶化していいことでもない。雰囲気は整っている。もうあとは一歩を踏み出すだけ。思い切り勇気を振り絞るだけ。
「ーーオレは、」
言葉を切り息を凝らして斎藤を真っ直ぐに見据え、そして。
「斎藤さんが、本当に本当に……大好きです!!」
これでもかと赤面する山下。言い終えてから動かない視線。
先に目を逸らしたのは斎藤だった。笑いが込み上げて、口から零れていく。抑えきれない嬉しさが笑いとなって溢れる。
「ふふ……ふふふっ……やっとだね。やっと言った……うふふふっははははっ」
「あのっ、そ、そんなに分かりやすかったですか!?」
思い切り笑われて自棄になっているのか、照れているのか、上擦った声で質問する。
「分かりやす過ぎて大分前から知ってたよ。だからデートか聞いたのも、そういう気持ちがあるのかを試してみたくて聞いたんだよ。なのに全然言ってこないし。動物園で言われるかと思ってたのに」
「言うつもりなかったんです。叶わないと思ってて……」
やや緊張が和らいだのか苦笑している。
「オレみたいな不細工に告白されても困ってしまうだろうなって。斎藤さんみたいに素敵な人は、もっとカッコいい人が似合うし選び放題だろうって」
それを聞いた斎藤は腕を組み、口を尖らせた。
「そういうのは私が決めるの。それに私はそんな大した人じゃないし」
「大した人ですよ。だから叶わないと思ってたからせめて写真を記念に……」
「あっそう。やっぱりさっきの写真消しといて」
「ええ!? イヤですよ!」
ハッキリと拒否する山下は珍しいが、斎藤は低音で更に強く拒否する。
「私もイヤだよ。初めて一緒に撮った場所が駅なんて。しかもすっごい微妙な顔してるし」
「あ……じゃあまた撮ってください」
「暗いし撮れないでしょ」
「そうですね……」
「だから、またどこか行ったら一緒に撮ろうよ」
これからは今までよりも気軽に誘えるのだから。どこでも一緒に行けばいい。
「わかりました。……あの、斎藤さんはどう思ってるんですか? オレのこと」
期待を込めておずおずと聞く。
そんな山下の期待を裏切るかの如く斎藤はとても良い笑顔で手を横に振った。
「教えてあげない。じゃあね」
「そんなっ!」
本当に去ってしまいそうな斎藤のうしろ姿。もったいぶっているのかそうでないのか判断がつかない。距離を詰めたら離れられる。繰り返していく内に斎藤の口から飛び出してきた言葉は。
「山下くんなんて嫌いだよ! ……なーんて、天の邪鬼からの言葉ですよーだ!」
嫌いという言葉に足が止まってしまう。あまり追いかけるのもどうかと考えて、斎藤が遠ざかっていくのを見送る。
きっと嫌われているわけではないだろう。あんな笑顔で嫌いと言われても説得力がない。
その証拠に『またね』とLI○Eのメッセージとハートのスタンプが送られてきたのだ。
「天の邪鬼じゃなくて小悪魔じゃないですか……」
去り際の斎藤の笑顔を思い出しながら、LI○Eの内容を見てしゃがみこみ、肩を震わせて悶えた。
その頃、斎藤は次会ったらなんて言ってやろうかと胸を踊らせていた。
ーー言ってあげないよ。本当のことなんて。
END
斎藤にはまだ山下に用がある。人気の無いところへ移動したのだ。心からの試しがまだ済んでいない。
「……ねえ、言い残したことあるんじゃないの?」
山下は振り向いて、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
「えっ? ……ええっ? えっと……また学校で……会いましょう?」
「そうじゃなくて! ……ああもう焦れったいなッ! もう分かってるんだから! あんなかわいいとか、さらっと言っちゃって、手まで繋いでさ! 気持ちバレバレなんだからね!?」
正直見た目はカッコ良くない。不器用で変わってる人。
そんな人と関わってる自分が恥ずかしいと感じていた時があった。
しかし今は違う。見た目がどうとか、性格が変わっているとか、そんなことが気にならない程、素直で誠実に向けてくれる真摯な優しさが素敵だと思えた。この自分の気持ちを押し殺して、周りばかり気にしてたら何も出来ない。
そして山下もまた、本当の気持ちを押し殺しているんじゃないだろうか。気を遣って遠慮しているんじゃないか。それはきっと。
ーー私自身に……。
「私のことどう思ってるのか言って! 聞かせてよ!」
声を張り上げて思いの丈をぶつけた。
これはきっと山下から言うことに意味がある。斎藤から言うのでは意味がない。
体は硬直して視線はまともに合わせられない。こんな突然のフリに緊張しないわけがない。しかも内容が内容で、回避しても良いはずなのだ。こういうことには準備が必要だ。主に決断する心の準備が。しかし茶化していいことでもない。雰囲気は整っている。もうあとは一歩を踏み出すだけ。思い切り勇気を振り絞るだけ。
「ーーオレは、」
言葉を切り息を凝らして斎藤を真っ直ぐに見据え、そして。
「斎藤さんが、本当に本当に……大好きです!!」
これでもかと赤面する山下。言い終えてから動かない視線。
先に目を逸らしたのは斎藤だった。笑いが込み上げて、口から零れていく。抑えきれない嬉しさが笑いとなって溢れる。
「ふふ……ふふふっ……やっとだね。やっと言った……うふふふっははははっ」
「あのっ、そ、そんなに分かりやすかったですか!?」
思い切り笑われて自棄になっているのか、照れているのか、上擦った声で質問する。
「分かりやす過ぎて大分前から知ってたよ。だからデートか聞いたのも、そういう気持ちがあるのかを試してみたくて聞いたんだよ。なのに全然言ってこないし。動物園で言われるかと思ってたのに」
「言うつもりなかったんです。叶わないと思ってて……」
やや緊張が和らいだのか苦笑している。
「オレみたいな不細工に告白されても困ってしまうだろうなって。斎藤さんみたいに素敵な人は、もっとカッコいい人が似合うし選び放題だろうって」
それを聞いた斎藤は腕を組み、口を尖らせた。
「そういうのは私が決めるの。それに私はそんな大した人じゃないし」
「大した人ですよ。だから叶わないと思ってたからせめて写真を記念に……」
「あっそう。やっぱりさっきの写真消しといて」
「ええ!? イヤですよ!」
ハッキリと拒否する山下は珍しいが、斎藤は低音で更に強く拒否する。
「私もイヤだよ。初めて一緒に撮った場所が駅なんて。しかもすっごい微妙な顔してるし」
「あ……じゃあまた撮ってください」
「暗いし撮れないでしょ」
「そうですね……」
「だから、またどこか行ったら一緒に撮ろうよ」
これからは今までよりも気軽に誘えるのだから。どこでも一緒に行けばいい。
「わかりました。……あの、斎藤さんはどう思ってるんですか? オレのこと」
期待を込めておずおずと聞く。
そんな山下の期待を裏切るかの如く斎藤はとても良い笑顔で手を横に振った。
「教えてあげない。じゃあね」
「そんなっ!」
本当に去ってしまいそうな斎藤のうしろ姿。もったいぶっているのかそうでないのか判断がつかない。距離を詰めたら離れられる。繰り返していく内に斎藤の口から飛び出してきた言葉は。
「山下くんなんて嫌いだよ! ……なーんて、天の邪鬼からの言葉ですよーだ!」
嫌いという言葉に足が止まってしまう。あまり追いかけるのもどうかと考えて、斎藤が遠ざかっていくのを見送る。
きっと嫌われているわけではないだろう。あんな笑顔で嫌いと言われても説得力がない。
その証拠に『またね』とLI○Eのメッセージとハートのスタンプが送られてきたのだ。
「天の邪鬼じゃなくて小悪魔じゃないですか……」
去り際の斎藤の笑顔を思い出しながら、LI○Eの内容を見てしゃがみこみ、肩を震わせて悶えた。
その頃、斎藤は次会ったらなんて言ってやろうかと胸を踊らせていた。
ーー言ってあげないよ。本当のことなんて。
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