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フィクションと思いきや
しおりを挟む私は駅の待合室のベンチに腰がけ電車を待っている
壁に掛けている時計の時刻は23時を回っており
私以外は誰も居ない
駅の周りは建物がチラホラあるが夜のため明かりがなく駅が唯一の光源となっていた
私は鞄の中から飴玉と先週買った文庫本を出す
飴は甘ったるいイチゴ味で飴を口の中に入れ険しい顔を浮かべ舌で飴を動かす
なぜこの飴を買ったのかはシンプルに値段が安く
一袋3桁もしないほどだ
左手に飴の袋を持ち右手に丁度半分まで読んだ
本を開き目で文字を追う
本の中身は短編集でホラーやSFなど様々なジャンルが揃っており人間で言えば
まさにオールラウンダーだ
まさに私にとって大好きな小説に読み耽るが
ある一つのお話にあまり納得がいかなかった
怪訝な顔で本を睨みつける
なぜこんなにも腑に落ちないのかと言うと
このお話の中身のシチュエーションがあまりにも
今の私と一致している
男が深夜の待合室で座っていると突然外から呼ぶ声が聞こえ男に近づいていくと言う内容であるが
世間的にはよくある話だが主人公の男の容姿や雰囲気が私にそっくりなので
私は次第に近づきつつある目には見えない一抹の恐怖に心が支配されていく
心だけで収まれば良かったのだが左手が口元に近づき爪を噛む右足は細かく小刻みに貧乏揺すりを繰り返している
目を腕に向けると細々と鳥肌が立っていく
どうやらこの恐怖は心と身体にも侵食していっているらしい
体の震えにより持っていた本を落としてしまった
荒々しく呼吸を続ける中落とした本を拾おうとすると私に一つの考えが思い浮かんだ
「電車に乗って帰れば大丈夫なはずだ」
男は待合室に居て外からの声が聞こえた
ならば自分が電車に乗ればその状況から免れるのではないかという考えである
私は急いで待合室の片隅にある時刻表に目をやる
本来私の乗る電車は1時間後だが次の電車は10分後だ少しの辛抱だと
自分に呪文のように言い聞かせ鼓舞していく
ずっと独り言をブツブツ呟くとホームが見える窓から微かな光が大きく近づいていくる
電車が来たようだ
今の私にとって電車が向かう先が自宅から逆だろうが関係がないのだ
この不安さえ取り除けされすれば迷うものなどではない
咄嗟にベンチから立ち上がり時刻を確認しながらも待合室から出て一直線に電車へと向かう
そこで思い出した
まだあのお話の結末を知らないのだ
私は男が待合室で誰かに外から呼ばれた時点で恐怖を覚えその続きを読まなかったのである
この電車に乗らずに本の結末を確認したら
意外にも今の私とは全くもって無縁の話なのかもしれない
少し立ち止まったが一番の最善策は今すぐ電車に乗るという考えに変わりは無かった
少し小走り気味に電車に向かう身を乗り出し電車に入った途端
恐らく隣の車両からだろう声が聞こえたのだ
「お~い」
寒気がした本で書かれている外がまさか電車なんて
私はどうにも出来ない状況に放心状態で立ち止まるが咄嗟にカバンから本を取り出す
本の結末を確かめようとした瞬間
お話のタイトルが結末に記されていた
そこには「予言」と書かれていた
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