国王像にヒゲを生やしただけで無人島に送られました!

忍絵 奉公

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第1話:国王像のヒゲと、俺の人生

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 主人公が島流しになった理由を、後に誰かが記録することはないだろう。
 なにしろ理由が、あまりにもくだらない。
 事件は昼下がり、村の広場で起きた。
 
 国王像の前で、主人公・・名をリオと言う・・はくしゃみをした。
 それだけだ。
 季節の変わり目で鼻の調子が悪かった。
 口にくわえていたのは、干しかけの海藻だった。昼飯の残りだ。
 くしゃみの勢いでそれが飛び、空中で一度ひらめき、国王像の顔面に絡みついた。
 よりにもよってヒゲの部分に。
 緑色の、くるくるとした、立派なヒゲが完成した。
「王のヒゲに落書きだ!」
 誰かが叫んだ。
 リオは慌てて像に近づき、海藻を取ろうとした。
 像に登った。その時点で、すでに終わっていた。
「現行犯だ!」
「反逆者!」
「ヒゲを描くとは何事か!」
 衛兵が三人来た。
 リオは説明しようとした。
「違うんです、これは事故で、ヒゲじゃなくて海藻で・・」
「言い訳する態度が反省していない!」
 即座に手首を縄で縛られた。
 その縄はなぜか異様に緩く、リオは自分で結び直した。
 三日後、裁判があった。
 裁判官は一度も像を見ていなかった。
「国王の威厳を汚した罪」
「流刑。島送り。」
 リオは口を開いたが、
「異議あり」と言う前に判決が終わった。

 島へ向かう船は古く、罪人用にしては妙に快適だった。
 同乗者は二人。
 一人は、王の犬に吠え返した罪で捕まった老人。
 もう一人は、税金を一枚数え間違えただけで国家転覆を疑われた元会計係。
「重すぎませんかね、罪」
 リオが言うと、二人とも深くうなずいた。
「だから島流しなのだろう」
 老人はそう言った。
 船は出航して半日で嵐に遭った。
 船長は叫んだ。
「こんな嵐は想定外だ!」
 会計係がぼそりと言った。
「この航路、毎週嵐ですよね」
 次の瞬間、船が傾いた。
 木材が割れ、波が襲い、悲鳴が上がった。
 リオの記憶は、そこから途切れる。

 目を覚ました時、砂が口の中にあった。
 波音だけが聞こえる。
 起き上がると、そこは浜辺だった。
 見渡す限り、誰もいない。
 船はない。
 人もいない。
 建物も、煙も、足跡すらない。
 完全な無人島だった。
 持ち物を確認する。
 罪人用の薄い服。
 ポケットに残った、なぜか無事な木のスプーン。
 そして・・少しだけ残った海藻。
 リオは砂浜に座り込み、空を見上げた。
「……国王像のヒゲより、俺の人生のほうが、よっぽど落書きされてるな」
 答える者はいない。
 風が吹き、ヤシの葉が揺れた。
 こうしてリオは、
 誰もいない島で、
 誰よりも理不尽な流刑生活を始めることになった。
 しかも原因は、海藻である。

※この作品は不定期更新です。私の気が向いたら更新します。応援してくれたら早いかもwww 
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