国王像にヒゲを生やしただけで無人島に送られました!

忍絵 奉公

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第4話:偉い連中ほど火を囲む

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 赤いカニの後ろを歩きながら、リオは三度ほど「夢ではないか」と自分の頬をつねった。
 イタかった。
「……現実か」
 カニは振り返らない。
 当然のように、島の奥へ奥へと進んでいく。
 森を抜けると、空気が変わった。
 暑い。
 いや、正確には・・焼けた肉の匂いがした。
「……は?」
 次の瞬間、視界が開けた。
 そこは、島の中心と思われる小さな広場。
 そして・・バーベキュー会場だった。
 大きな石の囲炉裏。
 豪快に組まれた焚き火。
 串に刺さった肉、魚、よく分からない発光している何か。
 その周りにいたのは・・
「……いや、ちょっと待て」
 リオの思考が追いつかない。
 まず一番目立つのは、巨大な角を持つ男。
 黒い翼。
 赤い目。
 玉座に座っていそうな雰囲気。
 間違いない。
 一番偉い悪魔だった。
 その隣で、とぐろを巻いているのは・・・龍。
 鱗は青金色。
 空気がビリビリしている。
 さらに、炭火の前にどっしりと座るのは・・白虎。
 白い毛並み。
 筋肉。
 焼き加減に異常にうるさそうな目。
 そして少し離れた丸太の上に、白装束の老人。
 背後に淡く光る輪。
 どう見ても偉い神様だった。

「だから言っただろ、肉は裏返すなって」
 白虎が低く唸る。
「裏返さねば均等に焼けぬだろう」
 龍が鼻から煙を出す。
「炭が強すぎる。焦げる」
 悪魔が不満そうに言う。
「焦げもまた味わいじゃ」
 神様が笑いながら言った。
「それは神の舌基準だろうが」
「お前は血の味しかしないだろ」
「今それ言う?」
 軽い言い争い。
 だが、誰も本気で怒っていない。
 リオは、完全に置き去りだった。
「……え?」
 カニが前に出た。
 そしてチョキンとハサミを鳴らした。
 全員の視線が、一斉にリオに向いた。
「来たか」
 悪魔が言った。
「来たな」
 龍が言った。
「遅かったな」
 白虎が言った。
「初日で死ななかったか。偉い偉い」
 神様がうなずいた。
「……えっと」
 リオは、人生で最も適切な言葉を探した。
 見つからなかった。
「……ここ、無人島ですよね?」
 一瞬の沈黙。
 次の瞬間・・・全員、同時に吹き出した。
「無人?」
「無人だと?」
「ははははは」
「定義が甘いのう」
 悪魔が立ち上がり、串をひっくり返しながら言った。
「ここはな、冤罪で捨てられたものが流れ着く島だ」
「人だけとは限らぬ」
 龍が言う。
「神も、獣も、悪魔も」
 白虎が肉をかじる。
「全員、ちょっとした理由でな」
 神様が穏やかに続けた。
「わしは『奇跡を一度多く起こした』」
「俺は『地獄の規則を一行読み飛ばした』」
「我は『雷を落とす場所を間違えた』」
「俺は……」
 白虎が一瞬、目を逸らした。
「……寝坊した」
 リオは、頭を抱えた。
「じゃあ……俺がここに来た理由は」
 悪魔がニヤリと笑う。
「国王像のヒゲ、だったか?」
「軽罪だな」
「新人だ」
「まあ座れ」
 神様が丸太を叩く。
「肉が焼けておる」
 カニが、当然のようにリオの足元に戻ってきた。
 案内役は、どうやらここまでだったらしい。
 リオは、言われるがまま腰を下ろした。
 火は温かく、肉は香ばしく、偉い存在たちは、驚くほど仲が良かった。
「……無人島って」
 リオは呟いた。
「思ってたのと、だいぶ違うんですけど」
 神様が笑った。
「最初は皆そう言う」
 火が弾ける。
 煙が上がる。
 こうしてリオは、無人島生活2日目にして・・世界の裏側のバーベキューに参加することになった。
 なお、最初に話しかけてきたのは、昨日のカニだった。
「それ、まだ裏だぞ」
 リオは、自分の串を見て、初めて笑った。

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※だって、更新てめんどくさいんだものwww
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